内部統制強化・不祥事予防に向けたハンドブック-体系化した再発防止策から学ぶ着眼点-
本日(1月14日)もKDDI社による「子会社会計不正疑惑」への調査委員会設置のお知らせが出ていますが、ガバナンスや内部統制に綻びが生じたコロナ禍から5年、今年も不祥事がたくさん公表されることが予想されます。
ところで、上場企業で重大な不祥事が発生した場合、たとえばいま話題となっているN社のように、取引所へ内部管理体制の改善計画を提出しなければならない状況となれば、「いったいどのような再発防止策を検討すればよいのか」と悩むことになります。たとえ不祥事とは無縁と思われる上場会社でも、「守りのガバナンス」のイメージを把握することで、会社の大切な経営資源をいかに配分すべきか、平時から理解しておくことはとても大切です。
そこで1月14日、日本取引所自主規制法人は、東証に上場している企業向けに「内部統制強化・不祥事予防に向けたハンドブック-体系化した再発防止策から学ぶ着眼点-」なる刊行物を公表しました(刊行物の全内容はこちらでダウンロードできます)。なお、本刊行物は紙ベースで配布されるものではなく、WEB上での活用が想定されています(リンクなどの使い勝手が良いので、とても読みやすい)。
日本取引所(自主規制法人)が作成したから、ということで「いかにして炎上を鎮めるか」といった表層的なリスクマネジメントを期待する方もおられるかもしれません。しかし、本刊行物の目的は、純粋に上場企業の中長期的な企業価値向上に不可欠なガバナンス、内部統制の構築です(したがって不祥事対応だけでなく不祥事予防のための内部統制、ガバナンスの支援が目的です)。
私も、本書において「各分野における第一人者」(ということのようです、ホンマかいな (^^;))として、「公益通報者保護法改正の論点と上場会社における内部通報制度」と題するコラムを寄稿させていただいております。とくに令和7年改正公益通報者保護法が企業実務(というより「経営実務」)に及ぼす影響について寄稿したものでして、詳しい人からすれば「あたりまえ」のことですが、中小上場会社や新興上場会社の経営者の皆様にはぜひ知っていただきたい勘所をピンポイントで書かせていただきました。
それにしても他のコラムのご担当者の方々、良いこと書いていらっしゃいますね。神田先生のコラムについては恐れ多くて(笑)、コメントできる立場ではありませんが、EYの山中会計士の「経営者の資質~変化への対応力」はまさにそのとおり!!です。上場直前期になっても創業者が個人資産と会社資産の区別がつかないため、「もうイエローカード3回目ですやん!アンタとはやってられまへんわ!」ということで、私は社外監査役を辞任した経験があります。
森・濱田松本の澤口弁護士のご指摘も正鵠を得たものです。私も講演でよく申し上げますが、監督官庁とか日本取引所は、世に出ていない企業不祥事をたくさん知っていて、公表されることもなく、うまく対処できた事例から得たノウハウをたくさん持っているのですよ。不祥事発覚時に監督官庁に報告したがらない企業が多いのですが、私はできるだけ早い段階で監督官庁やJPXと相談して対処方を検討したほうが良いと思っております。
ということで、刊行物本文は、これまでの日本取引所が多くの不祥事企業の有事対応と向き合ってきた経験から得たノウハウが詰まっております(私も今後の仕事の参考にさせていただきます)。不祥事に直面している企業だけでなく、幸運にも大きな不祥事とは無縁でここまでやってこれた企業の皆様にも、ぜひ「守りのガバナンス・内部統制の現在地」を知っていただければと思います。
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コメント
豊富な内容の詰まったハンドブックだと思いました。一方で、使われ方によっては、「各テーマ毎に自社で導入しやすい取り組み(必ずしも自社が必要としている取り組みとは一致しない)をピックアップして並べることで、包括的再発防止策・細部統制強化策を作る」という、形式的な対応につながるおそれがあると感じました。
研修一つとっても、現状が「詳細な社内規程が整備されていたがその趣旨・目的が理解されていなかったため現場で不適切な運用がされていた」のか「一般的内容のルールのみ示されており従業員が自分の業務との関係を理解できていない」のかによって、行うべき研修は全く異なります。このツボを外して研修を強化しても、「研修疲れ」を招くだけでしょう。
人間の健康に例えれば、症状や健康診断の結果を踏まえて、治療法や生活習慣の改善策を選択する必要があり、とっつきやすい「○○健康法」「△△サプリ」を並べても自己満足に終わるおそれ大です。
ハンドブックの適切な使い方についてもしっかりとした情報発信が重要だと思いました。
投稿: unknown01 | 2026年1月19日 (月) 09時59分
ご指摘ありがとうございます。
おっしゃるとおりかと思います。私もお手伝いするときに、ご指摘の点に配慮いたします。
情報発信の点については、拙ブログも少しだけお役に立てるようにがんばります。
投稿: toshi | 2026年1月19日 (月) 10時33分