フジテレビの内部統制(損失の危険の管理に関する体制整備)について
(最近この話題ばかりで恐縮ですが・・・)週末に噂となっていた「堀江貴文氏と元フジテレビのアナウンサー長谷川豊氏」との対談YouTube番組を視聴しました(物凄いアクセス数ですね)。長谷川氏の発言内容が関係者から全面否定されていたり、堀江氏が日曜朝の番組で内容を紹介した際に、TBSがすかさず訂正していることからみて、長谷川氏が発言していた内容についてどこまで真実なのかはわかりません。
ただ、調査をする側から見れば、「なるほど、そのような視点でフジテレビのガバナンス(グループガバナンスを含む)や内部統制について評価すればよいのか」といった気づきを得るには十分な内容でした。とくに(TBSも日曜朝の番組で慌てて否定していましたが)、編成局とアナウンサー局との組織上の指揮監督関係について、他のキー局と比較してどうなのか。もしフジテレビ独自の内部統制であれば、なぜそのような組織体制を作ったのか、といったところは重要なポイントではないかと感じました。フジメディアホールディングスもフジテレビも、取締役は会社法上の内部統制構築義務(損失の危険の管理に関する体制整備義務)を尽くしていたのかどうか。
YouTube番組の中で、堀江氏は「第三者委員会といっても、所詮は検察や警察のように強制力はないのだから、ヒアリングに応じなければそれ以上事実を解明することなどできない」と言っておられました。もちろんそのとおりなのですが、前にも拙ブログでご紹介したように「灰色認定」はありますし、またガバナンスや内部統制の評価という第三者委員会ならではの仕事もあります。放送業界に詳しくない委員からすれば、どのような視点で構造上の不備を認定するか、といったところは難問ですが、メディアを通じていろいろな「気づき」をもらえる情報は流れているので、アンテナを広く張っておくことが必要ですね。本件において、やはり第三者委員会の役割は大きいと思いました。
社外取締役の皆さんの提言どおり企業再生に向けた小委員会が設置されましたが、今後どのような議論がなされるのでしょうか。これも上記YouTube番組から「なるほど」と思ったことですが、フジメディアホールディングスの大株主には「創業者的な株主」はいないわけで(そもそも創業家一族を排除したのですから当然といえば当然ですが)、日本の名門企業が上記に名を連ねています。このままの状況で株主総会に突入した場合、その名門企業は相談役取締役の方の再任議案に賛成できるのでしょうか(そのことが名門企業のレピュテーションリスクを高めるのでは?)。少なくともフジメディアホールディングスの取締役としての地位は安泰ではないように思われます。ダルトンが株主提案や再任反対キャンペーンに至った場合、ISSやグラスルイスはどう考えるのでしょうかね?
上記小委員会としても、相当突っ込んだ議論の末に提言をしなければ、かえって深刻な事態に陥らせてしまうのではないでしょうか。
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コメント
フジメディアホールディングスの株主としては、フジテレビを分離してもらって収益性の高い不動産事業で儲けるストーリーさえ描いてくれればよいのでは?ガバナンスやコンプライアンスの問題よりの事業経営の方向性で賛否を判断するものと思います
投稿: 南海太郎 | 2025年2月 3日 (月) 10時00分
1.長谷川氏発言
私も当該youtube視聴しました。長谷川氏の生々しい時期も明確な発言に関与者の「15年以上前のこと…」という結び詞は『逃げ』の様子を醸し
出していると穿った見方になりました。
ジャニー喜多川の事務所と同様にフジテレビ関係者も「知らなかった」等の表明を他にも聞くのはメディア関係者の優位的悪利用とも感じます。
2.相談役取締役の件
そもそも次期取締役候補に選任されますでしょうか?
1)本人が取締役候補を辞退する。
→資質の問題です。(未だ、現職辞任等の情報はありません)
2)再任候補として選任する機関は
→HPの組織上は指名報酬委員会等はありません。企業風土改革が強く求められる中、それでも取締役会の賛成決議をする輩がいるか
(第三者委員会の調査報告も踏まえ)
3)再任候補と選任された場合、監査等委員会は「1度抜かれた伝家の宝刀(*注1)」の「2度目の抜刀」を行うか(会社法342条の2第4項)
(*注1:2020年6月T社)
一般論としては1)で「立つ鳥跡を濁したまま」でも去るべきと考えているのではないでしょうか。
投稿: コンプライアンスの番人 | 2025年2月 3日 (月) 11時03分
本件も色々な情報が出てくるようになりましたね。
1.X子さんと会社の責任について
番組の編成・人材起用に関する権限を持つA氏が、「仕事の役に立つから」とX子さんを誘い中居氏と引き合わせ、BBQの後に3人で寿司屋に行き「二人が付き合えばよいのに」とか「連絡先を交換すれば」と言ったのなら、フジテレビの責任はまぬがれないと思います。(一部文春記事より)
A氏は社内でX子さんに対し優越的な地位にあると考えられるからです。事件当日は直接関与していないと思われますが、X子さんが「延長にある」と考えても無理はないと思われ会社の責任は回避できないと考えます。
2.内部統制、ガバナンスについて
港前社長が認めるように、「重大な人権侵害」があったにも関わらず、コンプライアンス部門にも取締役会(含む社外取締役)にも情報を共有しなかったのは、内部統制の欠如とガバナンスの機能不全であると考えます。
フジメディアHDのコーポレートガバナンス体制については、「内部統制機能を高めるためにコンプライアンス推進室を設け、業務の適正化とともに各部門の課題等の迅速な解決に努めています。さらに、持株会社として、グループ社長会を定期的に実施することで、各社の状況把握及び十分な意思疎通を図っています。」とHPに書いてあります。
親会社を含め、ガバナンスは機能していないと考えてよいのではないでしょうか。
また、山口先生のおっしゃるように、現在は関テレの社長のO氏(当時はフジの専務)も、責任は無いとは言えないと思います。
3.H相談役ほか
女性アナウンサーを芸能人との飲み会に連れ出すような前時代的企業風土を放置し、「重大な人権侵害」が起きても、社内で隠匿するようなガバナンスの機能不全が起きている以上、取締役に責任が無いとは言えないと思います。
任期が長い(例えば10年以上とか)取締役は、この際辞任すべきではないでしょうか。
また、定年を設けても良いかもしれません。
さらに言えば、ワンポイントリリーフでも良いので、新しい代表取締役にはコンプライアンスやガバナンスに精通した外部の人間を起用しては、とも思います。
そのくらいしないと、CM出稿から離れたスポンサーも戻ってこないのではないでしょうか。
長々と書きましたが、企業統治の在り方を含め、フジが抜本的に改善され、社員を含むステークホルダーの皆さまが「良かった」と思える日が来ることを切に願う次第です。
投稿: 艦長 | 2025年2月 3日 (月) 16時22分
外資ファンドの狙いを、まるで「社会改善活動」のように言うワイドショーが多くて、いくらなんでもと思って見ています。外資ファンドの狙いは、(1)フジテレビを倒産させる(あるいは上場廃止させる)、(2)他の株主や利害関係者を排除する、(3)ファンドの完全支配下で再上場させる、によって膨大な利益を上げることでしょう。「フジの企業価値は無価値です」と言って、底値で会社を乗っ取り、「フジの企業価値は元に戻りました」と言えば、数兆円にもなるフジの企業価値は、全額ファンドのものになるのですから、ボロ儲けです。これまで、長銀に始まって、同じ手口で何社もやられましたが、日本はまだ学習しないようです。
社外取締役の増員要求も、そこからフジを倒産させるための情報を流出させるためのものですから、どうなのでしょうかね。忠実義務?公益通報の保護?悪意の社外取締役から会社を守れるのでしょうか。
投稿: 金融 | 2025年2月 5日 (水) 22時10分