日本郵便の「ゆうちょ銀行顧客情報」流用問題はかなりマズい
JR九州高速船におけるコンプライアンス違反問題(国交省から解任命令が発出された)もかなりマズいと思いましたが、9月21日にマスコミで一斉に報じられた日本郵便における顧客情報流用問題もかなりマズいような気がしております(詳しく報じる朝日新聞ニュースはこちら)。以前、私も日本郵政グループにおけるコンプライアンス委員を務めておりましたので、あまり偉そうなことは言えませんが💦・・・。
記事では「保険業法違反」とありますが(日本郵便がゆうちょ銀行およびかんぽ生命の窓口業務を受託している点がミソ)、日本郵便としては、あらかじめゆうちょ銀行の顧客からの同意を得なければ、ゆうちょ銀行の顧客情報を目的外使用できないはず。なお、一般社団法人生命保険協会策定にかかる「生命保険業における個人情報保護のための取扱指針」によれば、同意取得を目的として顧客に電話をしたり、メールを送信すること自体は目的外使用にはあたらない、とされています。日本郵便としては「顧客が来局したあとに同意を得れば問題ないと認識していた」と説明しているそうですが、保険勧誘目的で来店を促していること自体、すでに顧客情報を目的外使用しているわけですから、ちょっと理由にはならないように思います。
日本郵便では、今年1月にも郵便局長が顧客情報を政治流用していた問題が浮上していたところであり(こちらの朝日新聞ニュースご参照)、その際にも「情報流用の動機としては、懇意の顧客を選べば苦情に発展しないと考えた」との説明がなされていました。保険事業の競争の公正確保ということよりも、「ビジネスと人権」への配慮が強く求められる時代となったのですから、個人情報保護法の趣旨に沿った対応が日本郵政グループにも必要ではないかと。たしかに特定郵便局によっては少人数でゆうちょ銀行、日本郵便、かんぽ生命の仕事を担当している地域もあるので、やむを得ないところもあるのかも・・・とも思えるのですが、報道をみるかぎりでは都市部も含めて組織関与の可能性もありそうで、経営面にも影響が出そうな予感がいたします。
しかしかんぽ生命は真摯に取材にも対応していますが、日本郵便とゆうちょ銀行はノーコメントというのも組織間でのコンプライアンス経営に対する取組みに温度差があるようで興味深いところです。最近、金融庁から(損保大手における顧客情報流用事件を契機として)生保大手に対しても調査要請が来ていることとも関係があるのかもしれませんね。
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コメント
ご紹介いただいた9月21日の記事、新聞社のサイトでは9月2日付の「鳴らない警鐘 日本郵政の内部通報窓口、リスク対応できず規定見直し」という記事が参照されていました。社外窓口が機能しなかったのは、依頼した側の問題が主なのか依頼を受けた側(大手法律事務所)にも問題があったのかが気になりました。
https://www.asahi.com/articles/ASS8Y44S4S8YULFA01CM.html?iref=pc_extlink
こうした事例は法律事務所「コンプライアンス問題対応能力」を判断する材料の一つになるのか。JR九州の今後も含め可能範囲でフォローをお願いします。
投稿: 門外漢 | 2024年9月24日 (火) 08時15分