コーポレートガバナンス・コード”Comply or Explain”の意味を今一度考える
1月26日の日経ビジネス記事「改訂ガバナンス指針は単なるルール変更にあらず、経営者に説明能力を問う」を読みました。松田千恵子先生はコーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議のメンバーでもいらっしゃいますし、「今回のコーポレートガバナンス・コード改訂における最大のポイントは、コードのスリム化・プリンシプル(原則)化です。」「企業が成長ストーリーをどのように説明できるかが重要」「今回の改訂は単なるルール変更ではない」とのご意見は今後の実務家の対応においても心しておきたいところです。
さて、ガバナンス・コードがスリム化・プリンシプル化されるとなると、あらためて”Comply or Explain”の意味を検討する必要がありますね。最近、ある研究会で、発表者の方から(日本の上場企業における)Explainの実態を解説していただいたのですが、相変わらず「まだComplyしていませんが、これから頑張ります!!」とか「いまからやろうとしていたところです!!」といった「やらない理由」とはかけ離れた記載が多いとのこと。まぁ、実施していないにもかかわらず実施しています、と回答するよりはマシかもしれませんが、ガバナンス改革が10年経過しても制度趣旨が十分に伝わっていないのが現状であります。
ところで海外機関投資家の運用責任者の人たちと話をしていて「”Comply or Explain”は哲学的発想から生まれたものではないか」といった考えを抱くに至りました(私だけかもしれませんが・・・(^^;))。そういえば”Comply or Explain”に関する海外の論文に比較対象国として出てくるのはギリシャ、ブラジル、ドイツ、イギリス、カナダということで哲学になじみの深い国が多い。「国と企業とは対等の関係にあり、弁証法上の二項対立は止揚する(アウフヘーベンする)」との考え方、つまり企業価値を向上させる目的達成のために、国がモデルを提案しているが、企業として最終目的達成のためにほかのモデルが適切だと考えれば、堂々と対等である国に対して別のモデル採用を宣言し、株主にも説明する、という考え方です。
日本では、そもそも「国と企業は対等」という発想自体はなじまないので、果たして”Comply or Explain”によるソフトローが浸透するかどうかはわかりませんが、証券市場における自律的な秩序(株主とのエンゲージメントの活性化によってソフトローの実効性を担保する)の形成に向けて、今一度”Comply or Explain”の意味を考えるべきではないでしょうか。なお、最近の金商法改正や会社法制改正論議の内容とソフトローとの関係等についてもいろいろと考えるところはありますが、そのあたりはまた別の機会に。
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