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2025年1月21日 (火)

フジテレビ・スポンサー離反問題-もう「日弁連ガイドライン第三者委員会」しか選択肢がないのでは?(追記あり)

Img_20250120_202734142_512 日曜日にアップした「リクルートホールディングスの人権方針とフジテレビ『ふてほど問題』」なるエントリーでは、コーポレートガバナンス・オブ・ザイヤー2024で大賞を受賞したリクルート社が「ふてほど問題」にどような対応をとるだろうか・・・と関心を寄せておりましたところ、やはり本日、リクルート社より、フジテレビへの広告出稿を当分見合わせるとの説明があったようです(こちらのニュース参照)。残る関心は60年以上の歴史のある「ミュージックフェア」の冠スポンサーである塩野義製薬(こちらも2019年のガバナンス大賞受賞)の動向ですね。

各社とも「当分の間、広告の出稿を見合わせる」ということのようですが、これはつまり「外部弁護士を中心とした調査委員会の報告書が出て、その内容を精査するまでの間は」ということだと想定されます。すでに50社以上のスポンサー企業が出稿の見合わせ(ACジャパンへの差替えを含む)を決めているそうですので、この調査委員会も、いわゆる「日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会」として構成されないと、スポンサー企業をはじめ世間の納得は得られないような空気が漂っています。(追記1月21日)なお、一部の報道では、もし独立性の高い第三者委員会を設置しなければ、いわゆる会社法316条2項に基づく調査者選定申立ての可能性もある、と報じられています。東芝や小林製薬で活用されているものですね。臨時株主総会を開く必要があるので、ややハードルは高いと思いますが。さらに総務大臣からも「独立性の高い委員会を」との要望が出されているようです。

ちなみに、本日アップされた元スカパー女子アナのKAさんのYouTube動画を拝見しましたが、フジテレビ「お偉いさん」のセクハラ性被害に関する告白には驚きました(ニュースはこちら)。もしこれが事実であればとんでもない行動ですし、複数幹部の疑惑となればCM見合わせに至るスポンサー企業の気持ちもわかります。

以前にも申し上げましたとおり、この日弁連「企業不祥事等における第三者委員会ガイドライン」は2010年12月最終改訂、つまり14年ほど改訂されていないのですが、そのあと世間では東証「企業不祥事対応のプリンシプル」、同「コーポレートガバナンス・コード」、日本監査役協会監査役監査基準(改訂版)、経産省「グループガバナンス指針」などが発表され、いまなお調査委員会のベストモデルが模索されているところです。つまりステークホルダーへの説明責任を尽くすためのモデルとしては、「日弁連ガイドラインに完全に準拠していなくても形式的にはOK」という社会的な合意が得られる途上にあるのではないかと思います。

ただ、今回はそんなことを議論している余裕はなさそうでして、ともかく日弁連ガイドラインに(ほぼ)準拠した形の厳格な第三者委員会でなければ世間(海外の大株主も)は納得しないのかもしれません。もうこうなったら(冗談ではなく)元高検検事長とか元最高裁判事といった肩書の弁護士さんよりも「日弁連ガイドラインの生みの親」である久保利先生や国広先生に委員長をお願いするしか方法はないような気もいたします。←これなら青山学院大学名誉教授の八田先生からのご批判も出ないでしょう(^^;)。

さて、フジメディアホールディングス社にはそのような英断を下すだけのガバナンスは期待できるのでしょうか。ちなみに、役員の年齢によってガバナンスの善し悪しを決めつけることはできませんが、さすがにフジメディアホールディングス社(監査等委員会設置会社)の取締役の平均年齢は71.3歳、監査等委員会を構成する取締役の平均年齢は80.6歳。うーーーん、グループガバナンス管理や内部統制の構築、そして全社的内部統制の相当性評価も、ホントにダイジョブかな(^^;)と思うのは私だけでしょうか。(1月21日追記)放送業界に詳しくないので、ガバナンスの問題についてあいまいな記載となりましたが、メディアコンサルタントの方による東洋経済の記事「『フジテレビ問題』の根源は”経営不在”にある」を読んで、まさにこれが最大の問題だと思いました。

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コメント

 フジメディアホールディングス社に強烈な”正義のボディブロー”をぶち込んでいただきスカッとしました。
公益通報者保護法もそうですが、権力者、特に人事権や製作権をもつトップのコンプライアンス違反等が問題です。KAさんが実名を言えない理由と同じようにその品格不適切者にはグループや品格不適切な後継者もおり、当該品格不適切者を更迭できても遺言で報復的人事や査定を引き継ぐ輩がいます。社内の負のスパイラルほど断ち切るのにやっかいなものはありません。そうですか。残念ながら超お年寄り監査役等委員会の方々は色々経験はあるかと思いますが、不祥事対応は初めてなのでしょうね。ダンマリしているのは。。。私見です。
 フジテレビの報道関係のアナウンサーが色々、電波を使って涙を流したりして、自論を訴えておりますが『社内の問題をだろ』『訴えるのは組織に対してだろ』『兆候はあったはずで見て見ぬ振りをしていたのは誰』と穿った見方をするのは小生だけでしょうね。

投稿: コンプライアンスの番人 | 2025年1月21日 (火) 20時02分

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