セクハラ事件の調査とサプライチェーン・コンプライアンス
10月23日の東洋経済記事「VC大手『ジャフコ』のセクハラ事件に業界は沈黙-スタートアップ業界『セクハラ横行』報道の中で露呈」を読みました。こういったセクハラ疑惑事件の社内窓口支援を長年しておりますが、他社でも対応に苦慮する事件です。セクハラ加害者、被害者間の民事的解決方法や懲戒処分の在り方についても、最近は慎重な配慮が必要だと感じています。
ただ、この記事でも取り上げられているように、最大の課題は企業自身による「セカンドセクハラ」だと思います(最近は「セカンドパワハラ」も深刻な問題です。ただし労働人口の流動性が高まるなかで「退職勧奨」自体はかならずしもハラスメントには結びつかないようにも思います。)。こういった「疑惑」が取引先に知られるようになりますと取引先から「ビジネスと人権」の問題として「疑惑を解明して報告せよ」と要求することが増えています。取引先にとっても「人権方針」に相いれない取引によってハンディを背負いたくないわけでして、まさにサプライチェーン・コンプライアンスの一環です。左にご紹介した新刊書「グローバルサプライチェーン再考-経済安保、ビジネスと人権、脱炭素が迫る変革」(2024年9月30日発売)は、経済安保や人権問題、気候変動などがビジネスに及ぶ影響の最新情報を伝えていますが、VUCAの中身として「ビジネスと人権」問題への対処が企業に強く要請されることを痛感します(私の常識が米国やEU諸国ではもはや通用しない可能性があることを実感しました)。
とりわけ「こういった疑惑があるようなので、きちんと報告してください。可能な限り、会社とは利害関係のない専門家による調査を行ってください」との要請があって、私が(疑惑のある企業から)ご相談を受けるケースも増えてきました(私の仕事的にはありがたいことですが)。「当社のセクハラ問題でまさか取引先から調査要請が来るなど、考えてもみなかった」・・・そうなんです、だからVUCAの一つなのです。そこに気づきながら対処するか、気づかずに対処しないかは、企業のレピュテーションだけでなく攻めのビジネスにおけるハンディにもなりうる問題であり、日本企業にとっては深刻ですね。
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