新株予約権の株主無償割当による資金調達は活用されるか?
(14日午後:追記あります)
上場会社におきまして、企業価値向上を目的とするものではなく、むしろ傷ついた財務状態を回復させることを目的とした公募増資や社債発行が問題視されることが多くなりましたが、日曜日(12月13日)の日経朝刊一面におきまして、東証が株主割当増資の手法により株主の利益に配慮した増資を上場会社に促す(よう上場規則を改正する)方針であることが伝えられております。11月24日の東証斉藤社長の記者会見において「将来的にはライツ・イシューを研究しなければならない」と語っておられたようですので(11月24日付け毎日新聞ニュース)、低迷する株式市場の活性化に向けての施策のひとつのようであります。上場制度整備懇談会報告書2009において、既存株主の利益を減少させるような第三者割当増資に対する検討策として、英国の優先的新株引受権について語られるところはありましたが、こういった公募増資に対する検討策としてはあまり議論されることもなかったように思われます。
なお、ここで語られているライツ・イシューとは、株主割当増資一般に関するものではなくて、いわゆる新株予約権(オプション)を既存株主に無償で割り当てるもの(会社法277条)を指すものと思われます。公募増資により、(とりわけバランスシートの財務上の毀損を回復するための公募増資の場合)既存株主から公募応募者への「富の移転」が生じるわけで、この利益目減りをできるだけ回避することも目的だと思いますが、ほかにも公募増資の際に空売りによって多額の利益を得る海外投資家の行動(インサイダーに近い行動?)を阻止する目的もあるのではないかと。たしか日経ヴェリタスの記事でも、最近の大手銀行による巨額の公募増資によって、海外投資銀行がリスクも負わずに(空売り→応募)多額の利益を稼ぎ出していたところ、大手証券会社の今年二度目の公募増資では、すかさず公募価格が決定されて「裏切られた」と憤慨している・・・といった報道がなされていたことを記憶しております。公募増資に優先して株主に新株予約権を無償で割り当てる方法であれば、たとえインサイダーまがいの情報流出があったとしても、海外投資家の空売りに対するインセンティブがかなり失われる・・・ということで理解してよろしいのでしょうか?
ともかく、会社法で規制されている新株予約権の割り当て方法(株主の保有株と同じ数の新株予約権を割り当てる)と上場ルールとの関係なども含め、たいへん興味深い論点なので、今後もどのようにルール化され、また現実に運用されていくのか注目しておきたいと思っております。
(追記)いつもコメントいただいているkatsuさんより、このたびもたいへん有益なコメントをいただいております。その筋(どの筋?)の方のご意見ですので、ぜひご参考いただければ・・・と。
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