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2024年12月27日 (金)

不正の未然防止に向けた「動機アンケート」は禁じ手か?

今年は日本を代表する名門企業の不祥事が多かったせいか、再発防止策をみても「早期発見・早期是正策」よりも「不正未然防止策」のほうに力点が置かれているように思われます。その代表格とされる三菱UFJ銀行の貸金庫窃取事件は「どうすれば二度と同じ不祥事の発生を防止できるのか」とても悩ましい問題ですね。

ということで想起されるのが2年前の滋賀銀行の(行員による横領事件への)再発防止策です。滋賀銀行の行員が、自らの借金返済に行き詰まってしまい横領に走ってしまった、という事件ですが、滋賀銀行は、この事件を契機に全行員に対して(任意ではありますが)借金や投機に関する自己申告制度を設けたそうです(朝日新聞ニュースはこちらです)。行員の借金に関する個人情報を事実上強制的に(?)申告させるという制度は、たとえ不祥事の予防の効果があるとしてもプライバシー権侵害にあたるのでは?との意見もありそうです。

この事案の教訓は「不祥事の未然防止に向けて『性弱説』に立って不正を予防しよう」と宣言するのは容易ですが、いざ実行に移すとなれば人権侵害のおそれとのバランスをどう図るか、とてもむずかしい判断を迫られるということです。早期発見・早期是正型の再発防止策よりも数段レベルは高いはず。金融機関の行員に多額の借金があるからといって、ほとんどの人は「銀行のお金に手をのばす」などと考えないわけでして、動機と不正行為との距離はかなり遠いようにも思えます。むしろ「困っている行員に伴走してあげる」ことが必要であれば、それは支店内でのコミュニケーションや心理的安全性の問題のほうが大きいのではないかと。

ひょっとしたら、東証や金融庁等の職員によるインサイダー取引防止にも同じ方針が活用されるかもしれません。その後、滋賀銀行の上記「借金・投機アンケート」はいったいどうなったのか、気になるところです。

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