2018年9月20日 (木)

公益通報者保護法改正に向けての最大の壁とは?

本日(9月19日)の日経新聞朝刊(社会面)に、「パワハラ法整備 年内に方針結論」なる見出しで、小さな記事が掲載されています。パワハラ対策を法制度とするのか、それともガイドラインにとどめるのか、といった方向性を、厚労省が年内にも結論を出すとのこと(あくまでも厚労相の発言ですが)。ただし、労働側と経営側で意見が分かれており、調整は難航する可能性があるようです。このあたりは他紙でも詳しく報じています。

「業務上の指導と(パワハラとの)線引きがむずかしい」として経営者側が法制化に反対するのも一理ありますが、この適正な指導が萎縮するリスクとパワハラ放置による企業側の5大リスク(訴訟リスク、「ブラック企業」とレッテルを貼られるレピュテーションリスク、職場の良質な労働力の喪失リスク、パワハラ連鎖リスク、不祥事隠ぺいリスク)とを比較して、適正指導萎縮リスクのほうが上回るのかどうかは明らかではありません。被害者側の人権侵害という問題を抜きにしても、企業側にとって法制化に反対することが果たして適切なのかどうか・・・、なかなかむずかしいところです。

ところで、この厚労省における注目すべき議論の帰趨は、公益通報者保護法改正の審議にも影響を及ぼすのではないか・・・と推測しております。内閣府の公益通報者保護制度専門調査会において公益通報者保護法の改正審議が進んでおり、こちらも経営者団体(経済団体?)が法改正にやや反対(もう少し強めの反対?)の意向を示しておられます(たとえば経団連意見書はこちら)。これまでの(消費者契約法等)消費者庁発の法改正提案についての流れをみますと、おおよそ予想される反対意見ですが、実は法改正に向けた流れの中で、最大の壁は厚生労働省の意向ではないかと想定しております。今後、働き方改革の実行段階において、厚労省では諸政策の審議が山積しており「公益通報者保護法改正どころではない」「法改正に伴う通報の増大に対して、わが省では物的、人的資源がない」といった声が聞こえてきそうです。

公益通報者保護法の改正にあたっては、厚労省の後押しがなければ事実上法制化はむずかしいのではないかと。主管である消費者庁の皆様がどのような「根回し」をされているのかは、私もまったく存じ上げませんが、厚労省内の優先順位を上げることはなかなか容易ではないようにも思えます。私からみれば、おもいのほか近時の企業不祥事が、海外の機関投資家に与える影響は大きいので、なにか「神風」が吹くようなことでもあれば・・・とも期待しておりますが、いかがなものでしょうか。そもそもパワハラも公益通報問題も「伝統的な日本企業における支配・服従関係」に起因するものなので、いっそのこと一気に解決してしまってはいかがでしょうかね。

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2018年7月19日 (木)

速報版-公益通報者保護専門調査会中間整理案の公表

7月19日、内閣府消費者委員会HPにて、昨日付けの「公益通報者保護専門調査会 中間整理案」が公表されています。今年1月に、内閣総理大臣からの諮問を受けて急ピッチで審議が続いておりましたが、このたび(中間整理案というものではありますが)公益通報者保護法の改正に関する方向性が取りまとめられました(第17回公益通報者保護専門調査会)。

これから週末にかけて内容をじっくりと検討したいと思いますが、企業において内部通報制度の整備・構築義務が明記される方向性がはっきりとしました。また大企業では、内部通報制度の整備・構築義務の懈怠が、内部告発(第三者への情報提供)の保護要件を緩和する(内部告発者が広く保護される)という「画期的な」改正の方向性も明記されるようです。

私が消費者庁の検討会で強く主張しておりました「通報者に対する不利益処分に関する立証責任の転換」の論点については(解雇の場合のみ認める・・・ということで)やや後退しておりますが、その他はほぼ主張が通っている論点もたくさんありますので、この中間整理案をたたき台として、更なる法改正の審議を尽くしていただきたいと切に願うものです。

なお、2010年に始まった米国の内部告発法ですが、この8年間で1500億円ほどの財務問題解決の効果を上げ、不当な利益のはく奪も800億円に上るそうです。内部告発者への報奨金も290億円に上るとのこと(経営財務2018年7月9日号記事より)。その米国でも、更なる内部告発の実効性向上を図るために規則改正が公表されています。日本でも、不祥事予防、発見のための通報制度の実効性を高めるため、早急な法改正が必要と考えています。

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2018年1月27日 (土)

本格化する公益通報者保護法改正審議

本当におもしろい仕事に忙殺されておりまして、ブログの更新もほぼ不可能な状況が続いております。これまでも「書きたいネタはあっても書く時間がない」という状況はありましたが、現在は「書くべきネタを仕入れる時間がない」ということで、正月、土曜、日曜なく働く・・・というのはホンマに久しぶりです。

ということで、またまた週末の簡単なブログ更新ということで失礼いたします。いつもお世話になっている常連の方のコメントで知りましたが、内閣府の消費者委員会・公益通報者保護専門調査会が7年ぶりに再開されたのですね(1月26日開催)。

1月15日付けで内閣総理大臣による内閣府消費者委員会委員長への「公益通報者保護法(平成16年法律第122号)の検討」の諮問があったことが明かされ、「公益通報者保護専門調査会」再開および「設置・運営規定」改正が決定しました。

とのこと(情報どうもありがとうございます!)。たしかに内閣府のHPで確認したところ、常連さんのおっしゃるとおりですね。公益通報者保護法の改正に向けた審議がいよいよ本格化しそうです。委員の顔ぶれをみると、おお!弁護士委員は大阪弁護士会の(消費者保護政策に造詣の深い)H弁護士ですね。ぜひ委員会の様子を教えていただこうかと。。。

今年も2月19日の九州博多から、合計7回の日本監査役協会講演ツアーが始まりますが、今年はご要望にお応えして「実効的な内部通報制度と監査役員の関与」がメインテーマです。公益通報者保護法改正の最新情報なども盛り込みますので、またよろしければお近くの会場にてご参加いただければ、と。

 

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2017年8月 1日 (火)

内部告発者に朗報-地方公共団体向け通報対応ガイドラインの公表

先日、横浜市が内部告発者の氏名を誤って企業側に漏えいしてしまった事件が発覚し、告発者に謝罪したことが報じられていました(たとえば朝日新聞ニュースはこちら)。このような「地方公共団体による労働者通報への不適切な対応」が後を絶たないため、結果として行政機関への内部告発を萎縮させている点が大きな課題とされています。しかし、地方公共団体へ内部告発を検討している方への朗報となるべきガイドラインが策定されました。

今年3月、公益通報者保護法の趣旨を踏まえた国の行政機関向け(労働者通報に関する)通報対応ガイドライン改訂版が公表されましたが、これに続き、消費者庁より本日(7月31日)、地方公共団体の通報対応に関するガイドライン(労働者通報への対応を含む)が公表されました(消費者庁HPに掲載されています)。こちらも公益通報者保護制度実効性検討会の報告書提言に基づいて新たに策定されたものです。

企業不正を内部告発される方にとってはぜひ内容をご理解いただきたいところですし、内部通報制度の整備・運用が適切とはいえない企業にとっては、不正発覚リスクを高める要因ともなり、注意が必要です。不正リスクの中身についての詳細は、別途研修や講演等で解説させていただきますが、労働者通報に関して、(地方公共団体の対応が求められる)労働者の範囲はかなり広いですし、国の機関と同様「準公益通報」についての対応も要求されています(匿名通報についても基本的に受け付けることになりそうです)。また、これまで自治体が通報を拒絶したり放置する原因となっていた「真実相当性」の要件について、その解釈指針を示し、さらには個人の生命、身体、財産に重大な影響を及ぼし得るような通報事実の場合には、この要件該当性に疑問があっても通報対応すべき、としています。

たとえば公益通報者保護法上の「通報事実」に該当しないような法令違反行為についての取引先従業員からの通報でも、真実相当性の要件が認められる限りは、各自治体がこれを誠実に受領して調査を開始する、ということになります。もちろん国の機関事務ではありませんので、ガイドラインの実施についてはそれぞれの自治体の自主性を尊重することになりますが、法令上の根拠は地方自治法245条の2、第1項に基づく「地方自治事務に関する技術的助言・勧告」となります。公益通報者保護法の改正(ハードロー)は未了ですが、改正に向けての立法趣旨(公益通報者保護制度の実効性の向上)は、ガイドライン(ソフトロー)によって企業実務に浸透していくことが期待されます。

今後は各地方公共団体において、本ガイドラインを踏まえた内部規程の策定、改正等を行うことになりますが、各地方公共団体から消費者庁へは数百に及ぶ意見や質問が寄せられたそうで、消費者庁としてはすでに丁寧に回答を終えたそうです。したがって、今後は各自治体で速やかに制度の整備、改善、職員の皆様の研修が進むものと予想されますので、企業のコンプライアンス経営実践への影響も、かなり大きいはずです。

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2017年4月13日 (木)

公益通報者保護制度実効性検討委員会報告書へのパブコメ公表

約120年ぶりの債権法改正法案が今国会で成立する見込みとなったようですね(毎日新聞ニュースはこちら)。民事法改正は国民の社会生活にも大きな影響を及ぼすものと思います。ただ民事法の関係でいえば、私は最高裁に上告(上告受理申立て)されている民事事件の半分が「本人訴訟」という事態のほうがよほど国民の社会生活に影響を及ぼしているのではないかと思うのですが、いかがでしょうかね?(^^; 

重要案件に最高裁判事の審理が集中できない民事訴訟の現状は、裁判所と弁護士会で真剣に検討すべき時期にきているように思います。弁護士自身の「利益」につながらない問題かもしれませんが、このまま放置していると自分たちの首を絞めることになるのではないかと。。。(「お前が言うな!」と叱られそうなので、これ以上は申しませんが・・・刑事事件の司法制度改革は進みましたが民事事件の司法制度改革は行わないのでしょうか?)。

さてここから本題ですが、本日(4月12日)、消費者庁HPに公益通報者保護制度の実効性検討委員会報告書への意見(パブリックコメント)が公表されました。検討委員会が公益通報者保護法の改正に向けた提言を出しましたが、その提言に対するご意見が多数公表されています(なお、このパブコメに基づいて報告書が修正されるわけではございません)。

この3月1日にも、大阪地裁において、従業員の監督官庁への不正通報を「公益通報」と認めつつも、「諸事情からすれば当該従業員は自主的に退職したといわざるを得ない」として従業員の不当解雇の主張が排斥した判決が出ています。2010年の拙著「内部告発・内部通報-その光と影」でも提言し、また上記報告書でも、公益通報と従業員の退職や配転命令といった業務命令との関連性が認められる場合には因果関係の立証責任を会社側に転換すべき、との提言をしましたが、この点については賛成意見が多かったようです。

反対意見の中には「そんなことをしたら、揉め出してから公益通報をする社員が出てきて人事・労務政策に支障が出る」との反対意見もありましたが、そもそも通報の対象となるような事実を抱えていること自体をなくすために公益通報者保護法が存在しますので、批判はあたらないように思います。

また、私自身が委員会で強く提言しておりました「事業者が公益通報に対して適切に対応すべき体制の整備義務に関する規定を設けること」については、とてもたくさんの賛成意見、反対意見が寄せられています。いや、これはありがたいです!これはぜひとも、今後の法改正への活動に参考にさせていただきたいと思います。

 

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2017年3月28日 (火)

内部告発、内部通報制度への企業実務理解に求められる「三点セット」

(2017年3月28日午前11時45分最終更新)

企業不祥事を発生させた企業にとって、マスコミから大きく取り上げられるような不祥事に発展させてしまうか、それとも夕刊ベタ記事掲載1回のみで、世間からほとんど話題にもされない不祥事で終わらせるかは、「公益通報」への対応次第といっても過言ではありません。昨年12月の内部通報対応指針(公益通報者保護法に関する民間事業者向けガイドライン)に続き、今年3月21日、内部告発対応の指針(行政機関向けガイドライン)も消費者庁HPに公表されました

「行政機関向けガイドラインなど、われわれ民間事業者には関係ないのでは?理解不要ではないの?」とお考えの方も多いかもしれません。われわれ法律家にとっては、法定受託事務(行政組織法)、行政規制の在り方(行政作用法)、国賠法と不作為による権利行使(行政救済法)といった興味深い論点もありますが、一般の事業者にとっては関心も薄いと思います。しかし、行政機関向けガイドライン」は内部職員からの通報への対応指針と、外部労働者からの通報への対応指針に分かれている点は要注意です。

つまり、後者は外部労働者から監督官庁に対して内部告発がなされた場合に、監督官庁はこの通報にどのように対処すべきか、その対処の行動規範を定めた指針でありまして、これが「公益通報制度実効性検討委員会」の報告書によって大きく改訂されました(3月21日、各省庁との申し合わせ済です)。監督官庁に対して内部告発がなされたにもかかわらず、監督官庁の不適切な対応によって告発者が事業者から厳しい不利益取扱いを受けたことが何度もありましたので、有識者のヒアリングも行われ、また上記委員会でも大いに議論されました。

たとえば上場会社や機関投資家に要望されているソフトロー(コード)にたとえますと、民間事業者向けガイドラインがコーポレートガバナンス・コード、労働者通報に対する行政機関ガイドラインがスチュワードシップ・コードのような役割です。また、現在法改正に向けて検討中である公益通報者保護法との関係まで含めて図で示しますと、以下のような相互補完関係に立ちます(どのように相互補完の関係にあるかは、また別途解説させていただきます)。

Naibujitumu_2公益通報者保護法改正は未了ではありますが、民間事業者向けガイドライン、労働者通報に関する行政機関ガイドラインを読みますと、法改正で対応することがやや困難と思える点をソフトローで補完しよう(法改正の趣旨を先取りしよう)との意図が伝わってきます。通報者の範囲、通報対象事実の範囲、通報事実の真実相当性要件の緩和、通報者の秘密保護、通報に基づく調査方法の柔軟性等、「法改正だと、ここまでは可能だろうか・・・」と感じるところに、国はガイドライン行政を活用して事業者の自主的取り組みに委ねようとしています。公益通報制度実効性検討委員会において委員間で意見が分かれた論点について、法改正では困難かもしれませんが、ソフトローによる行動規範として反映させたい、といった消費者庁の趣旨が表れているものと(私個人としては)感じるところです。

ということで、民間事業者は自社の内部通報制度を設置・運用する場合には民間事業者向けガイドラインの趣旨を理解していただくことをお勧めいたしますが、内部告発を検討している社員の皆様、そして内部告発がなされた企業の経営者、実務担当者の皆様は、内部告発に対して、今後国の機関がどのような対応をするのか、きちんと理解をしておく必要があると思います。そして、今後改正が予定されている公益通報者保護法が、これらのガイドラインの運用と相互補完関係に立つ以上は、その法改正の動向にもご留意ください。今後、企業の不正リスク管理のためには、この公益通報に関する「三点セット」の理解は不可欠です(個人的には内部監査部門の充実が結構大事かなぁ・・・などと考えたりもしています)。

3月30日の消費者庁主催の民間事業者向けガイドライン説明会(東京開催)は、あっという間に満席締め切りとなり、パブコメ案への意見も230件に及び、事業者の関心の高さがうかがわれます。同説明会は、主に内部通報制度への取組みに関するものですが、ぜひとも内部告発対応に関する行政機関向けガイドライン(労働者通報篇)にもご留意いただければと。

PS こんなところでつぶやいても仕方ないのですが、上記民間事業者向けガイドラインの中に「法令違反等」の定義(法令違反のほかにどのようなものが含まれて「等」とされるのか)が明らかにされていないのでは?と感じるのは私だけでしょうか?たぶん「各社の内部規則に違反する行為」も含めて「等」とされているとは思うのですが・・・

追補 本日(3月28日)、月刊監査役の最新号(2017年4月号)が届きましたが、森・濱田松本法律事務所の矢田悠弁護士による解説論稿「内部通報制度のあり方と監査役-民間事業者向けガイドラインの改訂を踏まえて-」が掲載されています。同ガイドラインがうまくまとめられており、今後の参考にさせていただきます。

 

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2016年12月 9日 (金)

公益通報者保護制度-法改正に向けた第1ラウンド終了

夕刊各紙、テレビニュースで報じられておりますように、本日消費者庁の公益通報者保護制度実効性検討委員会の最終回(第14回)が開催されまして、公益通報者保護法の見直し提案に関する報告書が大筋でとりまとめられました(「大筋」というのは、細かな字句の修正等を座長一任として、後日正式案が公表される予定だからです)。

私も(恥ずかしながら)夕方のNHKニュースでドアップで映っていましたが、検討委員としての役目は本日終了しました。ちょうど3年前(2013年11月)、消費者庁の公益通報制度アドバイザーを拝命して以来、阿南氏、坂東氏、岡村氏(現任)の三長官のもとで実効性向上への施策作りをお手伝いさせていただきましたが、これで一応お役御免です。宇賀克也座長も「今回の提言をぜひとも法改正につなげてほしい」と会見で述べておられましたが、私もまったく同感です。

ただ、公益通報者保護法改正に向けた作業は第1ラウンドが終了したところであります。今後は経済団体や中小事業者団体、法務省や厚労省を含めた関係官庁、大臣や国会議員の方々に理解を求めていかなければ改正にはつながりません。まさにタフな第2ラウンドが控えているものと推察します。今後また大きな企業不祥事が発覚するような事態となれば、想定外のスピードで法改正が進んだり、個人情報保護法のように、消費者庁から新設委員会に管轄を移行する、ということも「政治家の一声」でありうると思います。いろいろな準備をしておく必要がありそうです。

なお、法改正ばかりが注目されていますが、本日(12月9日)、内部通報制度の実効性を高めるための民間事業者ガイドラインも11年ぶりに改訂され、消費者庁HPで公表されました(私も一部改訂作業に携わりました)。事業者の通報者に対する「不利益処分」とはいかなるものを含むのか、個別具体的に示す等、かなり詳細な内容になっております。とりわけ上場会社の皆様方は、ガバナンス・コードにおいても適切な内部通報制度の整備が要請されていますので、ぜひとも新しい民間事業者ガイドラインを参照いただき、今後の改訂等にお役立ていただければ幸いです。

最後になりますが、本日の朝日新聞夕刊の一面(東京版・大阪版とも)に私のコメントが掲載されていますので、その部分だけ引用させていただきます。

(内部通報制度に詳しい山口利昭弁護士の話)「内部通報制度は、パワハラなど労務上の問題については比較的機能しているが、重大な企業不正についてほとんど機能していない。制度があっても、社員の人たちがそれを信頼しておらず、通報したら報復にあうのではないかと疑い、萎縮しているからだ。まずは企業自身が、制度を機能させることにメリットがあると理解し、制度に対する社員の信頼を高めていくことが必要だ。」

もちろん委員の皆様の中には「内部通報制度が機能するというのは幻想にすぎない。マスコミや監督官庁のような第三者に情報を提供する内部告発者を保護することこそが企業不正撲滅には有効だ」と主張される方もいらっしゃいます。ただ私自身としては、内部通報制度を整備することが、社会の流れからみて企業にも大きなメリットがあることを、今後も広報していきたいと思います。消費者庁のみなさま、(ワーキンググループメンバーを含めた)委員のみなさま、いろいろとありがとうございました。

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2016年6月15日 (水)

公益通報者保護法実効性検討会WGのご報告

公益通報者保護法の法改正に向けた消費者庁の検討会WG(ワーキンググループ)の会合も今回が3回目となります。いよいよ、「公益通報事実」を広げるべきかどうか、公益通報者が会社から不利益取扱いを受けた場合の罰則をどうするか(行政措置のほか、刑事罰を設けるべきか)といった検討事項に入ってまいりました。傍聴にお越しの方はおわかりのとおり、このWGの議論は「予定調和」的な雰囲気はないですね。予想外の意見が予想外の委員から飛び出すこともありますね(おまえだろ!と言わないでくださいね・・・)

国民の生命、身体、財産の安全を確保するための法律への違反に限るのか?国益を保護する法律違反は含めないのか(たとえば世間で話題の政治資金規正法など、はたして公益通報事実に入るのか、入らないのか?もし入らないのであれば、入るような法律に改正すべきなのか-でもすでに刑法は入っていますし・・・)、法律違反に刑事罰が入っているものに限定する理由はあるのか?「法律」だけでなく「条例」で刑事罰が規定されているものは含めるべきかどうか?、あまり公益通報の範囲を広げすぎると、今度は刑事罰の前提となる不利益処分者の予見可能性が乏しくなり、憲法違反(罪刑法定主義)になるのではないか?・・・いろいろな課題が浮上します。

当ブログでコメントをいただいている方々の意見と同じ意見や、ちょっと違う意見等、私なりに発言をさせていただきましたが、またご興味のある方は(近々公開されます)議事録をご参照ください。今日は宇賀座長(東大教授)と升田委員(副座長-中央大教授)とのご議論もありましたが、座長も個人的なご発言をされるようになって、盛り上がりますね。みんな意見は違いますが、公益通報者保護法が消費者の利益にどうしたらつながるか・・・、最終目的に向けた気持ちの強さは同じだと思います。それにしても毎回、傍聴希望者の方は多いですね。

法律内部における条文間での整合性、他の法律との整合性への配慮、裁判例との関係整理、労働法や会社法、訴訟法実務とのバランス考慮、外国法の運用に関する分析、適切な立法事実の検証等、作業を進めてみると「法改正が必要」といった漠然とした希望だけではとても法改正に結び付かないことを痛切に感じます。ひとつひとつ、丁寧にクリアする作業がどうしても必要でして、当ブログのように勝手な自説を言い放つだけでは問題は解決しませんね(^^:こんな私でもなんとか国民生活のお役に立ちたい!企業のコンプライアンス経営を支援したい!という気持ちで、8月下旬くらいまで続く作業に携わってまいりたい所存です(また皆様方のお知恵をお貸しください)。

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2016年5月10日 (火)

下請従業員による不正告発と東亜建設社の自浄能力評価

内部通報指針が今夏にも改正される、との特集記事が日経法務インサイド(5月9日朝刊)で報じられていましたが、指針(ガイドライン)だけでなく、法改正によらなければ大企業の不正は明らかにならないのではないか・・・と考えさせる事件がまた発生しています。すでにご承知のとおり、5月6日、東証一部のゼネコン東亜建設工業さんは、羽田空港C滑走路の地盤改良工事で、液状化を防ぐ薬液の注入量データを改ざんして、設計どおりに完成したと虚偽の報告を行ったことを発表しました。二代にわたる東京支店長の方々が、「新開発工法による耐震工事に失敗は許されない」との社内論理を最優先して現場に偽装を指示していたとのこと(おふたりの人事更迭に関しては同社HPにて公表されています)。

ところで日経新聞ニュース他によると、この工事偽装が発覚した原因は、先月(4月)、二次下請業者が一次下請業者を通じて東亜建設さんに通報したことだそうで、4月21日には社長、25日には経営会議に報告されたそうです。一次下請業者による東亜建設さんの建設業法違反事実の(下請け事業者への)通報は、いわゆる公益通報者保護法上の公益通報にあたるものとして、通報者は一次下請会社から不利益処分を受けないことになっています。しかし、東亜建設さんが(通報を契機に)一次下請会社との契約を解消することは一切同法の関与しないことになっていますので、実際には(契約解消を覚悟の上で)二次下請業者の従業員の方が内部告発や内部通報に出ることはかなり勇気のいることだと思います。

公益通報者保護法は、事業者と従業員(労働者)との労務契約上の関係保護が原則であり、事業者間の契約関係には踏み込めません。これは民法上の契約自由の原則に国家権力が立ち入ることは不当な民事介入に該当するからです。しかしながら、下請法のように特別な社会政策的立法が存在すれば合理的な範囲で制限することも可能です。東亜建設さんの件は、(組織の強みからか)本体の社員は一切不正を社外に漏洩することはなかったので、おそらく下請業者さんの通報がなければ、国交省も国民も、とんでもない不正工事の隠ぺいの事実を知ることはできなかったものと思います。そのような意味では、取引先事業者も(発注会社との関係において)公益通報者に含め、一定の場合には民間取引の効力制限に国家が関与すべき例外を認めるべきではないでしょうか。

なお、最近のゼネコンさんは、今朝の日経新聞でも取り上げられていた内部通報者保護規程(ヘルプライン)において、取引業者従業員の方にも通報を認めているケースが増えてきましたので(ホームページ等で紹介されている会社も多いようです)、ひょっとすると東亜建設さんのヘルプライン規程に則って下請業者さんが内部通報をされたのかもしれません。もし、そのような経緯で経営陣が関与する偽装工事やその隠ぺいの事実が発覚、公表に至ったのであれば、それはそれで(ヘルプラインが機能したことになり)東亜建設さんの自浄作用が発揮されたと評価できる可能性もあります。本日の東亜建設さんの株価は不正の範囲の広がりが懸念されて急落していますが、不正発覚の経緯が調査委員会等による事実解明で明らかになれば、同社の自浄能力の有無に関する評価も可能になろうかと思います。

上記東亜建設さんの事件だけでなく、東芝さんや三菱自動車さんの件等、大きな企業不祥事が発生(発覚)するたびに、識者の方から「最後はトップのコンプライアンス意識」「経営トップの率先垂範が大切」と指摘されますが、私、最近の不正調査の経験等から「ちょっと違うのではないか」と感じているところです。経営トップの遵法精神は必要条件ではあっても十分条件にはならないですね。上記のようなフレーズは、もはや流行のキャッチフレーズ化してしまい、組織に思考停止をもたらし、本当の原因究明や再発防止策の実効性を妨げているように思います。そのあたりはまたセミナー等で詳細にお話したいと考えているところです。

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2016年4月28日 (木)

公益通報者保護制度WG第1回会合が開催されました

傍聴されておられた公益通報者さんからすでにコメントいただいておりますが、本日(4月28日)、消費者庁にて「公益通報者保護制度実効性検討委員会ワーキンググループ」の第1回会合が開催されました。東大の宇賀克也先生が座長に選任され、1回目は公益通報者の範囲を法律改正で拡大すべきかどうか、具体的に退職者、会社役員、取引事業者等を公益通報者に含めるべきかどうか検討いたしました。法律家委員が中心となる検討会でしたが(ご意見番の升田先生は他の委員会と重なりご欠席)、積極的な議論が交わされて私もおもしろかったです。板東長官も最後まで熱心に審議を見守っておられましたね。

議論の中身はまた正式な議事録が公表されますのでここでは控えますが、東大の田中亘先生や佐伯仁志先生にいろいろとお話が聴けたのは有意義でした(佐伯先生には終了後、会社法上の罰則規定や組織罰について質問させていただきました)。役員は公益通報者たりうるか・・・という議論の中で、(公益通報者さんもコメントで触れておられますが)田中教授の「取締役の職責」に関する考え方(利益追及と公益性確保の優先順位)はなかなか説得力がありました。私は現実の企業社会においては役員にも公益通報者としての地位を確保する必要性が高いとは思いますが、理屈の上でどう現行法の延長線上で認めてよいものか、いまひとつ合理的な説明ができないように思い、その旨発言させていただきました。

ところで昨日は日銀主催の金融機関向けセミナーにご招待いただき、慶應大学の池尾和人先生と初めてお会いしましたが、池尾先生の講演をお聴きした印象はジャパネットタカタの高田元社長によく似た話し方をされる人だなぁと(いや、そっくりかも)。話に熱が入ると声が急に高くなる(声が裏返る?)・・・ということなのでしょうかね。講演を拝聴したり、直接質問をさせていただき、ガバナンス・コードに関する新たな気付きをたくさんいただきました。金融庁CG・SCフォローアップ会議のメンバーでいらっしゃるエゴンゼンダーの佃社長のお話も、取締役会実効性評価についての基本的な考え方をお聴きできてとっても得した気分です。やっぱり策定に携わった方々の話を直接お聴きすることは有意義ですね。

さて、いよいよゴールデンウィークとなりますが、私は本業に専念させていただくため(関係者の方々からは「あたりまえだろ!」「ブログ書いてる場合じゃないだろ!」と言われそうですので)、5月9日ころまではブログ更新をお休みさせていただこうかと思っております(ひょっとしたら5月初めに一回だけ更新するかもしれませんが・・・)。みなさま、良い連休をお過ごしくださいませ。

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