「D&I」がいつの間に「DE&I」になったのですか?
インキ事業で世界ナンバーワンのDICが所有する川村記念美術館(千葉県佐倉市)の存続を巡り、同社社外取締役4名による価値共創委員会の評価(判断)が話題になっていますね(8月27日付け「価値共創委員会による「美術館運営」に関する助言並びに それに対する当社取締役会の協議内容と今後の対応についての中間報告」)。サントリーやブリヂストンのように財団が保有しているのではなく、上場会社であるDIC自体が保有している資産であり、また運営が苦しいということもあるので売却、事業縮小、廃止という選択肢が検討されているようです。これに対しては地元が存続を求めて署名活動が開始されています。
株主からの(資本効率向上への)要求が強いのかもしれませんし、外野からあれこれと批判もしにくい話題ですが、DICの事業からみても、この美術館こそ同社の存在意義(アイデンティティ)に関わる資産であることは間違いないと思います。社員のヤル気(生産性)に影響を及ぼすものかもしれませんし、同社の歴史とともに築き上げてきたブランドにも関わるように思います。このようなブランドだからこそステークホルダーをひきつける求心力があるのではないでしょうか。このあたりは社内の経営陣が中心になって議論すべき点のようにも思えて、社外取締役を中心とした委員会が決定することには、やや違和感があります(もちろん、私見です)。ということで、以下も社員のヤル気に関する話題です。
ときどき世の中から取り残されてしまった気分になるときがありますが、昨今、日経の記事を読むと「DE&I」(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)と表記されていることに(恥ずかしながら、ようやく?)気づきました。ダイバーシティがいつの間にかダイバーシティ&インクルージョン(D&I)と言われるようになり、座談会に登壇する際などにも気をつけておりましたが、そこにいつから「E」がくっつくようになったのでしょうか?
日本生産性本部のWEBサイトの解説によれば
「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」とは、従来、企業が取り組んできた「ダイバーシティ&インクルージョン」に「公平/公正性(Equity)」という考えをプラスした概念です。多様な人が働く組織の中で、それぞれの人に合った対応をすることで、それぞれがいきいきと働き、成果を出し続けるための考え方とされています。
とのこと。なるほど。そういえば以前、某社法務部長さん(女性)から「会社辞めます」といった悩みをお聞きしたところ、女性のライフスタイルに法務部長という職務がまったく合っていないことを批判されていたと記憶しています。当該会社は男女問わず管理職として活躍できるように、そもそも幹部社員の職務自体を変えたところ、社内における「根回し」のスタイルも変わったことで、また管理職候補の女性が戻ってこられました。
「女性管理職30%目標」と言われますが、そもそも社内の管理職は男性中心のライフスタイルに合った形で作られているので、これを男女を問わず務めることができるような職務に形を変えていかないと間接差別はなくならず、上記目標の実現はむずかしいのでしょうね。そのための「E(公平・公正性)」だと理解をいたしましたが、そのためには、まだまだ社内の意識改革とDXへの取組みが必要ではないでしょうか。私にはこの「E」の実践は、かなりハードルが高いように思えてきます。
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コメント
山口さん
本件に対する見方を早速ご紹介いただきありがとうございました。
読後、すぐにDIC社の統合報告書で役員のスキルマトリックスをみました。社外を含め何のための役員構成の多様化か?本件こそ、多様な構成の役員会で議論すべきというのが感想です。
投稿: 杉山忠昭 | 2024年9月13日 (金) 07時01分