投資家が監査役会(監査等委員会)の活動開示として期待すること
先日、いわき信用組合の不適切融資案件について「不正を黙認していた者が監査役に就任していた」と書きましたが、たまたま本日読んでいたカナデビア(旧日立造船)社の船舶エンジンのデータ偽装に関する特別調査委員会報告書(2025年3月25日)でも、データ不正を認識していた役員が常勤監査役に就任していた、との記述に触れました。これでは監査役員が不正防止になんらの役割も果たせないわけで、そもそも監査役員の社内における地位が低いのではないか(監査が軽んじられているのではないか)との疑念を抱いてしまいます。
さて、記述情報の開示の好事例集2024 金融庁 2025年2月3日公表「有価証券報告書のコーポレート・ガバナンスの状況等ほかの開示例」(7.「監査の状況」の開示例)では、以下のような投資家が開示を期待している監査役会活動についての記述があります。
投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント:監査の状況として、
①重点監査項目を列挙することも有用だが、重点監査項目に対する監査結果や監査役会等の認識を記載することはより有用②監査役監査や内部監査体制の強化のために行っている取組みや、監査人の評価について具体的に開示することは有用
③監査の状況では、監査上の主要な検討事項(KAM)の記載に特に注目しているため、会計上の主要な論点が何か、KAMについての監査役等の検討内容等について具体的に開示することは有用
私個人としては、この②に関する内容はぜひ開示していただきたい。監査役会(監査等委員会)が主体的に活動していることがとても重要と思います。前にも書きましたが、監査役の活動状況に虚偽記載があったとして課徴金の対象になった事例もありましたので、ぜひ制度開示の対象にしてほしいです。もちろん好事例集にあるように、開示に積極的な上場会社もありますが、同業他社の比較ができるように、ぜひ全ての上場会社が「監査役会(監査等委員会)の活動状況」として上記記述内容を開示対象にしてほしいですね。社内で監査役会の地位を向上させようとしても限界がありますので、ぜひ外圧を活用して監査役員の地位を向上させてほしいものです。
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