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2025年9月29日 (月)

ニデック会計不正疑惑が醸し出す「内部統制の質的課題と量的課題」(訂正あり)

当職が担当している調査委員会の作業が本格化しているため、なかなかブログの更新ができない状況ではありますが、気になっているニデック社の会計不正疑惑について一言だけ。

9月26日、会計不正疑惑で揺れるニデック社は、公表を延期していた2025年3月期の有価証券報告書を提出するとともに、同期の連結決算を訂正しました。これに伴い、同社の会計監査人であるPwCジャパンは「十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった」として適正かどうかの意見を「不表明」としたことが話題になっています(なお、開示資料によると、またまた別の不正疑惑が発覚したようです)。

私個人としては、9月17日の日経電子版日経ビジネス記事でコメントさせていただいたように、このたびの会計不正事件について、同社の持続的成長に向けてポジティブに捉えておりまして、ニデック本体やグループ会社の経営陣の関与が疑われる(もしくは不正を認識していたと疑われる)不正に関する第三者委員会の調査が継続している状況では、さすがに会計監査人も「意見を表明できない」と判断せざるを得ないのではないかなと感じております。ただ、そうは言っても財務報告内部統制の状況としては、社内的にかなりマズい状況であることが開示された点については、同社の今後の対応にもそれなりに工夫が必要ではないかと。

まず「内部統制の質的課題」ですが、経営陣が関与していた、もしくは認識していた不適切会計処理(具体的には「子会社の購買一時金やリスク資産の評価時期の恣意的な調整など」ですが)は単純な内部統制の不備ではなく、内部統制の無効化が認められる可能性があるということ。とくにニデック本体の経営陣の関与が疑われるということになると、グループ会社全体の財務報告内部統制の信頼性にも影響が及ぶはずです。依拠すべき内部統制が経営陣によって無視・無効化されていたということですから、かなり悪質であり、おそらく「ガバナンスの再構築」まで示されなければ会計監査人も納得できないのではないでしょうか。つまり、今回の件でニデックのガバナンスがどのように変わるのか・・・ということに関心が向きます。

つぎに「内部統制の量的課題」ですが、ニデック本体の経営陣の関与もしくは認識が問題とされているのであれば、不正がどの範囲にまで及んでいるのか、J-SOXの結果を活用して限定することが困難な状況にある、ということでしょう。当然のことながら日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会としては、類似案件調査を厳格に行うことになりますから、(日経電子版ビジネス記事で述べたように)まだまだこれから(同種または類似の)会計不正疑惑が表面化する可能性はあると思います。※ただ、その一つ一つがニデック社の投資家の判断に影響を及ぼすほどの重大性があるかどうかは別ですが。

※・・・9月17日の記事の中で「ニデックに長く沈殿していた不正が徐々に表面化しているのではないか。追加で不正が見つかる可能性もある」とコメントいたしましたが、9月26日のリリースによると、やはり追加で別の疑惑が出てきました。

しかし「限定付き適正意見」ではなく「意見不表明」とされたインパクトは財務報告内部統制の視点からは無視できないですね。かつて東芝会計不正事件発生時、東芝は「意見不表明」とされましたが、その後なんとか「限定付き適正意見」をもらって事なきを得ました。このような前例からみて、ニデック経営陣がどこまでガバナンス改革に本気で踏み切るのか、責任者の厳罰で済ませるレベルの問題ではないために、そのあたりのニデック社の自浄作用の発揮状況が今後の注目点になるのではと推測しております。

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2025年9月19日 (金)

ACFE年次カンファレンス(20周年記念)のお知らせ

Confa20250711 今年で設立20周年を迎えるACFE JAPAN(一般社団法人日本公認不正検査士協会)のカンファレンスが、今年もお茶の水ソラシティで開催されます(もちろん会員以外の方もお申込みいただけます)。プレカンファレンスは2025 年 10 月 1 日よりオンデマンドにて配信開始、そしてメインカンファレンスは10 月 16 日 10:00  17:20(会場開催 お茶の水ソラシティホール)となります。私も同協会の理事を務めていた頃、年次カンファレンスにはよく登壇させていただきました(なつかしい!)最近は公表される企業不祥事発生時の第三者委員会報告書にも、調査委員の肩書として「弁護士 公認不正検査士」と書くのも珍しくなくなりました。

こちらのプログラムをご覧いただければおわかりのとおり、プレカンファレンス、メインカンファレンスともに登壇者は豪華なのですが、個人的には結城弁護士と安達ゆり氏(前消費者庁 参事官【公益通報・協働担当】付 企画官/現 金融庁 監督局 大手銀行モニタリング参事官)による「法改正の担当官に聞く!『2025年 公益通報者保護法改正』のインパクト」が一番楽しみですね。ホント、今回の法改正は彼女の頑張り抜きには語れません。なお、彼女は古巣の金融庁に戻りましたが、「大手銀行モニタリング参事官」ということで、これまでは(公益通報者保護制度検討会委員として)心強い味方でしたが、これからは(主要銀行の取締役として)あまり顔も見たくない(?)脅威の相手方です(^▽^;)。たぶん彼女本人から公益通報者保護法の改正による企業実務への影響についてお話いただけるのは最後かと思います。ぜひご参加いただければ幸いです。

私とACFEJAPANとの接点を思い起こせば2007年、ACFEJAPAN(日本公認不正検査士協会)が法人化されて、キックオフミーティングが新橋第一ホテルアネックスで開催された時以来のお付き合いです(もうアネックスはなくなっちゃいましたね)。「大阪におもしろいブログを書いている弁護士がいるので、せっかくだから理事にしちゃおう」という(当時お会いしたこともない)八田進二先生の無謀なオファーに安易にのっちゃったのが始まりでした。

あの頃と比べると人的物的規模が大きくなりましたが、まだまだ「CFE」の社会的な影響力には物足りないところがあります。なぜCFEの社会的認知度がイマイチなのか、ぜひこのようなカンファレンスでも真摯に議論していただきたいと願うところです。私個人の意見としては、社会的なインフルエンサー達から「CFE」に関する大きな批判や冷ややかな揶揄を生むようなストーリー事象は不可欠であり、「それでもやっぱりCFEって企業社会で必要だよね」と認識していただける機会を創造する必要があると思います。公益通報者保護法だって、昨年の「あの事件」によって(肌感覚ですが)100倍くらい(もっとかな?)認知度が上がりましたよね。

 

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2025年9月16日 (火)

投資家と社外取締役・監査役員とのスモールミーティングは広がるか?

9月12日の日経ビジネス記事「三井化学、『社員排除』の前例なき投資家対話会 戸惑う社外取締役に託す」を読みました。三井化学は2023年に社外取締役と投資家20社以上とのスモールミーティングを開催し、さらには2024年には社外取締役が個別に国内機関投資家を訪問して面談に応じたことが報じられています。社外取締役からは「人使いが荒い」と言われたようなので、社内の経営陣が主導して社外取締役と投資家とのミーティングを提案しているようです。同社では、2022年からはESG説明会にも社外取締役が登壇するようになった、ということですから、他社を兼務している社外取締役の方々は本当にたいへんですね。

「好きなことを話していただいてかまいません」と社内取締役から言われて、社外取締役には戸惑いもあったようですが、石化事業が4割を占める同社のビジネスモデルをどう再構築すべきか、PBR(現在0.7倍)の向上に関する取締役会での審議状況、改革のスピードを上げるために何を議論しているか、過去のM&Aの失敗をどのように総括して次に生かそうとしているか等、かなり突っ込んだ質疑がなされているそうです。「好きに話してよい」と言い渡した社内取締役には相当の覚悟があったのでしょう。

私自身、5年ほど前から社外取締役として(当時は大東建託)毎年機関投資家と個人面談に応じていましたし(海外投資家の場合は同時通訳さんに入ってもらいます)、機関投資家側も「筆頭社外取締役との面談」ということで、きちんと社外取締役向けの話題を用意してくれていたのでかなり楽しい時間でした。これだけ攻めのガバナンスが謳われる時代となり、「社外取締役は株主の代理人」との認識が浸透してきたのですから、もっと多くの(とりわけ東証プライムの)企業でスモールミーティングや個別面談を提案すべきと考えます。事業ポートフォリオ変革を社外取締役から語ってもらうことで、資本コストが下がる可能性もあると思います。

なお、私個人としては社外取締役と投資家との面談もさることながら、社外監査役や常勤監査役、監査等委員等の監査役員と投資家との面談やスモールミーティングも有益だと考えます。その会社がどれほど監査をリスペクトしているかがわかりますし、監査役会や監査等委員会がどれほど(違法性監査だけでなく)「妥当性監査」にも踏み込んでいるかが理解できるからです。近時、「内部統制は貴重な無形資産」と述べる投資家も増えていますが、当該無形資産の相当性を審査(評価)する責任は監査役員にあります。どれほど真摯に審査(評価)しているか、という点は報告書の「金太郎飴の説明」を読むよりもよっぽど面談で理解する方が正確だと思います。

ところで、以下の文章は「社外取締役と機関投資家とのエンゲージメント」のテーマを弁護士山口利昭の「ビジネス法務の部屋」ブログ風に・・・というプロンプトでchatGPTが瞬時に作成してくれたコメントです。当職のブログもAIで作ってしまう時代になりそうで少し怖いです。

コメント(ブログ風)

コーポレートガバナンス改革の浸透に伴い、社外取締役に求められる役割は「形式的な独立性の確保」から「企業価値向上に資する積極的な行動」へと移行しています。その中で特に重要となるのが、社外取締役と機関投資家とのエンゲージメントです。

第一に、社外取締役は経営陣と株主との橋渡し役として機能する必要があります。経営側から提供される情報に依存するだけでは、真に独立したモニタリングは困難です。機関投資家との対話を通じて外部の視点や懸念を吸収し、取締役会の議論に反映させることで、実効性あるガバナンスを実現できます。

第二に、エンゲージメントはリスク対応の観点からも有効です。企業不祥事や経営危機の場面では、株主に対する説明責任が厳しく問われます。社外取締役が自ら投資家とコミュニケーションを行うことで、経営の透明性を担保し、企業への信頼回復を早期に実現する可能性が高まります。

第三に、近年のスチュワードシップ・コード改訂では、機関投資家側にも対話の質を高める責務が課されています。つまり、社外取締役が主体的に関与することで、企業と投資家の「協働」が現実のものとなり、中長期的な企業価値の最大化につながります。

したがって、企業は社外取締役に対し、投資家との対話の機会を制度的に用意することが望まれます。具体的には、株主総会前後のラウンドテーブルや定期的なスチュワードシップ・ミーティングに社外取締役が出席する仕組みを導入することが考えられます。

 

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2025年9月11日 (木)

会社法改正で実現するか-事業報告等と有価証券報告書の一本化

経営財務の最新号(3718号)記事によりますと、法務省は8月27日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第5回会議を開催、「総会前開示の進展を踏まえた規律の見直し」では、事業報告等と有価証券報告書の開示事項の相違点についての対応や“一本化”の必要性などを議論している、とのこと。いよいよ「金商法と会社法の垣根を超えた問題」に真正面から光が当たることになるのですね。

コロナ禍において、私は(会計監査人監査、監査役等監査の実効性確保のために)「7月総会」や「8月総会」を強く推奨したことから、学者の先生方や実務担当者の方々からたくさんのご異論、ご批判をいただき、なるほど現状では総会の後ろ倒しは難しいという意見に(従業員の人権尊重という視点から)納得いたしました。ということで、有報の総会前開示を実現するためには会社法を改正して約4500社の有価証券報告書提出会社については有報の財務諸表等をもって会社法の計算書類等に一部代えること(具体的には連結財務諸表と連結計算書類のみ)を認める時期に来ているのではないかと感じております。

海外でも、金商法と会社法で2つの書類を作成しなければならないとする先進国はほとんど存在しないですし、有価証券報告書を総会前に開示して監査を総会までに終えることができれば、二つの会計書類の作成を認める必要性は乏しいと思います(ただし、私は「虚偽記載」の責任については現状の金商法上の開示責任を採用すべきと考えます)。

もちろん「有報の簡略化は不要か、簡略化を否定するとして、どの範囲で一本化すべきか」「有報の監査については会計監査のみとするか」「財務報告内部統制の監査意見は会計監査人のみでよいか(監査役監査も必要か)」等、実務的負担を低減すべき課題、法制度上の課題等を乗り越える必要はありますが、このたびの会社法制部会で真剣に有価証券報告書の総会前開示、有報と計算書類等の一本化が検討されているとのことで、「会社法と金商法の交錯点の課題のひとつ」が解決することに期待をしております。

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2025年9月 9日 (火)

㊗タイガース優勝パレード-進むも地獄、退くも地獄?

9月8日付け日経ビジネス記事によりますと、情報セキュリティーの実務担当者や経営者ら1200人を対象とした調査において、過去5年以内に営業秘密の漏洩事例を認識した割合は35.5%に上り、5年前の同調査による認識割合と比較すると7倍にも増えたそうです。不正競争防止法違反には原則行政処分がないので、営業秘密を守る側も自己責任(刑事告訴や損害賠償請求等)で秘密を守らないといけないことは肝に銘じておきたいところです(以下本題です)。

さて、遅ればせながら阪神タイガース、ペナントレース優勝おめでとうございます。もちろん、地元の首長である兵庫県知事から速攻で祝福コメントが発表されています(こちらの神戸新聞ニュースのとおり)が、なんといってもセリーグ優勝となれば、お楽しみは「優勝パレード」ですね。

大阪府知事はぜひ今回も優勝パレードをやりたい!とおっしゃっていますが(たとえばこちらの産経新聞ニュース)、そうなると2年前と同じく兵庫県でも時間差で開催されるのでしょうかね?株式会社阪神タイガースの本社所在地は兵庫県西宮市、つまりお膝元の兵庫県ですから開催されるのかもしれませんが、一昨年のパレードの費用支出については(兵庫県知事の背任に関する告訴受理により)検察庁が審議している最中なので、兵庫県知事としては諸事情により(?)開催しないのかもしれません。

優勝パレードについては、開催しても、開催しなくても、いずれにしても「兵庫県知事告発文書問題」を県民に想起させてしまう導火線になってしまうので、兵庫県知事としては複雑な心境ではないでしょうか。ただ県民の皆様は(震災30年の節目の年における明るい話題なので)三ノ宮でパレードやってほしいですよね。

ちなみに8日の神戸新聞ニュースによりますと

神戸商工会議所の川崎博也会頭(神戸製鋼所特任顧問)は8日の会見で、セ・リーグ優勝を果たしたプロ野球・阪神タイガースのパレード実施について「神戸商工会議所として『やろう』という申し入れはしない。どなたかがやりたいと言えば考えさせてもらう」と慎重な姿勢を示した

とのこと。いまのところ、誰もが率先して語りたがらない話題ですね。

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2025年9月 4日 (木)

令和7年改正公益通報者保護法の施行前に留意しておくべき企業集団内部統制

サントリーHD元会長の違法サプリメント疑惑やニデック経営陣の関与が疑われる会計不正事案など、また話題となりそうな不祥事が報道されています。いろいろブログで意見を述べたいのですが、諸事情ございまして(?)、取材に応じることもなく静観をしております。

さて、来年に施行が予定されている令和7年改正公益通報者保護法ですが、このところ多くの企業にお邪魔して「当該改正法が企業実務に及ぼす影響」について講演をさせていただいております。そして、本当にご質問が多い事項として真っ先に挙げられる項目が「グループ会社における公益通報対応体制整備義務」ですね。以下は、私の個人的な意見として書かせていただきます。

おそらく真剣に実務対応について検討している企業ほど企業集団としての内部統制(親会社側の公益通報対応およびグループ会社側の対応)について悩むことが多いと思いますし、これまであまり検討されてこなかった法律上の課題です。

そもそも「グループ内部通報制度」は、親会社から見ればソフトローの世界(法定指針の解説や経産省グループガバナンス・ガイドライン、ビジネスと人権に関するガイドライン、東証のガバナンス・コードなど)の話であり「企業集団内部統制を実践するうえでのベストプラクティス」を実践するか否か、という問題です。つまり広い裁量権を持つ経営判断の問題であり「(親会社役員の)善管注意義務違反」という概念があまり入る余地はありません(もちろん、グループ内部通報制度の存在を前提とした「イビデン最高裁判決」のように、「信義則上の義務」が法人としての親会社に発生するケースもありますが、ごく例外的な事例です)。

しかし「グループ内部通報制度」をグループ会社側からみればハードローの世界(公益通報者保護法対応)の話であり、仮にグループ内部通報制度が定められていて、親会社だけにグループ共通の内部通報窓口が設置されているケースでは、グループ会社(常用雇用者300名超)には(公益通報への)対応体制整備義務が重要な(法による強制力のある)内部統制の一環として要求されます。たとえばグループ会社自身の責任者を決定しなければならず、また、当該グループ会社の不正事実が親会社に通報されるケースを想定した場合、親会社の社員に対してグループ会社責任者から「対応業務従事者」を指定しなければなりません(つまりグループ会社社員が親会社社員に命令を下すことになります)。

とくに令和7年改正法では、対応業務従事者の指定義務違反には行政処分や刑事罰が科されることになりますので、グループ内部通報制度を運用しているグループ企業の場合、親会社の社員にとってはそれほど重い課題ではなくても、グループ会社社員にとっては重大問題が生じることになります(このあたりの課題は、これまであまり意識されてこなかったのでは?)。この「重大問題」は、令和7年改正法施行後は、通報を行ったグループ会社の社員自身が、「指定義務違反行為」だけを取り上げてさらに公益通報として2号通報、3号通報ができる、という点からみても「重大性」がおわかりになるかと。

さらには「対応体制」というのは「窓口対応」だけでなく、調査業務や是正措置も含む概念なので、たとえば親会社にグループ会社社員から公益通報がなされた場合、当該通報事実の調査や是正措置をグループ会社に任せるとなると、令和7年改正法が(法文上で)範囲外共有や通報者探索の禁止、通報妨害の禁止などを定めているので、果たしてどのように通報事実を調査し、是正措置を執って良いのか、かなり悩むケースも増えると思います。また、グループ会社の通報者(グループ会社社員)が本気になれば、親会社を含めた「公益通報対応体制整備義務」の違反を指摘できる機会が増えることになります(たとえば情報の範囲外共有違反、通報者探索禁止違反、通報妨害禁止違反を根拠に、親会社やグループ会社に「違反者の処分を要求する」等)。またグループ会社側としても濫用的通報に該当するかどうかの判断にも困難が生じることもあるでしょうね。

企業が自浄作用を発揮して、グループ全体の信用を守るためにはグループ内部通報制度を導入することをお勧めしますが、その際にはグループ内部通報指針(規程)の策定、グループ企業と親会社との合意書の作成等を通じて、グループ会社の役職員に過度な負担となるような運用を避ける対策が必要だと考えています。

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2025年9月 1日 (月)

企業のイノベーションを蝕む「コンプライアンス経営」?

8月29日(金)のNHKプロジェクトXは「QRコード誕生-夢路に咲いた世界標準」というタイトルで、デンソーの研究員、トヨタ研究所員によるQRコード開発からISOに世界標準登録されるまでの激動の2年間(1992年から1994年)の軌跡を辿るものでした。研究者たちの凄まじいほどの開発への熱意には今更ながら敬服いたします。トヨタの研究者の方は、交際中の彼女に「このプロジェクトが成功するまで結婚は待ってほしい」と懇願して、彼女もこれを受け入れていたということでしたが、うーーーん、こちらも30年前と今とでは事情が異なるのではないかと思ったりもしておりました。

QRコードの開発と世界標準に向けたサクセスストーリーとして感動しておりましたが、連日深夜に及ぶ研究活動が、果たして「働き方改革」が浸透している現時点の日本企業においてもなしうるものなのかどうか。一つ間違えると労働基準法違反として経営者や法人が刑事罰の対象となってしまう時代に、コンプライアンス経営に目をつぶってでも研究活動に没頭する研究者たちに好きなように仕事をさせる余裕が今の日本企業にあるのか、少し考え込んでしまいました。そもそも現時点でも、生成AIに解析してもらうデータ自体をひとつひとつ手作業で結果を出さないといけない(あえて何度も失敗を繰り返さないといけない)わけですから、おそらくAIに問題解決方法を提案してもらうわけにもいかないと思います。

そういえば当ブログでも過去に小野薬品の事例をご紹介したエントリー(2018年10月29日付け-小野薬品のめざましい業績の陰にコンプライアンス問題?)でも、ストーリー自体は美談ではありますが、研究者の行動はコンプライアンス違反ではないか・・・という疑問が残りました(当時、このエントリーはニュースでも取り上げられましたね)。まさに「コンプライアンスでは飯は食えない」ということで、いろいろと考えさせられましたが、今の時代、企業のイノベーションはどっかでコンプライアンス経営と折り合いをつけなければ実現しないのではないかと。このあたり、メーカーの研究開発に携わっておられる方は労務コンプライアンスをどう考えながらお仕事をされているのか、お聞きしたいところです。

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