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2026年2月 2日 (月)

かなり悩ましい「企業不祥事発覚経路の公表」

少し前の記事ですが、2025年9月4日の朝日新聞ニュース「企業の会計不正が最多『役員は共謀、非管理職は単独』で行う傾向」において、日本公認会計士協会が昨年7月にまとめた報告内容を紹介しています。紹介内容については上記記事を参照していただきたいのですが、少し気になったのが

20~24年度の5年間で、調査報告書が公表されている177社で起きた会計不正は184件だった。そのうち不正発覚の経路として最も多かったのが「当局の調査等」で47件、「内部統制等」が31件、「内部通報」が28件と続いた。一方で、調査報告書に発覚の経路が公表されないケースも26件あった。協会は「ステークホルダー(利害関係者)への説明責任の観点から、より積極的な開示が望まれる」と指摘している。

との記述です。ここからは私の推測ですが「当局の調査等」というのは、いわゆる内部告発(内部者から当局への情報提供、当局から会社への調査要請)が多くを占めており、「内部統制」の多くは内部通報に基づく社内調査によるものかと。調査報告書に発覚の経路が公表されていないケースが26件もある、とのことですが、ここは実務的にはとても悩ましいところですね。

通報者保護を徹底するためには「通報者の秘密」だけでなく「通報の秘密」も確保しなければならない。不正発覚の端緒が「通報による」と公表してしまうと「あいつがチクったな」と通報者が特定されてしまう可能性がある(上司に相談してもとりあってもらえなかったがゆえに通報に至ったというケースの場合、通報者も「通報の秘密」の確保を希望している)となれば、報告書に「通報があった」とは書きにくいです。

しかし一方で、「内部告発による」となると自浄能力のない企業というレッテルを貼られてしまうため、会社としては自浄作用を発揮したことを示したいので、「内部通報があった、社内調査を行った、是正措置を行った」と、どうしても明記したいわけです。企業の利益と通報者の利益とどちらを優先すべきか・・・とても悩ましい。「内部統制」とか「社内調査」といった「嘘ではないけれども、やや不明瞭」な発覚経路の公表というのは、そのような悩ましい局面での対応、ということかもしれません。

それにしても会計不正への関与者として「経営者」「管理職」が多いですね。経営幹部が会計不正に関与する、というのは投資家の判断に影響を及ぼす程度が重大(質的にも量的にも)と思われる不正に至るため、会計監査人としても無視できないわけでして、調査報告書を公表せざるを得ないほどの有事対応が要請される、ということなのでしょう。だからこそ、早期発見に向けた対応と経営幹部にも例外を作らない財務報告内部統制の整備運用が重要となります。

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