八十二銀行のアクティビストに対する「利益供与疑惑」について
独占スクープなのでダイヤモンドオンラインだけが報じていますが(4月21日付け有料記事はこちらです)、長野県の地方銀行である八十二銀行(東証プライム)が、昨年6月の定時株主総会で株主提案を行ったアクティビストファンドに対し、総会直後に投資を持ち掛けていたことが判明した、とのこと。会社法で禁じられた「利益供与」に当たる可能性があるとファンド側(リム・アドバイザーズ)は問題視し、今年6月開催予定の株主総会で、情報開示を求める株主提案を出したそうです。
上記ダイヤモンドの記事では2024年7月、八十二銀行の金融市場部証券投資グループからリム側に「関心を持っている」旨の連絡が証券会社経由であり、八十二銀行の投資受け入れを前提とした資料提供やコミュニケーションをリム側に求めたと報じられています。昨年6月の総会では、当該アクティビストは政策保有株式の解消に関する定款変更議案や剰余金処分議案などの株主提案をしていました(いずれも否決)。その直後に当該アクティビストの運営するファンドに対して投資を検討している旨を伝えたそうです(アクティビスト側は、利益供与疑惑が生じることから、直ちに拒絶したそうです)。なお、22日深夜時点では、本件に関する八十二銀行側からの開示情報はありません。
もし上記記事で報じられているところが事実であるならば、たしかに八十二銀行にとっては「利益供与疑惑」が生じている、と言われても不思議ではないと思います。記事中で牛島総合法律事務所の弁護士の方が指摘しておられるように、会社法120条1項違反の可能性だけでなく、ガバナンス・コード原則4-5(上場会社の取締役・監査役および経営陣は株主に対する受託者責任を認識し、会社や株主共同の利益のために行動すべきである、との規程)の趣旨にも反することになりかねません。
もちろん「利益供与」が実際になされていなければ会社法120条、同970条違反による法的効果は発生しません。しかし、利益を供与される側は「要求する」だけで同970条違反による刑事罰を科される可能性がありますので、(そのような可能性を払拭するためにも)八十二銀行側から申出があったことを明らかにしてもらいたいところです。近時、投資家と企業とのエンゲージメントが推奨されていますので、イレギュラーな形での対話が問題となれば投資家側が総会で情報開示を求めるのも当然かと。
本当に記事のような事実があったのか、私個人としては半信半疑ではありますが、仮に事実だとすると重大な問題を含むものと思いますので、八十二銀行としては、外部有識者による調査委員会を設置して、なぜこのような事態になったのか、説明責任を果たすべきと思いますが、いかがなものでしょうか。