2017年3月 6日 (月)

移行後に試行錯誤する監査等委員会設置会社

日本の上場会社約3600社のうち、昨年末時点で732社が(監査役会設置会社から)監査等委員会設置会社に移行した(移行予定を開示した)そうで、今後も大規模な上場会社を含め、まだまだ監査等委員会設置会社は増加傾向にあるようです。

ただ、監査等委員会設置会社の中でも、①監査役会設置会社に戻したい、②監査等委員のメンバーを入れ替えたい、③指名委員会設置会社に移行したい、といった計画を実行に移そうとしておられる企業も出てきましたね。私自身もガバナンスの改訂支援を行っていますし、また旬刊商事法務の最新号(某議決権行使助言会社日本法人代表の方のご論稿)を読むと、実際に社外監査役からの横滑りでは、社長が想定していたガバナンスが発揮できないとして、すべての監査等委員を変更した企業さんのお話も出ています。

おそらく監査等委員会設置会社は今後「二極化傾向」が進むのではないかと予想します。ガバナンス改革に熱心で「もっと良いものに作り上げよう」と試行錯誤を繰り返す企業と、とりあえず「緊急避難的に」監査等委員会設置会社で落ち着く(特になにもしない)企業です。試行錯誤を繰り返す企業さんは、真剣に取締役会改革(モニタリングモデル、執行部門への権限委譲)に向けて、監査等委員会の人選、非常勤取締役(会社法上の社外取締役ではなく業務執行に関与する社外取締役)の選任など、他社との差別化を実践するための工夫を取り入れるところも出てくるように思います。

私が相談を受けている某社でも、たとえ監査役会設置会社に戻すことになったとしても、「なんだ、そんなことなら監査等委員会設置会社への移行などやめとめばよかった」ということではなく、あらためて自社経営組織の強みに気が付いて、どうすれば「強み」を事業に活かすことができるか真剣に検討する契機になりました。そういった意味では監査等委員会設置会社への移行もかなり意味のある行動だったのかもしれません。

ガバナンスを変えるということはとても準備が必要な作業ですが、あれこれ考えるよりも、まずは実行してみて「試行錯誤」を繰り返すほうが、(回復可能な)失敗を実感できる分、組織の活性化のためには有効だと思います。そのような意味では監査等委員会設置会社への移行が「ガバナンス・コードへの対応といった必要に迫られて半強制的」に行われた企業であったとしても、今後は機動的に対応する機運が社内に高まれば、それなりに効果があったのではないか、と考えたりしております(ただ、そもそも監査等委員会設置会社というものが、どういった機関なのか、社長も監査等委員もまったくわからずに移行していた会社は多いですよね)。

3月 6, 2017 監査等委員会設置会社 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月 4日 (水)

株主上程議案に対する監査等委員会の意見陳述権行使

昨年から注目しております某上場会社(東証マザーズ)の支配権争い事案ですが、予想どおり、年末に募集株式の発行等について差止め仮処分の決定が出されたそうです(大阪地裁決定)。会社側は債務者審尋もなく突然決定が出されたことから、1月4日午前9時に保全異議を申し立てるそうですが、仮の地位を定める仮処分において債務者審尋なしに決定を出すというのも、年末の要急事案としての特別事情が認められた、というところでしょうか。

一昨年のアルファクス・フード・システムさんの事例あたりから、この支配権争いが顕在化している時期の第三者割当増資については、主要目的ルールはかなり後退してきている(原則として不公正方法による株式発行と推定する)方向にあるように感じますし、社外役員は「有利発行」か否か、著しく不公正な株式等の発行か否か、という点への判断と情報開示が強く求められるようになってきているように思います。

ところでこの某上場会社さんは監査等委員会設置会社です。過半数の社外取締役さんで構成されている監査等委員会には、経営評価機能を発揮するために株主総会における役員の選任・解任に関する意見陳述権が付与されており、定時株主総会だけでなく、臨時株主総会においても権限行使が期待されています。この某上場会社さんは、大株主の要求に応じて臨時株主総会を開催するそうで、そこでは大株主さんの上程議案(大株主から提出された取締役選任議案)が審議されます。この場合、会社側は株主上程議案に対する意見を表明することになると思いますが、そもそも監査等委員会は意見陳述をする立場にあるのでしょうか。

会社法の条文上は何らの制限もありませんから、株主上程議案による取締役候補者への意見形成も監査等委員会の職責に含まれるようです。しかし、そもそも指名委員会類似の監督機能を果たすために監査等委員会の意見陳述権が認められたわけですから、取締役選任に関する株主上程議案にまで意見を述べることは制度趣旨を超えるものではないか、とも思われます。つまり株主側から「監査等委員会としての意見を聴きたい」と質問されても、そのような意見を述べる立場にはない、として説明義務を果たさなくてもよい、ということになるのかどうか。最近の有力な見解では、意見陳述権といえども、述べるべき時に述べないというのは取締役監査等委員の善管注意義務違反に該当するそうなので、このあたりはきちんと整理しておくべきではないでしょうか。

ちなみに監査等委員会設置会社の「現実」を知るうえで、月刊監査役最新号の別冊付録に「選任等・報酬等に対する監査等委員会の意見陳述権の実務と論点-中間報告としての実態整理-」なる報告書が掲載されておりまして、ここに監査等委員会設置会社のアンケート結果が集計されていて、とても参考となります。愕然としたのは監査等委員会の意見によって経営執行部の意見が修正されたと回答した会社がわずか1社(67社中)。また意見を開示した会社においても、監査等委員会がどのようなプロセスで代表取締役の人事や報酬の妥当性を判断したのか、開示情報から把握できる企業はほとんど存在しないというのが現実です。

いまガバナンス改革のフォローアップは形式から実質へと移っていますが、このままだとガバナンス・コードの改訂において「監査等委員会設置会社は指名委員会等設置会社への段階的プロセスである」とか「監査等委員会設置会社の取締役は過半数を社外取締役にすべき」という流れに移行するのではないでしょうか(冗談ではなく、本当にそのように移行する可能性があるように感じます)。監査等委員会設置会社に移行した会社は今年が正念場であり、監査等委員会の実質的な機能発揮、つまり社長人事や社長の報酬に積極的に監査等委員が関与しているという実態を各社とも形成・開示することが不可欠かと思われます。

1月 4, 2017 監査等委員会設置会社 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年12月24日 (土)

監査等委員会による適法性意見表明と多数決原理

ここ数カ月ほど注目しておりますジャスダック上場の某会社さんの件(監査等委員会設置会社です)。元社長の会計不正疑惑を発端として大株主と現経営陣との対立が激化しておりまして、来年2月に臨時株主総会(双方が取締役選任議案を出し合う予定)が開催されるそうです。議決権行使の基準日も1月11日と定められました。

そして12月21日、現経営陣はぎりぎり24,99%の希薄化が生じる(資本業務提携契約に基づく)第三者割当増資(株式と新株式予約権発行)をリリース。翌22日には同社の監査等委員会が第三者割当増資の発行価格の算定根拠に合理性があり、とくに有利な発行には該当しない旨の意見を表明しています。

取締役監査等委員の意見では足りず、監査等委員会としての意見が必要とのことで、同社は前日のリリースを訂正したわけですが、監査等委員会は監査役とは違って「組織的監査」が原則です。したがって、今回も適法性に関する意見表明を監査等委員としでではなく、監査等委員会として行った(そのように取引所から指導された?)ものと思われます。

しかし、監査等委員会設置会社の監査は組織的監査が原則といっても、違法行為差止請求権は個々の監査等委員に付与されており、また違法行為を見つけたときの報告義務(取締役会に対する)、株主総会への違法性に関する監査報告も個々の監査等委員に付与されています。今回は会社法上の適法性についての意見ですが、そもそも適法・違法の判断というのは多数決原理になじむものなのでしょうか?かりに監査等委員会としての意見を表明するとしても、それが全員一致なのか、それとも意見が分かれたのかは株主も知りたいところではないかと。私的な意見は控えますが、おそらくこの状況における第三者割当増資だと「不公正発行」が当然問題となるわけですから、基準日以降に株式を取得した株主が会社法124条4項によって議決権を行使できるのかどうか、といった問題についても、株主は監査等委員会(または監査等委員)の意見をお聴きしたいところではないでしょうか。

同社の支配権争いの状況をみるにつけ、監査等委員会設置会社の監査等委員は有事にはたいへん厳しい状況に置かれるものと推察いたします。上で述べたような適法性意見のほかにも、会社側、株主側から別々に取締役選任議案が上程されるわけですから、どの候補者が当社取締役にがふさわしいか、といったことは公正な立場で主体的に監査等委員会が意見を形成する必要があります。まちがっても現経営陣と大株主との和解的協議によって(監査等委員会は蚊帳の外で)決まりました、ということにならないよう配慮する必要がありそうです。

12月 24, 2016 監査等委員会設置会社 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月18日 (金)

監査等委員会設置会社のガバナンス改革は遅延しているか?

ひさしぶりの「監査等委員会設置会社」ネタでございます。議決権行使助言会社ISSの2017年度議決権行使助言ポリシーにおいては、従前の予想に反して「監査等委員会設置会社向けポリシーの厳格化」は見送られました(さすがに「社外取締役を4名以上選任しなければ反対票を投じる」というポリシーはガバナンスの現状とかい離しすぎている、との判断でしょうか)。とはいえ、やはり監査等委員会設置会社が本当にモニタリングモデルへガバナンスの転換を進めているかどうかはかなり懐疑的だというのが実感です。

本日(11月17日)の日経朝刊において「監査委員設置会社 企業統治進まず」といった見出しで、昨年施行の改正会社法で始まった「監査等委員会設置会社」の間で、トップの後任人事を決める指名委員会の設置が滞っている(つまり、監査等委員会に移行した会社の実質的なガバナンス改革は監査役会設置会社よりも進んでいない)」といった記事が掲載されていました。

ご承知のとおり、当ブログでは監査役会設置会社が監査等委員会設置会社に移行すること(定款変更)について、かなりネガティブに捉えていますので、上記記事への反応としては

「ほらみろ、やっぱり監査等委員会設置会社に移行する会社ってガバナンスに後ろ向きな会社だってことだよね。口では取締役会改革(執行と監督の分離)、権限委譲による迅速経営の推進と言っておきながら、単にガバナンス・コード対応の隠れ蓑に使っているだけでじゃないか!」

と言いたくなるところです。ただ、(監査役会設置会社と比較して)指名委員会を設置している企業数が少ない、仮に指名委員会を設置していたとしても、その開催回数が少ない、といった事実から、監査等委員会設置会社は企業統治向上が進んでいないといった結論を導けるかどうかはまた別途検討する必要があります。なぜなら監査等委員会にはそもそも指名委員会や報酬委員会に準じた役割が会社法上認められているからです。

監査等委員会には、会社法上、監査等委員以外の取締役の人事、報酬に関する意見形成職務及び(意見がある場合に)選定された監査等委員による株主総会上での意見陳述権が認められています。つまり、私の個人的見解としては、監査等委員である取締役さんには指名委員会や報酬委員会に準じた役割が法定されていて、社長人事や社長報酬についての意見形成のための職務を怠れば会社法違反であり善管注意義務違反になる、と考えています(まぁ、これは当然だと思うのですが・・・)。

したがって、監査等委員会設置会社においては、そもそも任意の指名委員会や報酬委員会を設置する必要はなく、監査等委員会がその役割を担えばよいということです。つまり今回の攻めのガバナンスの精神を取り入れて、積極的に監査等委員会設置会社に移行した会社ほど、任意の指名委員会は設置していないということも十分考えられます。企業統治に熱心な会社も、そうでない会社と同じように「指名委員会は設置しない」という判断がなされている可能性がありそうですね。

監査等委員会設置会社に移行した会社において、「企業統治が進んでいるかどうか」を判断する基準としては、むしろ「社外監査役のときと、監査等委員である社外取締役に就任した現在とで報酬は変わったかどうか」という点を調査するのも検討すべきです。ガバナンス改革に熱心で、取締役監査等委員が何をすべきか、といったことを真剣に考えれば、職務に要する時間やリスクからみて、監査等委員への就任にはより高い報酬が付与されてもよいのではと思います(もちろん、監査の重要性からみて従来から社外監査役の報酬も高いという会社もあるので全ての会社にあてはまるというわけではございませんが・・・)。

11月 18, 2016 監査等委員会設置会社 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年7月14日 (木)

監査等委員会設置会社の指名報酬委員会は経営者支配の隠れ蓑か?

コーポレートガバナンス・コードへの対応として、最近は(上場会社が)監査役会設置会社、監査等委員会設置会社において「任意の」指名委員会、報酬委員会を設置するケースが多いですね。5月18日の日経朝刊では475社の上場会社がこのような任意の委員会を設置していると日経新聞で報じられていました(現在は500社を超えているかもしれませんね)。最近の社内のゴタゴタ劇において、こういった任意の委員会が活用された事例も見受けられますし、セコムさんのように、委員会の透明性・公正性に疑問が投げかけられた例もありました。このような事例が増えているためか経産省の研究会では任意の指名報酬委員会の運営指針のようなものも検討されるそうです。

以前、私は新聞の取材に「監査等委員会設置会社に任意の指名委員会を設置することはあまり好ましくないのでは」とコメントしたことがあります。この考え方に対しては、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行に反対する機関投資家の方々は(たとえばRMBキャピタルさんのこちらのリリース等)「監査等委員会設置会社に移行するのであれば、過半数を独立社外取締役で構成される指名報酬委員会を設置することを条件だ」として、任意の委員会設置を好意的に受け止められておられることも事実です。

昨夜(7月12日)、比較的大きな上場会社の現役の取締役監査等委員の方と夕食をご一緒させていただきました。その方は、機関である監査等委員会の「監査等職務」についてもよく理解をされていて、指名委員会等設置会社の監査委員会以上に、経営面での重要な役割を果たさねばならないことを自覚しておられました。そして、その方は経営執行部が任意で指名委員会を設置する企画に強く反対されていました。社外取締役で監査等委員会の全員が、任意で設置される指名委員会の委員を兼務するように設計されているそうです。

CEOも指名委員会の委員として出席するところに監査等委員である独立社外取締役全員が含まれているということは、おそらくCEOの意向を中心にして議論が進むことは当然であり、そこで出てきた結論に対して監査等委員会としては「過半数を占める」社外取締役が指名委員会の意向に反する意見は出せないだろう、つまり監査等委員会の権限を骨抜きにするためには、任意で指名委員会を設置して、そこに社外取締役を押し込んでしまうことが一番良い方法ではないか、と考えられます。通常、指名委員会は取締役会の諮問機関であって、監査等委員会の諮問機関ではないと思われますので、任意の指名委員会の意見と監査等委員会による人事に関する形成意見との優先順位が明確ではなく、また双方に独立社外取締役が関与するとなると監査等委員の方々は監査等職務をどのように尽くせばよいのかよくわからなくなりそうです。

ひょっとすると、CEOは監査等委員会の負担を極力軽くするために任意の指名委員会を設置する、ということなのかもしれません。しかしながら、社内取締役の人事や個別報酬についての妥当性をきちんと判断するために監査等委員会を活用しようと考えている常勤の取締役監査等委員にとってみれば、実質的には監査等委員会の最大の権限である「監査等職務」を形骸化させることになる、と危惧することは間違いないところでして、やり方次第では、取締役監査等委員の皆様にとっては「会社法違反」として善管注意義務違反になる可能性も否定できないのではないでしょうか。

クックパッド社では、創業者と現経営者との間の内紛によって指名委員会の決定が事実上無視されたような結果となりました。当時の同社監査委員である社外取締役さんが、本件について監査報告で厳しく指摘しておられました。決定権限のある指名委員会等設置会社の指名委員会と、意見形成職務しかない(つまり指名権限はない)監査等委員会とでは、たしかに会社法違反とされるレベルに違いがありますが、それでも任意の指名委員会と監査等委員会の関係をきちんと整理せず、実質的に監査等委員会が意見形成職務を怠っているような事態だけは回避しなければならないと思います。

7月 14, 2016 監査等委員会設置会社 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年6月 7日 (火)

監査等委員会設置会社への移行とISSの議決権行使助言ポリシーの改訂

あまり話題になっていませんが、昨年12月に監査等委員会設置会社に移行を表明していた三菱自動車さんは、今回の燃費偽装事件をうけて、5月に移行を中止しました。日産自動車さんとの資本業務提携の関係から・・・・ということらしいのですが、監査等委員会設置会社の長所を発揮できる前提となるガバナンス環境が整備されていないから、というのがホンネのところではないでしょうか。

ところで、すでにお読みの方もいらっしゃるかとは思いますが、本日(6月6日)発売の週刊東洋経済では、「移行ブームに隠れた企業の本音-急増中の監査等委員会設置会社は、不当ガバナンスの隠れみのになりかねない」と題する記事が掲載されておりまして(88頁以下)、私へのインタビュー記事もたくさん掲載されています(雑誌版のみ-本号はガバナンス改革特集で、なかなか読みごたえがありますね)。監査等委員会設置会社に移行することを提案するのは経営者ですが、最終的に移行を決定するのは株主です。だから、株主は監査等委員会設置会社のメリット、デメリットを十分認識し、企業価値を向上させるために監査等委員会を活用しなければなりません。

5月までに監査等委員会設置会社への移行を表明(すでに移行済も含む)した上場会社はすでに700社を超えているものと推測されますが、自社のガバナンス環境から、監査等委員会設置会社に移行することを表明している会社は約1割であり、その他の9割の移行会社は、あくまでも制度対応のため、ということではないかと。たとえばカプコンさんのように、監査等委員会設置会社に移行するのと同時に、内部監査部門をすべて監査等委員会の直轄に組織替えする、といった「本気モード」が説明されている会社であれば、私は移行について大賛成です。しかし、いわゆる「横滑り型」の移行表明会社については、監査の後退が懸念されるところです。

上記東洋経済の記事の中で、私がインタビューでグタグタ言っているところはスルーしていただいて結構なのですが、議決権行使助言会社ISSさんの日本代表の方の発言部分は要注意です。これまでISSさんは監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行については賛成することをポリシーで述べていましたが、次の改訂(たぶん今年の11月ころ)で、賛成には何らかの条件を付ける方向で検討しているそうです。先日も監査等委員会設置会社への移行に反対をした機関投資家がいらっしゃいましたが、いよいよISSさんも、現実を直視して動き出すようです。

ガバナンスの短所を補完するタイプの移行は監査を後退させるおそれがあるので私は反対ですが、ガバナンスの長所を伸ばすための移行は大賛成です。指名委員会等設置会社への移行過程として(とりあえず)監査等委員会設置会社に移行する、といった理由での移行も賛成です。任意の指名報酬委員会の設置については、監査等委員会の形骸化を招くため、私は原則として反対です。そのあたりを考慮したうえで、ISSさんも賛成の条件が付加されるのではないでしょうか。いずれにしても、監査等委員会設置会社移行問題も、いよいよ「形式から実質」へと議論が進むことになりそうですね。

6月 7, 2016 監査等委員会設置会社 | | コメント (10) | トラックバック (0)

2016年3月14日 (月)

監査等委員会設置会社への移行に反対する機関投資家登場(その2)

先日、米系運用大手のRMBキャピタルさんが株式会社オプトホールディングス社の監査等委員会設置会社への移行について反対を表明し、委任状争奪戦も視野に入れている、といった日経記事を こちらのエントリーでご紹介しましたが、その後、本件についてRMB社からのリリース(時事ドットコム・ビジネスワイヤ)とオプトHD社からのリリースが出されまして、ずいぶんと盛り上がってきました。RMBキャピタルさんが委任状争奪戦をあきらめ、他の株主への反対意見同調呼びかけを行うに至った過程についても上記リリースにおいて説明されています。

先日のエントリーに対するコメント欄には流星さんをはじめ、有益なご意見も述べられておりますが、ある上場会社が機関形態を変更することへの賛否については、仕組みについて議論するのか、個々の企業における運用について議論するのか、分けて検討したほうがよさそうですね。RMB社の反対呼びかけのリリースの内容から判断しますと、同社は決して監査等委員会設置会社という仕組みを選択したことのみをもって反対しているわけではなく、その機関形態をオプト社において運用することに強く反対されているように思えます。

仕組みという面からいえば、監査等委員会設置会社の取締役監査等委員には、経営者の指名・報酬に関する意見決定への関与も職責に含まれますので、経営者への監督は(制度としては)十分に期待されるはずなのですが、同社の社外取締役の人数や「横滑り人事」といったことからすれば、経営者の監督は全く期待できないことのようです。また、常勤の取締役監査等委員が選任されない場合には、これまでよりも監査機能が減退することも考えられますので、そのあたりの懸念もあるのかもしれません。

ちなみにRMB社側からの提案として、これまで通りの監査役会設置会社のままで、ガバナンス・コードを意識した任意の指名・報酬委員会を設置したほうが適切、といった考え方が示されています(結局のところ、新たに社外取締役候補者を見つけてこなければ任意の指名・報酬委員会はなかなか設置できないと思いますが・・・)。

オプト社では、前年においても敵対的買収防衛策の廃止を巡り、賛否が拮抗した経緯もあったようで、今回もかなり会社側に微妙な議決権行使結果となることが予想されます。今後、RMBさんのご主張のように「コーポレートガバナンスは、経営者を管理するために機能しなければならない」ということを強調するのであれば、指名委員会や報酬委員会の設置を検討する企業も増えるはずです。ただ、そうなりますと(先日のクックパッド社の監査委員のご意見のように)会社法違反となるような経営判断がなされるリスクも無視できません。いずれにしても、監査等委員会設置会社へ移行した企業、移行を表明した企業においては、今後の参考になる一連のリリース内容かと思われます。

3月 14, 2016 監査等委員会設置会社 | | コメント (9) | トラックバック (0)

2016年3月 9日 (水)

監査等委員会設置会社への移行に反対する機関投資家登場

(3月9日午前11時30分更新)

消費者庁の公益通報者保護制度の実効性検討委員会も、いよいよ報告書案の審議入りとなりまして、大詰めを迎えています(本日の委員会を報じるTBSニュースでは、私も手前に映っています)。ただ、法制化についてはまだまだ検討しなければならないことが多いので、舞台はワーキングチームに移る予定です。

さて本題ですが、3月5日の日経ニュースで知ったのですが、米系運用会社(RMBキャピタルさん)がオプトホールディングスさんの定款変更議案に対して反対の意向を示しており、他の株主にも同調を訴え、委任状争奪戦も視野に入れていると報じられています。問題の定款変更議案は「監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行」に関する議案(特別決議が必要)で、反対の理由は

「社外取締役が少数株主の目線で役員の選任・解任や報酬に関与する仕組みを欠いている点を懸念」「企業統治の要諦は株主利益を毀損するような社長をきちんと解任できる仕組みにある、オプトの経営体制は株主保護の取り組みが不十分」

とのこと(あくまでも上記日経の記事からの抜粋、ということでのご紹介)。

「仕組み」という点から考えますと、監査役会設置会社よりも監査等委員会設置会社のほうが役員の選任・解任、報酬に(社外取締役が)関与する仕組みだと思われますし、これまで議決権を持たなかった社外監査役の方々が、議決権を有する取締役監査等委員に就任するわけですから、むしろ「社長をきちんと解任できる仕組み」と言えそうです。また、オプトさんは機関形態の移行のお知らせと合わせて敵対的買収防衛策の廃止についても開示しているのですから、ガバナンス・コードへの対応としても積極的だと評価できるようにも思えます。ではなぜ運用会社は委任状争奪戦を視野に入れてまで反対されるのでしょうか。

この話題のときは毎度申し上げるところですが、私はすべての監査等委員会設置会社への移行に反対しているわけではなく、迅速な経営判断と監査の重要性をいずれも重視する戦略をとる企業であればすぐにでも監査等委員会設置会社に移行すべきであり、ただ、「適当な社外取締役候補者がみつからない」とか「複数の社外取締役選任というコードへのアリバイ工作のため(制度対応のため)」といった後ろ向きの姿勢で監査等委員会設置会社へ移行することは企業価値を低減させてしまう、という考え方です。「形から実質へ」と議論が移っているガバナンス改革においては、このような考え方も次第に多数派となりつつあるのではないかと。

米系運用会社としては、「あるべき仕組」として指名委員会等設置会社を念頭に置き、指名委員会、報酬委員会の存在しない監査等委員会設置会社への移行について反対をされているのかもしれません。コーポレートガバナンス・コードにコンプライする企業であれば、監査役会設置会社であっても任意で指名委員会、報酬委員会を設置するであろう、そしてそこに独立した社外取締役が複数関与するであろう、そういった仕組も検討することなく監査等委員会設置会社に移行するということは企業価値を低減させる、という理屈ではないかと思われます。これまで上場会社の選択できる機関形態は二つしかなかったのですが、これが三つになりましたので、機関投資家としても「なぜその機関形態を選択したのか」といったことに関心が高まり、その分会社側の説明責任も重いものになります。

また、仮に「仕組み」自体には問題ないとしても「運用」について問題視している可能性があります。米系運用会社としては、監査等委員会設置会社へ移行すること自体に反対しているのではなく、たとえば①これまでの3名の監査役さんが全員、取締役監査等委員に「横滑り」していること、②監査等委員を構成する社外取締役さん以外には独立社外取締役さんを新たに選任していないこと、③補欠監査等委員も選任せず、必要最低限の人数の監査等委員のみ候補者として掲げているということは、そもそも社長とケンカをしてでも異論を唱える予定のない人たちばかりが監査等委員に選任されていると思われること、といったこと(制度の運用面)が原因で反対をされているのかもしれません。

いずれにしても、仕組みよりも運用に光が当たるガバナンス改革となれば、会社の施策については積極的に株主と対話を行うことで相互の理解を深めていく必要があります。オプトさんも、機関投資家と個別に「監査等委員会設置会社に移行する理由」「取締役監査等委員が、会社法399条の2、3項3号に基づいて個別取締役の指名や報酬決定に関与する仕組み」を説明することで、ある程度の理解を得られるようになるのではないでしょうか(少し甘いですかね??ちなみに、この運用会社さんは、日本株の運用実績を高めているようなので、他の監査等委員会設置会社移行表明企業に対する意見についても知りたいところです)。

3月 9, 2016 監査等委員会設置会社 | | コメント (7) | トラックバック (0)

2016年1月13日 (水)

「一時社外取締役監査等委員」の職務はかなりしんどいかも・・・・・

いつも読ませていただいている某ブログの情報で知りましたが、新年早々(1月8日)、ある監査等委員会設置会社(JDQ)の取締役監査等委員の方が「一身上の都合」により辞任されたようです。その会社は監査等委員は3名であり、また補欠取締役監査等委員を選任しておられなかったため、近々裁判所に一時取締役等職務代行者(一時取締役監査等委員)の選任申し立てをされる予定とのこと。社内取締役監査等委員の方が辞任されたのではなく、会計士資格をお持ちの社外取締役監査等委員の方の辞任ですから後任は「社外要件」を満たす必要がありますね。

辞任された監査等委員の方は、次の取締役監査等委員が就任するまでは「権利義務取締役監査等委員」としての職責を負っているわけですから、法律上監査等委員会としての職務が全く機能しないというわけではありません。むしろ権利義務取締役が職務を継続できるのであれば346条2項による「仮取締役選任の必要性」要件が認められるかどうかもわかりません。こうなりますと、昨年こちらのエントリーで懸念しておりましたように、やはり監査等委員会設置会社に移行した会社としては「補欠取締役監査等委員」を総会で選任しておく必要があると思われます。

(ホントに余計なお世話かもしれませんが)当ブログで何度も申し上げているように、取締役監査等委員の職務としましては、経営評価の中心的役割を果たさねば善管注意義務を尽くしたことにはならないはずです。正規の社外取締役監査等委員でもたいへんなのに、ましてや補欠の方がいきなり取締役に選任されるケースや、本件のように裁判所から選任されて一時的に取締役監査等委員に就任されるケースでは、社内のことがわからないままにどうやって取締役人事や報酬決定に関与するのでしょうか。適法性監査を原則とする監査役としての職務ならまだわかりますが、取締役としての職務を超えて経営評価となると、うーーーん、どのように職務を履行されるのかナゾです。

今年の6月総会に向けて、まだまだ監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行する上場会社は増えるものと予想されますが、会社経営陣と経営評価職務をめぐって意見対立などが想定される社外取締役監査等委員の辞任リスクには、移行会社としてきちんと向き合っておかれたほうがよいと考えます。

1月 13, 2016 監査等委員会設置会社 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年10月17日 (土)

企業価値向上を邪魔しない監査等委員会設置会社の条件-後編

最新号の旬刊商事法務(10月1日、15日合併号)の座談会記事(2015年株主総会にみえる運営実務の変化と今後の課題-上)の中で、監査等委員会設置会社へ移行した会社の総会実務について議論がなされていまして、たいへん興味深く読ませていただきました。その座談会において、総会運営の現状に詳しいM信託銀行の証券代行グループ長の方が、

「(移行前)まで監査役だった方のうち、監査等委員会設置会社への移行をきっかけにお辞めになったのは弁護士がかなり多い」

「経営評価のような重い職責は担いきれないということで、お辞めになった方は、監査役と監査等委員の違いに対する十分な認識のもとに降りられていらっしゃるという状況があります」

と発言されていらっしゃいます(20頁)。

私も、昨年出版しました「ビジネス法務の部屋からみた会社法改正のグレーゾーン」の中で、取締役会における審議が、もはや満場一致の時代ではなくなったということへの経営者の覚悟がなければ(監査等委員には)就任できない、と書きました(同書143頁)。この機関形態に潜む法的なリスクを考えるのであれば、ビジネス法務に精通した法律家が「監査役ならやるけれども監査等委員であればやらない」と考えるのは至極当然かと(法的リスクという言葉が過激だとすると、その法的リスクを回避するための「膨大な時間的負担の増大化」と役員報酬とのバランスといってもいいかと思います)。ましてやそれまで常勤監査役だった方が取締役常勤監査等委員に就任されず、非常勤の監査等委員や監査等委員会事務局長などに納まっている監査等委員会設置会社が多数出現している状況からするならば、とても怖くて監査等委員に就任できない方も出てくることは自然の流れかと思います。

ただ、私は監査等委員会設置会社について、決してネガティブキャンペーンを張っているわけではなく、この機関形態の性質をよく理解したうえでの移行は企業価値向上に資するものだと考えています。それは「長所を伸ばす」ための移行です。元々監査役会設置会社のもとで監査や経理、法務の重要性を理解されている社長さんもいらっしゃいます(監査や法務、経理、総務等の社員の方々の仕事ぶりをみていたり、そられの方々が責任者となっている社内行事への社長さんの参加状況などをみていると、なんとなくわかります)。そのような会社であれば、「重要業務執行の取締役への委任」に関する定款変更と相伴って、経営のスピードを上げ、経営の透明性を高める機関形態としては抜群のガバナンス機能を発揮できるのではないでしょうか。

しかし前編でご紹介したような統計資料を前提とすると、やはり後向きの対外的理由(社内改革をする気はないが、ガバナンス改革と言われて社外取締役を増やさないといけないので)、後向きの対内的理由(できるだけ監査費用を少なくすむように)をもって監査等委員会設置会社に移行した会社が多いように思われます。このような会社では、監査機能が低下して不正リスクが顕在化する、これまで(移行企業において)長所だったアドバイザリー型の取締役会の機能が低下する、ということにもなりかねないと思います。監査等委員会設置会社に移行した企業の8割から9割が「重要な業務執行の取締役への委任」に関する定款変更をしていますので、かりに今後そのような実務運用がなされた場合には、さらに企業価値を低下させてしまう懸念は大きくなるものと思います。

ただ、どのような事情によって監査等委員会設置会社に移行したにせよ、上場会社としては、一般株主のために(移行したことを)前向きに考えなければなりません。企業価値の向上いや、せめて企業価値向上を邪魔しない監査等委員会設置会社のガバナンスとしては、ひたすら取締役監査等委員の方々の頑張りにかかっていると考えます。そこで私が「せめて企業価値向上を邪魔しない監査等委員会設置会社の条件」(ご提案)としては、

①理屈の上ではやや問題があるとしても、任意の「指名委員会」「報酬委員会」を設置して、そこに取締役監査等委員が就任して「いやでも」社外役員が社内取締役の人事・報酬の決定過程に関与する

②内部監査部門と協働の上、企業グループにおける情報共有体制を整備して(具体的にどのような情報を共有するか、どの情報に優先順位があるか、そのような見直しをどの程度の頻度で行うかを実質的に社外役員を中心に検討して)、取締役会の開催頻度、付議(上程)案件、報告案件の柔軟化を図る

③定時株主総会の招集通知には、各取締役監査等委員がどのように報酬・人事に関与したのか、その概要を示すとともに、かならず選定された取締役監査等委員による報酬・人事に関する意見陳述の概要を記載する

④経理部門や財務部門、そして会計監査人と会計処理方針の是非について対等に議論できるような公認会計士の社外取締役監査等委員を必ず選任する、

というものであり、このような体制作りを監査等委員側から積極的に行うべきです。

④以外の提案については、いずれも費用を伴うものではなく、ただひたすら監査等委員会の環境整備を図るというものです。また③の提案については、そもそも「株主総会が取締役の人事・報酬に意見を表明できる機会を付与するための監査等委員による意見陳述」という建てつけからみて(会社法立案担当者による「一問一答-平成26年改正会社法」初版42頁参照)、この程度のことは施行規則等でルール化してもいいくらい当然のことかと考えています。決して企業価値向上に結び付くというものではありませんが、こういった内容は取締役監査等委員側から積極的に提案しなければ実現しないと思います。

取締役会に責任を負う指名委員会等設置会社の監査委員会とは異なり、監査等委員会は(身分保障が厚い分)取締役会との距離は遠いのです。ひとつ間違えると取締役会で手を挙げる立場にいながら重要な情報が入ってこなくなるリスクは高いのです。国策(ガバナンス改革)に協力することは良いことだとは思いますが、せめて経営トップの作為・不作為による暴走(リスクをとらないという経営トップを後押しするという意味も含めて)を社外取締役がチェックできる態勢だけは整えておかねばならないと考える次第です。

10月 17, 2015 監査等委員会設置会社 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年10月12日 (月)

企業価値向上を邪魔しない監査等委員会設置会社の条件-前編

いつも有益な情報をいただいている迷える会計士さんから、9月の定時株主総会を終えた上場会社のうち、今年度監査等委員会設置会社に移行した会社の取締役会構成に関する調査結果をご教示いただきました(いつもありがとうございます<m(__)m>)。以下に情報を列記いたしますと、

9月総会までに監査等委員会設置会社に移行した会社のうち、ガバナンス情報を更新していない会社を除く190社の分析結果

1 監査等委員会設置会社の社外取締役数

社外取締役2人 94社 
社外取締役3人 64社
社外取締役4人 23社
社外取締役5人 9社

2 常勤取締役監査委員の数

常勤取締役監査等委員3人 1社
常勤取締役監査等委員2人 14社
常勤取締役監査等委員1人 150社
常勤取締役監査等委員0 25社

3 監査等委員会委員長の内訳

監査等委員会委員長が社内 121社
監査等委員会委員長が社外 65社
監査等委員会委員長なし 4社

4 その他の情報

平均社外取締役数 2.72人
平均取締役数 9.55人
平均社外取締役比率 28.5%
社外取締役比率が三分の一以上の会社 60社
社外取締役比率が二分の一以上の会社 9社
監査等委員である社外取締役以外に社外取締役を選任している会社 30社

とのこと。監査等委員会設置会社の現状を示した拙ブログのエントリーでは、今年5月17日の時点で「監査等委員会設置会社に移行を表明した上場会社のうち、それまで社外取締役がゼロだった企業は66%」であることをお伝えしましたが、現状では190社中、160社において監査等委員以外の社外取締役さんがいらっしゃらない(実に84%!)ということなので、この傾向は監査等委員会設置会社へ移行する上場会社の増加に伴って、ますます顕著な傾向となっていることがわかります。

ちなみに、私が6月総会の上場会社の総会招集通知等から調査したところでは、監査等委員会設置会社への移行に関する定款変更決議を可決した会社のうち、約9割において会社法399条の13、第5項、第6項に基づく重要な業務執行の(全部または一部の)取締役への委任を可能とする定款変更も行っていることが判明しています。つまり監査等委員会設置会社のほとんどにおいては(対外的に)指名委員会等設置会社と同様、指名委員会や報酬委員会に準じる役割を社外取締役さんに強く求めるガバナンス体制を標榜している一方で、社外取締役は監査等委員以外には置いていない、というのが現状のようです。

来年6月の定時株主総会で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行を検討している上場会社もかなりの数に上り、私自身、移行を検討されている企業からの相談などを受けることも増えています。また、(私がこっちのほうが相談件数が多いのですが)すでに移行した企業の運営上の課題なども少しずつ明らかになっています。そこで、迷える会計士さんからご教示いただいた情報をもとに、私なりの「企業価値向上を邪魔しない監査等委員会設置会社の前提条件」について検討してみたいと思います(以下、後編につづく)。

10月 12, 2015 監査等委員会設置会社 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年8月 6日 (木)

監査等委員会設置会社は「パンドラの箱」?

ひさびさの監査等委員会設置会社ネタでございます。監査等委員会設置会社に移行した会社または移行を表明した会社は、すでに200社を超えたそうで、来年の総会で移行を検討している企業を含めますと、かなり多くの上場会社が監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行することが想定されます。当ブログをご覧の皆様はご承知のとおり、私は(ネガティブキャンペーンを張っているわけではありませんが)監査等委員である社外取締役さんの職務というのは、これまでの社外監査役さんの職務とは大きく異なるのではないか、次期社長の指名や現社長の評価、社内取締役の報酬に関する評価をきちんと審議・決定しなければ善管注意義務違反になるのではないか、と考えております。

ところで7月24日に経産省から公表されました「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」では、取締役会制度に関連する会社法の解釈指針がまとめられておりますので、この監査等委員会設置会社における社外取締役さんの役割と責任はどのような解釈指針が出されているのだろう・・・と興味を抱いておりました。しかし、同指針には「この指針は断りのない限り監査役会設置会社について記載をしています」とあり、監査等委員会設置会社における社外取締役の役割と責任には踏み込んだ解釈指針は公表されていません(これは残念)。ひょっとして監査等委員会設置会社の監査等委員である取締役の善管注意義務を語ることは時期尚早なのでしょうか?それともパンドラの箱なのでしょうか?

Houtojitumuちなみに取締役会まわりの会社法実務を学ぶにあたり、とても参考になる本が出版されており、法律雑誌の原稿を書く際にも参考にさせていただいております。

取締役会の法と実務(森本滋編 商事法務2015年3月 4,000円)

森本滋先生(京大名誉教授、同志社大教授)が在籍されている中央総合法律事務所のメンバーの方々と森本先生による共著です。かなり分厚い本ですが、内容は実務担当者向けでして、取締役会の運営に関連する法的な論点をほぼ網羅したものであり、このたびの経産省解釈指針を読む際にもたいへん有益です。会社法規則やガバナンス・コードへの言及もあります。

ところで本書では、森本先生の「監査等委員会設置会社における監査等委員の職責」に関するご解説、ご解釈が詳しく述べられていまして、これは私個人の感想ですが、江頭先生が「株式会社法第6版」で述べておられるものよりも、さらに厳しいご意見だと理解いたしました。

(条文上は「意見を述べることができる」とあるが)選定された監査等委員は、株主総会において、取締役の選任・辞任、報酬に関する意見を述べなければならない、とされ、そのうえで監査委員よりも監査等委員の地位は脆弱であるにもかかわらず、社内取締役の業務執行全般を調査し、その経営評価機能を適切に行使することなどできるのだろうか、と疑問を呈されています。また、かりに「とんでもなく能力に乏しい監査等委員」が就任した場合、指名委員会等設置会社の監査委員とは異なり、監査等委員は取締役会への報告義務がないので、取締役会が監査等委員の監督能力を発揮できず、そのうえ株主総会の特別決議でなければ解任できない、任期も社外取締役の倍、ということなると、(能力のない監査等委員の活動によって)取締役会の円滑な運営がを阻害されるおそれがあるのではないか、と危惧されています(まだまだ他にも厳しいご意見が続きます・・・)。

コーポレートガバナンス・コードへの制度対応を目的として監査等委員会設置会社に移行した上場会社さんの場合、監査等委員に就任された方にも、また機関形態を移行した会社側にも「こんなはずじゃなかった」といったリスクが待ち受けているようにも思えるのですが、いかがでしょうか。もちろん平成26年改正会社法の成立にあたり、衆参両議院の附帯決議があり、(社外取締役制度の運用状況や機能を把握するためには)監査等委員会設置会社と他の機関形態との制度間競争を実行させなければならないので、監査等委員会設置会社が増えることについては法務省を初め、国策ガバナンスを推奨する側はこの状況を好ましいものとされるはずです。しかし、日本を代表する商法学者の方々が監査等委員会設置会社の取締役の責務に関する解釈ついて厳しい見解を述べておられるところで、会社が不祥事を起こしたり、業績が悪化した場合に、社外取締役さんの法的リスクはかなり高いのではないかと、改めて感じるところです(もちろん、これは私個人の考え方です)。

なお「パンドラの箱」の神話は、箱の中には最後に「希望」だけが残されていた、という筋書きです。監査等委員会設置会社も、経営トップをはじめ、関係者がガバナンスの向上のために工夫をして運用した場合には、おそらく企業価値向上に資するガバナンス形態として機能するのかもしれません。どのような制度間競争が繰り広げられるのか、今後の数年間とても興味があります。

8月 6, 2015 監査等委員会設置会社 | | コメント (6) | トラックバック (0)

2015年5月13日 (水)

監査等委員会設置会社の補欠取締役選任状況について

またまた監査等委員会設置会社への移行に関する話題ですが(すでに130社ほどの上場会社が移行を表明しておられますが)、3月総会、4月総会の上場会社においては、すでに監査等委員である取締役の方が選任され、5月1日より就任されております。また5月総会の会社では、招集通知の発送もすでに行われています。したがいまして、5月総会までの上場会社において監査等委員会の構成状況について調べてみました(合計9社)。

集計の結果、監査等委員である取締役3名のみ選任(または選任予定)の会社が5社、補欠の監査等委員である取締役を選任された会社が1社、4名構成の監査等委員会設置会社として、そのうち3名を社外取締役としている会社が3社となっています。6月総会会社において、すでに適時開示で補欠取締役の選任予定をリリースされている会社もありますので、今後は監査等委員である補欠取締役さんが株主総会で選任されるところも多いのではないかと推測いたします。

監査等委員会は3名以上の取締役で構成されますので(うち過半数が社外取締役)、補欠を選任せずにきっちり3名のみ選任議案を上程する、というのがもっともシンプルです。しかし、監査等委員としての取締役の職務は相当に労力を要するものと思いますし、執行と監督の分離を促進するモデルと考えた場合、経営執行部と対立する可能性もあります。したがって欠員が生じることも予想されます。監査等委員会の場合、指名委員会等設置会社の監査委員のように取締役会で選定できるものではないので監査等委員会が事実上開催できないリスクがあります。

そこで補欠取締役の選任が考えられます。これは正式に選任された監査等委員の取締役が監督機能を存分に(安心して?)発揮できる体制になるので、社外からみても迅速果断な意思決定が期待されるところです。しかし、補欠といえども、監査役と異なり、監査等委員以外の取締役の指名や報酬の妥当性に関する意見を決定しなければならないという「経営評価l機能」を果たさなければ善管注意義務違反に問われる可能性があるので、会社経営に何ら関与してこなかった人がいきなり妥当性審査や妥当性監査をもって善管注意義務を尽くせるのか、というかなりシビアな問題があります。

ということで、すでにご紹介した上記3社のとおり、監査等委員会を4名体制として、うち社外取締役を3名とするのがベストではないでしょうか。この体制であれば「執行と監督の分離」による迅速果断な意思決定を支える監査体制と外部からも評価されるでしょうし、また監査等委員と経営執行部が対立した場合でも、監査等委員会が機能しなくなるというリスクを低減できます。ただ、監査役会設置会社と異なり、監査等委員会は組織監査が原則なので、4人が2対2に分かれるような意思決定となると監査自体ができなくなってしまうというリスクはあるかもしれません。指名委員会等設置会社の場合には取締役会でコントロールできますが、監査等委員会設置会社の場合には、株主総会での選任・解任となるので、やや問題が残るところです。

6月総会会社のリリースをみておりますと、監査等委員である補欠取締役を一気に2名選任する会社もありますし、「攻めのガバナンス」をどのように機関設計に活かしていくか、各社の工夫が感じられます。

PS リスクモンスター社も監査等委員会設置会社への移行を正式に表明されましたね。たいへん失礼いたしました<m(__)m>。

5月 13, 2015 監査等委員会設置会社 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年5月 5日 (火)

監査等委員会設置会社移行表明会社のガバナンス(現状)について

(5月5日午後 5月9日午前 5月17日 修正あり)

迷える会計士さんに、本日(5月5日)現在、監査等委員会設置会社に移行することを表明した上場会社(及び既に移行した上場会社)のガバナンスの現状(移行済会社については従前のガバナンス状況)を集計していただきました(なお、その後さらに情報をいただきましたので、5月8日現在の分を追加しました)。そこで、その集計結果を参考に円グラフで示してみました。集計数字を右側に示しましたのでご参考にしてください。なお、迷える会計士さんが集計するにあたっては川井信之先生のブログを参考にされたそうで、川井先生にも御礼申し上げます<m(__)m>ちなみに私も30くらいまでは数えていたのですが、急激に増えたところでしんどくなってカウントをしておりません(笑)

Gave006


このようなグラフの分析は人間の主観的な判断がどうしても入ってしまうと思いますが、遠慮がちに申しますと、「やっぱり社外取締役を探すのが億劫なのでとりあえず」といった企業が多いのではないかと。私の勝手な推測にすぎませんが、監査等委員会設置会社の理想である「執行と監督の分離」を目指すというよりも、監査役会設置会社の延長として活用する、といった上場会社が圧倒的に多いように思います(105社中、社外取締役がいない上場会社は70社)。ガバナンス・コード(2名以上の社外取締役の選任を要望)との関係で言えば「9割の移行表明会社がガバナンス・コードの影響を受けている」とも言えそうです。

なお、私のもうひとつの関心事は「監査等委員会設置会社への移行と共に、どれだけの会社が取締役会の権限委譲の定款変更を行うか」という点です。とくにこの「社外取締役0人」のガバナンスの会社の中で、どれほどの割合の会社が定款変更をされるのでしょうか。また興味深いところです。

PS 先日、取材を受けました弁護士ドットコムさんに日弁連社外取締役ガイドラインの記事を掲載いただきました。どうもありがとうございます<m(__)m>新たに社外取締役に就任される経営者や経営者OBの方々、専門職の方々にぜひとも参考にしていただきたいと思っております。解説本の第2版ももうすぐ出ますので、そちらもよろしくお願いします。

5月 5, 2015 監査等委員会設置会社 | | コメント (22) | トラックバック (0)

2015年5月 1日 (金)

改正会社法施行日に考える「監査等委員会設置会社」

本日(5月1日)は平成26年改正会社法の施行日ですね。企業統治や親子会社規律、事業再編等に大きな影響を及ぼすことが予想されます。会社法は小さな会社にも適用がありますので、今後は全国の中小の会社さんにおいて混乱が生じるかもしれません。6月に適用開始となるコーポレートガバナンス・コードとは異なりますので、まずは全国の経営者の方々が「会社法が少し変わったらしいけど、うちは大丈夫?」といったことだけでも「気づき」があればいいですね。

ところで日経ニュースなどでも報じられているように、企業統治改革の目玉である社外取締役制度導入(有価証券報告書提出会社への事実上の強制)に伴い、監査等委員会設置会社へ移行を表明した会社が100社を超えたそうです。正確にはガバナンス・コードによる影響のほうが大きいとは思いますが、スゴイ勢いで監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ機関設計を変更する上場会社が増えています。先週、先々週と、東京や大阪でセミナーを開催させていただきましたが、経営者、担当者とも真剣に移行を検討している会社が非常に多いことに驚きました。今後も益々移行を表明する企業が増えるものと予想します。

もう何度も当ブログでも述べましたので繰り返しになってしまいますが、監査等委員会設置会社はうまく活用すれば事業戦略上有効であり、まさに「稼ぐ力」を推進する役割を果たすと思いますが、その分副作用もあり、誰も経営者の作為、不作為による企業価値の毀損を止められない会社固有のリスクがあります。また取締役固有のリスクとしては、監査等委員である取締役(社外取締役は2名以上)の「経営評価機能」は、これまでの監査役さんの監査機能とも、また普通の社外取締役さんに求められる(取締役会における意思決定を通じての)監督機能とも異なります。たとえば会社法399条の2、3項3号に定める監査等委員会の取締役の指名、報酬に関する意見決定職務(「監査等委員会」の職務とありますが、総会での意見陳述は権利でも、意見決定は委員会を構成する全取締役の意見形成関与義務ですね)が規定されていることからすると、この監査等委員である取締役さんの職責(善管注意義務)は極めて大きなものと考えられます。

また、監査等委員会という新たな「機関」を支える事務局の体制作りも不可欠ですね。内部監査部門が担当するのか、それ以外の部門なのかは会社によって異なりますが、そもそも社長直轄の部門が多い中、監査等委員会という独立した機関の実効的な活動をどう担保するのか、これは監査等委員である取締役さん以上にたいへんな仕事かもしれません(ちなみに監査等委員である取締役は非業務執行役員なので「業務執行」はできません。したがって、監査等委員である取締役さんは、自分たちが関与する妥当性監査や、社長の報酬や次の社長が誰がよいか等の経営評価機能を全うできる体制とはどのようなものかを考えて、その整備を経営陣に要求しなければ善管注意義務を尽くしたとはいえないものと思われます)。内部統制システムの基本方針を新たに改正する必要がありますが、監査等委員会設置会社に移行した会社がどのように内部統制システムを改正するのか、今後注目されるところです。

ところでリスクモンスター社(東証JDQ)は昨年6月の定時株主総会において取締役・監査役の報酬額改定に関する議案を上程されました。上程理由は「今年の会社法改正後に監査等委員会設置会社に移行することを検討しており、社外の人たちに就任を打診するにあたっては、それなりの報酬を支払う必要があるから」というものです。同社は会社法務に精通しておられる著名な方々が社外取締役、社外監査役に就任しておられますし、「外から候補者を見つけてくる」と説明しておられますので本気でガバナンスを充実させて戦略に活かすことを検討されているものと推測します。しかしながら、本日現在、リスクモンスター社は監査等委員会設置会社への移行を表明しておられません。ここからは私の推測にすぎませんが、企業のリスク審査を本業とされる同社が監査等委員会設置会社の社外取締役のリスクを真摯に検討され、その報酬額も検討した場合、なかなか社外からふさわしい方を招へいすることはむずかしい、ということかと想像します。

つまり、それほど監査等委員である社外取締役の職責は重く、またリーガルリスクも高いいうことかと思います。私が監査等委員会設置会社の社外取締役に就任するのであれば、これだけの高い条件を社長さんに同意していただけることが条件です(そんな条件ならもう結構ですと言われるでしょう)・・・と昨年出版した「会社法改正のグレーゾーン」の中で書きましたが、その気持ちは今も変わりませんし、昨日購入した江頭憲治郎先生の「株式会社法(第6版)」を拝読しても、その気持ちは揺らいでおりません。一方で、経営者ご自身が(メリット・デメリットを理解したうえで)監査等委員会設置会社に移行することを中長期の事業成長に結び付ける明確なストーリーを描ける企業にとっては、これほど武器になるガバナンスもないのでは・・・と感じます。(改正会社法の附帯決議とされている)2年後のガバナンス検証に向けて、法務省にとっても、この移行表明企業の増加は「良い傾向」と確信されているのではないでしょうか。

5月 1, 2015 監査等委員会設置会社 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2015年1月30日 (金)

いよいよ監査等委員会設置会社に移行する上場会社が登場!

日経ニュースの記事を読むまで知りませんでしたが、1月28日、29日と相次いで監査等委員会設置会社に移行することを取締役会で決議した企業が出てきたのですね(すでに適時開示もなされています)。いずれも監査役会設置会社からの移行だと思いますが、「どこが移行第1号になるのか?」と私の周辺では話題になっておりました。

巷(ちまた)では私がネガティブキャンペーンを張っているものと噂されておりますが(笑)、いえいえ、ほんとに監査等委員会設置会社の趣旨を理解されたうえで「ガバナンス強化」を社長が決心されておられる会社であれば、素晴らしい決断だと思いますし、決して「やめたほうがいい」とは申し上げません。そもそもコーポレートガバナンスはもはや「仕組み」ではなく「運用」が評価される時代です。うまく運用されれば取締役会の権限の多くを執行者に委譲してスピード経営を実現し、企業価値向上に資する機関形態だと思います。

ただ、監査等委員である社外取締役(2名以上)の方々にとっては、これまで経験してこなかった未知の領域の職務が待っている・・・ということがなかなか興味深いところです。

Photo監査等委員である取締役さんは、これまでの監査役さんと同じような「監査職務」(正確には監査権行使への関与)、そして取締役なので、取締役会構成員としての「監督職務」、そしてもうひとつ「監査等職務」をこなすことになります。監査等委員である取締役さんは、直接株主総会から選任されますので、指名委員会等設置会社の監査委員の方々よりも独立性が強く、またかなり責任も異なります。この「監査等職務」というのが、まさに会社法改正のグレーゾーンでありまして、社長さん達の人事や報酬について監査等委員会には意見陳述権が付与されています(ほかにも利益相反取引に対する承諾権限など特有のものがありますが、取締役会構成員としての「承諾」とはどう区別して承諾権を行使するのか、いまだによくわかりません・・・)。この指名・報酬に関する意見陳述権というのが曲者(くせもの)でして、組織的権限行使なので各委員は意見陳述権行使に「関与」することになるわけですが「権利なのだから、別に意見がなければ何も言わなくてもいいのではないか?言わないことで責任を問われることはないのでは?」とも思えます。

しかし著名な会社法学者の先生方のご意見をみると、そんな生易しいものではないようです。たとえば東大のT先生は、監査等委員会の意見陳述権の法的性格として「条文上は「意見を述べることができる」とあるので(改正法361条6項)、必ず意見を述べなければならないというわけではない。しかし、条文上、意見決定は監査等委員会の「職務」と明記されているので(法399条の2、3項3号)、この「職務」を強く読めば義務のようにも思える」(旬刊商事法務2045号18頁)と述べておられます。

また法制審議会会社法制部会長のI先生も、「意見陳述権というのは、与えられた権限である以上、適切に行使する義務もある。意見がない、というのは本来ありえないはずであり、特に意見を述べないというのは、取締役が提案した人事・報酬議案について異論がないということ。株主総会で『そこはどう考えているのか』と株主から質問があれば、監査等委員はこれに対する説明義務がある。」と述べられ、同じシンポにおいて会社法改正に携わった法務省の方も「取締役会の議論において、監査等委員である社外取締役らが人事・報酬に関する協議の中心的役割を果たすことが期待されている、という点に大きな意味があります」と語っておられます(旬刊商事法務2040号22頁以下ご参照)。

こういったご意見、ご議論に触れるにつれ、私自身「監査等委員という職務はタダモノではないぞ・・・ぶるぶる」といった気持ちになってきましたので、この機関設計は社長さんだけでなく、監査等委員である取締役に就任する方々にも並々ならぬ決意が必要なのではないか、と考えるに至ったわけです。いえ、再度申し上げますが、その決意をもって機関移行を行うのであれば(もちろん法的には株主さんが決めることですが)、これはまさにガバナンス強化への熱意が伝わってくるものであり、機関投資家からも、また議決権行使助言会社からも好感度アップとなるのではないかと思います(たしかISSさんも推奨されていましたよね)。

そして、もし(仮にですよ!)、「監査等委員会設置会社って、社外役員が節約できる上、常勤が要らないとなれば経済メリット十分。そのうえ任期2年で役員の肩たたきもせずに人事に柔軟に対応できる。おまけに独任制と言う恐ろしい制度が廃され、コンプラおたくの原理主義者を排除できる。これに乗らない手はないよね!」と思って機関移行される社長さんがいらっしゃるとしたら、正直にそう開示してくださいね(笑)。ホンネで株主と建設的に語り合うことがまさにコーポレートガバナンス・コードのいう「株主との目的ある対話」なのですから。

 

1月 30, 2015 監査等委員会設置会社 | | コメント (5) | トラックバック (0)