エネチェンジ社の会計不正疑惑-「あずさ」も「第三者委員会」もどっちも正しい
6月27日の日経ニュース「エネチェンジ会計処理『不正認められず』あずさは反発」で初めて知りましたが、エネチェンジ社の会計処理(SPCへの売上計上は正しいか否か)を巡って会計監査人のあずさ監査法人と第三者委員会の結論とが食い違っていることが話題になっているようです。最終的には会社側が監査人の意向に沿って軌道修正をされたそうですが、(交代が決定している)あずさ側は「不正があった」と主張し、会社側は第三者委員会の結論をもとに「不正ではなかった」として7月末の定時株主総会(継続会)に臨むことになります(新しい監査人を決める必要はありますね)。
エネチェンジが設置した調査委員会報告書を読みましたが、第三者委員会と会計監査人で「不正か否か」で対立する、というのは普通にありうることでして、2013年に私が執筆した「法の世界からみた『会計監査』-弁護士と会計士のわかりあえないミゾを考える」の第5章「会計士から嫌われる『第三者委員会』と『金商法193条の3』」でもすでに「なぜ考え方が違うのか」という点は解説済みです。一言でいえば「不正だ」も正しいですし、「いや不正はなかった」も正しいということです。
不正と評価できるかどうかは会計監査人の側は「消去法的発想」で判断するのであり「(疑惑を抱かせるに十分な証憑があるので、これを打ち消すだけの)不正がなかったと言えるに十分の合理的な証憑は得られなかった」との結論に至り、弁護士を中心とした第三者委員会は積み上げ方式で事実を積み上げて「重要な証憑はあれど、他の証憑を斟酌すれば不正があったと評価できるまでの心証を形成できない」との結論に至る。前者は会計監査制度を維持するのに必要な「相対的真実主義」からの帰結であり、一方で後者は裁判制度を維持するために必要な「絶対的真実主義」からの帰結ということで、この差はいかんともしがたく。
財務報告内部統制の在り方を考える・・・といったあたりが、この差を埋めるために活用できれば、と(もう、ずいぶん前から)個人的には思っております。金商法改正(正確には開示府令改正)によって訂正内部統制報告書に訂正理由を記載するようになりましたが、このあたりを議論することがひとつのヒントになるのではないかと。