テレビ局による旧ジャニーズタレントの起用再開ー人権DDか再発防止策か?
西田敏行さんといえば私が高校生の頃のドラマ「いごこち満点」が(私にとっては)代表作です。司法試験浪人として長く下宿に居座る受験生役でしたが、初めて短答式試験に合格して下宿に帰ってくる様子は今でもよく憶えていますし、人生で初めて司法試験の難しさを認識したのもこのドラマでした。昔の話になりますが「池中玄太」で紅白歌合戦に出場したときの衣装も印象的でした。
さて、紅白歌合戦といえば出場歌手発表も控える時節柄からでしょうか、NHKが旧ジャニーズ所属タレントの起用再開を発表したそうでして(朝日新聞デジタルはこちら)、これを契機にテレ東だけでなく、他の民放キー局も再開に動くことが予想されます。起用再開の是非については様々な意見があると思うのですが、とりわけテレビ各局は起用を再開する理由については明確に説明する必要があると思います。
その「再開理由」ですが、テレビ局としては(取引先に対する)人権DD(デューデリジェンス)の一環として説明をするのか、それとも過去の不祥事に加担したこと、つまり自社の不祥事に対する再発防止策の一環として説明をするのか、明らかにする必要があるのではないでしょうか(私の素朴な疑問であります)。取引先が人権侵害を将来的に起こさない、ということを確認することで再開する、というのであれば現状を把握したうえでの説明でも足りるように思うのですが、旧ジャニーズ事務所の設置した調査委員会報告書で示されたように「テレビ局も共犯」ということを重視するのであれば、再発防止策の進捗状況の説明と起用再開との関係整理が必要です。
自社が二度と人権侵害企業に加担しない、という宣言を社会に説明することを重視するのであれば、やはり①創業家が旧ジャニーズ関連企業の株式を手放したこと、②旧ジャニーズ関連企業に原盤権や著作権等の無形資産に由来する利益が生まれないこと、③被害者救済に一定のめどがついたことをそれぞれ確認しなければ再発防止策の進捗状況の合理的な説明にはならない、つまり「起用再開」は、社会の風を読みながら「なしくづし」的に旧ジャニーズ問題にケリをつけたかように受け止められるのではないかと。よって、たとえテレビ局がタレントの起用再開に至ったとしても、これは人権DDの一環としての措置であり、人権侵害へ加担したことへの再発防止策の進捗としては、上記三点についてのモニタリングを継続する必要があるように思います。
「タレントの起用再開」問題はテレビ局だけの問題ではなく、タレントを起用する企業の問題でもあるわけですが、企業の場合には「共犯」とまでは断定されていなかったので、少し状況は異なります。いずれにしても、今後は「通信と放送の融合」が不可欠となる時代となり、日本を代表する放送事業者においては海外の通信事業者との共同制作に影響が及ばないような合理的な説明が求められるものと考えます。
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