« 青森テレビ社長のパワハラ辞任問題に思う「パワハラ認定の世代間ギャップ」 | トップページ | (続)「ちゃん付けメール」はレッドカードか?(イマドキのセクハラ・パワハラ判断) »

2025年10月23日 (木)

「企業不祥事防止に向けたガバナンス構築」というフレーズはもう古い?

先日の青森テレビに続き、10月22日の報道によると第一生命傘下のベネフィット・ワン社の社長さんがハラスメント認定で辞任をされるそうです(共同通信ニュースはこちらです)。7月に相談があり(たぶん内部通報)、外部弁護士による調査の上、ハラスメントが認定された、とのこと(懇親会席上でのハラスメント)。さらに福井県知事のセクハラ疑惑については、内部通報に基づいて外部有識者による調査委員会が設置され、類似案件アンケートを含めて現在調査中と報じられています。トップのセクハラ・パワハラ一発辞任の風潮は高まっており、その分外部有識者によるハラスメント調査の重要性が増しておりますね。

さて、5年ぶりのコーポレートガバナンス・コードの改訂に向けた金融庁の有識者会議が久しぶりに開催されましたが、ずいぶんとメンバーが変わったのですね。法曹関係者となるとご高名な法学者おひとり(神作先生)と弁護士おひとり(武井一浩先生)のみで、他のメンバーは市場関係者の皆様、経営者や経済団体の皆様、そして経営学で著名な学者先生の方々で構成されています。日本監査役協会を代表する方もいらっしゃいません。2010年頃まではガバナンスといえば「守りのガバナンス」主流であり、いわゆる企業不祥事防止のための体制構築がメインの課題でしたが、最近は「投資家目線での攻めのガバナンス」「資本効率を意識した経営のためのガバナンス」こそ金融庁アクションプログラム2025の課題ということで、これに対応するメンバー選定ということなのでしょう。

たとえば監査役・内部監査制度に関連した前回の改訂(2021年)の項目としては、⑴監査役及び監査役会は、監査役の選解任等に係る権限の行使などにあたって、適切な判断を行うべし(原則4-4)、⑵取締役会及び監査役会の機能発揮に向け、内部監査部門がこれらに対して直接報告を行う仕組みを構築する等、内部監査部門と取締役・監査役との連携を確保すべき(補充原則4-13③)、⑶合理的な範囲で、経営陣幹部、社外取締役を含む取締役または監査役が株主との対話を行うことを基本とすべき(補充原則5-1①)等があります。しかし、これらの項目は各上場企業が「実施している」と宣言しているとしても、実質は実施していない(あるいは形骸化している)企業が大半ではないでしょうか。このたびの改訂で、あまり守りのガバナンスに光が当たらないのも、こういった項目改訂によって実務が何ら変わった様子がないことが要因ではないかと。

「攻めのガバナンス」のウチ手は大当たりで日経平均5万円に届くような効果は誰の目にも明らかです。よって、限りある人的資源を攻めのガバナンス構築に投下するのも当然かもしれません。社会を揺るがすような企業不祥事が発覚するたびに、マスコミでは「ガバナンスの機能不全が明らかとなった」と書かれますが、ガバナンス改革の方向性が全く異なるわけですから、そのうち「死語」になってしまうのかもしれませんね。やや悔しい思いですが。

 

|

« 青森テレビ社長のパワハラ辞任問題に思う「パワハラ認定の世代間ギャップ」 | トップページ | (続)「ちゃん付けメール」はレッドカードか?(イマドキのセクハラ・パワハラ判断) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 青森テレビ社長のパワハラ辞任問題に思う「パワハラ認定の世代間ギャップ」 | トップページ | (続)「ちゃん付けメール」はレッドカードか?(イマドキのセクハラ・パワハラ判断) »