「引き算で考えるリスクマネジメント」について
ここのところ、二つの企業(いずれも上場会社)の品質不正事案の対応支援に関わっておりますが、気になっているのが管理部門へのリスペクトの欠如であります。二社とも、社長さんとの意見交換や説得を続けているものの、いずれも有事対応の方針がなかなか定まりません。私は有事だと認識していても、社長さんは「そんなに『たいしたこと』なの?」といった認識。日ごろから管理部門の意見にもう少し耳を傾けていたら、そもそもこんな状態になっていなかったのに・・・と思います。不謹慎ではありますが、実際に「炎上」してリスク→クライシスに移行してみないとご理解いただけないのではないか・・・とつぶやきそうになることもあります。
技術系出身、営業系出身、そして管理系出身いずれの社長さんも、リスクマネジメントの重要性は認識していらっしゃるのですが、「引き算」で考えることはされていないのではないか。つまり中長期の経営計画を達成するために、では5年後にこうなってほしい、と思うリスク管理の理想形はどのようなものか?不正を未然に防止する管理なのか、早期発見・早期是正型の管理なのか。ではその目標を達成するために、現時点で何が不足していて、何をすべきなのか。こういった引き算でリスクマネジメントを考えないと「リスク管理の失敗を許容できる組織」にはなりえないと考えています。
私がみていてリスク管理部門が生き生きとしている企業は、リスクマネジメントも逆算で考えるクセがついています。事業戦略の一環にリスク管理が組み込まれていて、では逆算して今年度はここまでリスク管理の実績を積み重ねよう、たとえば①リスクの優先順位の議論は?②どうやってリスクの顕在化を判断するか?③その顕在化したリスクにどう対応するか、といった議論を平時から行っています。このような議論が行われるからこそ、組織にリスク管理の知見が無形資産となって蓄積されていき、たとえ不幸にして不祥事が発生・発覚しても、公表するまでには至らない、監督官庁に報告しても大事には至らない、会計監査人にも財務インパクトへの影響や内部統制の有効性の説明で苦労しない、という結果に落ち着きます。
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コメント
いつも勉強させていただいております。
リスクマネジメントご指導等のご苦労、お察しします。
私事ですが、日立グループで定年まで与信限度、在庫限度、輸出管理等を行っていた管理部門でした。山口先生の記載のとおり、『たとえ不幸にして不祥事が発生・発覚しても、公表するまでには至らない、監督官庁に報告しても大事には至らない』リスク管理ができている組織でも何らかのリスク(他社事例含む)が発生しない限り、予防措置の評価というものは自画自賛するしかなかったように記憶しております。
投稿: コンプライアンスの番人 | 2025年7月17日 (木) 13時34分
おっしゃるとおりで、管理部門が称賛されるのは、何かコトが起きた時です。ただ自画自賛しようにも「運よくコトが起きた」などと言おうものならどこかの国会議員さんのように批判を浴びるので、これまた要注意です。
ということで、リスクマネジメントの無形資産化が進まない要因をどう解消していくかが課題だと思っております。
投稿: toshi | 2025年7月17日 (木) 14時32分