やはり(企業価値向上のために)社外取締役が持つべきは「時間軸」だと考える
10月22日の日経ビジネスのWEB記事「哲学者が監査役、僧侶が社外取、本質射抜く『心の時代』のガバナンス」を興味深く読みました。臨済宗派の寺院の副住職の方(東証プライムのIT企業の社外取締役、日経ビジネス「次代をつくる100人」にも選出されている方)が、取締役会に出席して重視していることは「時間軸を持つ」とのこと。「目先の利益にとらわれ、本質的なものを見失っているようなときに、目線の変えるように促す」そうです。
先日(10月7日)のエントリー「社外取締役評価において注目すべきは『時間軸でモノが言える人』」でも述べましたが、私もまったく同感でして、自分の発言したこと、相手が発言したこと、取締役会で意思形成したことを客観的にメタ認知できるかどうかが重要だと思います。ダニエルカーネマンの「ファスト&スロー」で喩えれば、経営執行部がファスト思考(97%は直感が正しい)で物事を判断するところで、社外取締役や監査役はスロー思考(直感が間違える3%を正す)で判断を行うということです。「ファスト思考」のなかで弁護士資格を持つ社外取締役が(法律的視点から)アレコレ発言してもあまり効果的ではありませんが、時間軸を意識した「スロー思考」における発言であれば取締役会の意思形成にも影響を及ぼすことができます。
なお、この「時間軸を持つこと」をもう少し具体的に申し上げると(あくまでも「私の場合」ではありますが)、①社員の方々とコミュニケーションを図るなかで企業理念(パーパス)、企業文化の浸透度を理解する、②業界への知見を深めて目の前の課題を外部の目で理解する(中期経営計画との関係で)、③過去の意思決定と現在の議論との整合性を吟味する、といったところでしょうか。発言できるレベルまで、このような作業が日頃から求められるとするならば、やはり社外取締役の兼務は2社くらいが限界のような気がします。
企業不祥事だけでなく、セブン&アイや富士ソフトのように、いつ社外取締役にとって「有事対応」が求められるかわからない時代となりましたので、善管注意義務の視点からも兼務は少な目のほうがいいですよね(ちなみに最近は取締役会改革の一環として、このような(最適解としての)社外取締役の関与を意識した審議事項を取締役会に並べる企業も増えてきたように思います)。
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コメント
妙心寺退蔵院松山大耕副住職は東京及び退蔵院で歓談したり話を聴いたことがあります。時間軸を大事にしていると記事には書かれています。
投稿: 星の王子様 | 2024年10月23日 (水) 05時22分