(続)「ちゃん付けメール」はレッドカードか?(イマドキのセクハラ・パワハラ判断)
10月23日の毎日新聞ニュースによりますと、年上の同僚男性からセクシュアルハラスメントを受けたとして佐川急便の元従業員の女性が、約550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は23日、男性に22万円の賠償を命じたそうです。東京地裁の裁判官は、男性が女性を「ちゃん付け」で呼んだことや、体形などに関する発言が違法なハラスメントに該当すると判断した、とのこと。
当ブログの過去における人気エントリーのひとつに2010年8月12日付け「ちゃん付けメールはレッドカードか?」がございまして、約15年前、私は「ちゃん付けメールはかぎりなくレッドカードに近い」との意見を述べておりました。今回は15年経過しての続編ですが、メールではなく、職場での発言が問題となっておりまして、裁判上でも「レッドカード」に近い判断が示されております。
ただ、注意しておきたいのは、15年前のエントリーでも書きましたが、単純に「ちゃん付けメール」自体でセクハラ認定されたのではなく、他の言動との「合わせ技」でハラスメント認定されたのではないかと推測されます(判決文を読んだわけではないのであくまでも推測ですが、メディアの報じ方は「ちゃん付け」だけでアウトのようにも読めますが、そうではないような気がします)。恋愛関係にないにもかかわらず、男性同僚が、原告女性に対して疑似恋愛を想起させるような言動があれば、それは女性に対する明らかな人権侵害ですよね。ちゃん付けの呼称はその重要な要素の一つとして認定されたのではないでしょうか。
なお、東京新聞ニュースの記事では「裁判官は、ちゃん付けは幼い子どもに向けたもので、業務で用いる必要はない」と判示したようですが、ちょっと本旨(本件のポイント)からハズレていませんかね?私は、女性が精神的に不調となり退職を余儀なくされた最大の原因は、男性同僚によって疑似恋愛を強要された(一方的に男女の距離感を縮められてしまった)ところにあったのでは?と想像します。
したがって、女性の上司が男性の部下に対して「〇〇ちゃん、これお願い!」と指示するケースは、上記裁判官の理屈だとハラスメント認定されそうですが、私は少し風景が違うと思います(これは男性部下に疑似恋愛を想起させるような場面とは異なります)。裁判でハラスメント認定されるためには、被害者の主観的感情とともに、行為の客観的な評価が必要となりますが、私自身は一般人の判断としても男性同僚の女性社員への「ちゃん付け呼称」は禁句だと考えますが、いかがでしょうか。
※ 日経電子版2019年12月4日日経スタイル・コラム「なぜ私を『ちゃん』付けしたの 女と男の敬称お作法」を読むと、私の上記見解があながち間違いではないことがお分かりいただけるのではないかと思います。日経の有料会員の方はぜひご一読を。
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