2011年4月22日 (金)

BCP(事業継続計画)と役員の法的責任

タイトルほど中身のあることではありませんが、最近「想定外」とか「不可抗力」とか、多くの企業で自社の震災被害について語られていますが、将来的にこれは株式会社の取締役等の責任問題とはどのような関係に立つのでしょうか?

あずさ監査法人さんが4月18日にリリースしたBCPに関する企業への調査結果(サンプルはセミナーに来られた企業122社だそうです)によりますと、地震対応のBCPを全く策定していなかった企業が35%、首都圏での地震を想定したBCPを策定していなかった企業は65%であった、とのこと。BCP(事業継続計画)をきちんと策定し、緊急時を想定したトレーニングを積んでいる企業のほうが「想定外」とか「予期せぬ出来事」といった範囲が狭くなることは間違いないと思います(そのために訓練するわけですから当然かと)。

事業を継続できるようきちんとプランを立てておくことは、企業価値にかかわる問題ですので、役員の責任問題等は二の次であることは承知しておりますが、しかしBCPをきちんと策定している企業の役員の方が債務不履行(「不可抗力」とはいえない債務者の責めに帰すべき履行不能→企業損害について株主代表訴訟のおそれがある)や不法行為(企業の被害等について予見可能性がある→過失)が認められやすくなる、ということになりますと、BCPを推進するインセンティブが薄れてしまうのではないでしょうか?

パロマ工業刑事事件判決でも、内部統制をきちんと構築している会社の社長さんのほうが、情報が正しく集約できるので、不作為の過失が認められやすい結果となるのはおかしいのではないか、と思いましたが、BCPについても、同様の状況が発生するのでしょうか?BCPを策定していながら有事に対応がまずかった場合には責任が発生して、なにも策定していなかったほうが「不可抗力」「予見可能性なし」といったことで免責される、というのも、なんか常識的に考えておかしいように思うのでありますが。

昨年、最高裁判決が出ました日航管制官ニアミス事件でも、ニアミスが発生した際、管制官が居眠りをしていたならば刑事責任を問われないのに、あわてて便数を言い間違えたために刑事責任を問われた、というケースもあり、このあたりはよく考えておいたほうがよろしいのではないかと思います。

まだ考え始めたばかりの問題ですので、どこかで誤解があるかもしれませんが、今後どこの企業もBCPについては速やかに検討されると思います。BCPに関わる役員の法律的な問題をどなたかがきちんと整理して解説していただければいいなぁと。

4月 22, 2011 パンデミック対策と法律問題 | | コメント (1) | トラックバック (1)

2009年7月14日 (火)

パンデミック対策として法律家(企業法務)に求められるものとは?

しつこいようで恐縮ですが、例の貴乃花親方名誉毀損損害賠償事件について、新潮社に続いて講談社についても内部統制構築義務違反を理由に社長個人の重過失が認定されたようですね。(また別エントリーで検討したいと思います)

きょう、ある経済団体の方とお話をしていて、いま一番会員企業の方々に関心が高い法律問題は?とお聞きしたところ、M&Aでもなく、社外取締役導入問題でもなく、反社会的勢力排除問題でもなく、「秋冬の豚インフルエンザ再来時における企業法務問題」がダントツの関心事だそうであります。(うーーーん、私的にはあんまり得意分野じゃないです。。。ちなみに会計における最大の関心事はIFRSかと思いきや、「企業開示の緩和、とりわけ四半期決算短信の緩和」だそうです。そういえばちょうど業績予想の任意開示問題など、四半期決算短信に関する提言書を経済団体が合同でリリースされたばかりだったんですね。)いま法曹界と経済界を結びつける最もホットな話題はパンデミック対策としての企業法務、ということのようであります。たしかに特定企業の利益や弁護士業界全体の利益といった「儲け」の領域を超えて、国民全体の生活を守ることを目的とした「社会的責任」を果たすための重要な課題なのかもしれません。有事になってからでは遅すぎる、平時である今だからこそ、速やかに法律家も検討してほしい、とのこと。

とりわけライフラインに関連する企業や交通機関など、法律で事業遂行上の稼働人数を決められているような企業において、もし従業員の多くがインフルエンザで休んでしまったり、休業を余儀なくされたり、交通が遮断されて会社や工場に出向くことができなくなる場合、企業はどうすればいいのか?社員に無理をいうわけにはいかず、かといって事業を停止するわけにはいかず、いわば法律違反を知りつつ事業を継続した場合に民事賠償の対象となったり、刑事罰の対象になるのか、ならないのか、非常にグレーな領域の問題として、企業は戦々恐々とされているそうであります。前例もなく、参考となる事例が存在しないため、多くの企業から経済団体に対して問い合わせがあるとのこと。

たしかに企業のリスク管理のひとつとして、パンデミック対策はだいぶ進んできたように思いますが、言われてみればなるほど「パンデミックと法律問題」というのは今まであまり聞いたことがなかったように思います。(いや、私が知らないだけで、ひょっとすると大学などで研究は進んでいるのかもしれませんが・・・)経済団体の方は、こういった問題こそ、法律家の方々が検討すべきリーガルリスクを明らかにしたうえで、企業としての対応ガイドラインのようなものを作ってほしい、とのことでした。稼働人数だけでなく、たとえば電力やガスの使用が制限されたり、商品の輸送手段に限界が生じた場合などにも想定されるそうでありまして、現在の刑法や民法などの条項を駆使して、緊急時の事業活動にまつわる法律問題を検討することも喫緊の課題と考えられているようです。(取締法規違反が問題となるのであれば、法曹界だけでなく行政上の問題にも発展するような気もいたします。なるほど・・・でも、緊急時にどのような法律問題が発生するのか想像するのはむずかしいなぁ。。。たいへん重いですが、勉強になりました・・・)

7月 14, 2009 パンデミック対策と法律問題 | | コメント (5) | トラックバック (0)