2021年8月26日 (木)

会計不正事件の発覚に備えはあるか-取締役会で共有すべきガバナンス・コード補充原則3-2②

今朝(8月25日)の日経18面記事「会計不正 公表46%減-在宅勤務普及、発見に壁」によりますと、2021年3月末までの1年間で、会計不正事件を公表した企業(上場会社)が25社にとどまり、前年比46%減少したそうです(日本公認会計士協会調べ)。一見すると会計不正事件自体が少なくなったようにも思えますが、KPMG-FASのディレクターの方の話では「不正が減ったのではなく、発見しにくくなった」とのこと(なお「会計不正」とは取締役の横領等の「資金流用」と財務報告への虚偽記載等の「粉飾」の双方を含みます)。

これは当ブログで昨年来申し上げているところと全く同じでありまして(たとえばコチラコチラ)、当職の受けている相談内容や内部通報者の支援活動等からみても、昨年来のパンデミックに由来する経営環境下での会計不正は間違いなく増えています。また、監査環境の制限により、会計不正は発見しにくい状況となっており、あと1年~3年後に発覚するケースが多いと予想しております(良い悪いは別として、もし軽微なものであれば、いまのうちにコソっと修正しておいたほうが良いですね)。

「当職の相談案件」といった偏った知見からではありますが、会計不正事件が急増しているものの発見ができない状況が生じる要因は3つあります。まず1つめは「コロナ禍における監査の後退」です。品質不正と同様、会計不正も組織内の力学的バランスが崩壊することによって発生する場合が多いのであり、内部監査部門や監査役監査が強い立場にない組織では、どうしても現場の理屈に負けてしまう(簡略化した監査手続きを余儀なくされ、不正リスクは残っているものの泣く泣く監査を終えざるを得ない)。

つぎに2つめは「ガバナンス改革の深化」です。2014年から始まったガバナンス改革は「攻めのガバナンス」が主流であり、上場会社には資本の最適配分が求められます。具体的には採算の合わない部門、子会社の整理、売却です。攻めのガバナンスのしわ寄せが迫る部門、子会社では(誠実な社員の皆様が)自身や家族の生活を守るために「部門一丸となって」粉飾に走るわけで、まさに「組織防衛」なる正当化理由のもとで粉飾を継続することになります。「急場しのぎ」「今だけだから」といった正当化理由も聞こえてきます(後日、粉飾を修復することは困難だと思いますが)。

そして3つめは「社内における不規則コミュニケーションの不足」です(これもコロナ禍ということと関連しますが)。会計不正の情報が(関係者以外に)漏えいするのは「社内の噂話」「飲み会でのココだけの話」によるところが大きいのですが、リモート勤務や飲み会の禁止によって不規則コミュニケーションの場が減っています。したがって「疑惑」を本社が知る機会に乏しい。また、内部通報や内部告発も、ハードな内容の場合には支援者の存在は不可欠でありますが、こういった支援者も不規則コミュニケーションの不足によって見つけにくい状況です。

ということで、会計不正事件は実際には発生しているのでありますが、パンデミックが未だ収束するめどが立たない中で、発覚にはもう少し時間がかかるということになります。そこで上場会社の皆様は、いまから準備しておくべきなのがコーポレートガバナンス・コード補充原則3-2②ⅳに対する対応です(ほとんどの本則上場会社がコンプライしているはずです)。「外部監査人が不正を発見し適切な対応を求めた場合の会社側の対応体制の確立」です。会計監査人に内部告発が届いた場合や会計監査人が自ら不正の疑いを抱いて調査を要請した場合、どのような対応をとるのか、(コンプライを宣言している以上)どこの会社でも確立しているはずです。

もしコンプライしながら体制を確立していない会社、体制は確立していたけれども、有事に対応できなかった会社の役員には、訴訟を提起され善管注意義務違反が認定される可能性は高いと思われます。もちろん不正が大きくなってから発覚する、ということになりますので株主にも多大な損失が生じることになり、会社の信用も毀損されるリスクは高いはずです。改正公益通報者保護法が施行されて、内部通報と内部告発の「制度間競争」が奨励される前に、せめてガバナンス・コード補充原則3-2②への対応(体制の確立)だけはきちんと役員間で共有しておいたほうがよろしいのではないでしょうか。

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2021年7月14日 (水)

国税庁職員のイケナイ事件についてひとこと(私は謝罪すべき立場なのでしょうね・・・)

国税庁職員が「居酒屋で5回送別会、国税庁職員14人参加し7人感染…『2人以下90分以内』守らず」(読売新聞ニュース)ということで、財務省のコンプライアンス・アドバイザーである当職から深くお詫び申し上げます。適切な納税の促進といったところでの世間と国税との見解の相違などはときどき起きてしまうのはしかたがないのですが、こういった納税者の信頼を裏切るような行動こそ注意せよ、と常々申し上げているのですが。ホンマ、反省してほしいです。

先日の経産省の集団飲食&感染の件が明るみになったときにも、また接待問題で総務省の件が明るみになったときにも「まさか財務省では起きてないよな」と心配をしておりました。幸い、国家公務員倫理法に違反するような問題はなかったようでホッとしていたところでした。国税庁は20年ぶりに組織理念を新しくしまして(現場の職員の皆様にもわかりやすく、常に参照していただけるようなスタイルにしました)、納税者からの信頼を今まで以上に高めるため、省内一丸となってコンプライアンス意識の涵養に努めているところでありました(ということで、本件の報道には本当にガックリ_| ̄|○ でございます。。。)

なんでこんなことになるんやろな(悲)。コロナ禍における飲食自粛についてはいろいろな意見もあると思うのですが、さすがに自粛を要請している立場だから信頼を失ってしまいますよね。。。ものすごい大所帯だから・・・というのは理由にならないですよね💦新年度となりますので、また新たな気持ちでアドバイザーとしての責任を果たしてまいります。

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2021年3月 2日 (火)

10年周期のみずほ銀行システム障害-運用面の問題はどこにあるのか?

2002年、2011年に続き、3度目の勘定系システム障害を起こしてしまったみずほ銀行ですが、4000億円、最大8000名の人員を投入して2018年に稼働した新システムでの障害なので、今回は当事者にとって、きわめて大きな衝撃だったはずです。新システム導入に関与した富士通は「システムに問題なし」と発表し、みずほ頭取さんは「運用上の問題」を会見で述べておられたので、どう考えても銀行側の問題が大きかったようです。

定期預金のデータ移行作業でシステムに想定を上回る負荷が生じたことが直接の原因とのことですが、では「銀行側の運用上の問題」であるとすれば、どこに根本原因があったのか、とても興味があります。私は全くの素人的発想ですが以下の3点に注目しています。

まずひとつは「構築よりも更新のほうが圧倒的に障害発生のリスクが高い」という点です。効率性の向上を目指してシステムの更新を行うわけですが、そもそも「よくわからないけどうまくいっている状態」で稼働させているので、更新によって効率性が向上する分、どこかに副作用が生じます。更新作業ですから「動かしながら修正する」わけで、不具合が発生すれば利用者の損失に直結します。たぶんシステム障害の本当の原因はわからないまま再稼働していると思いますが、そのあたりのリスク感覚があったのかどうか。

ふたつめは旧富士銀行、旧日本興業銀行、旧第一勧銀の組織力学をいまだにひきづっているのではないか、という点。三井住友、三菱UFJは「片寄方式」でシステム統合を図りましたが、みずほだけが「片寄方式」が採用できず、またそれぞれが提携していた富士通や日立、NTT等4社で統合作業が行われた、という点は、これまでの2度のシステム障害でも問題にされていました。どうしてもチームがひとつになれない、というのが運用面での問題として残っているのではないかと。

そして3つめがみずほの「働き方改革」との関係です。ご承知のとおりみずほ銀行は週休3日制を導入したり、25%の在宅勤務制度を導入しましたので、DXの推進とともに大規模な組織で更なる職務の分業化・専門化が進んでいると推測されます。したがって「システム全体を理解する社員」「隙間を埋める社員」が存在しない。これまでの労務慣行からすると、なにかイレギュラーな状況が生じた場合には、誰の業務なのかグレーであったとしても、誰かがそこを埋める作業ができたわけですが、そこに手を伸ばす社員が存在しなくなった(これはコロナ禍における他社の不祥事にも通じるところですね)。

いずれにしても、過去最大級の新勘定系システムの構築が稼働していたわけですから、運用上のどこに問題があったのか、(限界はあると思いますが)前回と同様、調査委員会を設置して公表していただきたいと思います。

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2021年1月14日 (木)

ソフトバンクvs楽天モバイル・営業秘密侵害事件-双方の主張が食い違うのは当然かも・・

本日(1月13日)の日経朝刊12面では「サイバー攻撃 広がる裏口(上)-『社内は安全』死角を突く」との見出しで、近時の情報セキュリティリスクに対する企業の内部統制(リスク管理手法)の変遷について報じられていました。これまでは外部への防御は厳しく、そして社員(内部)への監視は緩めるという手法をとる企業が多かったのですが、機密情報を盗まれてしまう事例が相次いでいるため、「ゼロトラスト(あらゆる人物や端末を信用せず、データへのアクセスがあるたびに認証するセキュリティ対策)」を前提とした対応をとる企業が増えているそうです。

とはいえ、他社との厳しい競争に打ち勝つため、業務の効率性を(発生確率が低い情報セキュリティリスクのために)犠牲にすることはできず、また技術社員の例外的取り扱いはどうしても必要な場面があります。したがって、記事に登場する大和ハウス工業の執行役員の方がおっしゃるように「火の手はあがるがすぐに消す、というのが現実解」ではないでしょうか。私の日ごろの有事対応の経験からみても、もはや攻撃から機密情報を完全に守ることは不可能であり、むしろ侵入されることを前提に、これを早期に発見して破壊する作業にこそ内部統制の資源を重点的に投入すべきと考えます。

さて、情報セキュリティといえば「営業秘密」の管理も重要ですが、すでにご承知のとおり、ソフトバンクの元社員が、同社の通信技術情報を退職日にメール添付の方法で社外に持ち出したことで逮捕されました(※)。また、同社員がすぐに楽天モバイルに中途採用で入社したことから、ソフトバンクは法人としての楽天モバイルを「自社の営業秘密を不正に取得した」として不正競争防止法違反に基づいて民事提訴する方針であることを表明しました(損害賠償請求と営業秘密の不正使用の差止請求)。そういえば昨年10月、エディオンと上新電機との間における営業秘密侵害に基づく損害賠償等請求事件の一審判決が出ましたね(エディオン側が一部勝訴、刑事事件では上新電機は不起訴処分)。

※・・・本日のニュースによれば、当該実行者は、実際には退職日まで約30回にわたり、合計170のファイルを抜き出していたそうです。今後動機の解明が待たれますが、退職から就職までのタイムラグが存在しない中で、かなり大胆な犯行のようです。

営業秘密侵害事件の法律的な解説はご専門の方々にお任せするとして、(コンプライアンス経営の視点から)私は先のサイバー攻撃の課題と同様、どんなに頑張っても重要な営業秘密の漏えいは防げないだろうと考えております。もちろん侵害事件の裁判で重要とされる「秘密管理性」の要件を満たすためにも、事前の予防は必要です。ただ、働き方改革が進むなかで、どんなに秘密保持誓約の合意をしていたとしても、またどんなに不正行為の視認性を高めていたとしても盗む人は盗みます(笑)。したがって、営業秘密を侵害された場合、もしくは不幸にして秘密を取得してしまった場合の事後対応にこそ関心を向ける(資源を重点的に投下する)必要があろうかと。(※)

※・・・もちろん、予防のための内部統制を徹底することで営業秘密の漏えいを防止する対策もあります。たとえば技術系のキーマンが存在するのであれば、そのキーマンだけを徹底してマークする(普段から社内メール等をチェックしておく)、当該キーマンが転職するということであればガーデン・リーブによって強制的に重要情報から隔離する、といったところでしょうか。しかし、これらの対策は副作用を伴いますので、会社としても相当の覚悟が必要です。

ところで、営業秘密の管理ミスや不当な取得行為が企業不祥事として登場する例はあまり見受けられません。裁判例も少なく、先のエディオンの例、ソフトバンクの例などは本当に「氷山の一角」であり、ほとんどの事例は泣き寝入りか水面下での解決となり公開されない、というのが実態だからです。営業秘密を取得した(と思われる)法人にも刑事罰が科されますが、これまで一度も適用されたこともありません(上記の上新電機も不起訴処分)。「タダ乗り」という競争上の不正を許さず、誠実な企業の営業秘密を保護するために、国の規制を強化したり、企業行動指針を策定することも考えられますが、あまり行為規範としては実効性がないような気もします。むしろ民民訴訟を活性化させることで、事後対応次第では企業のレピュテーションリスクが高まるという事態を生じさせるほうが営業秘密管理に向けてのインセンティブになりうるように思います(あくまでも私の個人的な意見ですが)。

ここ数年、新日鉄住金(当時)とボスコの例、日本ペイントと菊水化学の例などをみても、日本企業の「オープン&クローズ戦略」が推奨される中で、営業秘密の保護の社会的要請は高まっているように感じています。そして今後は(営業秘密の適正管理、不正取得防止のために)「民民裁判」を活用する風潮が広がることは十分考えられます。営業秘密を適切に守るためにも、また、不当に他社の秘密を取得しないようにするためにも、裁判手続きを活性化させることで関係企業の内部統制の強化を図る、という考え方です(※)。

※・・・たとえば平成27年の不正競争防止法改正によって、生産技術等の不正使用についての立証責任の軽減措置が導入され、同年1月の営業秘密管理指針の全面改訂により、「秘密管理性」の解釈が緩やかになされるように(要件該当性が認められやすくなるように)指針内容が変更されました。いずれも当事者が裁判を提起しやすくすることが狙いです。

また、不正行為の実行者が逮捕される等によって事件が表面化した場合、秘密が漏えいした企業については秘密管理上の問題が指摘され、一方で秘密の取得が疑われる企業については他社秘密の不正入手防止に関する問題が指摘され、どちらの法人も役員の内部統制構築義務(善管注意義務)違反による損害賠償責任が問われるおそれがあります。したがって将来のリーガルリスクを考えた場合、双方とも最初からミスを認めるはずはなく、(株主利益の最大化のために双方の取締役は全力を尽くしているわけですから)法人としてのコメントも正反対になるのは当然ではないかと思います。

カプコンのように、重要な営業秘密を盗まれて身代金を要求され、これを断固拒否するや実行犯から情報公開をちらつかせて脅される、といった悪質な事例も出ていますので、営業秘密保護のためには海外当局とのネットワークも必要かもしれません。また、刑事事件の威嚇をもって社員に営業秘密侵害の重大性を認識してもらうことも不可欠です。

ただ、特許もとらない、技術公開もしない、しっかり情報は社内で守るという戦略を第一に考えるのであれば、今後は営業秘密を日本としてどう守っていくべきか、官民で真剣に検討すべきであり、ソフトバンク・楽天モバイル事例のように、司法手続きの活用を推奨して積極的に当事者に争わせて、その裁判例の集積のなかで(判決内容だけでなく、当事者のレピュテーションリスクなども考慮しながら)ベストプラクティスを見つけることもコンプライアンス経営の実現という視点からの現実解ではないかと考えるところです。

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2020年8月17日 (月)

ワイヤーカードの会計不正事例-日本の「第三者委員会」制度では不正を暴くことはできただろうか?

先週に引き続き、会計不正に関連する話題です。連休中にドイツのワイヤーカード社の一連の会計不正事例に関する記事などを整理しておりまして、ふと疑問に思ったことを簡単に記しておきます。

2019年10月21日、ワイヤーカード社は、前週のフィナンシャルタイムズによる不正疑惑報道(及びその後の株価下落)を受けて、KPMGに独立監査を依頼しました。KPMGにはグループ全社の全情報へのアクセス権する、との取締役会、監査役会決議がなされたそうです。そして半年後である2020年5月1日、ワイヤーカード社はKPMGによる独立監査の結果を公表しました。

調査結果の内容は「ワイヤーカード社の不正を示す証拠は見つからなかったものの、真相解明に必要な証拠を十分に入手することはできなかった」というものです。この結果を受けて、ワイヤーカード社の会計監査人(EY監査法人)は財務報告の承認を拒否、その後、2200億円にも上る架空預金口座の存在が明らかになっていきます。

このワイヤーカード社の会計不正事件の発覚経過を眺めていますと、KPMGの「独立監査」の調査結果が大きな役割を果たしていることになります。そういえば、これまでの日本企業の会計不正発覚の経過において、第三者委員会が独自調査によって不正を発見した、ということがあったでしょうかね?比較的最近の事例では、たとえば雪印種苗の第三者委員会が調査対象範囲外で大きな不祥事を発見したこと、関西電力の第三者委員会が金品受領問題とは別に「報酬後払い疑惑」の存在に光を当てた、といった事例もありました。しかし、それらは極めて稀なケースであり、今回のワイヤーカード社の会計不正の存在を日本の第三者委員会が暴くことは困難だったのではないか、と考えています。

ここからは全くの私見にすぎませんが、先日ご紹介した八田進二著「第三者委員会の欺瞞」でもメインテーマとなっておりましたように、最近の第三者委員会は経営者との距離感が近すぎて、中立・公正な第三者たる立場での調査に疑問を抱くことが多い。「疑惑」の対象とされた不正事実の存否を明らかにするにあたり、当該事実の存在を示す証拠の有無については熱心に調査を行いますが、「この事実が存在しない、といったすべての『仮説』について否定的評価が揃った場合には『不正は存在しない』と推測してもよい」といった、仮設を立てての調査については熱心ではないように思います。

これだけ第三者委員会調査の影響力が大きくなってくると、往々にして「委嘱された対象事実の存在を認めるに足りる証拠はなかった」という調査結果が、「不正事実は存在しなかった」といった調査結果と同等であるかのように誤解されるケースが増えており、おそらく経営陣もバイアスが働いているので「不正はなかった、とのお墨付きを第三者委員会からもらった」と公表するケースが散見されます。しかし、もしこれらの仮説のひとつでも、要求された証拠によって明らかにならなかった場合には、第三者委員会としては「疑惑とされた事実は(証拠によって)認められなかったものの、不正は存在しなかった、と確信を持てる心証は得られなかった」という調査結果を出すことも必要ではないでしょうか。弁護士が中心となる委員会よりも、監査経験のある会計士さんのほうが馴染みのある調査結果ではないかと。

もしワイヤーカード社の会計不正が「独立監査」の調査結果によって明らかになったのであれば、このKPMGによる「独立監査」と日本の「第三者委員会調査」のどこが違うのか、ぜひともきちんと検証すべきだと思います。

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2020年4月 2日 (木)

経産省の不祥事(虚偽報告)は早く見つかって良かったのではないか?

本日(4月1日)の読売新聞朝刊(社会面)に「経産省職員が虚偽文書 関電改善命令 ミス隠ぺい、幹部ら処分」と題する記事が掲載されています。すでに報じられているとおり、経産省は関西電力に対して業務改善命令を発出したわけですが、手続上は取引監視委員会の意見を聴取しなければ命令を出せないにもかかわらず、委員会の意見聴取を担当者が失念していた、とのこと。後で気が付いて、慌てて委員会の意見を聴取したのですが、その聴取の日付けを命令発出前に書き換えていたそうです。担当部局の幹部も許容していたこと、担当者が相談した他の部局の職員も黙っていたことが判明しています(3月31日付け経産省によるリリースはこちらです)。

残念なのは、この隠ぺいの発覚は、改善命令に関する決裁文書への情報公開請求がなされたことがきっかけ、という点です。組織の自浄能力の欠如が露呈されてしまいました。もし情報公開請求がなければ、経産省内部で隠ぺいは(誰もトップに報告することもなく)そのまま眠ってしまうはずだったということです。

3年ほど前、人事院からの要請で、各省庁の幹部160名を集めたコンプライアンス研修の講師を務めましたが、その際「公務員の無謬性」についてお話させていただきました。なぜそこまで「無謬性」にこだわるのか?公務員だって「人生山あり谷あり」ですから不正に手を染めることだってありますし、ミスも起こします。なぜご自分の過ちを認めないのか、不思議でならないことを申し上げました。

このたびの経産省の件も同様であり、私には隠ぺいするほどのミスであることが全く理解できません。どうして「法令の認識不足で手続にミスがありました。現時点の命令を取消して、あらためて明日、命令を発出します。失礼しました」と言えないのか?上司もなぜ、その隠ぺいを了承してしまうのか・・・、私にはそれほどまでにコンプライアンスよりも「無謬性」を重視する発想がわからないのです。この公務員の発想を心底から理解できなければ、公務員の隠ぺい体質は直せないだろうし、森友問題の解明もむずかしいのではないかと考えます。

しかし、今回の経産省の件は、情報公開請求によって早めに発覚し、関係者の処分を終え、経産省にとってはとてもラッキーだったと思います。もしこのまま隠ぺい問題が放置され、数年経過してから「虚偽文書疑惑」のような形でオモテに出たとしたらどうなっていたでしょうか。おそらく「関電と経産省とのなれ合い体質(疑惑)」「手心を加えた経産省(疑惑)」といった形で週刊誌ネタになっていたはずです。経産省は強く否定したいのですが、根も葉もない噂に(確たる証拠をもって)反論できないがゆえに、手続ミスの隠ぺいでは到底すまないような組織の信用毀損に至ってしまう可能性もあります。

上記経産省リリースによると、再発防止策として「二度と起こさないための研修」をされるそうです。しかし、私は「残念ですが、どんなに立派な研修をしたとしても、また同じようなミスはかならず起きます」と言いたい。再発防止策は、起きたときにどうするのか、ということを省内、担当部署を越えて議論することです。あの大阪府警ですら、証拠偽造が頻発した折、府警本部長の指揮で「もし、偽装を署内で見つけたら、君はどう対応するか」というDVD研修に至りました。(※1)公務員の「過剰な無謬性」を捨て去ることが再発防止の第一歩です。

今年も財務省ほか、人事院研修の講師をさせていただきますが、同様のことを強く公務員の方々にお伝えしたい。

(※1)2012年、新聞でも報じられましたが、大阪府警でコンプライアンス e ラーニングの DVD が警察官 2 万 3000 人に配られました。2 年間続けて非常に大きな不祥事が大阪府警に続きました。7 年も前の事件の証拠を紛失してしまったから自分で作ってしまったとか、証言の調書を偽造してしまったとか、本当に恥ずかしい不祥事が 7 件も続きました。このことによって本部長が交代しましたが、大阪府警のコンプライアンス教育も変わりました。府警教育では「あなたが上司として、部下の不正を見つけたときにどうするか。」「あなた自身が証拠をなくしたときにどうするか、誰に報告するか」こういうことを e ラーニングで始めたのです。あの大阪府警で、警察官は不祥事を起こしてはいけないという今までのスタイルから、起こしたときにはどうするかという発想に変わったのです

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2020年3月13日 (金)

NOSを中心とした架空循環取引事件の根本原因とは?某氏の視点(下)

本日(3月12日)、ネットワンシステムズの第三者委員会報告書(最終報告書)がリリースされました。あまりにタイミングの良いエントリーになってしまいましたが、昨日に引き続き(下)をご紹介いたします。最終報告書へのコメントはまた後日とさせていただきますが、最終報告書の「原因分析」と以下のコメントで示されているところを比較していただきますと、同じ視点、異なる視点が浮かび上がるのではないでしょうか。それにしても2007年に発覚したIXI事件への関与を含め、NOS社は10年間に3度も大きな架空循環取引に関与していたわけです。「4度目の架空循環取引への関与はない」ということをこの最終報告書を読んだ東京証券取引所自主規制法人ほか、ステイクホルダーは確信できるかどうか・・・。2月17日のエントリーでも述べた通り、蜜の味漂う架空循環取引は増えこそすれ、減ることはありません。その誘惑からNOSは今後絶対に距離を置くことができるか、注目すべき点です。

(以下、某氏のコメントの続き)

外資系IT企業出身者が経営幹部を占めるNOSでは、幹部の多くがハイタッチ営業経験者の可能性は高く、共有されるバックグラウンドから”営業ノルマが厳しすぎた”のでないかと指摘はある。ハイタッチ営業は”コミッションセールス”であり、業績いかんで、報酬の大きな差異はあろうし、業績への意欲、執着は相当高いかもしれない。その可能性は十分に考えられる。

ここでは少し違う視点を指摘したい。A氏の動機が、より切実なものであった可能性である。報道によればA氏は中堅営業とあり、仮に40代営業と考えれば、自分のキャリアの先が概ね見え始める頃であり、自分の”居場所”を確保、維持することが動機の一つになったのではないか。NOSはこの10年で、地味な老舗ITインフラ企業というイメージから(やや強引にも見えるが)イメージを変えつつある。ステータス高く、高感度ショップに隣接した本社を構え、HPや会社案内で見るに、社内はまるで外資系かと見紛うほど、ユニークな空間もあるようだ。評価制度、報酬制度、人事制度は当然のごとく、業績に強く連動させているであろうし、特にその運用は業績ありき、業績あっての強権、恣意と写っていた可能性はある。厳しくなっていく評価のもと、A氏は大きな失注に動揺し、自分の目先”居場所”の確保に焦り、自己防衛本能より不正に手を染め、結果的に、業績さえあれば保身以上の評価や信任を得て、その維持こそが強く目的化したのではないか。

現在、第三者委員会にて鋭意解明されつつあるが、今後、関係者から周辺情報が漏れ伝わる可能性はある。多くの不正につきものであるが、例えば、不正実行者やその部下、上司、周囲関係者に過剰、過大な接待交際費が供されていた場合である。不正部門は中央省庁が顧客であり、うかつな接待に同行同席はないであろう。万が一、社内他部署の人間の同席や、循環登場各社関係者の同席が確認されるようなことがあれば、第三者委員会報告書での事実認定や共謀性を根本から覆すこともありうる。

本件では、あらゆる面で要らぬ邪推、曲解を徹底的に排除すべく判断、行動が求められており、決算修正に託け(かこつけ)時間をおき、頃合いを見て社内外ともに穏便に対応すべし等、万が一にも誤解を与えては、社員を含め全てのステークホルダーに不実極まりなく取り返しがつかない。株価をもって正当性の強弁であれば、経営者の現状認識の甘さゆえであろう。

不祥事が繰り返す理由は明白である。不祥事は問題なのでなく、表出する現象に過ぎない。不祥事を繰り返し生み育てる組織風土こそ本質であり、その風土を修正、是正する客観的、「独立」、「公正」な目、意見を軽んじてきた可能性は否めず、現代の企業活動において逃げてはならない正しい厳しさに耐え抜く覚悟が、経営陣もとより社内外取締役、監査役幹部社員に不足していたのではないか。それらしく組織、委員会は作れど「仏作って魂入れず」。十六銀行事件の報告書に感じたことだが、「他責に逃げる」組織風土を連想させる。他責には「自分(達)は特別だ」という自意識、集団意識が強く働き、正当化される。

全てのステークホルダーの信頼回復につながる姿勢とは、まさに欠如が指摘される誠実さであろう。不祥事発覚のたび、見識権威ある第三者を招聘し委ね、不正実行者個人の瑕疵に激しく、欠ける当事者意識。再発防止策は第三者委員会の提言待ちに徹する、傍観者然たる姿勢。現場のガンバリに支えられた業績、株価回復に期する対応のみでは、長い目でみて投資家株主、全社員の信任に違えかねない。

NOSは商材や人材に小さくない成長余地を秘めており、顧客や市場に恵まれてきた。反面、売上や株価に自ら踊り踊らされ、言動と行動、素地と実像、は看板に追いついておらず”不都合な真実”はないか。幹部の内輪意識の強さゆえかウチに甘く、ソトに不感不堪な姿がここに映る。「他責に激しい」組織風土を変えぬ限り、これからも不祥事を生み育て、見逃し続けるのであろう。一考察にすぎぬが、山口氏の指摘に強く同意するゆえである。

(某氏のコメントおわり)

上記コメントには、私(山口)の意見は全く含まれておりません。あくまでも某氏の意見です。しかし、架空循環取引の根本原因に遡るためのヒントが含まれています。これはコメントを読んだ私(山口)の感想ですが、そもそも大口取引の相手方(出荷先や納入・発注先等)に対して、営業担当の幹部の方々は年に数回程度は挨拶に出向かないのでしょうか?私などは、上記A氏の取引先に経営幹部が出向いていれば、異常性は認識できたのではないかと思うのですが。

(上)(下)のコメントを通じて、私は「不可侵感」という某氏の言葉が印象的でした。本日リリースされた最終報告書でも、このあたりが強調されていたように読めます。架空循環取引の闇は本当に深いのですが、取引のリスクに真正面から向き合える組織風土こそ、他社が学ぶべき点ではないでしょうか。なお、私個人の「架空循環取引を防止・発見するために必要なこと」は近日、某会計専門誌に論稿として掲載予定です。また、なにかの機会に当ブログでも内容をご紹介したいと思います。

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2020年3月12日 (木)

NOSを中心とした架空循環取引事件の根本原因とは?-某氏の視点(上)

いつも当ブログをお読みいただき、ありがとうございます。さて、当ブログの2月17日付けエントリー「会計不正事件の王道「架空循環取引」は増えることはあっても、減ることはない」では、ネットワンシステムズ社(NOS社)を中心とした架空循環取引について取り上げましたが、そこにある方(某氏=私が勝手に関係者と思っている方)からコメントをいただきました。

後日、この方の了解を得て、以下にコメント内容を掲載いたします。なおコメント内容は、(コメントされた方や関係会社にご迷惑がかからないように)当ブログへのコメントとして許容できる範囲で修正させていただきました。また、このエントリーは、けっして関係会社を非難したり、揶揄するためにコメントを掲載するものではありません。(2月17日エントリーでも述べておりますとおり)どこの会社でも架空循環取引は起こりうることから、講学上、他社にも参考になるものと考えご紹介する次第です。

実は、「なるほど」と参考になる深い内容もあったのですが、関係会社の信用問題、またコメントされた方が(関係者かどうかは不明ですが)特定されるおそれもあったため、省略しております。あくまでも公表された第三者委員会報告書および当職エントリーへの某氏のコメント、としてお読みください

(以下、某氏のコメントです) 

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第三者報告書の中間報告に目を通した。不正は「公共営業部門のシニアマネージャー(課長級)A氏が全ての指示役であり単独犯」、「大きな失注をリカバーするために始めた」と記される。個人的動機による個人による不正である、との見解は、2013年の十六銀行事件同様である。第三者委員会による調査、報告である点は厳に留意すべきであり、溜飲下げたステークホルダーも少なくないかもしれない。以下に強く印象が残った。

A氏=不正首謀者(課長)、B・C・D・E氏=不正補助者(課員)、貴社=NOS
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(カ) 監査対応等の発覚防止工作
A 氏は、前述の見積明細作成の指示を受けて、事前に金額が決まっていることや顧客と向き合うはずの営業担当者が認識していない案件の存在について疑問を抱く部下らに対し、事実関係を明らかにせず、あるいは叱責して質問をさせないなどの対応をとっていた。例えば、A 氏は、B 氏に対しては、「先にお金が必要なお客様がいる。お金を先に払う代わりに、利子がついて返ってくるというビジネスで、悪いことはやっていない。」などと説明し、D 氏に対しては「銀行がお金を回す必要があってこのような取引があり、悪いことをやっているわけではない。」などと説明し、そのようなビジネスもあると思わせ、従わせていた。E 氏に対しては、納得できる回答をせずに「とにかく急ぎの案件である。」と述べ、指示に従わせていた。さらに、C 氏に対しては「お前疑っているのか。」と叱責し、それ以上の質問を受け付けずに指示に従わせていた。
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(エ)A氏による上長らへの報告、説明
貴社においては、見積金額が貴社社内規程所定の基準以上の案件について、受注先(顧客)に見積書を提出するには、事業本部長の決裁を得る必要があるが、それに先立ち、部下が上長らに対し、来期の案件の見通し等につき説明を行う場が設けられている。A 氏は、上長ら(本部長、副本部長、部長及び副部長)に対し、実在する案件に架空取引を織り交ぜた来期の見込みを巧みに説明していた。かかる上長らへの説明は、多くの案件では営業担当者が行うが、本不正行為に係る案件については、営業担当者でなく、マネージャーである A 氏が単独で行っていた。A 氏は、その後、具体的に架空の商流取引に係る顧客宛ての見積書を提出するに先立ち、営業担当者ではなく自ら、上長らに対し、順次、上記の事前説明に沿って、当該架空商流取引の背景事情や商流、粗利率、入出金の予定等を資料に基づいて説明し、上記管理職らをして実体のある商流取引であると信じさせ、決裁を得ていた。
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報告書に記載された事実認定をまとめると、重要なのは以下の2点。
(1)「国税指摘以前より、A氏部下4名から不安、不審の声が上がっていたこと」
(2)「A氏案件は、承認手続において例外対応を続けていたこと(全ての案件説明に営業担当者を同席させずA氏のみ単独実施)」

5年以上続けたA氏の狡猾さとともに、上記2点には疑問も残る。「客先注文書の偽造、捏造という誰もが疑いようのない不正行為を指示、命令され、部内で騒ぎになっていないのはなぜか?」、「部下4名は不安不審を訴えていたとあるが、上長は対応したのか?課長の否定、叱責が続けば、部長に相談するであろう。部長は上長や監査室、コンプライアンス室に相談可能なはず。現場の信頼関係は崩壊していたのか?」、「案件承認制度、社内監査は、たった一名の悪意ある営業にこれほど無力なのであれば、現場の対応で防ぎようがない。今後、どうやって不正を防ぐの?」社内の動揺は小さくないであろう。他部門においても何らかの不作為、不正が行われているのではないか、自分の周囲を信用できなくなった、現場には声にしない声、疑念未満の不安が起きても不思議はない。不審のコストほど高いものはない。

十六銀行事件で不正の温床となったのは、機器調達になくコンサル、設計、構築といった実役務費用、科目にあり、外注費用の操作による不正と解明された。本件(十六銀行事件)の第三者委員会報告書を丁寧に読むと、このような古典的かつ典型的な手法が7年も見過ごされ続けたことに驚く。その根因を察するに、不正実行者は本部長という上級幹部であり、高い社内評価が「特別感」「不可侵感」となり、不正を拡大、長期化させたように見受けられる。今回の件のA氏は課長級であるが、自身で演出した「秘匿」感や高業績が一種の不可侵になっていた可能性はあるだろう。

素直に考えれば、中央省庁に向けた営業部署という性質上、公示入札案件の対応が本来主業務であろう。プライムで応ずるか、他社スキームの下に入るケースも多いと考えられる。A氏はもっともらしい虚偽を重ね、承認審査に対応していた光景が指摘されている。個人情報保護法や特定秘密保護法の対応を持ち出し「情報共有しない」盾としたのだろう。個人情報や機密情報に関わる取引は存在するだろうが、専用仕様に基づく機器、ソフトウェアは随意契約による製造元への直接受注が常套であろうし、NOSが介入する余地は考えにくい。報告書では、A氏しか知りえぬ案件や、案件詳細を担当営業さえ知ることができない状態が、社内でまかり通っていたと読めるが、これが日常光景であるならば「秘匿」を通り越し、「不可侵感」が漂ってきそうだ。極めて不自然な状態を5年以上放置した上長、強化してきた承認制度の「不備をつかれた」と経営者は一言で表したが、何の「不備」だったのだろうか。

本件の理解にあたり、IT業界の特異性、公共案件の特殊性、秘匿性などディテールに目を奪われがちだが、前述(1)および(2)より見えてくる光景は、日常業務での機能不全、不作為を予想させる。(1)、(2)といった「社内における不正未満の例外、異常」が、部内、本部内、監査室、コンプライアンス室と正しく報告、上申されていれば、注視、精視は継続的に実施され、不正を自主的に発見すらできた可能性もある。仮に発見できなくとも、その報告、対応こそがコンプライアンス、ガバナンスの第一歩、必要要件であるはずだ。(1)、(2)の放置があったとすれば、上長に留まらず、掌握取締役や常勤監査役に善管注意義務違反すら疑われるのではないか。当たり前のことが当たり前に行われない代償はこれほどに大きい。

以下、某氏のコメントは(下)に続きます。

コロナ・ショックにより、NOS社が開発するテレワーク・ICTネットワークソリューションの重要性を改めて認識します。ぜひとも、今回の不祥事を契機として健全な組織風土が醸成されることを祈念いたします。

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2020年1月29日 (水)

不正調査におけるデジタルフォレンジックスは「打出の小槌」ではない

1月28日の朝日新聞(朝刊9面)に、「かんぽ不正報告に批判 特別委調査 専門家ら『まだ不十分』」なる見出しの記事を見つけました。かんぽ生命の不正販売問題で、昨年末、特別調査委員会が調査報告書を公表しましたが、その内容が未だ不十分だと指摘されていることを報じた内容です。

同委員会が、延べ600名の職員からヒアリングを行い、詳細な事実認定を行った点は評価できるものの、記事では「経営幹部が不正の横行をうかがい知る機会があったのに、なぜ止められなかったのか、という点は明らかになっていない」と報じられています。同記事に掲載されている竹内朗弁護士のコメントでも「どの程度の(経営者の)認識があったのかで、必要な再発防止策も変わる」とあり、第三者委員会調査としての不十分性を述べていて、私もまったく同感です。

こういった指摘を受けてかどうかは不明ですが、かんぽ生命特別調査委員会は、デジタルフォレンジックス調査も行っているので、経営幹部らの認識については3月末の報告書では明らかにしたい」と述べておられるそうです。スルガ銀行の第三者委員会も、こういったデジタルフォレンジックス調査によって経営陣の「不正の認識」に関する証拠を収集していましたね。

ところで第三者委員会調査では、もはや当然のこととしてデジタルフォレンジックス調査が行われるわけですが、私もいまフォレンジックス調査に関与しているなかでの感想ですが、この調査は万能の証拠収集方法ではない、と痛感します。まずフォレンジックス調査が成功するためには、保全対象となるデバイスが存在すること、(たとえ復元が可能だとしても)解析対象となるデータが十分に存在することは大前提ですし、これらの提供については会社側の全面的な協力がなければ奏功しません。また、担当者のスキルによって、メールが復元できる場合とできない場合があることも現実です。

そしてなんといっても、私はフォレンジックス調査を担当する技術者、レビューワーと調査委員との協働関係が最も重要だと思います。解析にはAIが活用されますので、電子文書やメールの絞り込み作業は効率化されていますが、ではどんなワードを検索すれば証拠価値のある文書やメールが出てくるのか、という点は調査委員による適切なワードの選択が不可欠です。

そしてそのワードは適切な調査活動の中から選択されます。有効な調査活動があってこそ、適切なワードの選択が可能になります。調査委員の適切な指揮がなければ、レビューワーの方々が非効率な作業に振り回され、その結果として会社側が膨大な費用を無駄に(?)負担することになります。

最近の様々な調査報告書を読んでいて、この「レビューワーと委員との協働作業の内容」まで踏み込んで調査過程を記載しているものは案外少ないように思います。調査委員は、どうしても「フォレンジックス調査までやったけど、出てこなかった」と会社側に説明したいのかもしれませんが、その気持ちが強いと調査を技術者とレビューワーに丸投げしたくなります。しかし、これでは中立・公正な第三者による調査とは言えなくなってしまいます。

ときどき「諮問を受けた調査をやっていたところ、思いがけず他の不正が見つかったので調査期間を延長します」といった中間報告が出されますが、これこそ会社側の気持ちを忖度しない(?)真の第三者委員会の姿勢の現れかと。もし、ステイクホルダーの皆様が、第三者委員会報告書を読まれる際には、このフォレンジックス調査の作業過程(委員との協働作業)がキッチリ書かれているかどうか、精査していただければ、本当に中立・公正な立場で調査を行っていたかどうかを理解できるかもしれません。

今後さらに技術が進歩して、ビッグデータを活用したフォレンジックス調査も可能になり、委員のワード選択も不要となるかもしれません。しかし、現時点におけるフォレンジックス調査のレベルを考えますと、万能の証拠収集手法とまでは言えず、そこには調査委員の「人による泥臭い作業」による補完がなければ証拠収集の実効性は上がらないものと考えています。

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2020年1月27日 (月)

第三者委員会報告書公表後わずか2年で不正開始?(NOSの架空循環取引事例)

1月24日の日経ニュースによりますと、東芝子会社の東芝ITサービス(川崎市)を巡る架空取引で、東証1部上場のシステム開発会社、ネットワンシステムズが主導的な役割を担っていたことがわかった、と報じられています。しかも架空取引は遅くとも2015年に始まり、総額で400億円を超えていた、とのこと。

当ブログの常連の皆様ならご記憶あるかもしれません。そうです。ネットワンシステムズ社といえば、2013年の会計不正(幹部社員が他社と共謀して起こした横領)事件で7億9000万円ほどの損害を発生させてしまいました。当時の第三者委員会報告書がとても秀逸で「経理財務部門・内部監査部門必読!NOS第三者委員会報告書」なるエントリーで事件をご紹介しましたね(しかし昔はずいぶんとエントリーが長かったなぁ)。

たしかネットワンシステムズ社は、この2013年報告書の事例を教訓として、その後、某監査法人系のアドバイザーのもとで「二度と不正会計に手を染めてはいけない!不正を根絶できる体制を築かねばならない」ということで、社を挙げて内部統制システムの向上に取り組んでおられたように(風のうわさで?)お聞きしておりました。

しかしながら、前回の不正と同様、今回も(不正の種類は異なるものの)国税の調査で指摘を受けて発覚した、とのこと。これでは全く自浄能力がないことを示してしまったようで、たいへん残念であります(これが「内部通報を端緒とする社内調査で発覚した」ということだと「なるほど、前と違って自浄作用が機能したのだな」と評価できるのですが・・・)

全社挙げて不正防止に取り組む姿勢は真摯なものであったに違いありません。ただ、それでも第三者委員会報告書が公表されたわずか2年後から架空循環取引が始まっていたとなりますと、やはり「会計不正は蜜の味」なのでしょうね。以前、アイ・エックス・アイ社の架空循環取引事件に関わった経験からすると、架空循環取引は本当に発見が困難です。「怪しい」と思える取引を「怪しい」と口に出して調査できる環境がなければ内部監査も機能しないのではないでしょうか。

「間違っていたらどうしよう・・・」と思うと、誰でも「怪しい!」と人前で口に出すことに臆病になります(私もそうです)。しかし架空循環取引かどうか、調査をする中での教訓は「人は嘘をつくのは簡単だが、過去に嘘をついたことを憶えているのはむずかしい」ということです。ていねいに調査をすれば、関与者はどこかでボロを出します。また嘘の上塗りには協力者が必要ですが、そこでも協力が得られず取引に破たんを来すことも多いようです。

昨日(1月25日)、日経新聞朝刊15面に「不適切会計最多に 昨年3割増の70件に」との見出しで、上場会社で開示された会計不正事件が極めて増加していることが報じられていました。発覚まで5年ほど要する事例が多い状況からしますと、まだまだ現在進行形の発見されていない会計不正事件はたくさんあるわけでして、これからも監査法人への内部告発や国税の告発によって表に出てくることが推測されます。機関投資家の皆様が、企業のリスク情報に関心を抱くのも当然ですね。

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