企業不祥事がコーポレートガバナンスに影響を及ぼす近時の事例(2題)
本日(4月22日)、衆議院の消費者問題特別委員会では「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」の参考人意見陳述が行われました(3時間ほどの審議内容がyoutubeで視聴できます)。本件についてはまた別途、感想を述べたいと思います(以下本題です)。
企業統治改革が資本市場に浸透してきたからでしょうか、最近は大きな不祥事が発覚すると自社のガバナンスの在り方にも影響が出てしまう事例を見かけます。まず、4月18日の日経ニュース「フジHD、アクティビストや個人が力 長期投資家が急減」で紹介されたフジメディアホールディングスの事例が典型例です。
上記日経ニュースによると、フジメディアホールディングスでは、海外の機関投資家の保有比率が2月時点で11ポイントも低減し、その穴埋めがアクティビストによる株式取得で補完されたそうです(第三者委員会の委員として知りえた情報ではなく、あくまでも報道ベースでのお話です)。ダルトンほか、モノ言う株主が次々と大株主として登場したことはご存じのとおりです。最近は企業不祥事が発覚して世間で騒がれた際、アクティビストが大株主として登場して「お買い得フラグ」を立てるケースが増えています。ちなみに小林製薬ではアクティビストによる株主代表訴訟の提起にまで発展していますね。
また、本日(4月22日)の朝日新聞ニュース「三井住友海上とあいおいの合併、目的は『ガバナンス強化』 HD社長」では、合併の目的はシェア1位ではなく、損保業界で相次いだ不祥事を念頭に「内部監査機能などを集約しガバナンス(企業統治)を強化する」ことが目的だそうです。日本と海外では「内部監査部門」の果たす役割(期待?)には大きな差があり、昨今監督官庁も内部監査部門の充実を各金融機関に求めています。ただ、そうはいっても「合併の目的はガバナンス強化」とまで(メディアに対して)経営トップが言い切るというのは驚きです。旧ビッグモーターによる保険金の不正請求問題や企業保険のカルテル事件、個人情報の持ち出しなど、不祥事が頻出した損保業界の切実さが窺がわれます。
不祥事が発覚した場合、実効性のある再発防止策を検討することも大事ですが、企業の存続にもかかわるような問題に発展するリスクについても検討しておく必要がありそうですね。
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コメント
山口先生へ
おはようございます
サンダースです。
衆議院の消費者問題特別委員会での「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」の参考人意見陳述が行われたことは知りませんでした。まだまだ全部は視聴できておりませんが胸が一杯になってしまいました。貴重な情報をありがとうございました。
投稿: サンダース | 2025年4月23日 (水) 03時47分
2023年のフジメディアホールディングスの株主総会で当時の会長・社長の賛成率は57~58%(2024年は72~83%)と、もともと賛成率が低い会社でしたが…
その時より今年の株主構成は賛成票を期待しづらい、もしくは議決権行使を期待できないことが想定され、かつ外国人株主が32%から20.94%まで減った(ほふりウェブサイトより)ことで従来は外国人株主の議決権行使規制で議決権を一部行使できなかった海外籍のアクティビストがほぼ全株分の議決権の行使ができることに…
ダルトンの株主提案への会社側の対応を見ると票読みが相当厳しいのがひしひしと伝わってきます
投稿: ty | 2025年4月23日 (水) 10時39分
山口先生
いつも貴重で重要なご意見、情報等、拝読させていただいております。
「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」の参考人意見陳述のyoutube視聴します。
フジHDの件、今度の株主総会で株主提案も出ており、どのように取締役が選任されるか非常に興味があります。また、選任に関して監査等委員会の意見陳述の有無も気になるところです。株主提案があることは会社選任に異議があるわけで、3月31日のフジHD株主提案も予測した対応ではなかったと考えます。
三井住友海上とあいおいの合併の目的については、先生のご指摘のとおり、驚きです。逆を言えば「合併しないとガバナンスの強化ができない」宣言です。MS&AD社の内部統制システムが機能していないことの宣言とも受け止めたくなる発言です。それとも是正処置が2社の合併なのでしょうか?「2線、3線が2社体制のために分散しているのはとても非効率です。また、営業部門である1線との距離を近づける」との代表のご意見ですが、1線の営業にも内部統制システムは構築されているはずですが(自己監査)。日本を代表する会社でも「絵にかいた餅」なのでしょうか?
投稿: コンプライアンスの番人 | 2025年4月23日 (水) 10時49分
寄る年波で、CIA資格の更新も止めた身からの愚痴です。企業のガバナンス機関構造について、取締役協会からも提言がされていますが、取締役会の変革なくして、内部監査機能の強化はできませんね。人の問題もあります。茨木のり子さんの「寄りかからず」を体現する人材が求められます!
投稿: Qちゃん | 2025年4月24日 (木) 11時32分