ニデック会計不正疑惑が醸し出す「内部統制の質的課題と量的課題」(訂正あり)
当職が担当している調査委員会の作業が本格化しているため、なかなかブログの更新ができない状況ではありますが、気になっているニデック社の会計不正疑惑について一言だけ。
9月26日、会計不正疑惑で揺れるニデック社は、公表を延期していた2025年3月期の有価証券報告書を提出するとともに、同期の連結決算を訂正しました。これに伴い、同社の会計監査人であるPwCジャパンは「十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった」として適正かどうかの意見を「不表明」としたことが話題になっています(なお、開示資料によると、またまた別の不正疑惑が発覚したようです)。
私個人としては、9月17日の日経電子版日経ビジネス記事でコメントさせていただいたように、このたびの会計不正事件について、同社の持続的成長に向けてポジティブに捉えておりまして、ニデック本体やグループ会社の経営陣の関与が疑われる(もしくは不正を認識していたと疑われる)不正に関する第三者委員会の調査が継続している状況では、さすがに会計監査人も「意見を表明できない」と判断せざるを得ないのではないかなと感じております。ただ、そうは言っても財務報告内部統制の状況としては、社内的にかなりマズい状況であることが開示された点については、同社の今後の対応にもそれなりに工夫が必要ではないかと。
まず「内部統制の質的課題」ですが、経営陣が関与していた、もしくは認識していた不適切会計処理(具体的には「子会社の購買一時金やリスク資産の評価時期の恣意的な調整など」ですが)は単純な内部統制の不備ではなく、内部統制の無効化が認められる可能性があるということ。とくにニデック本体の経営陣の関与が疑われるということになると、グループ会社全体の財務報告内部統制の信頼性にも影響が及ぶはずです。依拠すべき内部統制が経営陣によって無視・無効化されていたということですから、かなり悪質であり、おそらく「ガバナンスの再構築」まで示されなければ会計監査人も納得できないのではないでしょうか。つまり、今回の件でニデックのガバナンスがどのように変わるのか・・・ということに関心が向きます。
つぎに「内部統制の量的課題」ですが、ニデック本体の経営陣の関与もしくは認識が問題とされているのであれば、不正がどの範囲にまで及んでいるのか、J-SOXの結果を活用して限定することが困難な状況にある、ということでしょう。当然のことながら日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会としては、類似案件調査を厳格に行うことになりますから、(日経電子版ビジネス記事で述べたように)まだまだこれから(同種または類似の)会計不正疑惑が表面化する可能性はあると思います。※ただ、その一つ一つがニデック社の投資家の判断に影響を及ぼすほどの重大性があるかどうかは別ですが。
※・・・9月17日の記事の中で「ニデックに長く沈殿していた不正が徐々に表面化しているのではないか。追加で不正が見つかる可能性もある」とコメントいたしましたが、9月26日のリリースによると、やはり追加で別の疑惑が出てきました。
しかし「限定付き適正意見」ではなく「意見不表明」とされたインパクトは財務報告内部統制の視点からは無視できないですね。かつて東芝会計不正事件発生時、東芝は「意見不表明」とされましたが、その後なんとか「限定付き適正意見」をもらって事なきを得ました。このような前例からみて、ニデック経営陣がどこまでガバナンス改革に本気で踏み切るのか、責任者の厳罰で済ませるレベルの問題ではないために、そのあたりのニデック社の自浄作用の発揮状況が今後の注目点になるのではと推測しております。

