2015年6月29日 (月)

決議に必要な定足数に満たない定時株主総会の取扱い

ギリシャ政権とEUとの対立が深刻になり、デフォルトの可能性も高まってきましたので、このままだと日本の市場にも大きな影響が出るかもしれませんね。円高・株安の懸念が現実味を帯びてきました。

さて、今年も株主総会シーズンが終了して、ホッとされている方も多いと思います(いや、ひょっとするとガバナンス・コードの策定で忙しい方もおられるかもしれませんね)。しかし定時株主総会にアクシデントがあった会社の担当者の方はつらい日々を過ごしておられるのかもしれません。そういえば総会直前にCFOが退任される製薬会社さんもありましたが、これもアクシデントですね。

6月26日の午後6時の某社リリース「第45 期定時株主総会における定足数を必要とする議案の結果について」を読みますと、定時株主総会を予定通り開催したものの、出席株主数が議案の決議に必要な定足数を満たしていないとしてすべての議案が成立しなかったそうです。定款変更議案や役員の選任・解任に関する議案は、定款で定足数要件を排除していたとしても会社法上では一定の定足数要件が強制されます。リリースでは「あと少し足りなかった」ようですが、事前準備において見通しが甘かったのかもしれません。

同社は後日、定時株主総会の「継続会」によって議案の成立を目指すそうです。そもそも定足数を満たしていない定時株主総会が開催されたにもかかわらず、どうして総会の延期・続行に関する決議が出来たのか、審議の時点で定足数不足だった場合に議案の決議に瑕疵はないのか、といった点がやや問題になりそうです。

修正動議や総会の延期・続行に関する決議については、同社の定款で定足数要件が排除されているので、出席株主の多数決によって決議することは可能と思われます。また、本来、総会決議に定足数を要する場合には、定足数に達する株主の出席がないかぎりは議事に入るべきではないと思いますが、決議の時点で定足数に達する株主が出席しており、かつその株主が異議なく決議に参加するかぎりは、議案の審議の際に定足数を欠いていたことは決議取消の事由とはならないとする説があります(大隅・今井「会社法概説(第2版)」178頁)。

したがって、同社は継続会の冒頭で、出席株主に異議がないことを確認したうえで、すでに発送済の招集通知に掲載している総会議案への賛否を問うことになりそうです。同社の場合には、未だ議案の審議まで至らずに継続会を決定したそうですが、議事は進んでいるので(報告事項の報告は済ませているとのこと)出席株主への確認は必要ではないでしょうか(本来ならば定時株主総会を終了させて臨時株主総会を開催すべきなのでしょうね)。

6月 29, 2015 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月26日 (金)

社外取締役も株主総会で回答しなければならない時代到来か?

本日(6月25日)、これまで当職が2期(2年)取締役を務めてきた大東建託株式会社の定時株主総会において、取締役12名の選任に関する議案が承認可決され、私も再選していただきました。総会では10名の個人株主様からの質問がありましたが、いずれもレベルの高いものばかりであり、よく勉強されているなぁと感じました。なかでも二人目の株主の方は「○○社外取締役さんにお聴きしたい、○○さんからみて、当社の取締役会をどのように評価しているか、具体的な事例をあげて回答していただきたい」との質問でした。ちなみに私ではありませんが、○○さんは、議長からの指名を受けてこの質問に詳細に(約4分ほど)回答しました。

執行と監督の分離がガバナンス・コードで謳われ、また攻めのガバナンスにおける社外取締役の役割がクローズアップされる時代において、社外取締役に対する質問について議長である経営執行部が代わりに回答する、というのもなんだかおかしな話ではないかな・・・と思っておりました。大東建託の総会準備においても、もし特定の社外取締役を指名したうえで質問があった場合には指名を受けた社外取締役が直接回答しましょう・・・といった打ち合わせを社長(議長)としていました。「株主との対話」が求められる中で、社外取締役が取締役会をどのように評価しているのか、当該取締役会を通じて、社外取締役はどのように企業価値向上に貢献しようと考えているのか、株主の皆様が社外取締役から直接聞きたいと考えることも自然だと考えたからです。

本日の東芝さんの株主総会では、外務省ご出身の社外取締役の方が(不適切会計処理問題について)直接株主に陳謝されました(毎日新聞ニュースはこちら)。また、住友化学さんの個人株主の方からお聞きしましたが、6月23日の同社定時株主総会では、日本再興戦略に影響を与えた「伊藤レポート」で有名な伊藤邦雄先生でさえも、二つほどの株主からの厳しい質問に対して自ら回答されたそうです。会社側が単純に社外取締役を選任すればよい、というわけではなく、選任された社外取締役がどのような形で企業価値向上に貢献するのかが問われるのが今回のガバナンス改革です。ガバナンス改革は定時株主総会の在り方にも確実に影響を及ぼしているのであり、社外取締役は自ら質問に回答しなければならない時代へと変容しつつあるように思います。

6月 26, 2015 株主総会関連 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2015年6月10日 (水)

東芝グループ上場子会社の株主総会は継続会方式

東芝さんが親会社である上場子会社5社の株主総会はどうなるのか?東芝さん同様、定時株主総会+臨時株主総会方式か?と思っていましたが、9日あたりの適時開示をみますと、なんとか6月総会ができそうな会社と6月の定時株主総会に「継続会」をくっつける2段階方式を採用する会社に分かれるようですね。

定時株主総会の「継続会」方式採用ということになりますと、計算関係書類の報告(承認)を定時株主総会でやる、というものであり、東芝社のように臨時株主総会で行う、というものとは異なります。このあたりは、指名委員会等設置会社である東芝さんと、監査役会設置会社である上場子会社さん(しかも決議が確実に可決される)とではベストプラクティスが違うということなのかもしれません。

ただいずれにしても、計算関係書類を一般株主に提供しない株主総会は会社法上の「定時株主総会」とは言えないように思いますが、東芝さんのケースはいかがなものでしょうか(会社法438条、439条参照)。それとも東芝さんとしては時期的に一般の定時株主総会の時期に行うので「定時株主総会」を開催するものと解釈することに問題はない、ということでしょうか?その場合、定時株主総会に計算関係書類を提出できない、招集通知に添付できない、という問題は、株主への説明義務を尽くすことによって補う、ということでしょうか。

逆に、もし今回の総会を臨時株主総会ではなく「定時株主総会」にしないと、暫定的な現取締役らの再任決議(1年未満の任期については総会決議で可能)が困難になります。また、取締役の皆様が通常の定時株主総会開催の頃に任期が満了してしまう(とみなされる)おそれもあり、会社法上の過料の制裁(取締役の選任義務違反)を受けてしまいかねませんので、やっぱり定時株主総会(+臨時株主総会)とせざるをえないのかもしれません。株主提案権も行使されていることからしても、このあたりは指名委員会等設置会社としての苦渋の選択・・・というところかもしれませんね。

6月 10, 2015 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年9月10日 (水)

株主総会バトルは理屈と実務と胆力の総合力です

この1カ月、アコーディアゴルフ社、メディネット社に続き、ソーシャルエコロジープロジェクト社でも、少数株主による臨時株主総会の招集許可申立事件が勃発しています。支配権争いの起きた会社において、株主側から臨時株主総会の開催許可が裁判所に申し立てられるわけですが、上場会社において申立がされることは意外と珍しく、まさに会社の経営権を巡って関係者間のガチンコ勝負が展開される予兆となります。

社長解任事件や敵対的買収事件などのお手伝いをしていると、ときどき対応しなければならないわけですが(検査役に選任される、ということもありますね)、実は上場会社の場合、商事非訟事件として招集許可が下りて、株主主導の臨時株主総会が開催される、というのはレアなケースなのです。あまり詳しくは述べませんが、通常は会社側の担当者が仕切ってくれる総会実務を株主がやらなければならなかったり、株主招集の臨時株主総会の審議範囲が限定されていたり(動議も出せないとか)、大株主の意向をまとめるために、空気を読んで経営上の妥協案を考えたりといったことで、株主側はたいへん苦労するわけです。株主の確定やら委任状集めなど検討しているうちに、会社側がころ合いを見計らって臨時株主総会の開催を(取締役会で)決定するということで、落ち着いてしまうことが多いですね。

また、株主総会バトルといえば、どうしても株主総会のほうに目を奪われがちですが、敵対的買収のような「一枚岩」になれるときは別として、経営権争いが株主総会バトルとして表面化するケース(たとえばメディネットさんやソーエコさんの例)では、臨時取締役会を開催しなければならないことが多く、取締役会の手続き上の瑕疵がバトルの成否を分けるケースもあります。今回のメディネットさんの一連のバトルでも、取締役会の招集手続きに瑕疵がある、と一方からクレームがつき、監査役2名が取締役会の続行を勧告した(その勧告どおりに延期されたところ、形勢が変わった)・・・という事件もありました。

こういった株主総会バトルには、弁護士による支援も不可欠ですが、上場会社の場合には広報コンサルタントの方々の支援も不可欠ですね。株主や従業員の方々に、いま起きている事件をどう見てもらうのか・・・、一緒にお仕事してみると、シナリオ作りの大切さがよくわかります。最終的には株主の過半数の支持を得ることで決着するわけですが、そこに至るバトルには理屈と実務とKY(空気を読む力)、そしてなによりも「マスコミを敵に回しても絶対に勝つ」という関係者の胆力ではないか・・・と思う次第です。

9月 10, 2014 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年7月10日 (木)

株主総会開催15分前に議案を一部撤回した上場会社

昨日(7月8日)は、日本公認会計士協会近畿会の主催行事「公認会計士の日 記念講演会」ということで、近畿会本部におきまして講演をさせていただきました。昨日の東京会主催のほうでは小泉純一郎元首相が講演をされていましたので、ずいぶんと格が違いますが(すいません・・・・)、おかげさまで満席の中で講演をさせていただきました。関係者の皆様には懇親会までたいへんお世話になりまして、厚く御礼申し上げます。

さて、(昨日の講演テーマとは全く関係ございませんが)今年も3月決算の上場会社の株主総会シーズンが終了しました。いろいろなところで総会の話題が総括されておりますが、大要としては株主との対話がさらに進んでいることが窺われました。社外取締役の導入企業が74%にまで及び(東証1部上場会社の場合)、買収防衛策の継続議案が否決された企業が現れ、さらに①独立性に問題がある、②役員会への出席率が低いといった理由から社外役員への極めて多くの反対票が投入された事例が目立っていました。ちなみに代表取締役や当該社外取締役が改選期にない会社の場合、新任の社内取締役さんの選任議案に批判票が投じられるケースもあるようで(たとえば2名の新任取締役候補がいらっしゃる場合には、どちらかの取締役さんに反対票が投じられるとか・・・・これはISSやグラスルイスの方針なのでしょうか?)、えらい「とばっちり」を食らった新任取締役さんもいらっしゃったようです。

総会ネタの中で世間の(というかマニアックな方々の?)注目を集めたのは、やはりソーシャルエコロジープロジェクトさんの総会のようですね。本日(7月9日)の日本証券新聞では、伊藤歩さんが「特報!上場会社で取締役がいない状態」と題して、ソーエコさんの特集記事を書かれており、たいへん面白い内容なので、そちらをお読みいただければ・・・と(相変わらず伊藤さんはよく勉強されていて、頭が下がります)。

そのような中で、私個人としては、今年の株主総会の特筆すべき事例として、セイノーホールディングスさんの6月26日付け「定款一部撤回のお知らせ」を挙げたいと思います。今後、タイムリーに無議決権優先株式を発行できるよう「定款の一部変更に関する議案」を上程していたところ、株主からの反対により、総会当日の直前(9時45分)に定款の一部撤回に関する議案を撤回したことが報じられています。もちろん特別決議を要する議案であり、可決されるハードルは高いわけですが、株主総会の当日に(しかも総会の直前に)臨時取締役会を開催して、議案の撤回を決議する(そして適時開示としてリリースを行う)というのは、おそらく総会担当者にしてみればたいへん神経を使う出来事だったと想像します。

無議決権優先種類株式の発行といいますと、2008年にソフトバンク社が種類株式発行に係る定款の一部変更議案を上程したのですが、こちらも総会の直前に議案を撤回しています。やはり現実的に議決権の価値が高いものと認識されていること、市場における流動性が極めて限られていること等から、この優先的種類株式を発行するための準備行為(定款変更)には合理的理由を見出すことはむずかしいということでしょうか。サイバーダイン社のように、新規上場の際に発行したケースはありますが、流通市場では(普通株式の株価への影響などから)賛同を得にくい、ということかと。

セイノーホールディングス社の場合、買収防衛策の継続についての承認は3分の2以上の株主からの承認(64.6%前日集計分)をスレスレのところで得られなかったので、想像するに、本定款一部変更議案にみる、無議決権株式の発行に関する株主の意思については、当日の朝まで賛否が判明しなかったのかもしれません。様々なエクイティの手法を駆使して資金調達を図りたいとの真摯なお気持ちで議案を上程されたものと思いますが、現在の日本の証券市場はまだまだ種類株式には厳しい姿勢のようです。

7月 10, 2014 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年6月18日 (水)

総会出席者が足りず、役員選任議案が審議未了となった事例

本日の参議院法務委員会でも会社法改正法案の審議がなされなかったようで、実質、あと委員会は1日しかありません。ということは最終日に強行突破?で法案成立ということになるのでしょうか?個人的な事情ですが、ここで会社法改正法案が成立しなければ、不都合なことがいろいろとあるもので・・・(^^:頼みますよ、ほんまに・・・。

さて、株主総会ネタが続きますが、本日(6月17日)の適時開示で「かなり痛いニュース(>_<)」を見つけてしまいました。任期満了となる取締役について、東証マザーズの某社定時株主総会にて新たに取締役の選任議案を上程しようとしたところ、株主総会当日になって出席株主数が定足数に満たない事態となり(しかもかなり少ない)、結局取締役が選任できなかった、とのリリースが出ています(すいません、ご興味のある方は、ご自身で適時開示から探してください)。ちなみに、定款で定時株主総会の定足数は排除されているものと思いますが、役員選任議案については、議決権行使株式数の3分の1以上の出席が(定款で排除されていても)定足数になります。

会社は今後、臨時株主総会を開催して、新たに取締役選任議案を上程するとのことで、それまでは取締役が不在ということで、会社法346条1項により「権利義務取締役」(新たに取締役が選任されるまで、そのまま退任取締役が残って仕事をすること)によって対応するそうです。

なんでこんなミスが発生するのか?・・・と一瞬あきれそうになったのですが、ひょっとすると単なるミスではなく、大株主を交えての社内での支配権争いが存在するのではないか、といったことも想像してしまいました(多くの包括委任状を持っていた大株主が突如欠席したとか・・・)。もちろん、単なる想像なので、もし準備不足によってこのような事態となるのであれば、やはり定時株主総会の準備は周到にやっておかねば「要らぬ憶測」を呼ぶことになりますので注意が必要ですね。

ところで同社は定時株主総会を終了して、改めて臨時株主総会を開催することとなるため、本日で取締役の方々が(任期満了で)退任されることになりましたが、後日、継続会として定時株主総会を続行する、ということはできないのでしょうかね?定足数が足りなくても株主総会は一応成立して開催しているわけで、継続会開催の決議は定足数に関係なく成立するようにも思えるのですが・・・議案の審議ができなかった以上、総会としての同一性が否定される、ということなんでしょうかね?(ひょっとして私の考えに基本的なミスがあるかもしれないので、あくまでも単なる疑問ということで)。

6月 18, 2014 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年4月22日 (火)

株主総会における説明義務-社外役員の資質について

さて、毎年このシーズンになりますと、3月決算会社の定時株主総会を前にして、タイムリーな話題を提供しようと考えています。といいましても、総会担当のご専門家や株懇あたりでブイブイ言わしておられる担当者の猛者の方を「うーーん」と唸らせるような話題を提供できるほどの能力も持ち合わせておりません。<m(__)m>ということで、以下のお話は、ホントに素朴な疑問に対する自分なりの考え方にすぎませんのであしからず。

本日(4月21日)公表された「対日直接投資に関する有識者懇談会」報告書によりますと、政府としては、各企業に社外取締役を3分の1以上は置くように、と提言するそうです。会社法に独立社外取締役に関する定義を明確に規定し、そのうえで取締役の3分の1以上を社外独立取締役にするよう義務付ける、また取締役に研修制度を設置せよ、といった提言内容です。もはや各上場企業とも、社外取締役導入が待ったなしの状況ですが、だからといって、誰でもいいというわけではなく、おそらく人選に悩む企業も多いはずです。

ところで、社外取締役や社外監査役として、経営者や弁護士や会計士、税理士といった方々が選任されることが多いのですが、たとえば改選期にあたり、「この社外役員候補者は、●●という問題で、弁護過誤で敗訴しているらしいが(または、懲戒処分を受けたらしいが)、当社の候補者としてだいじょうぶなのか?」「その経営者の方は、週刊誌でずいぶんとプライベート問題で叩かれているが、当社の役員としてふさわしいのか」といった質問が出ることが予想されます。

そこで会社側としては(取締役側としては)、社外役員の本業におけるミスやプライベート問題については、そもそも社外役員としての活動とは無関係なので、回答することは控えても説明義務違反には該当しないのではなかろうか・・・との素朴な疑問が湧きます。今後ますます社外取締役の選任(改選)が増える中で、企業側にとって予想もしなかった社外役員の素顔が暴かれてしまうような場面も予想されるところかと思います。

最近発売されている株主総会想定問答集などでも、「社外役員の人選問題」として、問答数も充実しているのですが、「独立性に問題があるのでは?」「出席日数が少ないのでは?」といった、お行儀の良い質問が多く、あまり参考になりそうなものは見受けられません。

会社側としては、社外役員は正に外の人ですし、あまりカッコ悪い立場に立たせてはいけないとの判断から、社外役員としての活動とは関係のない質問については回答を控えるというスタイルで対応したいところです。しかし、よくよく考えてみますと、なぜその方を社外役員として迎えたかといえば、やはり本業におけるスキルが自社の企業価値向上に資するところがあるから、というところでしょうから、役員としてふさわしいかどうかは、(少なくとも一般株主の立場からみると)本業の能力やプライベートにおける品位ある行動なども、やはり選解任の重要なファクターになるように思われます。ということで、原則として回答する必要があるように思います。

たとえば、監査役解任時の「正当理由」の有無が争われた東京高裁昭和58年4月28日判決(判例時報1081号130頁)では、税理士である監査役さんが、監査職務としてではなく、自身の本業である税務においてミスを犯していたことが、解任の正当理由として認められています。ミスは個人的なものですが、監査役に就任したのは、その専門的識見に期待されてのことであり、株主の判断においても重要事項だと判断される、というものです。この事例は公開会社のものではありませんが、正当理由の有無を判断するにあたり、経営者と株主との信頼関係の大きさ(株主と経営との距離感)はそれほど大きな問題ではないと思いますので、大規模公開会社にも上記判例の考え方はあてはまるのではないでしょうか。

実際に質問が出た場合に、議長(代表取締役)が回答するのか、社外役員自身が回答するのかは状況次第だと思いますが、私自身も、なにか不祥事を起こしてしまった場合には、こういった質問により社外役員としての資質を問われることを覚悟しておきたいところです(まぁ、そういった事態になれば、辞任という選択肢をとることも考えられますが・・・)。

4月 22, 2014 株主総会関連 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2013年6月24日 (月)

密室のクーデターと株主総会における信認手続き(その3)

いよいよ今週は株主総会のピークですね。私は総会指導というよりも、当事者(候補者)として参加するだけですので、「忙しさ」と言う意味では、いつもとあまり変わりません。ただ、ここ2週間ほどのエントリーが株主総会関連の話題ばかりなので、今週のいくつかの株主総会には「単なる野次馬」として注目しています。

なかでも、やはり川崎重工社の定時株主総会(6月26日 神戸国際会館)については、社長解職劇という極めて重い出来事が株主に信認されるのかどうかということに注目しています。おそらく例年にもまして、個人株主の方々が当日出席をされるのではないでしょうか。

6月22日(土)の日経新聞朝刊では、役員13名選任議案→役員10名選任議案に修正をした定時株主総会の招集通知を各株主に再送付したことが報じられています。また実際、川崎重工社のWEB上にも再送付された内容がリリースされています(第190期定時株主総会招集ご通知の一部修正について 6月13日付)。

先日(その2)でも述べたとおり、私の個人的意見としては、議案修正までに送られてきた議決権行使書面(およびネットでの議決権行使)について、当初の13名の中に、新たな10名は包摂されていますので、10名分については有効、選任議案が撤回された3名については集計せず、という取扱いで会社法的には問題ないものと考えています。しかし、議案が撤回された以上、そのような取扱いが適法とされるためには、修正された招集通知の内容を全ての株主に知らせることは必要かと思います。したがって新聞報道のとおり、会社側の議案の一部修正に関する招集通知を発送することは適切な対応です。

さて、ちょっと疑問が生じるのは、いったん13名の役員選任議案に賛否を表明した株主に、「議案を一部修正したので、すでに議決権を行使された株主の方々も、賛否の意見を変更することができますよ」と伝える必要があるかどうか、ということになります。上記の日経の記事によると、株主側から「賛否の変更は可能なのか」と問い合わせがあれば、「できますよ」と会社側が回答していることが明記されています。しかし13日に会社側から株主に発送された招集通知の一部修正のお知らせには、上記のような記載がないようです。ということは、すでに賛否の意見を表明している株主の中には、役員選任議案の一部が修正されたことは知っているが、すでに議決権を行使してしまったのだから「もはや変更はできない」と考えている方もいらっしゃるのではないかと。

最近は「買収防衛策を導入、継続する企業の代表取締役には選任に反対票を投じる」とか「独立性のある社外取締役をひとりも選任しない企業の代表取締役の選任には反対する」といった機関投資家や議決権行使助言会社のポリシーが目立ちます。会社側の経営方針に対する意思表示を役員の選任議案への賛否という形で表現する傾向にあるとすれば、たとえば代表取締役の交代、(経営統合方針の白紙撤回といった)経営方針の転換についても同じく役員選任について株主が賛否を変更する、という意思表示も十分にありうるように思います。そうだとしますと、(法的な問題は別として)一般株主に対して「いったん行使した議決権について、締切までは内容を変更することができますよ」という会社側からの告知は、やはりあったほうが望ましいのでしょうね。

いっぽうで、6月13日に議案の修正を通知して、6月25日までに変更した議決権行使書を会社に到着させる、というのは、実質株主から信託口へ議決権行使の指図が戻ってくることを考えると時間的にほとんど困難ではないかと。手続きをきちんと踏もうとすると、今度はまた新たな手続上の問題が露呈されてしまうということになってしまうのでしょうかね。結局のところ、そういった問題が生じる可能性もあるために、変更の要望が個別になされた株主については対応するが、広く「議決権の再行使ができますよ」といった広報はされなかったのかもしれません(このあたりは、あくまでも野次馬的な推測にしかすぎません。念のため)。

株主にしてみれば、もっと実質的な経営に関する話のほうに関心が向くわけですが、実は会社側にとっては、こういった手続上の問題をクリアしなければ「信認を得た」とは言いにくいところなので、このあたりも個人的には注目しておきたいところです。

※ ※ ※ ※

なお最後にお知らせですが、本日(6月24日)のテレビ朝日報道ステーションに、私が(収録形式ですが)登場いたします。株主総会特集ということで、西武鉄道・サーベラスの事例を取り上げて解説をするというものですが、正直1分や2分程度で一般の方々に解説をするというのは至難の業です。ほとんど一般的な解説しかできておりませんが、ご興味のある方は、どうかご覧いただければ、と。。。

6月 24, 2013 株主総会関連 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2013年6月18日 (火)

密室のクーデターと株主総会での信認手続き(その2)

先週金曜日のエントリー(川崎重工社長解職劇)の続きですが、日曜日(6月16日)の朝日新聞記事には、川崎重工の会長さんが、社長解職劇の前日に社長とひそかに面談し、「このままでは君は解任されてしまう、自分から辞任したらどうか」と社長辞任を勧めていた・・・と報じられていました。つまり、今回の川崎重工社の件は、社内で情報管理が徹底的に守られていたものの、社長(正確には前社長)以下3名の取締役にとってはあらかじめ役員会での紛糾が予測しうるものだったと言えそうです。ということは、昔の「三越事件」のような状況とは異なり、むしろ今年1月の広島電鉄さんの社長解職劇や3年前の富士通元社長さんの辞任劇とほぼ同じ状況だったものと思われます。

こういった一連の社長解職劇からみて、以下のようなことが整理できるように思います。ひとつは「誰だって自社がクーデターとか言われて、お家騒動の状況を世にさらしたくない」ということです。上記朝日新聞の記事も、川重の会長さんは「外部にさらけ出されるのを避けるため」に、社長が辞意を表明すれば、あとは穏便にすませる、と迫ったそうです。これは社長解職劇だけでなく、いわゆる「監査役の乱」の場面でも、役員全員が苦慮するところかと思います。コーポレートガバナンスが機能した事例というのが世に少ないように思えるのは、そもそも社内のゴタゴタは世間に公表せずに済ませる事例が多いからだと思われます。なお、こういった内紛劇が表面化する、ということは結果として適時開示の真実性に問題が生じるリスクが高まります(現に、今回の川崎重工社も東証より厳重注意を受けているとか)。

つぎに新社長さんは「これまで取締役会が軽視されていた、今後はコーポレートガバナンスの健全化に努める」とおっしゃっておられますが、やはり「社長人事は闇の中」というのが日本の大会社の本質ではないかと思います。今回も、会長さんの「穏便にすませる」「役員OBに相談したらどうか」という前社長さんへの説得は、まさに人事権は取締役会の背後にある・・・ということを如実に示しています(これが現実かと思います)。日本には、社長退任後に会長だけでなく、顧問や相談役という形で、会社となんらかのつながりを持つ役員OBの方々がいらっしゃいます。たしかに日常の会社業務からは離れるものの、そういった役員OBの方々は、いざ社長人事となれば大きな存在感を持っているのが実際のところではないでしょうか。取締役会の健全化、ガバナンスの向上といっても、結局は社長の人事権は別のところにある・・・というのが多くの会社の現実ではないかと。

そして最後になりますが、こういった解職劇が明るみにでますと、その原因は「三井造船社との経営統合に対する意見の相違」だとされ、新聞でも「グローバル化の時代に内向きな経営姿勢は今後の課題だ」などと叩かれます。しかし、これは本当でしょうか?私はどうも違うような気がします。M&Aに対する意見の相違というのは、たまたま解職劇が勃発するきっかけではあっても、社長解職劇の本当の要因は別にあると考えています。それは普段からの社内力学の結果です。よくあるのは、社長自身に対する反発というよりも、社長の背後で社長を動かしている役員への反発や、次期社長を狙う(社長派の)役員への反発という傾向が強いように思います。ですから、こういった社長解職劇が発生した場合、今後の社内のかじ取りをしていく上で、これまで社長派だった役職員の動きには気を配ることになり、またそういった役職員の方々にしてみれば、今後の自身たちへの処遇に危惧感を抱くことになります。

なお今回の件に関する法的な問題として、サンケイビズのニュースで、株主総会収集手続きの問題が報じられていました。13名の取締役を選任する議案を会社側は上程し、株主に対して招集通知を発送していたのですが、そのうち3名については取締役に選任しない、という「議案の撤回」を会社側が行ったために、すでに13名の選任に賛成の議決権行使書面を送った株主の議決権行使はどうなるのであろうか・・・という問題です。これは現在進行形のお話なので、あまり深入りすることは避けなければなりませんが、私個人の見解としては、13名の選任議案のうち、10名分の議決権行使については有効と考えて、3名分については(議案が撤回されたのですから)効力はないものと取扱い(集計作業はせずとも)それほど問題はないのでは、と考えます。ただし川崎重工社の場合、定款で総会の定足数が緩和されていますので(よくあるように3分の1で足りるものとされています)、会社側が議案を修正する前に、すでに送られてきている議決権行使書面がこの定足数を満たしている場合どうなるのか・・・という問題はあるかもしれません。これはひょっとして、すでに13名全員が株主から信認を受けているものと評価されてもおかしくないようにも思われますが、いかがなものでしょうか(もちろん、修正時点において定足数以下の議決権行使書面しか返送されていなければ、そういった危惧もないわけですが)。

6月 18, 2013 株主総会関連 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2012年7月 6日 (金)

関西電力株主総会における「脱原発」と「ガバナンス改革」への賛成票の重み

株主総会シーズンが終わったとたん、世間はまったく関心を示さなくなっておりますが、7月4日に関西電力社は、今年の株主総会における議決権行使結果を臨時報告書の中で開示しております(詳細はEDNETをご参照ください)。注目の株主提案は第3号議案から同30号議案までありますが、ニュースでも報じられておりました通り、会社提案議案はすべて可決され、株主提案議案はすべて否決されました。ただ、各株主提案にどれほどの賛成票が投じられたのか、興味がありましたので、少し調べてみました。

「脱原発」を掲げる定款変更議案については17%の賛成票が投じられています(3号議案)。この「17%」という数字を多いとみるか、少ないとみるかは意見が分かれるところかと思いますが、私個人としては意外と賛成票(つまり脱原発支持派)が多かったのではないかと感じています。さすが大阪市長のパフォーマンスが効いたのでしょうか(もちろん、議決権行使結果の賛否集計は基本的には総会前日まで、ということなので、正確には総会当日の演説が効いたとまでは言えませんが・・・)。前にも述べました通り、脱原発ということを定款に記載したとしても、その文言の抽象性ゆえに経営陣による経営判断への法的な拘束力が認められることはないと思います。しかし、個人株主による17%の重みは無視できないわけで、今後の脱原発への賛成票が増えるのか減るのか、そのあたりに興味が持たれるところです。

ところで株主提案議案のなかで、ダントツで株主側賛成票が多かったのが、社外取締役に対する責任限定契約(責任軽減契約)締結に関する定款変更議案(第21号議案)です。驚くべきことに38%もの賛成票が投じられています。(議案の内容が少し難しいので)棄権票を除きますと、まさに株主提案に対する賛成票は4割を超えております。株主代表訴訟が提起された場合等、社外取締役の責任が限定されるように会社と社外取締役とが責任範囲を限定する契約を締結することができるわけですが、これは定款で定められなければできません。その責任限定契約に関する定款規定を設けるように、との株主提案だったわけですが、会社側が反対意見を述べていたために、最終的には否決されています。

法律家向けのブログであれば、ここで会社側反対理由と株主提案理由の優劣等についてマニアックに語りたいところでありますが、最近は一般の方がたくさん当ブログをお読みいただいておりますので、細かな法律論は省略させていただき、とりあえず一言感想だけを述べますと、なぜ関西電力社は、社外役員に対する責任限定契約締結に関する定款変更をされないのだろうか、という素朴な疑問が湧いてきました。今のままですと、たしかに取締役が代表訴訟等によって責任が認められた場合、現経営陣の裁量によって、社外取締役の責任範囲を限定(責任免除)することは可能になっています。しかし責任限定契約を締結しているケースと比較しても、社外役員の法的な立場は非常に不安定なままですし、また有事におきまして、社外取締役として社内取締役と対立しかねないような発言もできなくなってしまうのではないか、という懸念が生じます。

いまの関西電力の定款のままですと、これから電力会社の役員としてふさわしい方々が、本当に社外取締役や社外監査役に就任してもらえるのかどうか、かなり不安が生じるのではないでしょうか。関西電力の経営の透明性を向上させ、株主共同利益にも配慮した経営を要望するのであれば、なんといっても独立役員にふさわしい社外取締役の方が就任することが第一歩かと思います。そのような重責を担われる方に、今のままで果たして優秀な方が就任してもらえるのかどうか、今のままですと、すこし関西電力社のガバナンスに希望が持てにくくなるような思いであります。

7月 6, 2012 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年7月 4日 (水)

株主提案権における平面軸と時間軸

みずほフィナンシャルグループの株主総会において、株主提案の7つの議案(会社側は反対意見表明)が20%以上の賛成票を得たとのことで、「日本企業統治史上、画期的な事件」だと報じられております(産経新聞ニュースはこちら)。なかでも「役員研修の方針と実績の開示」については最高の28%の賛同票が集まったようです。たしかに高い賛同票だとは思うのですが、2年前から開示されるようになった(※1)議決権行使結果によると、みずほFGでは以前から「役員の個別報酬開示」はじめ、株主提案権行使に対しては20%程度の賛同票が集まっているようなので、急激に株主提案に賛同する一般株主が増えた、ということにはならないように思います。

※1 金融庁は、平成22年3月31日付で「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」を公布しております。適用開始時期は、3月決算の上場会社は平成22年に開示される有価証券報告書、定時株主総会からとなりますので、今年で3回目の議決権行使結果の開示となります。この内閣府令では、報酬が1億円以上の役員がいる場合は、有価証券報告書に、当該役員の個別報酬が開示されることになりましたが、役員報酬の他にも注目を集めているのが、議決権行使結果について、決議の結果だけでなく賛成反対の票数も法定開示の対象とされた点です。

ただし同社の株主構成をみますと(四季報参照)、2008年には29%だった外国人株主が2012年には19%に減少していますし、浮動株主も11.8%だったのが4%にまで減少しています。こういった株主構成の変動の中で、20%以上もの賛同票がとれたことは、やはり画期的なのかもしれません。ちなみに、あれだけ東京都の副知事の方が「脱原発」を呼びかけていたにもかかわらず、実際のところは脱原発の株主提案に対する賛同票は8%程度だったようで、昨年の5%からは伸びているものの、やはり個人株主の意見が集約されたとまでは言いきれないのではないかと。

ところで株主提案権の行使といいましても、アコーディアゴルフvsオリンピア(PGM)、イオンvsパルコ、栄光HDvs進学会、ヤクルトvsダノンのように、M&A型(支配権争奪型)の場合には、当然のごとく、その年の株主総会における得票数が問題となるわけですが、みずほFG、関西電力、野村HDなどのように問題提起型(経営関与型)の場合には、単純にその年の賛否の比率で一喜一憂するのではなく、過年度における賛否率と比較したうえで、提案権に賛同する株主が増えているかどうかを検討する必要もあります。企業としても、今後は長期的に株式を保有してもらえる株主を増やしたいと思いますので、こういった政策的な提言を行う株主提案権への賛同票の増加は会社経営陣にとっても無視できなくなるように思います。

ちなみに下表は先週、大阪の司法記者クラブとの懇談会でスピーチをさせていただいたときに配布させていただいた資料からの抜粋です。

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大阪市の市長は、今年の関西電力の株主総会において、約4分にわたり株主提案の理由を説明しました。その後、株主提案に係る定款一部変更議案が否決されたことを受けて、「この経営陣では関電はダメになる、何を言っても無駄」として、大阪市保有の関電株の売却も検討する方針だと報じられております。ただ、問題提起型の場合にはむしろ再度提案権を行使すべきであり、その賛同票の推移こそ、主張の根拠とすべきではないかと思います。報じられたところでは、大阪市は日本プロキシーガバナンス研究所の助言を受けておられたそうですが、ISS、グラスルイス等の議決権行使助言会社の推奨意見に影響を及ぼすことも含めて、毎年粘り強く提案を続けることが重要だと思います。未だ関西電力の臨時報告書は出ておりませんが、原発廃止に関する定款一部変更議案については、関西電力を取り巻く経営環境は(おそらく)毎年変わると思われますし、重要な課題でもありますので、株主提案権の濫用には該当せず、議案提出が制限されることはないものと思料いたします。そう考えますと2年前から議決権行使結果が臨時報告書によって開示されるようになった意義は大きなものがあります。

7月 4, 2012 株主総会関連 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2012年6月29日 (金)

壮絶・アコーディアゴルフ株主総会-24時間、闘えますか?-

(6月29日 午後0時30分追記あり)

今年の株主総会の話題としては、電力会社や不祥事を起こした企業に集中した感があります。ガバナンス問題によって会社側の取締役選任議案が否決され、株主側提案による社長さんが誕生した会社も出てきたようであります。しかしながら、マスコミの関心とは別に、当ブログとしましては、今年の株主総会の「真打ち」としてアコーディアゴルフ定時株主総会に注目しておりました。予想通りといいますか、前代未聞といいますか、壮絶な株主総会となっているようであります。

結局のところ、本日(6月28日)の総会では取締役議案の賛否集計が終わらず、29日の午前10時に議長が集計結果を報告する、という事態となりました。法的には総会をいったん打ち切って「延期」や「続会」にする、ということではなく、実際に集計作業が続いている、ということでしょうから、28日の午前10時から29日の午前10時まで株主総会が続いていることになります。つまり会社側も、大株主側も、委任状争奪戦をもって24時間以上闘い続けている、ということであります(いちおう、ホテルニューオータニの会場はそのまま使用され続けている、というなんでしょうね)。

会社側リリースによりますと、どうも会社側による取締役・監査役候補者の大半の方々が過半数の賛成票を得たようですが、委任状の集計結果次第では、ほかに会社側候補者2名、大株主側候補者1名の方の賛成票が過半数に達する可能性があるとのこと。「大株主側は敗れたのか?」と思いきや、深夜になって大株主側(アコーディアゴルフ株主委員会側)よりリリースがアップされ、「不公正極まりない会社側の行為によって総会の手続きが異常事態となっている。我々は今後、委任状等の閲覧謄写請求を行い、株主総会決議取消の訴えも辞さない」と声明を出しておられます。ちょっとこれでは株主総会で決着がつく雰囲気ではなくなってきたようにも思われます。

こういったことにならないように、わざわざ事前に裁判所によって総会検査役が選任されているのではないか?とも思うわけであります。しかし、そもそも総会検査役というお仕事は、決して「株主総会を仕切る」ことが求められているのではなく、そこで行われている手続きや決議方法を逐次観察して、これを記録し、報告するというものであります。ただ、総会が混乱しないように検査役が選任されるのであれば、あらかじめ双方の代理人弁護士と集計方法や委任状の有効性に関するルールについて合意したり、事前に予想もしていなかったような問題が発生した場合のジャッジを行うなどといった、多少「権限外」とも思われるようなことにも積極的に参画すべきではないか、とも思ったりしております。なお、こういったことは外野だからこそ言えるのでありまして、いざ総会検査役の立場からすれば、委任状の有効・無効の判断が速やかに行われることは重要ではあるものの、あまり(法の趣旨を無視して)荒っぽいルールで仕切ってしまいますと、今度は株主総会決議の有効性にも影響しかねないところなので、どこまで総会検査役が仕切ってよいのかは、非常にむずかしいところであることは事実であります。

現に、会社側リリースによりますと、議決権行使数を確定するための委任状の有効性の判断に時間を要するために、一日では取締役・監査役選任議案の集計結果が出ない、ということのようであります。会社側も大株主側も、あらかじめ一般株主向けに「委任状発送上のご注意」ということで説明をされていたようですが、それでも1000枚以上の委任状に疑義があるとのこと。平成21年1月から株券電子化が施行され、届出印制度が廃止されましたので、委任状の真正の確認が行いにくくなっています。また、ひとりの株主が会社側と大株主側双方に委任状を提出しているような場合には、日付の遅い方が有効として取り扱うはずですが、これも日付が同一であったり、日付が記入されていない場合にはどっちが有効とすべきかは判断しかねないところです。さらに事前に議決権行使書を提出していながら、委任状を送付している株主さんの場合、原則としては代理人が出席した時点で議決権行使書は効力がなくなりますので、その取扱いも問題となります。

こういった理屈の問題とは別に、その瑕疵の程度もさらに問題となります。委任状の記載から判断して、軽微な瑕疵の場合には有効としてもよいのではないか、瑕疵が軽微といえるかどうかは、双方の主張が食い違う場合どうすべきか等、考えるだけでも気が遠くなりそうな問題が発生するわけです。さらに、これは私だけの考えかもしれませんが、平成19年のモリテックス事件東京地裁判決が、両立しない議案に関する委任状の取扱いについて、委任者の合理的な意思解釈を許容しているところがありますので、ひとつひとつの委任状の不完全な記載部分を、委任者の全体の意思解釈によって補う、という作業も出てくるようにも思われます。もうこうなってきますと、委任状争奪戦に関与するすべての人たちの「互譲の精神」でもないかぎり、つつがなく総会を終了させることは至難の業ではないかと。

いずれにせよ、29日午前10時の議長報告だけでは、アコーディアゴルフの支配権争いは終結することはないように思われます。委任状・議決権行使書の閲覧謄写請求が認められるのかどうか、総会決議取消の訴えが認められるのかどうか等、争いの場は総会議場から裁判所に移りそうな気配がいたします。なお、総会に参加された株主の方から、総会の雰囲気等に関するご報告、総会審議に関するご意見・ご感想などをお待ちしております。マナー違反にならない程度にて、またご紹介させていただきます。

(追記)ロイターニュースが報じるところでは、会社側提案の取締役・監査役のみが選任され、株主側提案の役員候補者の方々はすべて否決されたとのことです。

6月 29, 2012 株主総会関連 | | コメント (8) | トラックバック (0)

2012年6月25日 (月)

取締役・監査役にはなぜ株主総会検査役の選任申立が認められないのか?

いよいよ今週は3月決算会社の定時株主総会のピークを迎えます。私が社外監査役を務める会社も、6月27日が開催日でありまして、(以前お知らせしましたように)総会終了時をもって8年間の監査役任務を終了いたします。ということで、やはり今週は「総会ネタ」が中心ののエントリーとなりますが、本日は「野菜ホールディングス」のようなオモシロネタではなく、法律実務的なまじめなネタをとりあげたいと思います。

先週、謝罪広告の件でとりあげましたトライアイズ社の元監査役さんの一連の事件を顧みて、どうしても会社法実務として理解しにくい点が気になっております。今年はアコーディアゴルフ定時株主総会の壮絶な紛糾が予想されるなか、決議方法等の公正性が担保されるよう、株主側からの申立により株主総会検査役が選任されております(会社法306条1項参照)。おそらく当日になって、投票ルール等で紛糾しないよう、検査役を通じて会社側と株主側でいくつかのルールが合意されているものと思います(たとえば委任状の記載にミスがあった場合に、どの程度のミスであれば会社は有効な委任状として取り扱うか、かりに定款に定められている取締役の員数を超えて過半数の賛同を得た取締役が生じる可能性を考えて、議案の取り上げ方をどのようにするか等)。

そもそも総会検査役の制度は、裁判所が選任した検査役が株主総会の招集手続きや決議方法を調査し、これを裁判所に報告するもので、少数株主の権利を保護するために少数株主に選任申立権が認められたものであります。そして平成17年改正会社法では、あらたに会社側にも選任申立権が規定されることになりました(ちなみに東京地裁管轄では、年間25件程度の検査役選任事例があるようです)。つまり、会社としても株主総会の手続きが公正に行われることを担保する実益がある、ということになろうかと思われます。しかし、会社法306条1項には、取締役や監査役による総会検査役の選任申立権は規定されておりません。

先のトライアイズの臨時株主総会では、監査役解任議案が上程されたのでありますが、その解任議案についてはご承知のとおり特別決議事項とされています。よく「3分の2」の賛成がなければ監査役は解任されないと言われ、よほどのことがない限り、監査役は解任されず、したがって監査役の職務の独立性が確保されているのだ、と解説されています。

しかし、一般の上場会社では実際のところ、会社法に従って、定款で定足数を3分の1まで緩和するところが多いと思いますので、議決権を行使できる株式総数の3分の1×3分の2、つまり全体のわずか22%の議決権株式が賛同すれば監査役を解任できる、ということになります。中堅・中小の上場会社であれば、たとえば創業者社長や取引先の大口株主が賛同すれば、あっという間に解任できる数字です。しかし、ここに個人株主等が投票行動を起こして、出席株主の議決権行使株式の総数が増えるとなりますと、俄然3分の2の賛同という数字の重みが増してきます。

トライアイズ社に限らず、監査役が取締役の違法行為差止訴訟を提起したり、会社を代表して損害賠償請求訴訟を提起している場合には、現経営陣は監査役の解任決議を総会で可決させることで、その差止め等の訴訟を止めることができます。新たに選任された監査役が、「バカな前監査役が一存で起こしたもので、どうもすみません」と言って訴訟を取り下げることができることになります。これほどまでに重大な事態になるにもかかわらず、監査役は自身が解任される株主総会において、手続きの公正性を担保するための手段を活用することができないのはどうもおかしいように思います。

今後、社外取締役も(制度が強制されるかどうかは別として)まちがいなく増えてきますが、当然のことながら、社外取締役は経営陣と対立することが想定される立場にあります。社長と対立することは好ましいことではありませんが、社外取締役は、どうしても社長と意見が食い違うケースも想定されるわけでして、そういった場合に社長が「あいつはうるさいから、解任議案を出してやめさせてしまおう」といった強硬手段に出ることも考えられます。その社外取締役は、解任されるにあたり、総会の決議方法や招集手続きが適正に行われるよう検査役の選任申し立てはできないのでしょうか。監査役や取締役が少数株主としての要件を満たしていればいいのですが、社外役員の立場で多数の株式を個人的に保有しているケースも少ないわけで、こういった解任議案が上程される株主総会では、指をくわえてその手続きの進捗を眺めているしかない、というのはどうも納得がいきません。

取締役や監査役から検査役を選任申立てを行うよう会社に要求するといっても、会社側が「公正にやるのだから、その必要はない」と言われてしまえばそれまでですし、機関として業務調査権を行使すればよいではないか、といっても、現実に投票箱の横にへばりついているわけにもいかないでしょう。書面行使のチェックもできないものと思われます。監査役にせよ、取締役にせよ、会社法831条による解任決議取消の訴えを提起しうる立場にありますが、提起できる期間は3カ月と限られており、事実上解任されて社内に立ち入ることができない者が、自己責任で証拠を集める手段はありません。また、後日の証拠保全手続きを活用したとしても、そもそも違法行為が行われたと疑われる事実を疎明する資料が手元にないわけですから、却下される可能性が高いと思われます。

たしかに自己の解任決議について異議を述べるため、というのは、そもそも監査役や取締役としての職務の範囲内だろうか?という素朴な疑問があります。しかし適切な監査役の職務や取締役の職務が不当に制限されたまま解任される、という事態は、株主の利益を損なうものであり、今回のトライアイズ社の謝罪広告のように「あれは間違いでしたので撤回して陳謝します」と後日言われても、もはや監査役としての地位は戻らず、株主共同利益も回復されないことになってしまいます。そうであるならば、たとえ解任理由が「能力不足、資質に欠ける」といった抽象的なものであったとしても、会社と対立関係にある監査役や取締役には総会手続きの公正性を担保する機会を付与することが必要になってくるのではないでしょうか。また平成17年改正会社法が、会社自身にも検査役選任申立権を認めたことからみても、手続きの公正を担保することのために、広く総会検査役制度が認められてもよいのではないでしょうか。

このように考えても、直ちに会社法の解釈によって認められるものではございません。ひょっとすると、今回のエントリーは大恥をかいてしまうような誤解があるかもしれませんし、あまりエラそうには言えないのですが、少なくとも私と同じように疑問に感じておられる方もいるかもしれませんので、あえて(赤っ恥を覚悟のうえで)エントリーにしてみました。

6月 25, 2012 株主総会関連 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2012年4月23日 (月)

オリンパス社臨時株主総会決議の瑕疵について(全くの個人的意見)

先週金曜日(4月20日)に開催されましたオリンパス社の臨時株主総会ですが、サンケイビズニュースや朝日「法と経済のジャーナル」等で詳細な報道がなされておりましたので、少しばかり総会の状況を知ることができました。開催時間は約3時間ということだったそうですが、同社関係者や参加された株主の皆様は、たいそうお疲れになったのではないでしょうか。前日までの書面投票の結果と包括委任状により、すでに賛否は総会前に決していたとしても、銀行出身の役員候補の方々に、30%以上の反対票が集まったそうですから、この反対票の重みは新執行部の方々にもかなりのプレッシャーになるように思います。

さて、元社長ウッドフォード氏の「株主」としての質問(事前質問状を提出していたもの)について、会社側がどのように回答するのか、非常に注目しておりましたが、一括回答方式を採用して、個別質問の際には「先ほど述べたとおり、英国の審判で争点となっているところなので、ここでは回答を控える、審判の中で明らかにする」と回答。つまり質問への実質的な回答を拒否されたようであります。ちなみにウッドフォード氏の事前質問状の全文がこちらからご覧になれます。これに対して、ウッドフォード氏は、会社法314条違反(株主総会における役員らの説明義務違反)を理由に総会決議取消の訴えを提起するかどうか検討中と報じられております。以下は全くの外野からの個人的意見でございます。

事前質問状の内容から推察しますと、ウッドフォード氏は各取締役、各監査役に対して「自分を解職にさせた理由、つまりウッドフォード自身の行動に重大な不正行為があった、とされる具体的な内容はなにか」説明を求めていたようです。おそらく、この具体的な内容を求めるなかで、自身が解職されるに至った経緯を説明してほしかったようであります。

しかしウッドフォード氏は株主の立場で質問をしたわけですから、なぜ監査役に固有の説明を求めなかったのでしょうかね?上程議案との関連で質問をしなければ総会決議の瑕疵につながらないため、と考えたのでしょうか。それとも取締役会で解職決議に同意した取締役の方々が、いまどのように考えているのか、その感想を述べてもらいたかったのでしょうか。しかし、自身を解任したことが不当だったのかどうか、という点は、取締役の職務の違法性に関する問題点ですから、当然に監査役に回答してもらうべき質問ではないでしょうか(もちろん、監査役自身の違法行為も関連するところではありますが)。

会社法314条は監査役にも株主総会における説明義務を規定していますので、その監査業務に関わる質問については概括的にでも説明をする必要があります。とくにウッドフォード氏を解任(正確には解職)した取締役会に出席していた役員の方については、取締役や監査役の責任調査委員会報告書でも「善管注意義務違反の有無」について重要な論点とされているのですから、取締役の職務執行の違法性については合理的な根拠をもって疑いが生じるところであります。したがって、監査役に何らかの説明が求められるところです。

一方、会社側は「ウッドフォード氏解任に重大な不正があるかどうかは、英国労働審判所で紛争中であり、ここでの発言が審判に影響を及ぼすおそれがあるため発言を控える」と回答しております。このあたりは、監査役が説明する場合にも同様の回答拒絶がなされるのかもしれません。たしかに裁判に影響を与えるような発言が求められるのであれば、回答を控えることについては、正当な理由になりそうな気もいたします。

ところで、英国労働審判所で争点となるのは、労働契約上の文言解釈の問題、つまり解雇するための正当理由があったのかどうか、という問題。いわば「民と民の私法上の関係規律」の問題です。しかしウッドフォード氏が真に聞きたかったところは、自身を解任するに至った経緯であり、これは主として「企業と一般株主との開示規律」に関する問題であります。オリンパス社は当初「ウッドフォードは代表者として不適格」とリリースし、その後もマスコミの騒動に「今後は根も葉もないうわさで当社のことを悪くいえば法的措置をとるぞ」と世間に対して恫喝しました。しかし、その後は一転して不正事実を認め、謝罪会見となるわけですが、それでもウッドフォード氏解任は「正しかった」としている。では、最初の「社長不適格」なる役員会の判断が重大な不正行為になるのかどうか(投資家や一般株主に対する虚偽説明になるのかどうか)、という点は、単純にウッドフォード氏とオリンパス社との私法上の問題ではなくて、オリンパス社の一般株主や投資家への情報開示における不正行為ではないか、ということこそ問題となるはずです。この点については、オリンパス社は一般株主に向けての説明義務はあるはずで、「審判中」なる理由では回答を全面的に拒絶することはできないものと思います(このあたりは、質問する側が、もう少し上手に質問すればよかったのかもしれません)。

現に、最近の山口義正氏の著書やウッドフォード氏の著書によって、「ウッドフォード氏をCEOに選任した役員会の決定は、オリンパス社のHPに英文では開示されたが、日本語では開示されなかった」という不可解な事実も判明しています。これに不信感を抱いたウッドフォード氏が元会長らの辞任を強く求め、その結果、自身が解任された、という事実関係は責任調査委員会報告書にも記述がありません。解任の2週間前に取締役会でCEOに選任されながら、わずか半月後に「あいつは不適格だ」とされること自体不自然ですが、さらに上記のようにウッドフォード氏が元会長らに辞任を要求することにあたり、きちんとした理由(動機)があった、ということですから、「社長不適格」なる理由がおかしい(つまり一般株主に虚偽の説明をしたのでは?)と思うのは一般的な株主の立場からすれば素直な印象ではないでしょうか。なお、説明義務を果たすといっても、質問への回答は概括的なもので足りるでしょうし、英国の審判に関連する部分については個別に発言を控える、という形であれば、それほどの負担でもなかったように思われます。

なお、説明義務違反が認められ、上程議案の決議取消の原因になるとしても、つぎに「裁量棄却」にあたるのではないか?という問題がありますが、これはまた別の機会に述べたいと思います。

4月 23, 2012 株主総会関連 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2011年8月30日 (火)

ゲオ社の企業統治(ガバナンス)と臨時株主総会

不祥事再発防止策、取締役のインサイダー疑惑(役員会での辞任勧告)、社外取締役選任のための臨時株主総会開催(10月13日)など、いつも私が関心を持ってしまいそうな話題満載のゲオ社でありますが、またまた筆頭株主の方による金商法違反に関する報道がなされております(毎日新聞のみが報じているようですね)。当局も事情を把握するために動いているとのこと。

これ、ずっと経過を追ってみますと、相当に社内事情が複雑な様子ですね(というか、社内事情については、もうすでにマスコミ等で報じられているのでしょうか?)誰が悪くて、誰が正義の味方・・・といった色づけがよくわからないところです。報道されていないような事情もありそうで、もう少し様子をみてから当ブログでも話題にしないと、関係者の方から怒られそうな予感がいたします(笑)。

ところでゲオ社の社内事情を調べていて初めて存じ上げたブログがございまして、これがなかなかオモシロイです。長年の株式投資のご経験から、総会での質問も鋭いようで。。ともかく株主総会に実際に行かれたレポートが満載でして、与党大物総会屋との会話なども書かれており、法学部生等、実際の株主総会の様子を知るうえではとても参考になるのではないでしょうか。法律面でわからないことがあると、「○○弁護士のブログを参考にしました!」といったように、きちんと調べていらっしゃる。マニアックさにおいては、当ブログは完全に負けておりますorz。ひょっとして、どっかでお会いしている方かなぁ。。。

来る10月13日のゲオ社の臨時株主総会にも出席予定で、レポートされるそうですから、とてもワクワクするブログであります(まだ、リンクさせていただいてよいものかどうかわかりませんので、ご興味がある方はご自身でお調べいただく、ということで・・・)

8月 30, 2011 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月28日 (火)

事業報告「社外役員に関する事項」の有用性ってどうよ?

また今年も暑い中、定時株主総会のため、D市民会館にやってくる季節となりました。昨年は180名ほどの株主の方々が会場におみえになりましたが、今年はおそらく(諸事情ありまして)200名を超えるのでは・・・・と思いながら、社外監査役として、前日の会場リハーサルに参加いたしました。

最新号の日経ヴェリタス(172号)では、日本経済研究センター主任研究員の方が「社外役員、姿の見える活躍を」と題して、会社法上では社外役員の活動状況の開示が義務付けられたにもかかわらず、取締役会への出席状況程度しか活用されていないことを指摘され、

「質的な貢献に関して事業報告に抽象的な記述しなないのは、特筆するほとどのすばらしい活躍をしていないからだと考えてもいいのかもしれない」

と締めくくっておられます。   

私はといいますと、招集通知記載の「社外役員の状況」欄を確認したところ、取締役会出席率はちょうど80%、ということでして、まずます・・・といったところかと。ただ今年は諸事情により、監査役と会計監査人との連絡協議会や経営者を交えてのミーティングが多数回ありましたので、いろいろ考える時間も含めますと、7年間でもっとも監査役としての業務に時間を割いたことは間違いないと思います。

ところで、「活動状況が義務付けられた」とされる根拠であります会社法施行規則124条4号では、社外役員の活動に関する開示事項が規定されておりまして、役員会への出席状況のほか、発言状況、当該社外役員によって重要な業務執行の決定が行われた場合にはその事項について、また不当、不正な業務執行を予防したようなことがあれば、その事項について記載することが求められております。こういったことを開示することで、社外役員の活動状況を株主が把握でき、社外役員の選解任権行使に役立てることが期待されているものと思われます。

しかし、これは前からずっと思っているところでありますが、実際に自分が社外役員を経験してみると(とても活躍しているとは申しませんが)、はたして社外役員の活動、とくに「質的な貢献」というのは「開示規制」になじむものなのか、常に疑問を感じるところであります。そもそも社外役員が発言した内容によって重要な業務執行が決定される、といったことは、インサイダー情報に関わるようなものであって、会社として「おいそれ」と具体的な内容を記載できるようなものではありません。たとえすでに公表されたものであったとしても、社外役員の意見を受けて、実質的に業務執行を決定するのは社内役員でありますから、社外役員の発言はあくまでも「参考意見」として扱われるのではないでしょうか。ましてや、「不当、不正な業務執行」につきましては、事後対応くらいであれば記載できるでしょうけど、「予防しました」など、はたして不祥事が早期に発見されて、重大事に至らなかったことをどこの上場会社が事業報告に記載するのでしょうか?(不祥事公表義務などというものを、取締役の善管注意義務のひとつとして認めるのであれば別ですが・・・)また、私もそうですが、社外役員の中には「独立役員」として証券取引所へ届出をしている者もいるわけでして、独立役員である旨も事業報告に記載されております。いろいろと株主のために発言するのは、私の意識としては独立役員だからこそ発言する意識が強いわけで、これは会社法上の開示の対象とはならないようにも思われます。質的な貢献という意味では、この独立役員としての発言のほうが株主の関心が高いと思われるのですが・・・。

役員会への出席状況、というものにしても、「名ばかり社外役員」を防止するインセンティブ程度にはなると思いますが、ホンネで申し上げれば、あまり社外役員の有用性判断には役に立っていないと思います。もちろん取締役会が実質的な経営判断を決する場となっている企業もあることは承知しておりますが、すでに回覧済の議案についての形式的な決議の場となっている企業も多いと思われます。そのような企業において、社外役員が本当に当該会社の人事、報酬、監査に影響を及ぼす、たとえそこまででなくても、重要な意思決定に参画するためには、経営会議や常務会、執行役員会、(監査役ならば)会計監査人との報告会に参加することのほうがよほど重要でありましょう。そのあたりは開示規制というよりも、説明責任を果たすなかで語られることでありますから、現実は「出席状況」「発言状況」程度の開示規制でやむをえないのかもしれませんね。

ダスキン株主代表訴訟で、ひとりだけ被告とならなかった(当時の)社外取締役の方のように、問題が発生してから社外役員の活躍が見えた、というのが真実ではないか、と。社外役員の「姿の見える活躍」というものは、平時の開示規制では期待できないように思えて仕方がございません。

6月 28, 2011 株主総会関連 | | コメント (2) | トラックバック (2)

2011年4月29日 (金)

有事の株主総会参考書類WEB開示に関する素朴な疑問

経済産業省が「当面の株主総会に関するガイドライン」を公表しておられます。そういえば日経新聞の4月15日付にて経産省の課長さんによるインタビュー記事が掲載されていましたね。3月決算会社の株主総会のご準備にはたいへん参考になるところかと思われます。

震災の影響により、紙の消費も控えたほうが良い、といったことで株主総会参考書類の株主への交付について、定款にWEB開示に関する規定を置く会社についてはWEB開示制度(会社法規則94条1項)が推奨されるそうであります。3月決算の上場会社の場合、約9割ほどの会社が定款でWEB開示を可能とする規定を置いているそうですが、実際に活用しておられる会社はごくわずか、というのが現実であります。(ちなみにWEB修正とWEB開示は異なります-念のため)

以下、上記ガイドランからの引用

2 考え方
現行法を前提としても、定款にウェブ開示の定めがある会社においては、ウェブ開示ができる事項についてはウェブサイト上での提供を行い、また、その他の会社においても必要以上の冊子を印刷しないことなどにより、印刷物の量を減らすことが可能と考えられる
3 ガイドライン
ウェブ開示について定款に定めのある会社は、株主の理解と協力を求めつつ、株主向け印刷物を削減することを検討することが考えられる

ネット環境等について、私は素人なもので、これは素朴な疑問なのですが、WEB開示というのは震災のような有事には耐久性が強いものなのでしょうか。WEB開示も、電子公告と同様、一定期間、継続してインターネット上で開示されていなければならないわけですが(会社法規則94条1項)、たとえば震災でサーバーが停止したり、被災者がネットにアクセスできない、という事態は考えられないのでしょうか。

ちなみに、江頭先生の「株式会社法」では、

電子公告と異なり、(WEB開示制度の場合は)開示の中断等の効果については定めはなく、法的瑕疵については実質的に判断される(第1版315頁)

とありますので、やはり継続開示に関する問題点、というものはありそうです。また、こういった法的瑕疵について株主が争った場合に、継続的に開示されていたことを、会社側がどうやって証明するのでしょうか。この証明方法は、計画停電によって左右されるようなことはないのでしょうか?(とりあえず株主の皆様には、証券取引所の招集通知PDFをみておいてください、といった注意喚起で足りるのかな?)このあたり、思いつきのために、私もよくわからないのですが、リーガルリスクについて若干の不安を抱きました。

4月 29, 2011 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2011年4月28日 (木)

ダイバーシティ-株主総会想定問答と「もうひとつの意味」

今朝(2011年4月28日)の朝日新聞の広告を読みながら、妻が驚く

「えぇ~!? もう信じられな~い! 祐ちゃんたら、まったくもう・・・・・。」(ちなみに、うちの妻は純粋な東京人でして、いまだに関西弁は一切話しません)

「私を抱いた祐ちゃんへ(ラブホテル写真付き)」(女性セブン)、とのこと。

内部通報の窓口や、内部告発代理人の仕事をしておりますと、こういったことはよくありますので、とくに珍しいものでもなく、私からしますと、「あらら、斎藤選手もやってしまったのね。若いし、独身なんだから。」程度のことなのですが、やはり女性ファンからすれば非常に厳しい評価が下されることになるのかもしれません。また、女性へのパッシングもあるかもしれません。(ちなみに私は本記事を読んでおりません)

私もセクハラやパワハラに関する女性の通報などを受け付けるたびに、どうしても「こんなの通報して彼女に何の得になるのか」「ひょっとして裏で取引があるんとちゃうか」とか「もともと交際していたけど、専務のほうが別の社員に手をだした はらいせ かな?」「派閥争いに彼女は利用されているのかな」などと動機を推測してしまいます。しかし、そうでもなさそう。

「自分の人生に区切りをつける」「同じ空気を吸いたくない」「強く生きていくための踏み絵みたいなもの」・・・・・・、よくわからないのですが、ともかく男性の頭では理解しにくい動機や理由が、社内における処罰を強く求める意識の根源にあるようです。どう考えても、私の頭では理解できないのですが、先の例のごとく、マスコミに面白おかしく(誇張表現も含めて)いろいろと書かれるよりは、社内でなんとか対処してすますほうが、企業としても信用を落とさないわけでして、リスク管理ということで一生懸命社内調査を行います。

美容整形医師の代理人業務などをしていても、同様のことを感じます。施術ミスに関する損害賠償事件の示談交渉などにおいて、男性の被害者には通用しないフレーズでも、女性の被害者には通用するのが

「あなたのような被害が二度とこのクリニックで起こらないように、あなたご自身の力を貸してください!あなたの手で、このクリニックを正しい方向に変えてください!」

なんで被害者である私が、お人よしにそんなことしなきゃならないの?と言われそうにも思うのでありますが(私なら逆に腹が立ちます)、けっこう女性被害者には紛争に冷静に対応していただくきっかけになる言葉となるのであります。正直、男性である私には女性の気持ちが理解できません。

最近、会社におけるダイバーシティ(人種の多様化)、とりわけ女性役員登用問題が議論されるようになりました。株主総会で株主から「おたくの会社はなんで女性の取締役がいないのか」と問われた場合の理想的な回答なども、想定問答集に記載されておりますね。たとえば日経ニュースで、西川善文氏が述べておられるところが、もっとも模範的なところではないかと。

役員や社員の多様性は、経営にとって最も重要な消費者ニーズの把握と深い理解、新たなビジネスチャンスの創出につながるものであります。この意識を全社に浸透させることが、ダイバーシティ経営を強力に進める上で重要と認識しております。いまはまだ役員にふさわしい女性が育ちつつある段階でして、今後の重要な検討課題と考えております。

たぶん、これで回答としては十分ではないかと。

しかし、ダイバーシティの本当の意味は、お互いにわかりあえない人間が集まって、わかり合えるための努力をする、もしくはわかりあえない者どうしでも、すくなくとも会社経営のレベルにおいては合意形成を行う、ということにあるのではないかと。「あ、うん」の呼吸程度であれば、女性役員でも十分に理解してもらえます。しかし、業界事情に精通しておられる女性の社外取締役の方でも、いざコンプライアンスに関する対処など、企業経営の根源にかかわる部分は「あ、うん」では済ますことができない。とくに取締役の利益相反にかかわる問題などについては、けっこう面白い見解が飛び出したりするケースもあります。「男と女は、おたがいにどんなにわかりあおうとしてもわかりあえないミゾがある」ということを認識したうえで、経営にあたることの認識、ということこそ、ダイバーシティの真意ではないでしょうか(もちろん、これを是とするか非とするかは別として)。

4月 28, 2011 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月 6日 (水)

サンコー(東証2部)、社長解任劇の顛末

昨年12月に「サンコー社、創業家社長解任劇の行方はいかに・・・」と題するエントリーを書きましたが、「東京弁護士」さんのコメントにもあるように、昨日(4月4日)、その解任劇に決着がついた模様であります。前回のエントリーで「このまま元社長は黙っているのでしょうか?」と予想したとおり、創業家である元の社長さん(現在は非常勤取締役)が反撃に転じ、このたび再度サンコー社の経営支配権を手にしたようであります。やはりパワーバランスは昨年12月の時点では崩壊していたのですね。

代表取締役の異動および役員の異動並びに労使共同宣言の撤回に関するお知らせ

今年2月に元社長さん(関係者を含め、50%以上の株式を保有する)より総会開催の要求があったにもかかわらず、会社側はこれに応じなかったため、元社長さんより臨時株主総会招集許可申立てが長野地裁に出され、この3月に許可決定が発令されたようです。株券電子化後、上場会社としては二番目の初めての株主請求による臨時株主総会が開催されることになります。(3月9日にJASDAQ佐藤食品工業さんの臨時総会における役員選任議案可決の例が初めてだそうであります。失礼いたしました。ご指摘いただきましたので訂正いたします。いつもいろいろな方からご指摘いただきまして、恐縮でございます。。。)

「労使共同宣言」の撤回、というのもスゴイですね。現在巷の話題になっておりますイオン・森トラスト共同体とパルコ経営陣との経営支配権争いも、本日パルコ側が従業員の「現パルコ経営陣支持」の宣言を取り付けたことが報じられております(産経ビズニュースはこちら)。45%以上の議決権ベースにおける株式を保有している共同体側ではありますが、やはりパルコ従業員の賛同がなければ企業価値向上は見込めないものと思いますので、これはパルコ側としての大きな反撃になりそうです。上記サンコー社リリースでも、早速「労使共同宣言」の撤回が伝えられておりますが、やはり敵対的買収や社内の支配権争いの場面では、労働者の支持をどちらがきちんと得られるか、ということが日本の企業社会では大きな意味を持つことが理解できるところです(すいません、海外ではどうか、という点につきましては存じ上げておりません)。

Sankochart 「勝てば官軍」と言われますが、こうやって元社長さんが再度経営権を握ってしまいますと、12月の社長解任劇は「クーデターにすぎなかった」と評される(ただ、昨年12月からの株価の動きと照らし合わせますと、これまたなかなか興味深い)。なお、元社長さんの名誉のために申し上げますと、この一連の騒動の終結において、ご自身が代表取締役の職に返り咲くことはせず、別の方を社長として選任するそうであります。またガバナンスの透明性を高めるため、法律専門家、会計専門家を社外取締役として選任する、とのこと。「解任劇」当時は新聞等でも報じられましたが、ここのところ震災関連ニュースが多いため、元社長復活劇については触れられておりません。そこで当ブログにてあえて報じることといたしました。(東京弁護士さん、情報どうもありがとうございました。)

4月 6, 2011 株主総会関連 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2011年3月30日 (水)

震災による定時株主総会の延期と「定款違反」(法務省の見解)

先週土曜日に「震災による定時株主総会の延期と定款違反」なるエントリーをアップして、「震災によって決算日から3か月以内に定時株主総会が開催できなくなった場合、会社法違反にならない点はよいとしても、定款違反はどうなるのだろうか?」との疑問を呈しておりましたところ、本日(3月29日)法務省から、「法務省意見」が出されたようであります。

定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて

東北地方太平洋沖地震の影響により,定款所定の時期に定時株主総会を開催することができない状況となっている株式会社があると考えられます。
特定の時期に定時株主総会を開催すべき旨の定款の定めについては,通常,天災等のような極めて特殊な事情によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合にまで形式的・画一的に適用してその時期に定時株主総会を開催しなければならないものとする趣旨ではないと考えるのが,合理的な意思解釈であると思われます。
したがって,東北地方太平洋沖地震の影響により,定款所定の時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,会社法第296条第1項に従い,事業年度の終了後一定の時期に定時株主総会を開催すれば足り,その時期が定款所定の時期よりも後になったとしても,定款に違反することにはならないと解されます。

前のエントリーでJFKさんがコメントされているとおり、「なにか株主総会の冒頭で株主の了解くらいはとっておく必要があるのでは」とのご意見もありそうですから、法務省の公式見解によって、とりあえずお困りの株式会社の監査役の方々には(スッキリできて)良かったですね。(まぁ、会社としては「配当権利落ち」の問題は残りますが・・・)

ただ、「特定の時期に定時株主総会を開催すべき旨の定款の定めについては,通常,天災等のような極めて特殊な事情によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合にまで形式的・画一的に適用してその時期に定時株主総会を開催しなければならないものとする趣旨ではないと考えるのが,合理的な意思解釈である」という理由(つまり定款違反にはならない、ということ)についてはどうなんでしょうかね?たとえば民法上は双務契約の帰趨につきまして、天変地変については契約の合理的な解釈の問題とはせずに危険負担の法理によって処理します。(一方の債務が天変地変によって履行困難となった場合には、もう一方の債務はどうなるか、という問題は、当事者間で明らかな合意がない限り、法律のルールによって処理します)会社法上の定款も会社と株主との基本的な契約であるとみるならば、天変地変を「契約の合理的解釈」の問題と捉えることは民法の趣旨と矛盾することにはならないのでしょうかね?逆に、なかには「強行突破」して総会を開催した会社もあるようですし、そのような会社においては「合理的な意思に反して株主総会をやりました」ということになるのでしょうか?ここで「合理的な意思解釈」という言葉を持ち出すのは少し乱暴な気もするのですが。。。

むしろ私が前回のエントリーで申し上げたような理由(「超法規的な許容事由」とみるか、定款の法的性質、つまり利害関係人の権利を不当に侵害しない範囲での例外的取扱いを許容する条項が含まれている)のほうが「有事対応」という意味においては乱暴ではない、と思うのですが・・・・・、いかがなものでしょうか。。。

3月 30, 2011 株主総会関連 | | コメント (4) | トラックバック (1)

2011年3月26日 (土)

震災による定時株主総会の延期と「定款違反」

読売新聞ニュースによって知りましたが、法務省が昨日(3月25日)「定時株主総会の開催時期について」と題するお知らせを公表されております。

東北地方太平洋沖地震の影響により,当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない状況となっている株式会社があると考えられますので,会社法の関連規定について,以下のとおりお知らせします。・・・・・

とのこと。金融商品取引法や商業登記法の関連規定との関係で、6月に定時株主総会が開催できなくても(3月決算の場合)会社法上違法ではない、と説明する意義はあるとしても、定款には「基準日は3月31日とする」「当社は毎年6月に定時株主総会を開催する」と定めているところも多いわけでして、定時株主総会の延期と「取締役会決議の定款違反」との関係はどうなるのでしょうかね?(^^;

会社法上、「延期の決定」というのは株主総会による機関行為ですから(会社法317条)、開催前に取締役会が「延期」を決めることはできるのでしょうか?ちょっと無理っぽいですね。いったん開催しておいて「延会」という処置をとるのも現実的でないし。。。

会社に損害が生じない以上は株主による差止請求の対象になるとは思えないのですが、監査役の立場からしますと、取締役の意思決定が「法令定款違反」に該当しないのかどうか、監査する必要があるものですから。。。まぁ、株主総会を開催したくても議決権の書面行使や電子投票も含めて物理上困難な場面が予想されますし、社内における準備もできないといことですから、会社法違反行為に該当しないのであれば「特別事情」とみるべきかもしれません。また、そもそも定款では実務慣行として「通例」を定めたものであり、例外的取り扱いを一切許容しないものではない条項も含まれていると考え、開催時期を延期することが株主の権利行使の面からも適切な事情があれば開催時期の変更も許容される(定款違反にはあたらない)とみるのか。 いえ、ふと思ったもので・・・・・・

3月 26, 2011 株主総会関連 | | コメント (3) | トラックバック (1)

2010年6月24日 (木)

株主総会の議決結果開示にみる「社外役員の独立性」への期待度

月2回発行となりました金融法務事情の記念号(1900号)はなかなかオモシロイ!一冊まるごと「SESC(証券取引等監視委員会)特集号」、オールキャストによる執筆ということで、まさに「SESCのいま」を知るには最高の読み物になっております。(強いて挙げればPCAAOB-公認会計士・監査審査会-についても特集の中でとりあげていただきたかった、というのが感想でありますが。)米国SEC(証券取引委員会)は2009年11月現在で、その内部統制には「重要な欠陥」があるとGAO(会計検査院)から評価を受けておりますが、日本のSESCの内部統制はどうなのでしょうか?先日のエフオーアイ調査などの活躍に代表されるように、適正なものと評価されるのでしょうか?

さていよいよ株主総会シーズンも真っ只中となりました。連日、「どこの会社のCEOが○億円もらってる」というニュースが飛び交っておりますが、情報開示は役員の個別報酬だけではなく、議案の賛否に関する株主の「議決権行使結果」もルール化されるようになり、なかなか興味深い結果も開示されております。日経新聞電子版のニュースで知り、ちょっと驚きましたのはバンダイナムコHDさんの株主総会で、社外監査役選任議案に45%の反対票が集まったそうであります。(第5回定時株主総会の議決権行使結果に関するお知らせ)他の役員さん方(取締役、監査役を含め)への反対票がほぼ均一(25%程度)ですから、この反対票の比率は異様に高いわけでして、私がこの候補者の立場だったら、かなり落ち込みますよ。。。(>_<)。。

弁護士の社外監査役候補者の方に関する議案でありますが、日経新聞電子版によりますと、この候補者の方は、バンダイナムコHDさんの子会社であるバンダイ社の法律業務を担当され報酬を得ていることから、米国の議決権行使助言会社は「社外監査役として疑問がある」と意見表明をされていたとのこと。しかし賛成票55%ですから、かなりの株主さんが同様の疑問を持ち、本当に「薄氷を踏む思い」での可決だったようであります。当該弁護士の方は、企業法務を取扱う法律事務所の方で、株主総会指導などに詳しい専門家でいらっしゃるベテランの先生ですから、このたびの議決権行使結果についても予想されておられたのでしょうか?(^^;;それとも、ちょっと意外な結果だったのでしょうか?

以下は私の個人的な意見でありますが、当該候補者の場合、会社法の社外監査役の要件に抵触することはありませんので、法律的に社外性に疑問がある、ということにはならないと思われます。(当該会社の顧問弁護士でも、社外監査役に就任することはとりあえずOK、と言われておりますし。)ただ、かなり問題を抱えていることは事実ではないかと考えます。たとえば親会社の社外監査役は、子会社の調査権を有しています。調査した内容に問題があれば(つまり親会社取締役の職務執行の適法性に疑問があれば)、株主に対して説明をしなければなりません。しかしながら、当該社外監査役が弁護士として子会社業務に関与しているのであれば、弁護士倫理上守秘義務がありますので、監査役の調査に対しては回答を拒否しなければならない場面が想定されます。しかしこの回答拒否は会社法381条4項の「調査を拒絶する正当な理由」には該当しないものと思われます。つまり、弁護士としての職務上の守秘義務と、社外監査役としての調査権行使、説明義務とが相対立する場面が想定され、潜在的な利益相反関係が生じる可能性が高いと思われます。このような状況が想定されるにもかかわらず、当社の経営企画室の方がおっしゃっているように「一般株主との利益相反関係にはなく、独立性は確保されている」とのことであれば、なぜそのように言えるのか、合理的な説明が必要となるのではないでしょうか。

もちろん合理的な説明がなされれば「セーフ」なのかもしれませんが、私としてはやはり「説明の必要性がないほどの外観的な独立性」を一般株主の方々は社外監査役候補者に期待しているものと考えます。実際の監査役の業務は、これまでバンダイナムコ(もしくはその子会社)のお仕事に関与されていた方のほうが、内情もよく知っておられるでしょうから、妥当性監査も含めて適任なのかもしれません。ただ、一般株主の利益が毀損されるおそれのある事態は、平時というよりも有事に関連する重要な業務執行に関するものであります。「取締役会」の監督機能よりも監査役の監督機能が重視されるのも、やはりそういった有事の際ではないでしょうか。一般株主と経営者との情報の非対称性を補完して、一般株主の利益保護の視点から物が言えるのは、独立かつ中立の立場で監査業務に没頭できる立場にある方ではないかと思われますし、そのためには(少なくとも)誰がみても外観的に独立性が維持されておられる方が適任である、と自然な感覚として判断できそうであります。

「そのへんのオッチャンを連れてきて社外監査役に選任したらええがな~♪」というわけにはいかないことは重々承知しておりますし、会社法務に精通しておられる法曹の方だからこそ、「この人なら問題はない」と会社が太鼓判を押されるのもよく理解できるところでありますが、 「社外性」と「独立性」は今後区別して考える必要があり、どこの上場会社さんにとっても、社外役員の「独立性」への配慮につきましては、この議決権結果開示の制度が、今後ボディブローのように効いてくるように思えるのでありますが、いかがなものでしょうか。これは就任時の人的属性だけの問題ではなく、たとえば2期8年を超えて「社外監査役」として居座る方にとっても要注意ではないかと。。。

6月 24, 2010 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年6月17日 (木)

役員報酬開示問題と総会リハーサル

6月25日と29日が今年の株主総会集中日だそうでありまして、私が社外監査役を務めている会社も25日(第二集中日)開催であります。すでに有報や招集通知で1億円以上の報酬を受け取っていらっしゃる役員さんについて開示された上場会社もあるそうですが、3月決算会社様は、いままさに株主総会リハーサルの真っ最中ではないでしょうか。そういえば今年は海外機関投資家による提案権行使・・・という話題はほとんど出ませんね。

役員報酬開示問題につきましては、上場会社といいましても、外国人株主比率の高そうな大企業さんであれば、それなりにまっとうな対応をされるところも多いと思いますが、中小の上場会社さんにとりましては、やはり新聞等で紹介されているような方向には向いていないところもあるようですね。ブログネタとしては面白いのでありますが、九州怪計士さんより関連エントリー「役員報酬を開示する本当の意味はどこにあるのか?」にいただきましたコメントによりますと、役員報酬個別開示のルール化の影響で、取締役から顧問に「変身」される予定の役員さんもいらっしゃるとか。今年はダメでも、来年からは報酬開示の対象とはならない、ということで・・・・こんなのアリ?(^^;;  )怪計士さんはまじめに憤っておられるので、「法の砦」として、あんまり笑い話でご紹介するのも不謹慎ですが。。。汗

あと、今年も数社の総会リハーサルにおじゃましましたが、どこも「役員報酬の個別開示はしないのか?」といった想定質問を検討されているようであります。ちなみに多くの想定問答集では、「どっちみち有報でわかるんだから、総会でも真摯に回答しましょう」ということが書かれております。しかし有報は「開示」の世界ですが、総会における質問回答は「説明責任」の世界ですよね。わかりやすく株主へ説明する必要があるわけでして、有報で開示するのと同じ、というわけではないように思います。リハーサルのなかで、「1億円もらっている役員はいるか?」といった質問への答えは簡単でありますが、「報酬決定方針を知りたい」とか「業績連動部分の比率を知りたい」とか「執行役員分と取締役分との比率は」など、(本来、現実的には総会で質問が出る可能性がかぎりなく少ないにもかかわらず)総会リハーサルで想定問答をしなければいけない・・・というあたりが、社内的にも若干きまずい雰囲気を醸し出しているような気がいたします。

「うちには決定方針はありません。都度、取締役会における経営判断にて決定しております。」というところも多いかもしれません。ただ業績が良い会社様であればいいのですが、そうでない会社様では株主さんからツッコミが入ることもあるでしょうね。「○○会社、役員報酬を開示」といったニュースが増えれば増えるほど、総会がやりにくくなる会社様も増えるような気がいたします。

6月 17, 2010 株主総会関連 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2010年2月19日 (金)

社外取締役には株主総会への出席義務があるのか?

今朝(2月18日)の日経新聞のベタ記事で見つけましたが、2月24日に開かれる法制審議会に会社法制の見直しが諮問されるようであります。企業統治のあり方や親子会社に関するルールなどが検討課題となるそうでありますが、これって民主党が制定に意欲を持っておられる「公開会社法(仮称)」に関する諮問ということなんでしょうね。でも、周囲のいろんな方々とお話していても、新法が制定される現実味がないですよね。結局この記事にありますように会社法の一部改正、金商法と会社法の交通整理、あたりで十分有意義な審議ができそうですし、とくに公開会社法なる新しい法律の制定が審議の対象にはならないものと思われます。(あくまでも個人的な推測でありますが)

ただ昨年の企業統治研究会や金融庁スタディグループあたりの報告書提言を基に、今度は会社法マターで企業統治のあり方が議論され、法制度への落とし込みが検討されるものと思われます。おそらくまた注目されるのが「社外取締役制度導入論」だと予想されます。ZAITENあたりでも特集が組まれております「社外取締役」でありますが、著名人の社外取締役の方々は、何社も掛け持ちされているために、おそらく定時株主総会にも欠席がちになってしまう方もいらっしゃるものと聞き及んでおります。そこで本日は「はたして取締役には株主総会へ出席する法的義務はあるのだろうか?」というお話であります。

ちなみに法律・会計関連の某大手出版社が毎年発行していらっしゃる「平成22年版 株主総会の準備・・・」には、<社外取締役の欠席>に関する想定問答が掲載されておりまして、株主様が

「社外取締役の○○さんは大事な株主総会だというのに欠席しているではないか。総会にも顔を出さないような○○さんを選任したこと自体、問題ではないか?」

との質問をぶつけますと、社長さんが

「○○さんは取締役会には全回出席しておられ、またいつも貴重なご意見をいただいております。たしかに総会は大切ですが、総会への出席を条件として選任しますと、候補となる人が限定されてしまい、優秀な人材を確保することができません。また総会では私たち社内の者で説明は十分できると思いますので、どうかご理解のほどお願いいたします。」

との模範回答。(概ね、こんな感じの回答例でした)

たしかに回答例としては模範的なものだとは思うのでありますが、ちょっと気になりましたのが、(おそらくその本の監修をされていらっしゃる著名な法律事務所のご見解ですが・・・)総会は貴重な場ではあるが、法律上は取締役・監査役全員の出席が義務付けられているわけではない、との解説であります。この「取締役・監査役全員の出席」というのは、株主総会という機関における決議の効力要件からみたイメージであるならば、たしかにその通りだと思います。しかし、上の想定問答で問題となるのは個々の取締役にとって、果たして株主総会に出席すべき法律上の義務があるのか(ないのか)ということであります。そうだとしますと、社外取締役も含めて、会社の役員さんには株主総会での目的事項に関する説明義務が会社法上は規定されておりますので(法314条)、この条文からしますと取締役さん(監査役さんも同様)には株主総会への出席義務は法的にも認められるものだと思われます。「新会社法概説(大隅・今井)」や「逐条解説会社法第4巻(浜田解説)」も、当然に取締役には総会への出席義務あり、とされております。

ということは、たしかに多忙であることは承知しておりますが、社外取締役が株主総会に欠席されるのは、法的には義務違反(任務懈怠)に該当することになります。ところで、株主に対する説明義務というのは、とくに担当の取締役がされなくても、たとえば執行役員を履行補助者として説明させても構わないわけですので、とくに当日は出席せずとも説明義務違反にも該当しないのではないか(したがって出席義務はないのでは?)、という理屈も考えられそうであります。しかし、出席している株主様からは、目的事項に関してどのような質問が出るのかは当日になってみないとわからないのですから、やはり出席義務を否定する根拠とはなりえないものと考えます。

とりわけ報告事項も「株主総会における目的事項」であり、事業報告には社外役員の状況についての記載があります。また、そもそも社外取締役は一般株主の利益保護を目的として選任されており、社内取締役よりも株主に近い立場にあるのが通常の感覚でしょうから、そのような立場にある取締役が総会に欠席する、ということは、法的な義務違反といわれても仕方ないように思います。(ただ、欠席したことが決議の効力に影響を与えるとか、直ちに解任事由に該当する、ということではありません。)社外取締役にはお忙しい方が多いと思いますし、相変わらず総会集中日というものがありますので、やむをえない場合もあり、想定問答としては上記のあたりが無難かとは思いますが、ただ決して「総会に出席する義務はないのだ」などと開き直ることだけは回避されたほうがよろしいのではないかと。

2月 19, 2010 株主総会関連 | | コメント (6) | トラックバック (0)

2010年2月12日 (金)

役員報酬の個別開示(金商法・内閣府令改正)と会社法の役割

(12日午後6時;追記あります)

毎年この時期になりますと、6月総会準備に向けたマニュアル本が次々と出版され、また企業法務に精通された法律家の方々によるセミナーが多数開催されるわけでありますが、今年は証券取引所のルール改正だけでなく、まだこれから金商法上の政省令の改正がある・・・ということで、ちょっと総会ご担当者の方もたいへんですよね。たとえばニュースにもありましたが、金融商品取引法関連の内閣府令の改正が近々予定されていて、いちおう3月決算会社から施行される・・・ということらしいので、有価証券報告書の早期提出も考えますと事業報告関連のネタと同時に6月総会にも影響が出てきそうであります。

本日(2月11日)、株式持合いや議決権行使結果(発行会社による)の開示と併せて、役員報酬の個別開示が義務付けられる、といったニュースが報じられております。そういえば昨年5月23日にリリースされておりました野村証券金融経済研究所の個人株主1000名アンケートの結果によりますと、ネットで議決権を行使すると回答した方々の4割が「役員報酬の決定」いついては反対の議決権を行使する・・・とのことですので、個別開示は開示規制における趨勢になりつつあるのかもしれません。もちろん使用人兼務取締役の場合の「使用人」部分の給与については開示の対象にはならないものと思いますが、それでもおおよその役員報酬は個別に明らかになりそうですね。「誰がいくら」という、平面的な関心よりも、むしろ複数年を比較して、各役員の個別報酬がどのように変化しているか、ということに興味が湧くところであります。バランスが悪い場合には、個別報酬額を一任されている取締役会や代表取締役の説明を求めるシーンなども想定されてくるのでしょうね。

ところで上場会社の場合、(経済団体からの反対が強く、まだ制度の詳細については流動的、ということだそうでありますが)役員報酬の個別開示が義務付けられ、また役員選任に関する議決権行使結果が開示される、ということになりますと、先のアンケート結果からみましても、総会の時点で、つまり事業報告の時点で役員報酬の個別開示を求めたくなりますよね。(可決選任されることは明白であったとしても、報酬額に不満を持つ株主の否決票が集まることで「抗議をしたい」という強いインセンティブが働くのではないでしょうか。実務的には役員選任議案は一括上程されますが、役員報酬の個別開示制度と議決権行使状況の開示制度が導入されるとなりますと、各候補者別の議決権行使を求める株主のご意見も無視できないようにも思われます。)しかし会社法上の事業報告では役員報酬の個別開示までは義務付けられていませんので、原則として取締役会もしくは代表者が個別報酬について説明義務を負うものではありません。有価証券報告書を早期に任意提出される会社であればとくに問題はないでしょうが、そうでない会社の場合、株主総会で個別開示を求められるケースにはどのように対応されるのか、とても興味の湧くところであります。(とくにインサイダー情報ではありませんから、株主の要望に応じて任意に説明することもできそうな気もしますが・・・)このあたりにも会社法と金商法の狭間の問題が存在するのでしょうか。ほとんど思いつきの疑問ですので、どっかで基本的な誤りがございましたら指摘していただけますと幸いです。

(追記)金融庁HPにて、改正開示府令案が公開されております。意見は3月15日まで、ということだそうです。

2月 12, 2010 株主総会関連 | | コメント (12) | トラックバック (0)

2010年1月12日 (火)

投信運用会社による議決権行使状況の開示義務付け

今年の株主総会に関連する話題でありますが、投信運用会社が投資先企業への株主議決権の行使状況を各社が個別に開示するように(投資信託協会が)義務付けるそうであります。(日経ニュースはこちら。今年5月、6月総会の集中期から導入とのこと)上場会社が総会における議決結果(賛否の結果)を開示することにつきましては、取引所の要請がありましたが(たとえば東証「株主総会議案の議決結果の公表についてのお願い」)、こちらは機関投資家(および運用会社)の受託者責任の履行という観点から、ガバナンスの強化を図る、ということのようであります。

私もよくは知りませんでしたが、これまではこちらにあるように投資信託協会が、まとめて行使状況を開示しておられたのですね。ちなみに、このあたりの問題点は金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」の第19回(平成21年2月10日)議事録(金融庁HPより閲覧可能)が参考になるかと思います。私などは、そこで展開されている(推進派でいらっしゃる)岩原教授のご意見が、まことに正論のように思うのでありますが、運用会社のなかには、金融機関のグループ会社が含まれておりますので、議決権の行使状況を開示すると、「発行会社にご迷惑をおかけしたり、無用に発行会社や、そのエージェントから圧力がかかったりして無用にコストがかかる」ということで、かなり反対意見も強かったのではないかと思われます。(実際、こういった事務手続の増加は手数料に影響してくるのでしょうかね?)ちなみに三菱UFJ投信さんなどは行使状況を開示されておられるようですが、この程度であればとくに発行会社に迷惑をかけたり、圧力をかけられる・・・というほどでもないように思うのでありますが。。。

これが果たして個別の企業のガバナンス強化につながるのかどうかはわかりませんが、議決権行使状況を各社で比較できたり、議決権行使ガイドラインの変更だけでなく、行使状況の変遷自体もわかるようになるため、おそらく各運用会社における説明事項は増えるものと思いますので、市場による(全体での)ガバナンス強化へのインセンティブは高まるのではないでしょうか。

1月 12, 2010 株主総会関連 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年12月15日 (火)

日本興亜損保・臨時株主総会開催禁止の仮処分申立の行方

当ブログでも、過去2回ほど話題として採り上げました日本興亜損保・損保ジャパン統合問題でありますが、12月22日の(統合承認に関する)日本興亜損保の臨時株主総会開催を目前にして、6名の個人株主の方々による総会開催禁止の仮処分命令申立事件が東京地裁第8民事部に係属したそうであります。損保ジャパン側が今年5月に発行した劣後債(1280億円)については、年度末以降に生じた財産状況に重要な影響を与える後発事象であるにもかかわらず、日本興亜損保側は、招集通知の参考書類のなかでなんら記載がされていないことを捉え、取締役による招集手続きに法令違反があるとして株主による差止請求権(会社法360条)を根拠とされているようです。(民事保全法23条2項。差止請求権を被保全債権とする株主総会開催禁止の仮処分申立て-議案の決議をすることの禁止ではなく、総会自体の開催禁止を求めるもののようですね。)

すでに11日の時点で数社のマスコミが、この仮処分申立ての事実を報道しておられたようですが、単にニュースとして報じられていることをお伝えするだけでは、このブログでエントリーする意味もあまりないように思います。むしろ、先日のトライアイズ社の株主総会直前期のように、会社が報じていないような情報がWEB上で公開されている・・・といった事例におきまして、いろいろと検討することに意味があるものと考えております。ということで、ある方から教えていただきましたのが、「日本興亜損保の真の発展を願う株主有志のHP」であります。たしかに、多くの掲示板で話題になっているとおり、元社長さんと現社長さんとのバトルの続きであり「どっちもどっち」と冷静に受け止める向きもあるかもしれませんが、企業コンプライアンスの視点からすれば、法令違反がそのまま「力によってねじ伏せられる」ような事態については正されるべきものであり、もし「力がまかりとおる」のが株主民主主義だとしましても、それはきちんと株主が力を発揮できるだけの正しい情報が(議決権を書面で行使する株主も含めて)入手されることが不可欠の前提と考えます。

この株主有志の方々のHPには申立書面が掲載されておりますが、統合予定会社(正確には持ち株会社を新設するものですが)の劣後債発行に関する事項はきちんと日本興亜損保側も開示義務があることについて、独立した公認会計士さんの意見書までとりつけておられるようであります。なかなか興味深い仮処分事件ではありますが、会社法360条(1項および3項)の解釈として、何点か疑問点がありますので、おそらくそういった疑問点が東京地裁での審尋のなかで検討されたうえで最終的な判断が下されることになるものと思われます。(和解的な解決はなさそうですね)なお、進行中の裁判における主張上での疑問点について、ここで述べるのは(たとえ場末のブログであっても)ルール違反でありますので、現時点では私見を述べることは差し控えさせていただきます。いずれにしましても、団塊の世代の方々が、ビジネス世界の最前線からリタイアされるケースが増える中、こういったOB株主による総会でのバトルはどこの上場会社でも今後は起こりうる事態であります。マスコミや大株主、そして会社側による情報だけでなく、その渦中にいらっしゃる紛争当事者ご自身の真摯な主張(意見)に冷静に耳を傾けますと、また外からみた経営陣の違った姿が映し出されることもあるかもしれません。OB株主側を支援するとみられていた日本興亜損保の大株主さんが、どうも現経営者を支援するらしい、といった報道が先行したことで、こういった裁判に至ったのかもしれませんが、そういった背景事実を抜きにしても、ビジネス法務に関心のある方は一度覗いてみる価値のあるWEBページだと思います。(ところで、保険金支払い遅延問題を採り上げたときにも申し上げたのですが、こういった株主による取締役の違法行為差止め請求が認容された場合、監査役さん方はどうなるのでしょうか?これはこれで、別途大きな問題になるように思うのでありますが・・・・・)

企業コンプライアンス関連では、「しまむらVS加茂市」がたいへん興味深い事件でありまして、そっちをエントリーしようかと思っておりましたが、上記のHPを見つけて読みふけってしまいましたので、日本興亜損保さんの話題を優先いたしました。

12月 15, 2009 株主総会関連 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2009年12月11日 (金)

株主総会の有事を平時に考える-委任状勧誘規制の実務-

定時株主総会における「有事」といいますと、(退場命令に関するエントリーで書かせていただいたような)問題株主の登場だとか、OB株主の質問権行使、さらには剰余金処分に関する修正動議が持ち上がったときなど、総会当日の危機対応を連想することが多いと思われます。しかしながら、企業の経営支配権の異動を伴う可能性のある「有事」となりますと、やはり株主提案権が行使される場面のほうがよほど重大な局面になるわけでして、そうしますと遅くとも総会の8週間ほど前から本格的な有事に突入することになります。こういった重大な局面の対応について、なかなか平時からリスク管理を行うことは困難かもしれませんが、ひとつ検討しておいて損はないと思われるのが委任状勧誘規制に関わる問題だと思います。平成19年のモリテックス事件以来、学者や実務家の方々から商事法務や金融商事判例などでも秀逸な論文がいくつも出されておりますが、このたびの大阪証券取引所金融商品取引法研究会における加藤先生(東大准教授)の発表内容と、ずらりと並んでいらっしゃる商法の大家の皆様のご議論は、こういった平時における総会対応としては、かなり参考になるものであります。(この「大証金商法研究会」ですが、リリースされたものはなかなか有益なものであります。こういった議論を拝読しておりますと、やっぱり昭和49年改正とか、56年改正などに携わっておられた方の「歴史」話も大事ですし、会社法と金商法の役割の違いや立法論と解釈論の仕訳そして集団的解決法理の重要性など、商事法の原則論に立ち返って議論することの大切さがよくわかります。)

大証金商法研究会のメンバーは学者の方々ばかりで構成されておりますが、そこで発表されているもの、また議論の内容は決して「高尚な空中戦」ではありません。たしかに取締法規違反が私法上の効力に及ぼす影響など、かなり学術的に高尚な論点も出てまいりますが、むしろ非常に企業実務に近いところでのご議論が中心となって展開されております。たとえば今回の委任状勧誘規制に関する議論も、日本ハウズイング社と原弘産社とのバトルを例に上げて、「果たしてあれは本当に委任状勧誘規制に違反する行為だったのか?」といった話題に触れておられますし、また加藤先生の委任状勧誘規制違反に対する私法的なエンフォースメントの在り方への提言などは、そのまま実際に裁判(差止仮処分や決議取消訴訟等)で争われる可能性が高いものであります。また、法廷で白黒付けるほどのことでなくても、「あなたの行為は金商令違反である!」といったけん制球を投げるときの一応の法的根拠にもなりうるわけでして(むしろ実務的にはこっちのほうが重要かもしれません)、会社と株主とのバトル(有事)において、どのような支配権争奪の態様が考えられるのか、平時から検討しておくには貴重な資料になりそうであります。

株主の議決権行使に関わる問題といいますのは、会社法(書面投票制度)と金商法(委任状勧誘制度)との連続性が極めて不明な場面(神田先生の整理による-商事法務1865号8頁参照)であり、学術的にも議論の盛んなところでありまして、上場会社法制における今後の検討課題のひとつとされております。このような印象から「学者の先生方でいろんな議論を尽くしていただいて、その結果を実務にフィードバックしていただければいいのではないか」、といった感覚を(少なくとも私は)持っておりました。しかし、このたびのリリースを拝読し、公開買付けの場面や経営支配権争いが発生した場合には、会社側株主側から、一般株主に対していろんな「呼びかけ」がなされるわけですから、むしろ法律上の論点はそういった上場会社の有事が発生して、そこから生まれるものが多いように感じました。法律上の紛争として司法的な解決方法を検討することも大切ですが、むしろコンプライアンス的な発想から、どこまでなら「力技」として使えるか(委任状勧誘規制に抵触しないか)といったことも、現実の場面では要請されるのかもしれません。(そのあたりの仕訳ができる弁護士が、けっこう企業から求められているのかもしれませんね)大証研究会の取り扱うテーマは、こういった企業実務に近いところの会社法、金商法の話題が中心のようですので、企業法務に携わる実務家の方々にもたいへん参考となるものだと思いご紹介させていただきました。(まだご存じない方もいらっしゃるかと思いましたので。)

12月 11, 2009 株主総会関連 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年10月15日 (木)

株主総会の議決結果、賛否票数開示義務化?

(TYさんのコメントを受けて、若干トーンダウンした内容にしております。さすが「BLOGOS」の編集者の方も、そのあたりを意識してか、私のブログのタイトルが修正してある・・・・・笑 いやいや、ホント実名ブログってコワイですね。。。汗)

10月14日の日経朝刊の記事によりますと、東証は株主総会の議決結果について、可決・否決の結果だけでなく、賛否票数まで公表するよう上場会社に要請する方針である、と報じられております。(来年6月の株主総会から実施を求める方針、とのこと)ただし、「要請」とありますが、義務とするのか、努力義務、とするのかはよくわかりません。

今年6月17日にリリースされた金融庁スタディグループ報告(~上場会社等のコーポレート・ガバナンス強化に向けて~)でも「議決権の行使を通じた適切なガバナンスの発揮」の一環として「上場会社等による株主総会議案の議決結果の公表」として賛否票数の開示が速やかに実行されるべき・・・と提言されており、これを受けた東証「上場整備プログラム2009」のなかでも「速やかに実施されるべき事項」として含まれておりました。なお、2009年の株主総会でも、議案への株主の賛否公表企業は31社(2008年は4社 大和総研さんの調査による)と大幅に増えておりますので、議決結果の賛否票数開示の流れは予想通りのところかもしれません。

ただ、この記事では「前日までの議決権の書面行使に関する結果の公表」なのか、「当日の株主総会の場における出席株主の議決権行使結果までの公表」なのかは定かではありません。たしかに投資家(株主)に対して透明性の高い経営を促す、という趣旨からすると、総会当日における議決権行使の結果までを(後日WEB上にて)開示することまでを要請することが妥当ではありますが、前記金融庁スタディグループでも議論されていたところですが、当日出席株主の賛否票数の開示となりますと、その迅速かつ正確な集計は非常にしんどい作業を伴うところであります。(たとえば先に書面で行使したり、ネットで議決権を行使した人が、委任状を渡して代理出席したり、本人自ら出席してきた場合の確認作業や、議案に対する修正動議がなされた場合の議決権行使書面による投票者の賛否の解釈など。まあ、現実には株主提案権が通りそうな株主総会では、実際に当日の集計作業までやっているわけですから、やれないわけではないとは思いますが・・・・・)また、前記スタディグループ報告でも、とりあえず前日までの議決結果の公表だけでも意味がある・・・との記載がなされており、当日の賛否票数まで集計することまで絶対に必要とまでは求められていないニュアンスが感じられます。

いっぽう、以前にも述べました通り、経営者と株主との対話を促進し、株主への説明責任を尽くすための「賛否票数の開示制度」ということであれば、前日までの議決結果の公表ということになりますと、たとえば大株主の議決権(10%)について包括委任状をとりつけている場合(たとえば当日の手続き的動議がなされた場合に備えて)とか、取締役たる創業者が当日出席株主として名を連ねているケースでは、(それらの票数が前日までの行使結果には含まれておりませんので)真実の議決結果の開示とは言えないはずであり、透明性を向上させるために説明責任を尽くした・・・とは言えないことになりそうです。

私が情報に疎いだけかもしれませんが、もし当日出席株主の賛否票数まで開示する・・・ということになりますと、株主総会決議取消事由が発生しないよう、それなりの準備が必要かと思います。私がいつも参考にさせていただいている「株主総会ハンドブック」(商事法務)あたりにも、このへんの対策は記述されていないようですが、三菱UFJ信託に在籍されていた中西先生(現 同志社大学教授)の「株主総会と投票の実務」(商事法務1,600円 税別)は、このあたりの投票実務の事務手続きをかなり詳細に解説しておられますので、参考になろうかと思います。(中西先生は、当然のこととして、当日の賛否票数も開示すべきである・・・との立場で執筆されているようですね。最近活用実績が伸び悩んでいるとされるプラットフォーム制度や、これからの電子株主総会の可能性などにも言及されており、コンパクトな本ですが、株式実務にとっては貴重な一冊であります。)

10月 15, 2009 株主総会関連 | | コメント (9) | トラックバック (0)

2009年8月21日 (金)

来年の株主総会は準備がたいへんかも・・・(総会議案の議決結果の公表)

せっかく「日刊ココログガイド」でご紹介をいただいているにもかかわらず、マニアックな話題で恐縮なのですが、今年7月末までに株主総会議案の議決結果(賛否割合)を公表した上場会社が、昨年の8倍(4社→31社)に増加しているということのようであります。(8月9日付け読売新聞ニュースによる。)上場会社の株主総会において、議案が可決されたのか、否決されたのかは、実際には総会前日までにほぼ判明するので(書面による議決権行使)、総会当日には出席株主による拍手をもって賛否を問う、また全株主に対しては可決、否決の結果のみを通知するのが一般的でありますが、この総会前日までに集計した(賛否の票数をもとに)賛否割合を総会終了後にWEB上で公表する企業がかなり増加している、ということですね。

6月に公表されました金融庁SG(わが国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ)報告書におきましても、「開示によって企業のガバナンス向上を図るためには、株主や投資者の行動にかかっているので、株主や投資者による経営監視の機能を高めるために会社が説明責任を尽くす」ための手法として、この(上場会社による)議決結果(賛否の票数)の公表が提言されており、おそらく法定開示もしくは取引所ルールとして制度化されていくのではないか、と推測されます。なお、総会当日の議決権行使結果まで集計することは、ルール化としてはたいへんなところがありますので、(先のSG報告書のニュアンスからみても)前日までの書面行使、電子投票分の集計作業の結果を開示する、ということになるのでしょうね。

昨日の監査役協会長浜合宿におきまして、今年この議決結果開示を実際になされた会社の監査役さんと話をしておりましたが、前日までの議決権行使書面の集計内容を公開することについては、とくに事務上で大きな負担にはならなかったそうであります。ただ、問題となったのは、株主総会当日における「修正動議」に備えて、かなりの数の包括委任状をとりつけているわけで、この(包括委任状を提出した)大株主の方々の票数は(当然のことながら)事前集計の中には含まれない、ということであり、非常に悩ましいところだそうであります。つまりオーナー株主や日頃お世話になっている取引先大株主(本来もっとも会社議案に賛成されることが見込まれる株主)の賛同の意思表示が公表される議決結果に含まれない、ということであります。なお、最近出版されました「株主総会と投票実務」(中西敏和著 商事法務)では、たとえ包括委任状や大株主オーナーの株数を除外しても、(議決結果開示には)それなりの意味はある、とされております(同書38頁)。この著書のかかで中西教授がご主張されていらっしゃる「当日投票制度」まで進めば、本件課題は克服されることになるのでありますし、また株主側からも委任状勧誘がなされるような事案であれば、当日投票も行われることが予想されますのでそれほど問題はないと思われますが、やはり「賛否割合を示す」ということに意味があるとしますと、これをルール化するにはかなり問題は残るのではないでしょうか。(欧米では取締役選任議案などにおいて、この賛否割合が詳細に開示される、とのことですが、このあたりは問題なく運用されているのでしょうか?)

どれだけ反対票が集まったのか、という事実だけを問題とするならば、それなりに意味もあるかとは思いますが、ブルドックソース事件の最高裁判決のように「大多数の株主が賛成した」といった事実認定を行うためには「賛否割合」は重要でしょうし、また勧告的決議がなされるような場合でも、そこに「過半数」という概念を持ち込まずに、「多数の株主が望んでいる」とか「多数の株主が反対している」といった投票事実に意味を持たせる場合でも、やはり賛否割合が示されなければ、「議決結果の公表」はあまり意味がないのではないか、という疑問が生じます。たしかに金融庁SGの議事録などを拝見して、機関投資家による議決権行使結果の開示とならんで、上場企業による議決結果公表に関する議論もなされておりましたが、「議決結果における何を公表するのか」というところまで深く議論されてはこなかったのではないかと思います。これが「株主に対する説明責任」に関係する問題であれば、なおさら会社としては株主に誤解を与えないような説明をしなければならないと思われます。このあたり、また実務に詳しい方がいらっしゃいましたらご教示いただければ幸いです。

8月 21, 2009 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年8月19日 (水)

来年の株主総会は準備がたいへんかも・・・?(その2)

本日(8月18日)は、監査役協会長浜合宿におきまして、新任監査役の方々の全体研修にて講演をさせていただきました。今年で第24回目となる長浜合宿ですが、世話役の方々との昼食会、そして新任監査役の方々との懇親会とも参加させていただき、多くの会社の方々とお話をさせていただく機会に恵まれました。つい先日まで取締役だった方々が、株主総会を境にして監査役という立場に変わることに違和感を覚えていらっしゃる方々が多かったようです。「これくらいのリスクなら大丈夫!と思って導入したシステムだったけど、いまこうやって監査役になってみると、このシステムの話に触れたくないんだよなぁ・・笑」とか「昔、監査役さんというと朝から晩まで経済紙を読んで暇そうにしていたイメージがありましたが、こうやって監査役になってみると、朝から晩まで忙しい。イメージがずいぶんと変わったんじゃないでしょうか」といった感想をお持ちの監査役さんもいらっしゃいました。

さて、そんな監査役さんと「これからの株主総会」についてお話をしておりましたところ、何名かの方から同じような感想を聞かせていただきました。「これからの株主総会で何が一番たいへんかって、そりゃもうOB株主さんからの質問でしょう」とのこと。今年の6月総会でも、ずいぶんとたいへんだったそうであります。ともかく、①内情に詳しいためにあまり公表したくないような社内事情も平気で暴露されてしまう、②現在の役員さん方の「昔の上司」だったりするために、いい加減な回答では済まない、③趣味で株を購入しているものではなく、定年後の資産運用の一環として株式を保有しているので、批判も激励も真剣そのもの、ということであります。ともかく今後は「団塊の世代」の方々の退職が増加する一方ということで、どこの会社さんもこの「OB株主対策」には真摯に対応する必要があり、想定問答集の作成につきましても、OB株主さんからの質問の傾向を十分に検討する必要があるとのことです。

その検討の一環として、「インサイダー規制と株主総会の質疑応答」に留意する必要があります。OB株主さんの質問がやたらとスルドイために、これに真摯に対応しようとするあまり回答責任のある取締役さんが思わず中期経営計画の実現可能性を示す具体的な事業内容とか、業績見込みに影響のありそうな関連事項について、反論の意味を込めて口走ってしまいそうになることがあり、冷や汗が出るケースがあるとか。たしかに一般の株主さんからの(想定の範囲内での)質問であれば、冷静に「インサイダー情報に関わるものですから、発言は控えさせてください」と回答できるはずですが、社内事情に詳しい方、とりわけ財務部門にいらっしゃったOBの方などからのスルドイ指摘に対しましては、逃げ腰の回答だけは避けたい、といった気持になるのかもしれません。ちょっと注意すべき課題なのかもしれませんね。新任監査役さんの長浜合宿は8月20日開始組もありますので、私ももう一回長浜に出向くことになりますが、財務報告内部統制や株主総会の課題など、最近の上場企業をとりまく法律トピックスを入手でき、たいへん有意義な機会となりますので、また楽しみに出向いてまいりたいと思っております。

8月 19, 2009 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年8月14日 (金)

来年の株主総会は準備がたいへんかも・・・?

とくに株主総会対策を論じることができるほどの者ではありませんが、いろいろと考えてみると来年の株主総会は準備がたいへんそうですね。当ブログでは、それほど株主総会対応のエントリーを書く機会も少ないのですが、社外役員という立場で来年の総会を展望してみますと、ちょっと現時点では「どのように準備したらいいのかわからない」と感じています。法律雑誌などでみかける「総会対応」に関する論稿などを拝見して気がつきましたが、総会対策準備事項については、総会担当者向けのものと役員向けのものに分類・整理することができますよね。そこで、勝手ながら「リスクマップ」のように、総会担当者の関心度を横軸に、そして会社役員の関心度を縦軸として、以下のとおり重要事項を整理してみました。右上にいくほど、事前準備のレベルが高くなることになります。また、ここで表現している「株主総会」とは、実際に株主が集まる「株主総会」だけではなく、招集通知を発送してから実際の総会が終了するまでの一連の流れ(広義の株主総会)を示しています。(なお、分類項目は私の勝手な推測に基づくものでありますので、あまり気になさらないでください。ただし、こういった分類整理が来年の総会準備には必要になってくるのではないでしょうか。)

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役員の関心度を分類する判断基準は情報開示、説明義務、善管注意義務など、株価変動や企業のレピュテーションに影響を及ぼす事象や、自身の法的責任に関わる問題などを重視しています。また、総会担当者の関心度を分類する判断基準は、法的瑕疵なく、シャンシャンと総会が終了するために、手続瑕疵の重大性やマニュアル依存度、そして準備に要する人的・物的資源(前倒し準備の必要性)などを重視しています。もちろん、想定問答集の作成や、総会準備のためのリハーサルなど、例年重要視されている項目もありますが、とくに来年の総会対策として、これは十分に議論されるだろうなぁと予想されるところを中心に項目として挙げています。右下の会社法関連の政省令改正対応問題などは、ここだけでもおそらくいろんな項目が出てくると思いますが、とりあえず株懇モデルや経団連ひな型などで対応されるケースも多いでしょうし、そこではたいへん著名な法律家の方々が議論のうえ策定されるものですので、詳細は省いています。

さて、何が一番たいへんか?といいますと、経営環境がどうなるのかわからないところに、「公開会社法」問題とか、金商法(内閣府令)の改正、東証自主ルールの改正など、今後企業開示に関する法制に変化が生じる兆しがあって、株主総会の運営にも大きな影響が出てくる可能性がある、ということだと思います。たとえば3月決算(6月総会)の上場会社の場合には、12月ころまでには役員人事なども決まるところが多いと思いますので、そのあたりまでにはおおよその流れは判明すると思いますが、情報開示によるガバナンス規制などは、次回の株主総会におけるひとつの特色ではないでしょうか。そもそも株主総会は会社法上の(組織法上の)意思決定ルールのひとつであって、一つの事業年度における企業活動を承認し、その承認のもとに将来の経営を委託する者を決定することが原則だと思いますが、「情報を開示する」ことが(株主の監視を可能として)そもそも会社役員の行動を規律するのであれば、有価証券報告書前倒し提出など、総会直前までの事実をもとに経営活動を株主が承認する必要性も認められるわけでして、そのあたりの流れが総会準備にも多大な影響を及ぼすように思います。

私的には、総会決議の意味を大きく変えるものとしての「議決権行使結果の開示」、そして法的にも未解決な論点が多く、またたとえ裁判にならなくても、大きな話題になる株主提案権問題を最重要課題として挙げました。今年の総会では、アデランスHD以外はあまり大きな事例はなかったのかもしれませんが、レナウンとネオラインキャピタルとの役員選任に関する交渉経過などをみると、これからも大株主と経営陣との交渉道具としての株主提案権行使は(委任状勧誘事例に発展するか否かは別として)経営陣にとっても、また総会担当者にとっても重要な課題でしょうね。

8月 14, 2009 株主総会関連 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年6月26日 (金)

株主総会における退場命令に関する一考察

どこの会社とは申しませんが、株主総会の議長(定款の定めにより社長)が株主総会におきまして、株主に対して退場命令を出す場面に初めて立会いましたので、今後のためにも若干の考察を記しておくことにします。ちなみに2008年版株主総会白書(商事法務1850号89頁以下)によりますと、「退場命令等の有無」について回答のあった1962社のうち、昨年の総会で(議長が)退場命令を発したのはわずか6件だそうであります。ちなみにマイクを取り上げたとかマイクのスイッチを切った、という事実上株主の発言を制止させたものは9件あったそうですが、会社法315条2項に基づいて退場命令を発したのは6件のみ、ということのようで、意外と少ないんですね。(それだけ総会のイメージも変わってきた・・・ということなんでしょうか?)

このたびの退場命令は、総会屋関係というものではなく、いわゆる「苦情申出」タイプの個人株主さんに対するものでして、昨年もかなりハードでしたが、特に発言を制止することはありませんでした。会社と株主さんとの個人的な紛争を総会に持ち出して来られて、ほかの株主さんもかなり困惑されていました。今年は昨年にも増して、かなりハードに立ち回っておられました。議長も最初は冷静に「そのことはすでに会社としても対応済みですし、この総会の報告事項や審議事項とは関係のない話ですので、おやめください」と対応しておりましたが、3分ほども大きな声を張り上げて当該株主さんがどなり続けるため、他の株主さん方も「どうも総会の報告事項とは関係なさそうだ」といったことが理解できたようでした。

その株主さんが、制止を無視して、次々と会社の対応の悪さを並べ立てるものですから、遂に警告の末、議長は「即刻退場」と明確に発しました。私が驚いたのは、議長が退場を命じたその時、会場を埋め尽くした個人株主の方々から一斉に拍手が起こり、数名の株主の方が「はよ出ていけ!」とヤジを飛ばしたことでした。(後で「なんでもっと議長は早く退場命令を出さなかったのか」と苦情を述べる株主の方もおられました)退場命令の直後、その株主のところへ会場整理係がやってきて、他の個人株主の拍手やヤジの中、当該株主は退場されました。(おそらく)例年社長(議長)の穏やかな説明風景しかみたことのなかった一般株主の方々は、株主を睨みつけ、毅然とした態度で退場を命じた社長の姿にビックリして、逆にリーダーとしての威厳がまるでIRであるかのように印象付けられたことは間違いなかったようです。(それが良いのか悪いのかは別として)

さて、上記「総会白書2008」におきましても、退場命令は6件しかなかった、とのことですが、その6件がいずれも「警告を発したうえで退場命令を出した」とのことです。会社法315条2項は、総会の秩序を乱した者、または議長の命令に反した者について、議長が退場させることができる、としています。この文面からしますと、特に警告を発しなくても、議長の権限で退場命令を出すことも法律上は可能だと思われます。ただ、議長の命令が正当な目的で出されたとか、株主の発言が総会運営に支障の出る言動であったということは、やはり明らかにしておく必要があるでしょうし、また退場命令を発しますと、その株主の議決権行使を制限することにもなりますので、「円滑な議事進行上他に手段がなく、やむをえない場合」に限定して発することが必要であります。そうしますと、差し迫った有形力行使の危険があるなどの場合を除き、退場命令については、「これ以上、同様の発言を繰り返されますと、退場命令を出しますよ」と一度警告を発しておくほうがいいのではないかと思います。また、その方が退場命令を出された場合の会場整理係の準備なども整いやすいのではないでしょうか。

つぎに、今回のケースでは当該株主さんは、事業報告に対する質問の時間に登場したわけでありまして、議長の総会運営上の指揮権が発揮できる場面でありました。しかしながら、こういった苦情申出型の個人株主さんは、必ずしも「株主総会」で発言するとは限らず、株主総会の前後に開催される「株主懇談会」もしくは「部門報告会」でも登場することが考えられます。(ちなみに、先ほどの2008年総会白書によると、株主総会とともに「株主懇談会」や「部門報告会」を開催する上場会社は約3割存在するそうです)このような懇談会や報告会は、法的には株主総会とは違いますので、(円滑な議事進行のために認められる)議長の議事運営における指揮権というものは行使できないはずであります。(株主総会と一体となった会議体なので議事運営上の権利を行使しうる、という見解もあるかもしれませんが、ちょっと乱暴なような気がします。まちがっておりましたらご指摘ください)しかしながら、会議場の雰囲気は総会と変わりありませんので、こういった場面で当該株主さんが登場された場合にはどうしたらよいのでしょうか?これは私の思いつきであり、私見にすぎませんが、株主総会と同様、警告を発したうえで退場を命じ、会場整理係によって排除してもいいのではないでしょうか。刑法130条の不退去罪は、そもそも他人の管理する場所に入ることについて正当な権限を有する者について成立するわけで、その管理者より正当な目的で退去を要求されたにもかかわらず退去しない、ということですから、正当な退場命令が発せられれば株主さんにも成り立つ犯罪ではないでしょうか。(東京高裁昭和45年10月2日判決参照)また、株主懇談会も、会社の重要な業務ですから、退場命令に反して退去しないことは威力業務妨害罪にも該当する可能性があると思われます。ただし、会社法315条2項の要件とは別に退場命令が正当な権限の基に発せられたことが条件ですから、やはり当該株主さんの言動を慎重に見極めたうえで、株主懇談会等の業務の平穏が害されるおそれがあると判断した場合に(業務遂行上の管理者の権限として)限定されるものと思われます。なお、こういった退場命令というものは、あまりゴチャゴチャと理由を言わないほうがいいと思います。理由を説明すると、またその根拠あたりでゴチャゴチャと論争になるので、短く明確に「退場ください」でいいと思います。

こういった退場命令の要件を満たしているかどうか、という点など、総会の現場で支援するのはやはり弁護士がいいと思います。総会リハーサルであれば、法律事務の事件性の要件を満たさないため、証券代行さんに支援いただくのも問題ないと思いますが、総会当日に紛糾した場面では、おそらく「総会決議の取消事由(決議方法の不公正)」とか「議長の違法な議事運営権行使による株主への損害賠償」といった「事件性」を満たす可能性があり、そうなりますと事件性を有する法律事務として、これを弁護士以外の者が業務として担当しますと弁護士法第72条違反(刑事犯罪が成立)の可能性があります。ということで、総会当日に演題事務局のところで待機して、有事に議長の支援を行う外部委託者ということでは、やはり企業法務に精通された弁護士に任せるべきではないでしょうかね。(このあたりは、あまりこれまで議論されてこなかったところだと思いますし、単なる私見でありますので、正確なところは顧問弁護士の方と相談されてみてはいかがでしょうか)

6月 26, 2009 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月19日 (木)

ニッセンHD 株主総会議決権行使結果公表へ

いろいろな世間の事情で、本日は早朝から多くのアクセスをいただいておりますが、あまり気にしないで気楽にエントリーさせていただきます。

まず、昨日エントリーいたしましたトライアイズ社の件ですが、やはり私が疑問に思っていた点について、本日訂正の開示が出ましたね。(第14回株主総会招集通知訂正のお知らせ)会社法施行規則による(常勤)監査役の意見付記があったようですので、これであればたしかに計算書類の承認決議を総会に上程することはナットクできます。(もう少し述べたいことがございますが、裁判になっている個別案件への深入りはブログといえどもエチケット違反だと思いますので、これ以上はやめておきます)

さて、今週は株主総会関連のエントリーばかりになってしまいましたが、昨日(3月18日)日経朝刊にニッセンHDが株主総会の議決権行使の結果を一般に公表することを決めた、との記事が掲載されておりました。ニッセンHDさんは、昨年、すでに導入していた事前警告型の買収防衛策を廃止したことが広く報道されましたが、今年も「ガバナンス議論」の最先端をいくような決定をされたようであります。昨日(3月18日)が株主総会当日であり、すでに役員人事等に関するリリースは当日出ておりますが、前日(17日)までの議決権行使の結果を、本日、東証を通じて開示するようであります。昨年の資生堂社の開示方法とほぼ同じ、ということになるのでしょうね。

たしか昨日(3月18日)は、金融庁「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディ・グループ」会合(再開後4回目)が開催され、「上場会社等のコーポレート・ガバナンスに係るルール整備の手法等をめぐる論点」がご議論されたものと推測いたしますが(まだご議論の内容についての報道はございません)、上記のような議決権行使結果の公表の在り方なども、いわゆるソフトローとしてのルール整備の一環にあたるものでありますので、今後どこまでニッセン社のような議決権行使結果開示の流れが広まるのか、本年株主総会における関心事のひとつであります。ちなみに、有識者の方々の、「議決権行使結果開示制度」に関する賛否両論のご意見は、前回(2月10日)の上記スタディ・グループ会議の議事録(金融庁HPにて公開されております)の後半部分に掲載されておりますので、ご関心のある方はそちらをどうぞ。もちろん個人的意見ということだと思いますが、(議事録を拝見いたしますと)東証の代表者の方は、議決権行使結果の開示を上場企業に義務付けることについては、「株主の方々が議決権行使に関心をもつ、という意味合いで」積極的なご意見を述べておられます。消極的な意見もなかなか根強いところだと思いますが、「弊害論」については、もう少し具体的にお示しいただいたほうが説得力が増すのではないかなぁと議事録を拝読していて感じました。

(追記) 議決権行使結果に関するお知らせ(19日リリースより)

とくに目新しい議案などはございませんが、こういった株主総会の透明性を向上させる姿勢は評価される方も多いのではないでしょうか。

3月 19, 2009 株主総会関連 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2009年3月17日 (火)

株主総会想定悶答(その4-株主提案としての勧告的決議)

会社法の立案担当者の方の座談会記事をとりあげて、以前「株主総会における(定款変更決議を経ない)勧告的決議については、単なる気休めまたはアンケート調査にすぎないのではないか?」といった問題があることについてエントリーを書かせていただきました。また、おおすぎ先生の2年ほど前の「勧告的決議---法的思考のススメ??」なる秀逸なエントリーにおいては、(定款変更決議を経ない)勧告的決議についてはとくに禁止されていると考えるべきものではなく、むしろ取締役の善管注意義務との関係ではこういった会社提案をすべき場合もあるのではないか・・・といったご意見を拝読させていただきました。また、昨年6月の企業価値研究会報告書におきましても、買収防衛策の導入又は発動の場面につき、勧告的決議によって株主から過半数の賛成を得たことは、当該買収防衛策が株主の合理的意思に依拠していることを示す事情としては考慮されうる・・・とされ、いわゆる勧告的決議の正当性が主張されているところであります。

私は、買収防衛策の組み立て方との関係で、この勧告的決議の正当性を論じることができるほどに法律に精通しているわけではありませんが、上場企業の社外監査役のひとりとして、この勧告的決議については、いまだによくわからないところがありますし、株主総会シーズンを前にして、もう一度、どなたか会社法に精通された方のご意見をうかがいたいと思っております。つまり、定款変更決議を伴わないような勧告的決議に関する株主側からの提案権が行使された場合に、これを会社側としてはどのように扱うべきなのか、ということであります。先日、山口三尊さんからのコメントで初めて知りましたが、昨年の西武ホールディングスの株主総会において、三尊さんは、子会社である西武鉄道の運営にかかる電車の車両に、女性専用車両だけでなく、男性専用車両も設置するよう求めたところ、この議案についてはかなり多くの賛成票が集まったそうであります。この株主提案は一部定款変更を伴う議案として提出されたものですから、ちょっと性質の違うものではありますが、もしこういった議案が定款変更を経ないものとして勧告的決議を求めるような議案が株主から出された場合、会社としてはどういった対応をすればよいのでしょうか。もちろん、会社法309条5項は株主の議題提案権の行使できる範囲を画するわけでありますが、この規定があるからといって、「勧告的決議」についてすべて排斥されてしまうのでしょうか?昨年も、日本ハウズイング社は、株主たる原興産社からの(買収防衛策を発動しないことに関する)勧告的決議(4号議案)についてはこれを尊重するものとして、そのまま株主提案として受け入れておりますし、また会社側が買収防衛策の導入に際して勧告的決議を行うとするならば、株主側からの各種勧告的決議に対しては、これを排斥する合理的な理由があるのかないのか、考えておく必要があるのではないかと思われます。

先の西武ホールディングスの「株主提出議案に対する当社取締役会の意見」によりますと、痴漢行為の防止のための施策については会社経営陣の職務執行行為であって、定款へ記載することになると、会社職務執行の機動性を奪うことになり、不適当である、男性専用車両の設置については広く希望にかなうものかどうかは、要望数も少ない現在では実施すべきとの判断には至っていない(よって、株主提案に当社としては反対する)・・・というのが理由のようであります。しかしながら、勧告的決議であるならば、とくに執行の機動性を奪うことにはなりませんし、また実際に頭数でいえば、過半数に近い人たちの賛同を得ている結果が出ているわけですから、要望数が少ない、といった理由も該当しないはずであります。会社側としては、そういった株主の要望を「ひとつの意見として伺っておく」ということであれば、とくに取締役らの職務執行を拘束する程度も低く、取締役の善管注意義務を尽くさなかったこと(評価障害事実もしくは評価根拠事実)のひとつの事情程度には考慮される、とすれば、それなりの正当性は認められるようにも思われます。(刑事当番弁護士として、逮捕段階から痴漢無罪主張事件に関わった経験からしまして、人生におけるリスク管理の一環として、私なら絶対に「男性専用車両」に乗りますね)

買収防衛策特有の事情(株主の合理的意思に依拠すること、取締役らに利益相反行為のおそれが必然的にそなわっていること、TOB手続きの不完全性等)がからんでいるために、例外的に「勧告的決議」に正当性が認められる場合がある、ということであれば、株主側の提案についても広く取締役の職務執行行為に関連する事項についての勧告的決議は認められない、といえそうでありますが、そのように言い切っていいものなのかどうか、また取締役の善管注意義務の履行との関係で、会社提案の場合には勧告的決議は認められるのであって、株主側の提案は認めないと言い切れるものなのかどうか、このあたりの合理的な説明がどうしても必要なところでありますし、逆に、株主による強力なガバナンスを主張する立場からすれば、賛否投票数の開示問題と含めて、こういった勧告的決議が認められるべき、といった見解も出てきそうな気もしますが、このあたりを整理するヒントがございまいしたらご教示いただけませんでしょうか。ちなみに私の意見はといいますと、そもそも定款変更を伴わない株主総会決議というものを「勧告的決議」と定義することに疑問を感じます。「決議」というのは組織法的な意味合いにおいて、ある一定の議決権の賛否によって組織の意思決定という「法的効果」が生じる場合を指すのであって、そのような法的効果を伴わない決議については、会社法上の「決議」には含めるべきではないと思います。いわゆる「勧告的決議」によって意味があるのは、賛否の数による法的効果ではなく、「過半数の賛成票が集まった」とか「3分の2以上の賛同があった」とか「30%の賛成票が集まった」といった「状態」であって、得票数そのものではないはずであります。(つまり「大多数の株主の意思に沿っている」とか「株主の合理的な意思に依拠している」ということを示すためには、そういった「状態」を証明すれば足りるわけであります。また場合によっては30%の株主による賛成票が集まれば、取締役の善管注意義務違反を否定する「状態」があったことを証することが可能かもしれません。)そう考えるならば、やはり勧告的決議というものは株主総会検査役の選任も認められないような「株主アンケート」に近いものであり、そういったアンケートをするかしないか、ということは広く経営判断によって決定されるものであって、株主の地位に基づいて固有の権利として提案できるようなものではない、と考えられるのではないでしょうか。

3月 17, 2009 株主総会関連 | | コメント (4) | トラックバック (1)

2009年3月16日 (月)

株主総会想定悶答(その3-内部統制報告書関連)

会社法上の内部統制に関する話題として、先日新潮社代表者に貴乃花親方名誉毀損事件における損害賠償責任が認容された事例をご紹介しましたが、3月13日の別訴(講談社に対する名誉毀損損害賠償事件)では、(法人に対する損害賠償責任は認容されたものの)講談社代表者に対する損害賠償責任が否定されたようであります。新聞報道によりますと「デスク、編集次長、編集長がチェックする編集部の体制が出版社に求められる水準以下とはいえない」として代表者個人としての過失は認めなかった、とありますので、本事例においても取締役による出版社におけるリスク管理体制構築義務(内部統制構築義務)が争点になっていたようであります。そもそも出版社といいましても、他人の名誉侵害のリスク評価には違いがあるでしょうし、第三者への取締役の損害賠償責任が認容されるためには、単なる過失ではなく「重過失」が要件とされておりますので、一概に両判決を比較することは困難でありますが、取締役の内部統制構築義務違反について、いかなる場合に損害賠償責任が発生する(と裁判のうえで認められる)のか、検討するには好材料だと思われますし、この講談社判決についてもまた(入手次第)判決文を仔細に検討してみたいと思っております。

Souteimondou さて、今年もこの時期になりますと、あの電話帳のような分厚い別冊商事法務「株主総会想定問答集」が出版されますので、(値は張りますが)早速平成21年度版を購入し内容をチェックしておりました。(写真は平成20年度版です。いろいろな想定問答集が出版されますが、この本は経営分析や計算関係書類、株式実務などの質疑応答事例を通じて、会社法が実務上どのように生かされているのかを勉強するに最適だと思われますので、毎年目を通すようにしております)そのなかに、いよいよ本番を迎えます金商法上の内部統制報告実務と株主総会対策に関連しそうな質疑応答事例も新たに組み入れられております。質問数は少ないですが、「監査役・監査役会に関する新規質疑応答例」(619頁以下)に含まれております。

主に監査役が株主にどのように回答するか・・・といった視点からでありますが、①監査役は財務報告に関する内部統制について、どのように関与したのか、②監査役は経営者が作成した財務報告に関する内部統制報告書につき、同意見か、③監査役の目からみて、当社の財務報告に関する内部統制システムはどのように評価するか、といったあたりの予想質問であります。上記「想定問答集」を作成された弁護士さんや証券代行部の方々とは少し意見が異なりますが、①については、「財務報告内部統制」も会社法上において構築すべき内部統制の一部であることから、取締役会における決議内容の相当性を判断するものでありますが、実際の財務報告内部統制の整備、運用面における不備の有無については、経営者による評価手続きのチェックや、会計監査人との連携協議を通じて判断する・・・という形で関与しております・・・と簡潔に回答すればいいと思います。(なお、ここで示す「不備」といいますのは、内部統制実施基準における「不備」とは概念が異なります)②については、経営者評価は一般に公正妥当と認められる経営者評価基準に従って評価されるべきものであり、監査役による適法性判断の基準とは異なるわけですから、そもそも「同意見」というのはありえず、「監査役の立場から、経営者評価および外部の監査人の監査手続きを審査しております」でいいのではないかと思われます。(「重大な欠陥」があると認められれば、監査報告書に記載すべきことになります)また、③につきましても、監査役のモニタリング自体が全社的統制の有効性評価の一部を構成することになるので、監査役自身が「有効である」と述べることには違和感を覚えます。むしろ適法性判断の基準から、および会計監査人の会計処理および結果の相当性を判断する立場から、「経営者による内部統制の構築および外部の監査人による監査手続きにおいてとくに違法と認められるものはございませんでした」と回答されるのが適切だと思います。経営者や内部統制監査人による「不備と重要な欠陥」の判断と、監査役による「不備と重大な欠陥」の判断とは、その職責の違いから明確に区別する必要があると思われますので、そのあたりは総会における答弁でも意識しておいたほうがよろしいのではないでしょうか。(まぁ、実際には粉飾決算や資産流用事件などが発生した上場会社以外では、こういった質疑応答が行われる可能性は薄いと思いますが・・・)

さらに問題は、事前に会計監査人(正確には内部統制監査人ですが)から内部統制監査報告書には適正意見を出せない(重要な欠陥があり、期末までには是正されたと判断できない)ことを通告されており、経営者評価としても「有効ではない」と報告される見込みがあることを監査役が知っているケースで、総会の場で株主から「内部統制は有効と評価するか」といった質問が出される場合であります。内部統制報告書は有価証券報告書と同時に提出されることになっておりますので、まだ正式な報告書は株主総会時点では出されておりませんし、また株主総会での審議事項とは関係ないのではありますが、それでも説明責任を尽くす必要性については否定できないようにも思われます。ただ、3月末時点での有効性の評価については、総会終了直後のぎりぎりまで判断に悩む場合もあるでしょうから、株主総会時点では「仮定のお話については申し上げることはできない」と回答することもできるでしょうし、「有効性判断」に関する評価結果については、監査役監査報告の結論を出すにあたっての議論の中心論点であって、議事録閲覧手続きとの均衡上、一般株主からの開示要求に安易に回答することは控えるべきものだとも思われます。また、内部統制報告書の提出はインサイダー取引規制における「公表」に該当しますので、ひょっとするとバスケット条項に該当するような「重要事実」を株主総会で開示してしまうリスクもあるかもしれず、そもそも現時点における証券取引所の適時開示ルールによれば、監査人が不適正意見を出した場合にはその旨の適時開示を必要とすることになっていることとの関係からみても、監査役から内部統制の有効性に関する明確な回答を出すことは躊躇するところではないでしょうか。(なお、以上はあくまでも私個人の見解であります。この点につきましては、おそらくしかるべき団体より、モデル指針が出るのではないかと予想されますので、今後の情報にご注意ください)

3月 16, 2009 株主総会関連 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年2月25日 (水)

株主総会・賛否の議決権の個数開示は進むだろうか?

Amanojackさんや機野さんより、月曜日のエントリーに関連して、「民間部門だけでなく、公的機関においてもガバナンス改革はやるべきではないの?」といったコメントを頂戴しておりましたが、そのようなご意見を後押しするような判決が出ているようであります。姉歯元一級建築士の設計に係る建築強度偽装物件の所有者が、コンサルタント会社と愛知県を相手方として損害賠償請求訴訟を提起しておりましたが、愛知県にも建築審査において注意義務違反があったとして、同県に対して5700万円の賠償命令が下された・・・というものであります。一連の耐震偽装事件におきまして、行政の責任が認められた初めての判決だそうであります。(朝日新聞ニュースが、かなり詳しく報じております。そういえば耐震偽装事件発覚のころ、私がイーホームズを擁護する発言をして、皆様から総スカンをくらったことがありましたっけ…笑)神戸の震災の教訓を生かさなければならないのは官も民も同じでしょうし、機野さんがおっしゃるように、公共団体の内部統制についても裁判所は厳しい目を向けることになるのかもしれません。(ちなみに、大規模一般社団法人につきまして、新しい法律では内部統制システムの構築に関する規定がありますよ。あまり知られていないのですが・・・)

個人的な趣味による執拗なネタでありますが、月曜日にもエントリーいたしました「金融庁・我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディ・グループ」の2月10日付け会合の議事要旨が公開されております。たしか2月11日ころのフジサンケイ・ビジネスアイだけがこの会合の内容について報じておられましたが、やはり既報のとおり、株主総会における議決権行使結果の開示の是非が相当議論されていたんですね。(議事要旨の後半部分に、賛否両論による議事内容がまとめられております。)日本ハウズイング社やアデランスHD社のように、総会検査役が選任されたうえで、その議決権行使結果が注目されるような会社以外では、たとえば資生堂社などが総会前日までの議決権賛否の個数開示を行ったようでありますが、我が国ではまだごく少数にとどまるものであります。しかしながら、中央大学の大杉教授が商事法務2008年12月25日号「なぜ、どこまで、株主総会は変わったか?」なる論稿のなかで「気にかかっている」点として指摘されているように、「賛否の議決権の個数開示」については多数の国内外の投資家より意見が述べられているようでありまして、大杉教授も、(事務手続きの煩雑さなどの技術的な問題はあるにせよ)賛否の具体的状況を開示する試みがなされてもいいのではないか、と私見を述べておられます。社外取締役制度導入問題の帰趨とも関連するかもしれませんが、やはりこの論点については、「とりまとめ」のなかで、なんらかの指針が出るのではないか・・・といった印象を受けますね。もしソフトローによる規制であったとしても、株主総会における事務手続きは、たとえ前日までの集計のみとしても、ちょっと総会担当者の方々の頭を悩ませることになるのかもしれません。

それともうひとつ、総会担当者の方々にとって影響が出そうな記事ですが、会社法上の少数株主権の行使期限が2週間→4週間に延長されるようですね。(日経ニュース)3月下旬に施行されるように、パブコメを経て政令が改正されるようですから、このあたりは注意が必要ですね。株券電子化(社債、株式等の振替に関する法律)の施行によって、少数株主権行使にあたっては、会社法130条1項の例外規定の適用を受ける(つまり、少数株主は、株主名簿の記載によって会社に対抗するのではなく、株券電子化の施行による「個別株主通知手続き」によって権利を行使する)ことになりますが、この個別株主通知を発行企業が受けてから、4週間以内に株主提案権を行使すればいい、ということになります。共同提案行為が不当に侵害されるのでは?といった批判に対して法務省が応答したことになり、株主の権利行使の機会が実質的に確保されたものといえそうですが、いっぽうで個別通知の申出を行った株主に変動が生じる可能性は増えたことになるのでしょうね。ちょっと、新聞報道ではわかりにくいのですが、「なんで個別株主通知の申出をした株主が、2週間とか4週間とか、その行使期限がわかるの?」といった素朴な疑問が湧くかもしれません。これは、振替機関(ほふり)が、口座管理機関から特定情報を集計後に、発行企業へ通知をしますと、その旨をほふりより(株主が申出を行った)口座管理機関に伝えてきますので、その口座管理機関から、当該株主へ「個別株主通知済通知」の内容が伝えられる・・・という仕組みがあるからですね。またそもそも「なんで2週間だと株主による共同提案行為の侵害にあたるの?」といったあたりも素朴な疑問が湧くところかと思いますが、これも受付票を共同提案代表者がとりまとめを行って口座管理機関に送付すればいい、というだけのものでもなく、たいへん事務量が増えてしまいますので、そのあたりの説明がなされないとちょっとわかりにくいのではないでしょうか。

2月 25, 2009 株主総会関連 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2008年6月30日 (月)

08’株主総会の準備時点で考えていたこと(総括)

今年の株主総会シーズンもほぼ終了し、原弘産vs日本ハウズイングの委任状争奪戦に代表されるように、株主提案権が不発に終わるケースが目立ちましたが、逆にいえばここ数年の「モノ言う株主」の存在感が増し、株主との対話を含めて現経営陣側の対応もかなり向上したことによるところも大きかったのではないでしょうか。私自身、それほど経営陣と株主との対立が先鋭化しそうな総会には関与しておりませんが、それでもいくつかの今年の株主総会への関与のなかで、総会準備段階で「紛糾リスク」として法律上の問題点を検討していた事項がございますので、総括の意味で記しておきたいと思います。(なお、総会当日は、いずれも平穏に終わったためにリスクが現実化したものではございません)

1 議題「剰余金処分の件」、会社提案の議案「任意積立金取り崩し→繰越利益準備金」、今年度は剰余金配当は見送ると報告。この場合に、総会において一般株主から「例年どおり7円の配当をせよ」なる要求があった場合、これを修正動議として上程すべきか?(株主数は1000名を超えるため議決権行使書面は送付済)

剰余金配当は原則として株主総会で承認決議が必要ですが、配当しない場合には、これは会社の決定事項を総会で報告すれば済む話です。したがいまして、総会議場で「7円配当せよ」と言われても、そもそも修正すべき議案がないので修正動議は採用する必要はないのでは・・・と最初は考えました。しかしながら、「剰余金処分の件」なる議題は存在しますので、「修正動議」なる用語にこだわることなく、会社法304条によって新たな議案が一般株主から出されたとみれば、これを会社側が拒絶する理屈もないのではないか?といった意見も出されまして、結論としては修正動議(といっていいのかどうかはわかりませんが)は上程したうえで、議決権行使書面による議決権行使を除き(つまり委任状を含めた会場の議決権の多数をもって)個別の採決をとることに決定しました。なお、この場合には、議決権行使書を送付した株主は、会社の「今年は配当はなし」なる報告事項を認識したうえで、剰余金の計数上の変動処理のみを承認しているわけですから、会社提案の先議をもって株主提案を否決することは困難と判断いたしました。(法律上の理屈だけでなく、議事運営に瑕疵ある場合に、会社にとってどのようなリスクがあるか、といった観点も考慮したうえでの判断であります)

しかし、剰余金処分に関する議題があるとしても、配当議案とその他の剰余金処分の議案とは、性質上区別されるべきものですし、実務上修正動議なるものは、招集通知および株主総会参考書類から、一般に株主が予見しうる範囲においてのみ許容されるものと解されております。(参考;旬刊商事法務1807号67頁)そして計数上の変動のみを議案とする剰余金処分の議題において、(しかも配当はしないとする会社決定がなされたことを知りつつ)、改めて配当議案が総会で審議されることは、一般の株主にとっては予見しうる範囲とは言えないでしょうから、そもそも会社側から配当議案が上程されていない場合には、株主による修正動議としての配当議案を上程することは許容されない、とみるほうが私的には正しいように思うのですが、いかがなものでしょうか?

2 取締役が任期を残したまま、株主総会において「経営判断にミスがあり、今後も企業価値を向上させる能力がない」として解任された場合、その取締役は会社に対して損害賠償請求権を行使できるか?

これは古典的な論点といってもいいかもしれませんが、実務上の取扱については未だ決着はついていないものと思われます。取締役はいつでも総会決議によって解任されうることになっておりますが(会社法339条1項)、解任された場合に「正当理由」がないときには解任取締役は、会社に対して任期満了時までの報酬額等の損害賠償請求ができます(同条2項、なおこの場合、会社を代表するのは監査役であります。会社法386条1項参照)。また、解任の理由については参考書類に記載されることになっております。(会社法施行規則78条)が、この「正当理由」の中身につきましては解釈にゆだねられており、はたして「経営上の判断の失敗」がこの正当理由に該当するのかどうか・・・といったところが問題となります。つまり経営上の判断にミスがあったことが「正当理由」であれば、解任された取締役に対して会社が損害賠償債務を負担することななく、「正当理由」にはならないとされれば、損害賠償債務が発生する、ということになります。多数説は「取締役の経営上の判断ミスは正当理由にあたる」とされているようであり(ただし、江頭教授は反対説)、また多数説に沿った判例も存在するようであります(広島地裁平成6年11月29日、判例タイムス884号230頁以下)。ただ、この問題は、実体法の解釈だけでなく、「正当理由」の立証責任がどちらにあるか、という点についても検討を要する問題であり、原則としては、会社側が抗弁として「正当理由」を基礎付ける事実を立証する必要がありそうです。そうしますと、多数説を前提とした場合、裁判官は「当該取締役において経営上の判断ミスがあったのかどうか」を会社側から提出された書証や証言をもとに、詳細な事実認定をする必要があるわけでして、これは「経営判断の原則」によって判断を回避するわけにもいかず(「経営上の判断ミス」を持ち出したのは株主であって会社ではない)、もし解任された取締役が裁判のうえでとことん争う場合には、公開の法廷に多くの企業秘密が(多くの証拠とともに)露呈されてしまうようなリスクが生じることも予想されます。そもそも立証責任が解任取締役側にあれば、このようなリスクは低減されると思いますが、そのようには考えられていないようでして、この点、どう克服すべきなのか思い悩むところです。

そこで、できれば取締役の解任理由については、「経営判断の失敗」といった問題に発展しないような方策もあらかじめ検討しておく必要があるのではないか・・・といった疑問が生じた次第であります。また、ご意見、ご批判等ございましたら、ご教示のほどよろしくお願いいたします。

6月 30, 2008 株主総会関連 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年6月18日 (水)

IR型株主総会の議事運営について

株主総会では8割の個人株主が議決権行使を検討している、との日経ニュースが出ておりましたが、本日(6月17日)関西ではIR型株主総会を開催する企業として有名な某上場会社の定時株主総会に参加させていただきました。この会社の総会は初めて出席いたしましたが、いや、スゴイ株主さんの数です。報告事項の質疑応答の際にはおそらく株主、来賓合わせて1000人を超えていたはずです。仮面ライダーの主題歌とか歌ってそうなプロの歌手の声に合わせて、出席者一同「社歌」を唄うところから始まる総会なんです(^^;;ちなみに、私はこの会社の役員に選任されたものでも、なんでもありません。念のため・・・・

まずは昨年新聞やニュースで大きく報じられた不祥事に対する社長の謝罪から始まり、その再発防止策を大型プロジェクトでビジュアル化するのはお見事!!やっぱり、ただ防止策を活字にするだけでなく、社内でどのように実現しているかを、ビデオ等で説明することは株主さまに安心感を抱かせます。他部門が前年並みの売り上げのなかで、不祥事発生部門だけが20%の売り上げ減・・・・・、やっぱり不祥事が報道されるのは怖いです。あと、プロジェクターに「召集通知をご覧ください」と出ていた(本当は「招集通知」ですが)のがやけに気になりました。。。「召集」だと会社と株主の立場が逆転するので、間違いはタブーのはずですが。

IR型総会の場合、役員のパフォーマンスも重要なんですね。「部門報告」が各担当役員から行われましたが、会場から拍手が沸き起こったのはわずか2名の役員さんのみでした。そのうちのお一人は、「棒読み」報告が多いなか、ペーパーをまったく読まずに、会場の株主様のほうを向いて、堂々と報告された子会社代表者の方でした。(日本を代表する某企業のご出身とか)ペーパーのない報告は見ていて本当に美しい。そしてもうお一人は日本初の女性の鉄道会社社長(子会社代表者。若い!エド・はるみさんに似てる!)さんでした。(こちらは話題性かも)総務部の方々にとっては、たいへんかもしれませんが、役員さんの演出もこういった総会では気になるところですね。

そしてなんといいましても、株主さんのお目当ては総会終了後のイベントですね。実際のところ、決議なんてどうでもよくて、このイベントのためだけにやってきた、といっても過言ではない株主様がどれほど多いか(笑)まあ、会社側としては、個人株主さまを増やすための施策といいますか、ほとんど広報活動ですね。いやいや、株主総会の常識をくつがえすような異次元を見せていただきました。

ところで、ひとつ気になったのが総会の議事運営に関してであります。この会社の総会は報告事項→決議事項→報告事項の質疑応答といった流れでありますが、私は報告事項→報告事項の質疑応答→決議事項の流れのほうが出席株主が多数の場合は適切ではないかと思います。といいますのは①どうしても素人株主さんが多いので、議案に関係のない質問が飛び交い、決議事項の進行に時間がかかる、こういった質問や要望は、先に報告事項の質疑応答のなかでくみとって、決議のために本当に必要な質問だけで採決に臨むほうがいい、②IR型総会の場合、定刻どおりには株主が会場に現れず、後半になって増えるので、最後のほうで総会の決議をとったほうが株主さまにも喜ばれる、③おそらく決議事項を先に行うのは、他の総会にも出席予定の株主さまへの配慮かと思われますが、私が見たところイベント目的で来られた方が多く、こういった総会では腰を据えてやってきた株主さまが多いのではないかと思われる、④イベントに近い段階で決議をとったほうが、株主さまを「早く終わりたいな」といった気分にさせる(これはあくまでも会社サイドからの政策的意見でありますが)といったところからであります。

しかし、こういった株主総会の姿もあるんですね。(勉強になりました)

6月 18, 2008 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年3月12日 (水)

株主層の変動と株主総会

法律時報2008年3月号に仮屋教授(一橋大学)の「株主層の変動と株主総会(アクティビズム対応への視座)」なる論稿が掲載されておりまして、興味深く拝読させていただきました。教授は機関投資家のアクティビズムと投資ファンドのアクティビズムをきちんと分けて、その行動パターンと企業の対応方針を検討されておられるのでありますが、スティールパートナーズに代表されるような投資ファンドのアクティビズムへの検証と企業の対応に関する記述が最もおもしろい内容であります。

そもそも投資ファンドは、エクイティスワップ取引(日本では賭博罪にあたる、と理解されていましたが、1999年より店頭デリバティブ取引の一種として認められております)などにより、リスクヘッジをしながら相当大きな株数を保有する場合があるわけで、そうなりますと議決権は保持しているけれども、それに見合うだけの経済的利益を有していない場合とか、むしろ株価が下がることによって大きな経済的利益を獲得する場合もある、とのこと。(教授は2004年の米国における事例を紹介されています)このような経済的利益に見合わない議決権株式を、投資ファンドが行使する(空議決権行使)ことになりますと、投資ファンドと、その他の株主との間において明らかな利益相反関係が生じる可能性がありますし、そもそも従来の会社法は、どの株主も企業価値の向上を望んでいるという単純な仮定を基礎として議決権の配分を考えてきたわけでありますが、そのシンプルな仮定を基礎とすることができなくなってくる、というものであります。

私は(毎度の言い訳でありますが)M&Aに詳しい弁護士でもありませんので、単なる感想でありますが、株主間の利益相反が現実化するような場面であれば、たとえばこのたびのサッポロHDに対するスティールの提案変更(66%取得→33%取得へ)につきまして、スティールの側が首尾よく33%を取得した場合、たとえそこで買い進めることなく、踏みとどまっていたとしても、そこでは「株主共同利益」という概念を想定できない事態というものも、あり得るように思うのですが、どうなんでしょうか。もちろん理論上では経営権を保有する目的ではありませんので、自らの経営計画などを示す必要はなく、また権限分配法理とも無関係であると思われますが、金融工学を駆使して、空議決権行使を行う可能性があるファンド、ということでしたら、企業価値の向上ということからすれば、あまりにも大きな障碍になるのではないか、という疑問が生じます。だからといって、事前警告型の買収防衛策が容認される、とみるのは論理の飛躍があるかもしれませんが、やはり買収防衛策が「株主共同利益の確保」を目的とするものである以上、「株主共同利益」を概念しえない状況を現出させてしまう前になんらかの手を打つことの当否についても検討されていいのではないでしょうか。また、このあたりは詳しい方にもご教示いただきたいところであります。

3月 12, 2008 株主総会関連 | | コメント (2) | トラックバック (0)