2019年10月23日 (水)

会社法改正-補償契約で会社が負担する役員の防御費用は「相当の費用」から「通常要すべき費用」へ

内閣提出議案として今国会に提出された会社法改正法案ですが、法務省のHPで「会社法の一部を改正する法律案」を確認しますと、「会社補償制度(補償契約)」の中身が「要綱案」から実質的に修正されていることに気づきます。この修正は実務に与える影響はかなり大きいように思います。

今回の会社法改正では、取締役や監査役が第三者から裁判を提起された場合などに、防御のための費用を会社に負担してもらうことが「補償契約」として制度化されます。ただ、どんな高い費用でも会社が肩代わりしてくれるのではなく、今年1月の要綱案の段階では「相当な費用」であれば会社負担としていました。しかし(正式な要綱の時点で変わっていたようですが)改正法案では「通常要すべき費用」という文言に修正されました(改正会社法案430条の2、2項1号)。

※・・・これだけ企業不祥事が多発するなかで、役員のモラルハザードを助長するだけではないか!とご立腹の方もおられますが、いままでも、民法の委任の規定によって会社補償は可能でした。ただし、補償の許容される範囲が明らかではなかったので、このたびの会社法が解釈上の疑義をなくすために「会社補償制度」を制度化する、というもの。

要綱案の段階では、補償契約によって会社が負担する役員の防御費用については「相当な費用」の範囲内と考えておられたようです。ちなみに要綱案作成の審議の中で、たしか裁判官委員(東京地裁商事部の現役裁判官の方)が「この補償の対象となる『相当な額』というのはどういったイメージなのか?」と質問をしておられ、立案担当者(法務省)は、株主代表訴訟の株主が勝訴した場合に、会社が株主代理人に支払うべき「相当な額」(会社法852条1項)と平仄を合わせるイメージです、と説明されていました(会社法制「企業統治等関係」部会第12回議事録30頁以下参照)。

ただ、裁判所が考えている「相当な費用」の相場はかなり低い。ダスキン事件株主代表訴訟で一部勝訴した株主側の代理人報酬が争われた事件の裁判(2010年7月14日大阪地裁判決-ダスキン事件弁護士報酬請求事件)では、足掛け7年間、2件の株主代表訴訟を支えてきた弁護士報酬が、わずか8000万円!(弁護士12名の合計金額です。報酬事件終結まで9年間、当時の大阪弁護士会報酬規程だと報酬額16億、請求額は「すくなくとも」4億円でした)と判断されました。社会的な耳目を集めた裁判で、しかも極めて勝訴率が低い裁判で、一人当たり年間80万円~90万円ということになります。

この裁判所基準からしますと、もし役員が提訴された場合に、企業法務を扱う大きな法律事務所の弁護士さんは(報酬が安すぎて)受任できないことになりそうです。高い報酬の防御費用を会社がそのまま支払いますと、今度は「弁護士報酬の返還を求めて」もしくは「払いすぎの弁護士費用は会社の損害であり、善管注意義務違反の取締役の賠償責任を追及して」株主代表訴訟を提起されるリスクが生じます。また、これは会社が代表訴訟に補助参加する場合の会社側代理人の報酬や、会社自身が取締役を提訴するケースにおける会社側代理人の報酬にも反映される可能性があります。ということで、私は「相当な費用」しか防御費用が支払われない補償契約は使い勝手が悪いと感じておりました。

どういった経緯で法文が修正されたのかは存じ上げませんが「通常要すべき費用」であれば、(裁判所の先例もないので)「まあ、大手の法律事務所の優秀な代理人が複数名ついているんだから、この程度の弁護士報酬は『通常要すべき費用』ですよね」ということで安心して補償することができそうです。ちなみに「補償契約」ではありませんが、監査役が取締役の違法行為の差し止めを行うことも、昨今の企業統治改革の流れの中では重要なので、これも「通常要すべき費用」として解釈していただきたいです。

なお、以上は私の勝手な推測に基づく解説なので、「なぜ要綱案から正式な要綱に至った段階で文言が修正されたのか」公式な説明があればいいですね。たしか平成26年会社法改正の折にも、監査等委員会設置会社における「取締役の利益相反取引に関する任務懈怠の推定排除の要件」に最終的な修正がかかりましたが(江頭「株式会社法」第5版577頁参照)、これもなにゆえか法文の修正がなされており、若干気持ち悪かったことを憶えております。今国会で成立するかどうか、まだわかりませんが、会社法改正法案の衆参両議院での審議状況を静かに見守りたいと思います。

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2019年8月 9日 (金)

社外取締役の義務付け法案(会社法改正)-取締役会決議の有効性への影響

8月8日の日経朝刊4面に「臨時国会召集-10月軸に 社外取締役義務付け法案など提出へ」との見出しで、秋の臨時国会に提出される予定の会社法改正案に関する解説記事が掲載されていました。今回の会社法改正案の目玉は(私個人としてはD&O保険の法制化、会社補償制度だと思いますが)「社外取締役の法制化」とのことで、会社法上の公開会社には社外取締役の選任が義務付けられます。有識者の間でも賛否ありますが、企業統治改革が進む中で法制化されることは間違いないでしょうね。

ただ、取締役会の構成員として「かならず一人以上の社外取締役を置かなければならない」と規定されますと、社外取締役不在の状態で取締役会で決議ができるのだろうか(決議は有効なのだろうか)・・・という極めて素朴な疑問が湧きます。そもそも社外監査役の場合には、そういったケースに備えて「補欠監査役」を選任したり、一時監査役を裁判所に選任してもらうことになりますので、もちろん「補欠社外取締役」を総会で決めておくこともできます。ただ、そうなりますと「社外取締役候補者を2名以上見つけなければならない」といったやっかいな問題も出てきますね。

先日のヤフー、アスクルの事例でも、社外取締役3名の再任が否決されて、社外取締役が一人もいない状況になってしまいましたので「アスクルで有効に取締役会決議ができるの?」(もちろん会社法改正後という仮定ですが)という「大問題」は普通に想定されるところです。社外取締役が(会社側と衝突して)途中辞任した場合などは、取締役会が開けるようになるまで「権利義務取締役」(会346条1項)として「辞めたのに賠償責任を追及されるおそれがあるので」役員会にだけは出席しなければならない、といった社外取締役側の大きな負担も想定されます。

法務省の会社法制部会では、社外取締役の義務付け規定の「補足説明」として、社外取締役がいない状態で行われた取締役会の決議も有効と解釈できる、社外取締役がいない状態について過料の適用はないと解釈することもできる、と示していました(会社法制部会第18回資料、要綱案の仮案2参照)。義務付け規定を無視して社外取締役を選任しない状態を放置している場合には(取締役会決議は)無効だが、たまたま不在になってしまったときに、選任の努力をしているのであれば取締役会決議は有効、という意味かと思われます。

また、法務省はどうもこの規定は「効力規定」ではなく「取締規定」の性質と考えておられたのではないかとも推測されます(取締規定であれば決議の有効性に影響ありませんが、ただそうなると過料の制裁は不可欠でしょう。現に、法務省担当者の発言記録を読みますと「過料の規定は入れざるを得ない」とされていました-第17回部会議事録参照)。

しかし、なにゆえ「社外取締役に欠員が生じた状態での取締役会決議が有効と解釈できる」のか、その根拠が不明です。また義務付け規定にもかかわらず、社外取締役を選任しない状態で過料も課されないのか、その根拠も不明です(効力規定だから?)。会社法制部会での学者の方々の意見も「社外取締役がいない状態での取締役会決議は無効」とされる方が複数いらっしゃいます。

これは私の意見ですが、取締役会決議の効力要件として「定足数」という概念がありますが(会369条1項)、この定足数というのは社内も社外も区別していません。したがって「社外取締役」なる概念は、そもそも効力要件とは結び付かない取締役の一属性であり、「置かなければならない」ことと決議の効力とは(定足数のような規定がないかぎりは)関連性がない、といった根拠が必要ではないでしょうか(かなり苦しいかな。。。)

解釈にゆだねるとしても、取締役の定足数(3人以上)に満たない人数での取締役会決議は無効とする最高裁判決もありますし(昭和41年8月26日)、会社法831条の総会決議の裁量棄却の規定についても、現在の社外取締役の役割からすると(瑕疵は重要とはいえない、として)軽々には援用できないと思います。そもそも補欠監査役制度が存在すること自体、社外役員の欠員が重大な瑕疵と会社法ではみなされる可能性がありそうですね。

私個人としては、社外取締役を法制度として義務付けること自体に問題があると思いますが、法制化されてしまうのであれば、社外取締役欠缺時の取締役会決議を有効とする結論が妥当ではないかと思います。ただ、(裁判で争われるにしても)その結論に導く法的な根拠が必要です。日本を代表する著名な法律学者の方々が「原則は無効」と発言されているわけですから「なぜ有効になるのか」「どのようなケースで有効となるのか」もう少し知恵を絞らなければ経済界での萎縮効果(やっぱり社外取締役を二人以上選任せんとあかんのかなぁ?)を一掃することは困難ではないかと。

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2018年9月 5日 (水)

会社法改正に向けた審議進む-社外取締役選任義務化の予感!?

関西地方の皆様はおわかりかと存じますが、台風21号、恐ろしかったですね。自宅の納屋が吹っ飛んでしまいまして(笑)、日ごろ「リスク管理」などと偉そうに語っていながら、自分の財産のリスク管理の杜撰さに情けなくなっております。皆様はいかがでしたでしょうか。

すでにいろいろなところで議論になっていますが、会社法改正に向けた審議が法制審議会で続いておりますが、直近の8月29日の審議では改正案(要綱案)のたたき台が示されたようです(法制審議会会社法制部会第16回会議の開催について)。

社外取締役の義務化(ただし会社法上の公開大会社であり、かつ監査役会設置会社に限る)については、いまのところ賛否両論が併記されている状況ですが、どうも法務省の作成した「たたき台」を読みますと法制化の流れが出来つつあるように読めますね。もちろん会社法改正を審議する場合には、経済団体経営者団体の意向がかなり重視されますので、いまだ確定というわけではありませんが、これだけ(立法事実として)大きな上場企業で社外取締役が複数選任されている状況の中で、「原則として企業の自主性に任せるべきだ」として反対する理由もないようにも思えます。前回の法改正の際に「附帯決議」もされていますし・・・

しかし平成26年改正の「社外取締役を選任しない会社は『(社外取締役を)置くことが相当でない理由』を開示せよ。ただし社外監査役が2名いる、というだけでは理由にはならない」というルールはちょっとイケてないですよね。

社外取締役の義務化を会社法で規律するとなりますと、1名以上とするのか、2名以上とするのかはわかりません。ただ、いずれにしましても「補欠取締役」を選任する必要がありますので(そうでないと社外取締役が欠員した状況で取締役会で決議ができないことになってしまいます)、各企業で「補欠社外取締役」候補者を探すことになりそうですね。

現在も補欠監査役さんは多くの企業で選任されていますが、補欠取締役さんはそれほど多くはないのではないかと。また、「補欠」とはいえ、社外取締役に就任することのほうが会社にとっても候補者にとっても(いろいろな意味で)リスクが大きいような気もいたします。中小の上場会社さんにとっても影響はありそうですが、それなりに大きな上場会社さんも、今後の会社法改正に向けた審議会の議論に注目しておいたほうがよろしいかもしれません。

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2017年6月19日 (月)

会社法改正審議と中小会社への改正法適用問題について

4月から始まった法制審議会会社法制部会の審議につきまして、先週末、第1回会議の議事録が公開されました。第1回は審議事項に関する論点の頭出し、各団体からの改正要望などが中心ですが、学者委員の方々の個別意見なども垣間見えて勉強になりますね(ちなみに日弁連提案も、第3回会議には提出されるものと思います)。

個別意見の中で、個人的にとても重要だなぁと思いましたのは、上智大学の松井智予先生、京都大学(大学院)の斎藤真紀先生(いずれも幹事)のご意見。このたびの会社法改正は、政府のガバナンス改革をバックアップする形で進むはずで、上場会社や非上場の大企業のガバナンスにはそれなりの影響が及ぶものと予想しています。しかし、そういった大企業向けの法改正が、中小企業にとってどのような影響が及ぶのか、中小企業にも適用を強制することがそもそも適切なのか、そのあたりもきちんと議論すべき、とのご意見を述べておられます。

たしかに委員の方々の御意見は、(改正審議の趣旨を忖度すればそうなるのでしょうが)大企業における企業統治のあり方を念頭に置いたものがほとんどを占めています。しかし、従業員がほとんどいないような家族経営の会社、大企業を実質的に支配する創業家の資産管理会社、大企業のグループ会社(M&A、分社化、等いろいろ)、他の大企業と株式を共同保有するJVなど、会社法の改正によって、それらの中小会社にどのような影響が及ぶのか、これは実務家にとっては興味のあるところです。

大塚家具さんや出光興産さんのように、資産管理会社のガバナンスの在り方が、上場会社の支配権を決定してしまうケースもありますし、松井(智予)先生が懸念されているように、上場会社向けのシステムを小規模会社が活用することで、少数株主を株式会社の経営から排除してしまう(会社経営の実態を見えなくしてしまう)ような「会社法の合法的悪用(濫用?)」も可能になります。また「働き方改革」は中小企業にも待ったなしで適用される時代であるにもかかわらず、人的資源に乏しい中小企業に、大企業と同等の会社法上のデュープロセスを要求することはとてもできないでしょう。

企業法務に関わる者としていつも自戒しているところですが、「100年ぶりの民法大改正!!」といっても、実際にはごくごく一部の人たちだけが関心を寄せているのが現状です。ましてや会社法改正というものは、さらにごくごく一部のマニアックな人たちの話題にすぎません(残念ながら「法化社会」という視点からいえばこれが現実かと)。中小企業の経営者の方々、少数株主の方々に、会社法改正の趣旨を伝えていかなければ、最高裁上告件数の半分が本人訴訟という現実、そしてそこに由来する最高裁の法形成機能の低下を是正することはむずかしいのではないかと。

その現実を踏まえたうえでの話として、(日本の株式会社の)わずか0.3%にしかすぎない会社法上の大会社(上場会社を含む)だけを念頭に置き、99.7%を占める中小会社への影響を考えないような会社法改正はありえないと思います。とくに最近は「裁判所におけるめんどうな実質判断を増やす方向での改正」には難色を示す最高裁の姿勢をみると、「誠実に経営をしているにもかかわらず、法律に無知だったために支配権を失ってしまった」といった中小会社関係者が増えることを危惧します。

上記第1回会議の議事録において、斎藤幹事が「法改正を必要とする(強制する)のであれば、これを受け入れる社会インフラの整備にまで目を向けるべき」とのご意見は、まことに正鵠を得ているものと思います。会社法の国策支援機能も大事ではありますが、やはり基本は会社関係者の利害調整機能なので、そのあたりを学者委員(幹事)の方々にぜひ頑張っていただきたいと思うところです。

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2017年4月 4日 (火)

会社法研究会検討課題以外の立法提案について(個人的な雑感です)

本日は会社法改正という「立法手続き」に関するお話なので、守秘義務もしくはエチケット違反に極力配慮しながら書かざるを得ないことをご了承ください。

私は数か月前に(コーポレートガバナンスに関連する)ある事項について、このたびの会社法改正審議(法制審議会会社法制部会での審議)に先立ち、立法提案をさせていただきました。ご承知の方も多いと思いますが、すでに(法制審議会に先立つ)会社法研究会での報告書が公表され、ほぼ会社法改正のための審議事項は固まっていると思われます。

ただ、会社法研究会での検討課題以外の立法提案についても、日弁連を通じて検討事項として取り上げるかどうか協議をする機会がありました。そこで、ある事項について、具体的な立法提案をさせていただきました。日弁連の対策委員の皆様には賛成意見、反対意見を多数いただきました。また、私なりの再反論なども提出させていただきまして、最終的には日弁連の正式な立法提案として、法務省との協議対象に採用していただきました(賛同意見、反対意見を含め、私の立法提案を真剣に審議いただいた日弁連委員の方々にたいへん感謝しています、どうもありがとうございました)。

抽象的な物言いで恐縮ですが、①法務省側の「会社法改正」に関する考え方(一般論として、どのような事態となれば法改正の必要性あり、と認められるのか)、②具体的な改正要望事項と現行の会社法法制とのバランス(他の条文の制度趣旨と整合性がとれるのか)、③法改正までしなければならないほどの実務上の不具合が、現行法上で立法事実として認められるのか(たとえばソフトローで足りるのでは?、利害関係者間での金銭的補償で目的は達成できるのでは?)といったことが相当クリアにならないかぎり、なかなか俎上には乗せてもらえない、という現実を認識いたしました。単純な「世の中の流れ、社会の変化」程度では(議員立法ならいざ知らず)法改正の審議の場にさえ乗せてもらえない、という高い壁を痛感しました。

具体的な結論は申し上げられませんが、率直に言って私の力不足でした。私の提案事項は、すぐにでも法改正の必要性が高いと思っておりますので、たいへん悔しいです。反省すべき点もあり、自分の能力がまだまだ低いことを認めざるをません。ただ、真剣に法改正に向けた手続きにチャレンジしたことで、いろいろと学ぶことはありました。とりわけ今後の公益通報者保護法の改正審議にあたり、条文化作業などにも自分なりの意見を述べたいと考えていますので、今回のチャレンジの結果をバネにして(政治的な風だけでは到底法改正はむずかしい)、手続きの厳しさを十分理解したうえで準備をしておきたいと思います(まずはファクトをきちんと提示できることと、現行法を誰よりも理解することを徹底する必要がありますね)。

 

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2016年2月15日 (月)

ガバナンス改革に反応する会社法改正と株式買取請求制度の整備

最近会社法が改正されたかと思ったら、法務省を中心に、もう次の会社法改正に向けての議論が始まっています(商事法務研究会における審議状況はこちらです)。研究会では社外取締役の義務付け、といった会社法附則25条に関連する論点だけが取り上げられるのかと思っていましたが、最近の会計不祥事に起因する検討事項なども含め、かなり広い範囲で「改正の是非を検討すべき事項」が含まれています(昨年7月に公表された経産省のガバナンス研究会報告-会社法解釈指針が基になっているものが多いようです。ちなみに前回の改正事項として最後に消えてしまった「金商法違反によって取得した株式に関する議決権行使禁止」に関する論点などは挙がっていないみたいですね。企業統治とはあまり関係ない、ということでしょうか・・・)。

結局のところ、アベノミクスを後押しする(日本再興戦略2015をバックアップする)法改正の趣旨が強いようで、上からも(ガバナンスの視点からも)下からも(株主による監視強化の視点からも)かなり「ゆるふわ」になってしまうことが懸念されるような内容です。いくら「攻めのガバナンス」が期待されているからといっても、2月12日のブルームバーグニュースで報じられているように、「形ばかりで実質が伴わないゆるふわガバナンス」となりますと、経営陣のモラルハザードを助長することが危惧されます。もしこのような方向で法改正が進むのであれば、韓国のように「法律参与(遵法監視人)制度」を導入するか、法律家の社外役員を導入することを検討しなければ、経営戦略的にもマズイことにならないでしょうかね。リスクを承知でアクセルを踏み込む勇気は良質なブレーキの存在が前提ですよね。

ところで上記研究会において、「おお!これは良い論点だ!」と個人的に思いましたのは「特別支配株主(又は一定の支配株主)に対する少数株主の株式買取請求権(セル・アウト権)を導入することについて」という検討事項です。株式会社は有限責任の株主で構成される法人なので、持分会社と比較しますと、株主の利益よりも(債権者の利益保護を中心とした)法人としての存続性が重視される傾向にあります。最近の会社法改正でも、株主の監督是正権が、やや後退しているように思います(今回の検討の中でも、たとえば株主代表訴訟の少数株主権化、訴訟委員会前置の是非等が検討されるようです)。株主による監督是正権行使への期待が薄れるとなりますと、法人からの離脱容易性が当然に問題になるわけでして、この時期にセル・アウト権の導入問題に光があたるのはタイムリーではないでしょうか。

また、非公開かつ取締役会非設置会社などでは、支配株主の横暴によって少数株主の利益が侵害されるケースが目立ちます。最近の東京地裁立川支部平成25年9月25日判決では、支配株主の横暴によって会社法109条2項の「属人的制度」が濫用された場合の支配株主による定款変更の効力を否定しています。法人の永続性を重視するのであれば、少数株主が適正な株式評価のもとで、法人から離脱する機会を法制度として保証すべきではないでしょうか。一般的には株主総会の決議取消訴訟を提起したり、会社解散の訴えを提起して、その訴訟の中で裁判所の和解的解決を目指すわけですが、きちんとした手続き的保障がないと公正な価格で少数株主が離脱することができないのが実態です。これはぜひ取り上げていただきたい論点です。

なお、話は変わりますが、これだけ「攻めのガバナンス」を支援する法改正が検討されるのであれば、非業務執行役員が活躍できる環境整備についても検討していただきたいところです。たとえば社長と対決できる監査役さんの環境整備については、監査役の地位を喪失しても違法行為の是正に向けた権限を喪失しないこと(たとえば監査役としての地位喪失後も株主総会の決議取消訴訟における原告適格を喪失しないこと-株主はすでに法改正がされましたね)、監査役解任決議が争われる株主総会における検査役選任申立権の付与、といったことは法改正が検討されてもよいのではないでしょうか(実際、立法事実もあります)。次回の法改正では無理としても、今後の検討課題にしていただきたいところです。

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2015年7月24日 (金)

経産省の企業統治解釈指針は攻めるため?守るため?

(7月24日夕方 追記あります)

東芝事件に関する一連の報道の中で、とても気になるニュースが各紙で報じられています。近々に(今週末にでも?)経産省が改正会社法に伴う解釈指針を公表するとのこと。たとえばこちらの産経新聞ニュースによりますと、東芝事件を契機として、上場会社のガバナンス構築が「仏作って魂入れず」にならないように、その実効性を図るための指針を(経産省が)示すと解説されています。まさに「守りのガバナンス」を機能させるための会社法の解釈指針が示されるような書きぶりです(たぶん他の新聞社の論調も、ほぼ上記の産経さんの論調と同様ではないかと記憶しています)。

しかし(私の理解が間違っていたら訂正しますが)、今回の経産省の解釈指針の公表は、むしろROE8%を超える成長戦略を実行するための「攻めのガバナンス」を実現するためのものではないでしょうか。おそらくこちらのコーポレートガバナンス・システムの在り方に関する研究会議事録が参考になると思いますが、この研究会における審議内容からしますと、たとえば社外取締役は「攻めのガバナンス」の一翼を担う者としてどのように活躍すべきか、という点が示されるはずです。また迅速な経営判断が可能となるよう、取締役会の審議事項を絞って、大幅に権限を経営者に委譲しましょう、といった議論もさかんに行われているようです。

この「東芝ショック」と世間が騒ぐタイミングで会社法解釈指針が出るということで当然懸念されることですが、機野さんがコメント欄でおっしゃっているように、いま政府が推進している攻めのガバナンスを実行する先には、今回の東芝事件のような結果が待っている・・・という見方も出てくるのではないでしょうか。いや間違いなく、そのような意見も素直に出てくると思います。東芝事件の第三者委員会は意図的に「短期の利益追及のプレッシャーが要因」という言葉を使い、「中長期の持続的成長を図るためのガバナンス」を目指す攻めのガバナンスとの矛盾が生じないような書きぶりが見て取れましたが、どうもそれだけでは説明がつくものでもないように思えます。現に、本日から始まった経団連の夏季セミナーでは、メーカーの社長さんから(東芝事件を受けて)「これでは社内の数値目標を強調することがむずかしくなってしまう」との声が出たと報じられており(こちらのニュース)、企業の攻めの姿勢に東芝ショックがどれほどの影響を及ぼすのか、その波及が懸念されます。

執行と監督の分離を推進すれば、それは執行から報告が来ない限りは不正を発見できなくなってしまうということになります。社外取締役が経営の重要事項だけに絞って審議に参画すべき、ということになれば、そもそも重大なリスクがどこにあるのか把握することも困難になります。経営のスピードを上げるため、非業務執行役員が経営陣の業績を評価するため、そして投資家が「モノ言う株主」としての活動を容易にするための解釈指針が公表されることを期待しているのですが、今回の東芝事件によって、このあたりの指針公表の趣旨にはブレは生じないのでしょうか。

私自身は、拙著「ビジネス法務の部屋からみた会社法改正のグレーゾーン」の中で一章もうけて、攻めのガバナンスと守りのガバナンスを分けることは適切ではなく、攻めの工夫によって守りも充実しますし、守りの工夫によって攻めに貢献できることを(問題提起として)書かせていただきました。このたびの経産省解釈指針では、(たとえば取締役会の在り方に関しては)リスク管理と企業価値向上への貢献をどのように両立させるべきか、またその両立の工夫をどのように株主に示すべきか、そのあたりが指針の中で分かりやすく解説されていればいいなぁと期待しているところです。

追記:経産省のHPにて本日、 「報告書」としてアップされましたね。ガバナンスに興味のある方はぜひご一読を!

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2015年5月15日 (金)

取締役が監査役に通報したことで不利益扱いを受ける場合とは?

多くの上場会社さんにとりましては、会社法改正に伴う「内部統制システムの基本方針の一部見直し」もほぼ終わり、いよいよ見直された基本方針に従って社内ルールを策定する時期にきているのではないでしょうか。私も、いくつかの上場会社さんから内部統制システムの見直し、そしてこれに伴う社内ルールの改定に関連する相談を受けておりまして、実務に沿ったご質問も受けています。

そのような中で、ひとつおもしろいご質問がありました。長く企業法務を担当されている方で、会社法についてかなり精通されていらっしゃる方です。

お忙しいところ1点、ご教示いただきたいことがございます。今回の会社法改正により、監査役への通報者に対する不利益取り扱いの禁止を内部統制システムの基本方針として定めている企業が一気に増えましたが、通報者のうち「取締役」への不利益取り扱いの禁止とは、具体的にどういった対応が考えられるのでしょうか。内規により、不利益取り扱いの対象を従業員だけでなく、取締役にまで拡げるのは、やや違和感がございます。

会社法施行規則の改正の中でも、監査役への報告体制の整備・運用についてはどこの会社も工夫を凝らしておられると思いますが、ご質問に関連する条文は以下のとおりです(なお会社法上の大会社であり、監査役会設置会社をモデルとします)。

会社法施行規則100条(業務の適正を確保するための体制)

4 次に掲げる体制その他の当該監査役設置会社の監査役への報告に関する体制
イ 当該監査役設置会社の取締役及び会計参与並びに使用人が当該監査役設置会社の監査役に報告をするための体制
ロ 当該監査役設置会社の子会社の取締役、会計参与、監査役、執行役、業務を執行する社員、法第598条第1項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者及び使用人又はこれらの者から報告を受けた者が当該監査役設置会社の監査役に報告をするための体制

5 前号の報告をした者が当該報告をしたことを理由として不利な取扱いを受けないことを確保するための体制

つまり、当該会社や当該会社の子会社の取締役、使用人等が、監査役に対して報告するための体制の整備に関する決議をすることになるのですが、かりに整備するとした場合、当該取締役や使用人から監査役に報告がなされたことをもって、その取締役や使用人が不利な取扱いを受けないことを確保するための体制整備についても決議をすることになります。ここ1カ月の適時開示をみておりますと、ほとんどの上場会社が内部統制システムの見直しとして、このような体制整備を行うことを宣言しています。しかし、いざ社内ルールを作るという段階になりますと「そういえば取締役が監査役に通報することで会社から不利益を受けるというのはどういった状況なのだろうか?そもそもわが社のヘルプライン規約には取締役が通報主体とはされていないし、公益通報者保護法もたしか取締役は(使用人兼務の場合は別として)通報主体とはされていなかったはず。ではどうやって社内ルールに落とし込んだらいいのだろうか」と悩むこともありそうです。おそらくご質問者のお悩みはこのような点ではないかと。

たしかに「不利な取り扱いを受けない」というのは、想定されるのは通報者が会社から解雇処分や配転命令、降格処分など、不利益な人事処分を受けることを禁止することだと思われます。内部通報に関連する裁判でも、トナミ運輸事件やオリンパス事件、そして警察裏金告発事件等をみても「人事上の処分の適法性」が問題となりました。しかし、会社の圧力によって正当な内部通報が委縮してしまうことを防止しようとする本条文の趣旨からすれば、不利な取扱いとは、会社による法律上の権限行使だけでなく、事実上の処分(作為、不作為)によってなされる場合もあります。取締役は雇用契約上の不利益処分を受ける対象ではありませんが、取締役会を通じて業務執行上の役付けを解かれることもありえますし、また事実上経営情報から隔離されてしまい、当該取締役の職務執行が妨害されることも考えられます。したがいまして、取締役が通報を行ったことにより会社から(他の経営幹部から)不利な取扱いを受ける、という状況を禁止することは想定されるものと思われます。つまり、ヘルプライン規約を改正して通報主体に取締役を追加する、ということは可能です。

では、(ご質問者への回答ですが)ヘルプラインの通報主体に取締役を追加せずとも、取締役が不利な取扱いを受けないことを確保する体制というのは構築できるのでしょうか。ここはやや発想の転換が必要かと。たとえば、会社法施行規則100条3項5号が定める体制というのは、監査役への報告を理由とする解雇等不利益な処分を禁止することのほか、当該監査役設置会社またはその子会社の役職員から当該監査役設置会社の監査役への報告が、直接に、または、当該役職員の人事権を有していない仲介者を介して、当該監査役に対してされる体制を定めること等も考えられます(立案担当者解説 旬刊商事法務2060号7頁)、たとえば会社法357条(会社に著しい損害を発生させる事項の存在を知った取締役の監査役に対する報告義務)の要件を満たすほど明確な不正事実ではないが、不正の疑惑のある行為の通報を外部の弁護士事務所の窓口を通じて監査役に通報する、すでに社内で問題とされている不正疑惑の証拠資料を匿名で提出する、といった制度を構築することも、通報した取締役が不利な取扱いを受けないことを確保するための体制になるものと考えられます。

いずれにしても、社内の内部通報制度は、もともと監査役(会)が窓口になっているところは少ないと思いますので、ヘルプラインを改定するか(たとえば重要情報のみ窓口担当者が監査役と共有する等)、別途、監査役への報告体制をシステム化するかは各社の判断に任されています。そのような報告体制の改定の中で、取締役もプレッシャーを感じることなく(会社法357条で報告義務を課されている重要事実以外の)事実を報告できるシステムも併せて検討することが妥当ではないでしょうか。実際、コンプライアンス経営にうるさい管理本部長さんを嫌っていた社長さんが「あいつは1年だけ役員に就任させて、そのあと止めてもらう」とおっしゃっているケースもありますし、また(今後急増する)社外取締役のところへ社内通報が届き、その対処に苦慮するケースも予想されますので、このような体制作りも必要になるものと思います。

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2015年3月27日 (金)

「社外取締役ガイドライン改訂版」が公表されました(日弁連)

先日、原案が公表されたコーポレートガバナンス・コードの第4章でも取締役、監査役のトレーニングの必要性が謳われていますが、このたび2年ぶりに日弁連「社外取締役ガイドライン」が改訂され、3月19日に公表されました(こちらの日弁連HPで閲覧できます)。このたびはタイムリーな改訂ということでマスコミからも注目されているそうです(ちなみに私は取材を受けておりません・・・)会社法が改正され、またガバナンス・コードが東証ルールとして策定される中で、新たに社外取締役に就任される方々に「ベストプラクティス」として参考にしていただくため、大幅に改訂されたものです。日弁連のお知らせから引用いたしますと、

(本ガイドラインについて)日弁連では、2013年2月に、弁護士会会員及びその他の社外取締役候補者、社外取締役を新たに選任する企業等を対象とした「社外取締役ガイドライン」を作成し、2015年3月に改訂しました。本ガイドラインは、取締役の善管注意義務の法的分析・整理を踏まえ、社外取締役の就任から退任までの役割等について、ベストプラクティスをコンパクトに取りまとめたものとなっています。社外取締役の方々や、社外取締役を迎え入れる企業等において、広く参考としていただければ幸いです。

ちょうど2年前、こちらのエントリーで解説本をご紹介しましたが、今回の改訂版につきましても新たに解説本を出版する予定でして、プロジェクトチームもいよいよ大詰めを迎えています。ちなみに私の担当は第8章の「監査等委員会設置会社における社外取締役」、第9章「その他社外取締役に期待される役割」です。いずれも今回の改訂版の要ですが、もちろん東京の企業法務に精通された弁護士の方々と何度も議論の末に出来上がったガイドラインなので、私の個人的な意見を示したものではありません。ただ、話題性の高いところ(監査等委員会設置会社、コーポレートガバナンス・コードから期待される社外取締役の役割)を担当させていただいたので、ぜひともご参照いただければと。

法曹の書いた「ガイドライン」というと、従来の「守りのガバナンス」中心の指針ではないか、といったイメージを持たれるかもしれませんが、本ガイドラインは経営者(OBを含む)、行政職OB、コンサルタント、会計士といった方々にも参照いただくための指針を示したものであり、ガバナンス・コードを意識した「攻めのガバナンス」実現に寄与する社外取締役を念頭に置いています。また、平時にも有事にも役に立つものとして、その行為規範を意識しながら指針を示していますので、「就任前」「就任直後」「日常の活動」「事業再編や不祥事など、有事の際の行動」等、状況に合わせて活用いただけるようになっています。

各企業の状況によって求められる役割も異なると思いますので、ガイドライン自体はどうしても抽象的な表現が用いられ、いわば「プリンシプル」な規範にならざるをえませんが、そのあたりは改訂版の解説本において補う予定です。社外取締役を迎え入れる経営者のホンネ、対話の時代といわれつつも、対話には限られた時間しかない機関投資家の悩み、そして制度について一般投資家が抱く懐疑心なども意識したうえで策定したつもりです(いや、このあたりは委員のひとりとしての思い入れかもしれませんが・・・)。冒頭に示したように、まさに「取締役、監査役の研鑽の教材」として活用されることを切に願うところです。解説本(改訂版)も商事法務さんから出版されますので、ぜひぜひよろしくお願いします。

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2014年8月11日 (月)

監査等委員会による利益相反取引の事後承認

江頭憲治郎先生の「株式会社法(第5版)」を読むまで(恥ずかしながら)気づいていなかったのですが、会社法の見直し要綱から会社法改正法案までの間に、監査・監督委員会設置会社という仮称が監査等委員会と正式変更されたこと以外にも、監査等委員会設置会社に関する条文が若干修正されていたのですね。

会社と取締役との間における利益相反取引について、監査等委員会による承認があれば、利益相反取引に賛成した取締役らの任務懈怠推定条項の適用が排除されるのですが(改正会社法423条4項)、見直し要綱では「事前の承認」となっていたのが、会社法改正法案では単なる「承認」に変わっており、そのまま改正会社法が成立しています。最近出版されている会社法改正に関する解説本等でも、このあたりの修正に気づかずに、そのまま「監査等委員会による事前の承認があれば・・・」と解説されているものもありますので注意が必要です。

なぜ要綱の段階で「事前の承認」が必要とされていたのが、会社法では「承認」とされたのかはわかりません。利益相反取引に対する取締役会の承認に関する会社法356条1項の文言が、単純に「承認」とされていることに合わせたのかもしれません。江頭「株式会社法」では、この356条の取締役会の承認は、事後承認も認められないわけではない、とされているので、監査等委員会による承認にも事後承認の余地がある、ということでしょうか。

では監査等委員会による利益相反取引に対する承認手続きについても、356条の解釈と同様に事後承認を認めてよいのでしょうか。そもそも利益相反取引への承認については、取締役会による場合には取締役の善管注意義務の履行に関わるものであり、また承認なき利益相反取引の私法上の効力(有効か?無効か?)にも関わります。しかし、監査等委員会設置会社においても、取締役会の承認手続きは必要とされており(現行会社法356条に関する改正はありません)、これを前提として監査等委員会の承認に関する規定が設けられているので、監査等委員会による承認がなくても(つまり経営陣が監査等委員会の承認をとらなくても)、利益相反取引に関与する取締役の善管注意義務の履行は問題とならず、また取引自体の効力にも影響はしません。

つまり、監査等委員会の承認の法的効果は、単純に利益相反取引に関与する取締役の任務懈怠の推定を排除するものであり、そのような関与取締役らの行動が善管注意義務違反ではないことを確認させて、関与取締役らの行動に慎重さを求めるにすぎないものと思われます。そうであるならば監査等委員会による利益相反取引に対する承認手続きは事後承認では無意味となり、少なくとも実際の利益相反取引が実行されるまでになされる必要があるのかもしれません。また、仮に事後承認でも可、ということになると、利益相反取引によって会社に損害が発生することが明らかになってから、経営陣が社外取締役らに働きかけえて、免責を得るために監査等委員会による事後承認を得る、という弊害を招く可能性もあるかもしれません。

このように考えると、会社法356条における取締役会の承認と、会社法423条4項の監査等委員会の承認とは、その解釈を異にするものとして、監査等委員会による承認は「事前の承認」に限るとすることにも合理性があるように思います。よくよく考えてみると、監査等委員である取締役は、利益相反取引に関わる取締役(相手方である取締役は無過失責任なので除外されますが)の善管注意義務違反の有無を判断して、関与取締役らの法的責任追及を排除できる立場に立つもので、裁判官に準ずるほどのスゴイ権力の持ち主ではないでしょうか。責任追及訴訟の場面において、株主からの取締役提訴請求を受けて、提訴の可否を判断する監査役以上の強力な権限だと思います。

いずれにしても、毎度申し上げておりますとおり、監査等委員会設置会社の社外取締役に就任するということは、指名委員会等設置会社に移行するくらいにガバナンス改革を覚悟した経営陣の下でなければ、かなりリーガルリスクが高いなぁと感じる次第です。

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