BCP(事業継続計画)と役員の法的責任
タイトルほど中身のあることではありませんが、最近「想定外」とか「不可抗力」とか、多くの企業で自社の震災被害について語られていますが、将来的にこれは株式会社の取締役等の責任問題とはどのような関係に立つのでしょうか?
あずさ監査法人さんが4月18日にリリースしたBCPに関する企業への調査結果(サンプルはセミナーに来られた企業122社だそうです)によりますと、地震対応のBCPを全く策定していなかった企業が35%、首都圏での地震を想定したBCPを策定していなかった企業は65%であった、とのこと。BCP(事業継続計画)をきちんと策定し、緊急時を想定したトレーニングを積んでいる企業のほうが「想定外」とか「予期せぬ出来事」といった範囲が狭くなることは間違いないと思います(そのために訓練するわけですから当然かと)。
事業を継続できるようきちんとプランを立てておくことは、企業価値にかかわる問題ですので、役員の責任問題等は二の次であることは承知しておりますが、しかしBCPをきちんと策定している企業の役員の方が債務不履行(「不可抗力」とはいえない債務者の責めに帰すべき履行不能→企業損害について株主代表訴訟のおそれがある)や不法行為(企業の被害等について予見可能性がある→過失)が認められやすくなる、ということになりますと、BCPを推進するインセンティブが薄れてしまうのではないでしょうか?
パロマ工業刑事事件判決でも、内部統制をきちんと構築している会社の社長さんのほうが、情報が正しく集約できるので、不作為の過失が認められやすい結果となるのはおかしいのではないか、と思いましたが、BCPについても、同様の状況が発生するのでしょうか?BCPを策定していながら有事に対応がまずかった場合には責任が発生して、なにも策定していなかったほうが「不可抗力」「予見可能性なし」といったことで免責される、というのも、なんか常識的に考えておかしいように思うのでありますが。
昨年、最高裁判決が出ました日航管制官ニアミス事件でも、ニアミスが発生した際、管制官が居眠りをしていたならば刑事責任を問われないのに、あわてて便数を言い間違えたために刑事責任を問われた、というケースもあり、このあたりはよく考えておいたほうがよろしいのではないかと思います。
まだ考え始めたばかりの問題ですので、どこかで誤解があるかもしれませんが、今後どこの企業もBCPについては速やかに検討されると思います。BCPに関わる役員の法律的な問題をどなたかがきちんと整理して解説していただければいいなぁと。
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