組織トップのパワハラ認定について思うこと
2月14日に関経連より「会社法改正等に関する意見書」が公表されました。これは、法制審議会で今後議論される会社法改正の検討項目において、追加して議論すべき点を掲示したものですが、会社法改正の方向性を理解するうえではとても参考になります(私も基本的には賛同したい項目が多いです)。法制審議会の委員に経営経験者を増やすべき、という意見にも同調いたします(以下本題です)。
さて、どの事件・・・とは申しませんが、最近組織のトップのパワハラ言動がときどき話題になり、また報道もされているので、少しだけ不正調査に携わる私なりの意見を述べたいと思います。以下の3点については、世間で誤解されているのかもしれませんが、かなり重要であるにもかかわらず、あまり話題に上っていないのではないかと。
ひとつはパワハラ認定に関する厚労省基準の解釈。パワハラの言動の違法性判断にあたっては「必要性」と「相当性」が問題になりますが、裁判で争点となる可能性が高いのは「相当性」ですね。つまり「教育のため、指導のためだった」という弁明は「必要性があったこと」の理由にはなりますが「相当性があったこと」の理由にはなりません。指導のためだったとしても、その態様がどうみても職場環境を著しく害する程度ものであればパワハラ認定に傾きます。
もうひとつは同じ言動でも、被害者と加害者との立場によってパワハラになるケースもあればならないケースもある、ということ。こちらで東京の著名法律事務所の弁護士の方が解説しておられるとおりです(このポイントはあまり話題にならないようですが、立場の優越性が基準となる以上、当然に問題になりうるかと)。最近は通報窓口に通報してこられるのは同じ職場の第三者の方から・・・というのが圧倒的に多いので、被害者がどう感じるか・・・ということよりも、客観的に職場環境が著しく害される程度の言動かどうか、という点への考慮がなされます。
そして最後が「たとえ裁判所で認定されるかどうかわからないグレーゾーンのケースでも、組織のトップであれば企業行動規範違反で処分される」という点です。組織には規範性の高い(つまり違反にはペナルティが課される)企業理念や行動規範、もしくは役員倫理規程が存在して、パワハラと疑われる行為については、そもそも疑われる行為自体が●●社の役職員の品位を害する行為に該当する、として処分されうる、ということです。
先日のオリンパスの社長さんの薬物疑惑についても、司法機関が動く前に、会社として「疑い」を辞任要求の根拠にしていました。この点も、実務では重要な手続きではありますが、あまり話題になっていないのではないかと思います。
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