海外投資家はなぜ、日本に投資するのか-新刊書のご紹介
さて、5月に委員長を務めさせていただいたAGP社のガバナンス検証委員会で、委員をご一緒したワイズマン廣田綾子氏の新刊のご著書「海外投資家はなぜ、日本に投資するのか」を拝読いたしました(ワイズマン廣田綾子著 日経プレミアシリーズ 2025年5月初版 本体1,000円)。帯書はフジメディアホールディングスの大株主であるダルトン・インベストメンツのジェイミー・ローゼンワルド氏によるもので「日本の読者が、世界基準の考え方を知るために最適な入門書である」とのこと。
海外機関投資家が日本の上場企業をどうみているか・・・といった解説書はたくさんありますが、ほとんどすべてが「アクティビストからみた日本企業」に焦点を当てたものです(おそらく、そのほうが売れるのでしょうね)。しかしワイズマン廣田綾子氏は、いわゆるバリュー投資家のアジア担当責任者という立場なので、最初から長期保有を目的とした投資家の目線で語っておられます。また、企業価値に関連する解説書はガバナンスとファイナンスの専門家が別々のテーマとして執筆されるケースが多いと思いますが、80年代の米国市場からの歴史を綴るなかで、ファイナンス(株式や債券)とガバナンス(とくに取締役会の在り方や会社と株主との関係)が密接に関連していることを認識させてくれます。
では、なぜ米国のバリュー投資家が日本に投資をするのか?もちろん、その理由は本書をお読みいただけば理解できると思いますが、私がもっとも関心の高いテーマとして印象に残ったのは「日本市場及び日本企業の非効率性」ですね。日本の労働文化(働き方改革、人的資本と言われていますが)や情報開示の姿勢がまだまだ発展途上であり、成長余力は未知数であるものの、正当な価値評価がなされていない、いわゆる非効率性が目立つ企業や市場ルール、その他クローニー主義的な因習が残存している、とのことです。先日、斎藤ジン氏の「世界秩序が変わるとき-新自由主義からのゲームチェンジ」にも感銘を受けましたが、米国で長年活躍されてきた日本人ならではの感覚(多くの失敗経験から知見を磨いてきた感性)はとても興味深いものであります。バフェット氏がなにゆえ日本の5大商社の株式を均等に大量保有したのか、その理由についても本書を読んで納得しました。
ガバナンス検証委員会の具体的な協議内容についてはお話しできませんが、さすが40年も米国のバリュー投資家として「切った張った」の世界で生き抜いてこられただけあって、組織の問題点を見抜く洞察力の鋭さには感服いたしました。また、報告書作成にあたっては、東芝やSBIホールディングスの社外取締役も経験されてきた廣田氏の見解も大いに参考にさせていただきましたし、結論についての自信も湧いてきました。
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