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2025年1月17日 (金)

「下請け」は差別用語か?-法律名の変更に思う

貸金庫事件で揺れる三菱UFJ銀行は記者会見で「貸金庫事業から撤退することも選択肢のひとつ」と述べておられます。こんなむずかしい作業が必要となれば撤退したくなる気持ちもわかります。では他の事業者に貸金庫事業が務まるかというと、ちょっと安全面では格段に落ちるように思います。やはり富裕層をつなぎとめるためにも、金融機関にとっては必要なサービスとして存続させていくのでしょうね。

本日(1月16日)の日経ニュース「下請けを『中小受託』に名称変更へ 公取委・中企庁」を読んで(恥ずかしながら)初めて知ったのですが下請法(下請代金支払遅延等防止法)の名称が、次の法改正時に変更されるそうです。下請け業者という言葉は使わずに「中小受託事業者」なる名称を使用するとのこと(どのような法律名称になるのかはわかりませんが)。

半年前の産経ニュースでも「下請けという用語は差別的ではないか」との国会議員からの意見も出されていた、とのことですが、物価高のなかで価格転嫁がなかなか進まないことや知的財産の無償譲渡を強要されるといった弊害が生じていることから、発注側と受託者とが対等のパートナーである意識を高めて、ともに悪しき商慣習をなくしていくための施策として法律名変更も検討されたることになったようです。

私も「下請先」という言葉はよく使っていますが、もし「差別的表現」として法律的な呼称が変わるとすれば、そこに「倫理的な匂い」がしますので実務の上でも気を付けないといけないかもしれません。発注者と受注者とのコミュニケーションだけでなく、発注者の社内のコミュニケーションにおいても「受託事業者」とか「受託先」という用語を使用しないと「人権感覚が疑われる」という人物評価を受けるかもしれませんね。このあたりは世の中がどのように受けとめるのでしょうか(受託事業者の方々のご意見もお聞きしたほうが良いかもしれません)。1989年に「セクハラ」なる言葉が流行語大賞(新語部門)に選出された頃は、なにか無機質な言葉の響きだったと記憶していますが、具体的な事象が重なるにつれて倫理的表現を当然に含む言葉として浸透しています。

なお、大企業であったとしても昨今、減資するところも出てきていますので、中小受託事業者の定義自体も変わりますし(従業員数で適用範囲を定めています)、特定受託事業者(フリーランス)法との領域の区別も必要です。サプライチェーンにおけるコンプライアンスの浸透が求められる時代なので、このたびの法改正については全体像を再度見直す必要がありそうですね。

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