企業にリスク管理の資格制度導入(日本損害保険協会)
7月7日の日経ニュースによりますと、日本損害保険協会が、企業が抱えるリスクを把握し、適切に保険を手配する「リスクマネジャー」の育成に向けた資格制度を導入する方針を決めたそうです。企業内でリスク管理を手掛ける人が(当該資格を)取得することを想定する、とのこと。リスク管理には受容、回避、軽減、転嫁の4種類があると言われますが、このうち企業が「リスクを転嫁したい(保険をかけたい)」と考えるものに関する情報(もしくは傾向?)をリスクマネジャーから収集し、日本の損害保険制度の向上につなげるということが目的と思われます。
ところで企業統治改革が始まって12年が経過し、ようやく企業にも機関投資家にも「短期的利益よりも持続的成長を後押しする」という風潮が浸透してきたように思うのですが、そこで出てくるのが「良い失敗と悪い失敗をどう見分けるか」という素朴な疑問であります。悪い失敗とはいわゆる「不注意による経営ミス」であり、おそらく取締役の善管注意義務にも関わるところかと。いっぽうで良い失敗とは、たとえ損失が出たり、事業撤退を余儀なくされたとしても、そこから失敗の分析・反省をして、更なる失敗を繰り返す末に中長期的な事業の成功を収めるために必須の知恵を取得するための失敗です。まさに「健全なリスクテイク」です。
しかし、企業統治改革の深化が進む時代において、リスク管理の場面でどこまで良い失敗と悪い失敗は経営陣に意識されているのでしょうか?リスクマネジャー資格を創設することは良いと思うのですが、単に失敗の可能性が高いから、といってリスクを回避したり、転嫁して短期的な損失を防ぐことにマネジャーが注力していては、いつまで経っても「良い失敗」に基づく組織としての知見が涵養されず、中長期的な企業価値の向上は図れないものと思います。人事評価において敗者復活戦が公然と認められる風土、自分の頭で判断したことを堂々と表明できるような心理的安全性のある風土作りがリスクマネジャーに求められる仕事の第一歩のような気がします。