CCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)のMBO裁判決定について
このたびの会社法改正論議におきまして、個人として最も影響を及ぼした方は、当ブログ右欄にコメントを寄せておられる山口三尊さんだと思いますが、本日(4月16日)またまた山口氏を申立人、CCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)を相手方とするMBO価格決定申立事件におきまして、大阪地裁は公正な強制取得価格を649円とする決定を出したそうです(裁判長は昨年このブログで紹介させていただいた、M判事さんです)。ちなみに山口氏側は779円、CCC側はTOB価格と同額(600円)を適正な価格と主張していますので、実質的には山口氏側が「裁判を提起した意味があった決定」ということは間違いないようであります。
決定文を読ませていただいた印象だけで申し上げますが、CCCのリーガルアドバイザーであった「天下のNA法律事務所」さんの戦略が裏目に出てしまったということでしょうか。もちろん高裁ではどのような判断が出るのかはわかりませんが、少なくとも大阪地裁の裁判官との関係では、「マジョリティ・オブ・マイノリティをTOBの成立要件とする」ことや、「取締役会は中立的立場でMBOには賛同するが、価格面で疑問があるから応募は推奨しない」といったスタンスを用いたことや、買収対象者側が株価算定評価を公表するといった「初めての試み」を示したことは通用しなかったようであります。「成立してしまえばTOB価格(600円)が公正であると自信をもって言える体制を作る」という戦術がうまく機能しなかったのではないか、と。
大阪地裁の裁判官は、この戦略の意図とは逆に、取締役会は中立といっているではないか、そんな「異例」なMBO事例なんだから、株価算定はこれまでの判例で認められてきた理論を踏襲するにしても、これまで以上に慎重に判断すべきだ、そんな中立性を守る取締役会が依頼したアドバイザーが算出した価格にこそ、重きをおいて判断すべきではないか・・・とみて、結局はTOB価格よりも50円近く高い金額を適正な強制取得価格と示したわけです。スクイーズアウト(株主の締め出し)に用いられる価格決定申立制度の趣旨や、会社と一般株主との情報の非対称性を尊重して、「公正価格の決定は多数決論理では決められない」との裁判所の判断が示された、ということになるのでしょうか。
もちろん、天下無敵のNA法律事務所さんですから、次の一手があるのかもしれません。しかし、すくなくともこのたびの決定文を読むかぎりにおいては、知名度抜群のGCAさん、プルータスさん、KPMGさんが万全の態勢でMBOの公正性確保に向けて臨んだにもかかわらず、「打倒三尊!」大作戦が奏功しなかったように映りました。M&Aネタについては毎度申し上げておりますとおり、私は専門家ではございません。また金融・商事判例あたりで決定文が掲載されると思いますので、M&A実務に精通されている法律実務家の皆様の解説を期待しております。
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