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2025年6月11日 (水)

最近の公益通報関連の事件について(具体的事例)

おそらく今年後半の法律雑誌の特集も「改正公益通報者保護法」に関連するものがたくさん出てくると思うのですが、改正法の理解と並ぶほど重要なのが具体的事例のご紹介です。近時に事例紹介、みたいな論稿も、特集記事の中にあればいいなぁと思います。

兵庫県の内部告発文書問題では、公益通報対応体制整備義務が1号通報だけでなく、2号通報や3号通報にも適用される、という消費者庁の公式見解や第三者委員会の見解が話題になりました。経営者が監督官庁やマスコミへの(誰かによる)情報提供の事実を知ることが多いわけでして、そこで通報者探しが行われる、という事態にも遭遇します。

粉飾疑惑に揺れるオルツ社では、YouTube動画で著名な株主のもとへ社内情報が提供されて、証券取引等監視委員会の強制調査に至りました。上場前から粉飾決算が行われていたのではないか、との疑惑がありますが、最近はSNSを活用した外部への情報提供が多いですね。先日ご紹介したいわき信用組合の巨額不正融資事件もX(旧Twitter)への元信用組合職員による情報提供です。消費者庁のアンケートでも、20代、30代社員の多くは内部通報はせずに、正義感からSNSで拡散します、と回答した方が多いです。

広島県の災害復旧工事における補助金不正受給については、4年ほど前に職員が内部通報をしましたが、十分に調査もなされずに放置されていました。ここから先は推測ですが、おそらく(最近になって)中国新聞社に社員が外部公益通報を行い、世間が知るところとなり、広島県としても虚偽公文書作成の事実を認めざるを得なくなった、とのこと。なぜ広島県がきちんと内部通報に向き合わなかったのか、そこは明らかにすべきでしょうね。

和歌山県のハラスメント案件では、是正措置があまりにもまずかったために通報者保護が図られず、その結果として最悪の事態を招きました。つい最近、第三者委員会の報告書が出ましたが、公益通報への対応の拙さを指摘しています。その他、ここではご紹介しませんが、近時公表されているいくつかの調査委員会報告書でも、内部通報や外部公益通報が端緒となって不正が明るみになった事例に遭遇しました。

すべての事件に共通することは、対応しなければならない立場の人たち(ある事件は経営者、またある事件は窓口担当者やコンプライアンス室長)が「有事対応」が求められているにもかかわらず、「平時対応」しかなしえなかった、という点です。どうしても「平時対応でよい」と自分を安心させる(自分に言い聞かせる)理由ばかり探すのですよね。正常性バイアスは本当におそろしい。この平時バイアス、正常性バイアスをどう断ち切ることができるか・・・、リスクマネジメントを担当している方々にとって重要なポイントです。

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コメント

2025年8月14日付の毎日新聞報道によれば、「大川原化工機事件」において、起訴前に複数の警部補クラスの警察官が上層部に対し、良心に基づき重大な問題点を内部通報していたにもかかわらず、その声は握りつぶされ、証拠の廃棄やもみ消しが行われた疑いが浮かび上がっています。
この事案は、現行の公益通報者保護法が「通報を守る」だけでなく、「通報を活かす」仕組みを欠いていることを如実に示しています。
現行制度では、
•通報を受けた組織が調査や是正を行う義務の実効性が弱い
•通報が握りつぶされることを防ぐ独立ルートが脆弱
•捜査機関内部の通報制度が十分に整備されていない
といった問題があることが記事から読み取れます。
今後、次のような制度強化が議論されるべきではないでしょうか。
1.調査・是正義務の強化と外部検証制度の導入
2.独立した外部通報窓口の常設(司法・警察内にも設置)
3.不利益取扱いの厳格な禁止と違反時の制裁強化
4.証拠保全義務の明文化と刑事罰化
◼︎今回、公益通報を行った複数の警察官は、職務倫理と市民の安全を守るため、組織内の圧力やリスクを承知で勇気ある行動を取りました。
このような人達こそ「真の警察官」であり、国民は賞賛の声を上げるべきです。
さらに、行政府を担当している国家議員や立法府を構成している国会議員に対し、こうした人材を警視や警視長など警察組織における管理監督者の立場に抜擢し、組織の立て直しを担わせるよう求めることは、今を生きる私たちの権利であり未来の世代のための責務でもあります。
公益通報者を守り、活かし、評価することができる社会こそ健全です。
更なる制度改正と国民的意思表示の両輪で、二度とこうした事案を繰り返さない仕組みを築く必要があります。

投稿: たか | 2025年8月14日 (木) 20時22分

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