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2024年11月 5日 (火)

三井住友信託銀行元社員によるインサイダー取引疑惑-今後調査によって明らかにすべき点

メガバンク、金融庁、東証に続き、またまたインベストメントチェーンの一角である三井住友信託銀行さんにインサイダー取引疑惑が浮上したわけですが(時事通信ニュースはこちら)、資産運用立国に向けて証券市場の健全性を確保する、という視点からは、今回の件はとても「罪深い」ように思います。以下、市場の信頼性を回復するために、三井住友信託銀行が調査によって開示すべき点は以下の3点かと。

ひとつは「自主申告」によって会社が知ったということの詳しい説明です。一連の取引疑惑は当局の強制調査によって会社が知ることになるわけですが、今回は自主申告がなければわからなかったという点です。社長さんの記者会見で初めて知りましたが、本人による自主申告後に「関係当局に伝えた」とのことですから、それまで関係当局も知らなかった可能性が高いようです。何度も申し上げますが、これでは「自主申告した行員以外にもバレずにやっている行員がいるのでは」とか「結局のところ、申告しなければわからないインサイダー取引も結構多いのでは」との印象を世間に与えてしまいます。この世間で感じた不公平感をどう払しょくできるか。

ふたつめは「元管理職」とありますが、この元管理職の方は管理職になる前にインサイダー取引に手を染めたのか(今はやっていないのか)、それとも管理職の時代に取引を行ったのか、現時点ではよくわからないという点です。ひょっとすると、長い間インサイダー取引が闇の中だった可能性もあるわけでして、そうなるとやはり「インサイダー取引が発覚するかどうかは運」という間違った印象を世間に与えることになります。

そして最後は(前の二つとも関係しますが)そもそもなぜ元管理職の方は自らインサイダー取引を申告するに至ったのか、その経緯です。「バレそうになったので、やむなく」という事情があれば三井住友信託の自浄作用や市場の監視体制の信頼性が(なんとか)保持されますが、そうでない事情であれば、三井住友信託の管理体制や市場の監視体制に疑問も生じます。したがって、このあたりの経緯についてもきちんと調査の上で説明が求められるものと考えます。もちろん当局による調査が並行するのであれば「任意調査」にも限界はありますが、客観性を確保した第三者による調査を行う、とのことなので、このあたりはきちんと開示されることを期待しております。

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