« オルツの常勤監査役が「引き返すべき黄金の道」は3本あった | トップページ | 「企業不祥事防止に向けたガバナンス構築」というフレーズはもう古い? »

2025年10月21日 (火)

青森テレビ社長のパワハラ辞任問題に思う「パワハラ認定の世代間ギャップ」

最近よく聞く経営トップの「パワハラ認定⇒即刻辞任」問題ですが、10月20日の青森テレビのリリースによりますと、外部の弁護士をトップとする調査チームが同社の社長さんの言動をパワーハラスメントにあたると認定し、同氏が同日付で辞任した、とのこと(リリースはこちらですね)。社長さんご本人としては、納得できない認定もあるそうです。

多くのメディアで「今年6月に匿名の告発が明らかとなった」と報じられていますが、こちらの青森放送ニュースによりますと、社長が従業員に対して暴言や机をたたくなどの行為があったなどと指摘する告発文が労働組合の組合ニュースに掲載されたとする内容が週刊文春で報じられたとあります。ハラスメント事実も公益通報だとすると、いわゆる典型的な3号通報が労働組合に届き、組合ニュース(掲示板?)に掲載されたことで「明らかになった」ということなのでしょうね。

3号通報の存在が社内で明らかになった場合にも、事業者は公益通報対応体制整備義務を尽くす必要がありますので、このたびの青森テレビのように(経営陣の不正に関する事実の場合には)独立機関が調査を行い、不正事実が認定された場合には独立性を確保して是正措置を検討することになります。本件では外部第三者を含む4名の調査機関のパワハラ認定が重要です。

私もときどき経営トップのパワハラ調査に関わりますが、パワハラやセクハラの該当性については世代間ギャップが著しい、という点は、とくに50代以上の方々には認識していただきたい。中年男性(高齢者含む)の若い女性社員へのセクハラと同様、中年女性幹部の若い男性社員へのセクハラもエグかった記憶があります。「これくらいコミュニケーション手段としてあたりまえでしょ!」といった感覚は男女問わず世代間ギャップを感じます。かくいう私も(調査委員会内での会議で)「社長には申し訳ないが『厳重注意』という懲戒処分を提言せざるを得ないね」と言うと、他の40代以下の調査委員達からは「それは甘すぎです。一発アウトですよ」「最近の裁判例を山口先生はご存じないのですか?」と言われ、恥ずかしい思いをしたこともあります。

最近「ハラスメント認定は行き過ぎではないか」と指摘されることもありますが、それは誰の感覚を基本として「行き過ぎ」と指摘しているのか考えてみる必要があります。モノサシは裁判例だけでなく、各企業の「●●社の役員としての品位を害する行為」(役員行動規範)も含まれるわけで、社内処分の前提となる「品位を害する行為」かどうかは、御社の全ての社員を念頭に検討する必要があります。そこで、経営幹部の皆様には、とくにパワハラやセクハラの該当性に関する世代間ギャップが存在することを前提として、日頃の行いに留意すべきですね。

なお、音声データや録画など、スマホさえあればすぐに証拠が保全される時代、ホントにハラスメント認定は容易になりました。上記青森テレビの事件を伝える今年9月17日付け「文春電子版」の記事によりますと、告発文には「音声データ付き」と記載されていて、文春もこの「音声データ」を入手した、とあります。文春が記事化したのも、(法的問題になっても免責されるように)このようなデータを確認しているからですね。

|

« オルツの常勤監査役が「引き返すべき黄金の道」は3本あった | トップページ | 「企業不祥事防止に向けたガバナンス構築」というフレーズはもう古い? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« オルツの常勤監査役が「引き返すべき黄金の道」は3本あった | トップページ | 「企業不祥事防止に向けたガバナンス構築」というフレーズはもう古い? »