2021年2月10日 (水)

企業統治改革-社外取締役の「数合わせ」にはそれなりの意味(理由)がある

ときどき同じような趣旨の記事が掲載されているようにも思いますが、本日(2月9日)も日経朝刊「一目均衡」に「社外取 本質かすむ『数合わせ』」と題する証券部次長さんの意見が示されていました。3年ぶりに改訂されるコーポレートガバナンス・コードでは(プライム市場に上場予定の企業には)独立社外取締役が3分の1以上の役員構成比となることが要求されますが、これで果たして企業価値は上がるのだろうか・・・という論調です。肯定派と反対派との溝はますます深まっているそうです。

ガバナンス改革の趣旨をよくわからずに就任してしまう社外取締役の方がいらっしゃるというのもその通りですし、「希望報酬額が安いほうから5人紹介してね」と某協会にリスト開示を要望している某東証1部企業があることも知っております。ホント「アルバイト感覚」「なんちゃってガバナンス」といった実例をみますと期待と現実のギャップは埋められず、証券部次長の方がおっしゃるように「数合わせ」と言われてもしかたないのかもしれません。

「社外取締役を3分の1」「多様性に配慮した3名以上」といった要件を満たすことが企業価値の向上に役立つのかどうかは、もはや「因果関係」では議論はできず、統計学上の「相関関係」(仮説→検証)で議論せざるを得ないでしょう。ただ、それでも私は社外取締役の「数合わせ」には、とりわけ日本企業の取締役会を眺めた場合にはそれなりの合理的な意味があると考えます。

先日来、東京オリ・パラ組織委員会会長の差別発言が話題になっていますが、当該会長だけでなく、他の組織委員や評議員に対しても、発言の訂正を求めることができなかったことに批判が集まっています。同調圧力、忖度、承認欲求、成功体験によって、構成メンバーから発言訂正や辞任要求が出したくても出せない、というのは取締役会でも同様です。

上記「一目均衡」の記事のコメントとして、日本投資顧問業協会会長さんが(社外取締役に対して)「批評家然とせず、企業価値の向上に責任を持つ社外役員がもっと必要だ」と述べておられますが、批評家然とせず、価値向上に責任を持つためには、社外取締役の意見がきちんと役員会で通る可能性のある環境が必要です。私はそのためには10人の取締役のうち、3人は社外取締役が必要と考えます。2019年11月に現役の社外取締役の方々に登壇いただいた日本コーポレートガバナンス・ネットワークのシンポでも、「2人と3人では全然違う」というのが登壇者の意見でした。

たしかに、従来から異論を述べる社外取締役はいらっしゃいました。ただ、マネジメントボード(アドバイザリーボード)の時代における1人の社外役員の異論だと、社長(議長)から「貴重なご意見を承りました。今後の経営の参考にいたしますので、今回はどうかご理解を」で終わり。社内の取締役・監査役の皆様の「同調圧力の岩盤」は到底崩れません。

しかしモニタリングボードの時代における社外取締役3人の異論となると(10分の3)、社内取締役にも反対意見を述べる雰囲気が醸成され、多数決をとるまでもなく議案は取り下げられるケースが多いと思います。さらに、社外3人から社長の辞任要求があれば、社内取締役にも「忖度」「同調圧力」の呪縛が解けるおそれが生じるため、社長は退任を検討せざるを得ない状況に追い込まれます。つまり「企業価値に責任を持つ」ためには、「多数決」というしこりを残すことなく社外役員の要望が役員会で通る(同調圧力を排除した)環境を形成する必要がある、ということです。

ただ、独立社外取締役が3人以上いたとしても、けっして同じ意見でまとまるわけではありません。最大の問題は「この会社の社外取締役さんは、誰の紹介で候補者になったのか」という点です。「経営者団体での社長のお知り合い」ということでは、もはや上記のような対応は期待できないですよね。したがって、機関投資家の方々が社外取締役と対話をすることがあれば、まず最初に「あなたは誰の紹介で候補者になったのか」と質問することです。このひとつの質問に対する回答によって、その会社のガバナンスへの思いが伝わるものと考えます。

上記オリ・パラ組織委員会会長の発言問題では、同組織委員会には「わきまえた委員」が多数おられるそうですが、では日本の上場会社にとって「わきまえた社外取締役」はいったいどんなイメージなのか、そもそもガバナンス改革が求めるのは「わきまえた社外取締役」なのか、ぜひ有識者の方々にお聴きしてみたいものです。

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2021年1月 7日 (木)

サクセッション・プラン(後継者育成計画)の「もうひとつの役割」について

1月7日より首都圏では緊急事態宣言が発令されるようで、関西でも首都圏への移動自粛要請が強まる気配です(大阪もかなり厳しい状況ですが)。すでに報じられているとおり、飲食店への行政指導(時短要請、休業要請)が改正政令の施行によって行われるそうですし、また特措法の改正によって飲食店への行政処分(指示、命令、公表、罰則)も可能となるようです。

しかし、そうなると要請に反して営業を続けている飲食店への行政指導、行政処分を発動するよう、市民(誰でも可)が法的根拠に基づいて申請するような事態にならないでしょうか(行政手続法36条の3、東京都行政手続条例36条等-行政法は詳しくありませんが、たぶん「適用除外例」には該当しないはず)。

「あの店舗は午後8時を超えて営業しており、お客さんがたくさん来ている。周辺にコロナによる感染のリスクが高まっているので指示、命令を発出せよ、もしくは市民が近づかないように店名を公表せよ」といった(行政権限の発動請求の)申請です。実際に指導もしくは処分を行うかどうかは別として、申請を受けた行政機関には調査義務が発生しますから、申請を放置していると行政機関(主に地方自治体)の不作為は違法行為となります。本当にそんな調査ができるほど人的資源が豊富なのでしょうか。うーーん、ナゾです。(以下本題です)

さて、最近、いくつかの上場会社のご相談とその実践結果において「なるほど、サクセッション・プラン(後継者育成計画)というのはこのような効用があるのか・・・」と納得したことがありました。もうすぐ公表される「コーポレートガバナンス・コード改訂2021」の検討会でも「企業変革」の一環としてCEOの選解任強化が謳われており、サクセッション・プランの策定は、取締役会改革の中核的な課題といえるでしょう。

もちろんサクセッション・プランの目的は「後継者候補を計画的に育成して、企業の存続リスクを軽減しながら持続的成長を図ること」にあります。オムロン、花王、りそな銀行等、すでに立派な計画を策定・開示しておられる企業もあり、VUCAの時代にふさわしい優秀な後継者を選定するためにも真剣に導入を検討しておられる会社も多いのではないでしょうか。

ただ、少し趣旨は異なりますが、長年経営トップに君臨している経営者に交代していただくための「きっかけ」としてサクセッション・プランを活用する、ということも同プランのひとつの役割ではないかと。もちろんガバナンス改革の理想からすれば、複数の社外取締役を中心とした指名諮問委員会が「あなたはもう当社のトップとしてふさわしくないので退任してください」と印籠を渡す(拒否すれば解任する)ことが求められています。しかし、実際にはトップを前にすると言い出せないわけでして、社長(会長)自身が交代時期と後継者を決める、ということが暗黙の了解になっている会社が多いと思います。

そこで「当社でも『サクセッション・プラン』を導入しましょう」と提案をして、さりげなく「あと2年ほどで交代してはいかがでしょうか」「交代後は経営に口出しできないシステムになりますが、よろしいでしょうか」といったシグナルを(暗に?)出してみることが考えられます。これであれば、いままでの社長(会長)の功労に傷をつけることもなく、また突然の退任要求とは異なりますので、社長(会長)の人脈や社内外におけるOBとしての役割を、そのまま無形資産として残しておくことも可能になります。

また、サクセッション・プランが策定されたことが社内的にも周知されれば、それこそ後継CEO候補者や役員候補者と目される人たちが育つ土壌が生まれるわけでして、指名諮問委員会としても活動が深化することになります(ただし社内において強烈な派閥争いが存在する場合には、「誰の企画なのか」と詮索されて逆効果になることもありますので、そこは上手に根回しをする必要があります)。

阪大ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を務めていたころ、同じく社外取締役を務めておられたNTTドコモの元社長さんから「山口さん、社長は業績が絶好調のときに交代しないとダメ。傾きだしてからじゃ未練を残すから」とよく聞かされました。アフターコロナなのかウィズコロナなのかはわかりませんが、以前にもましてかじ取りが難しい経営環境にありますので、サクセッション・プラン導入への拒絶反応も薄れてきたのかもしれません。計画の実践には様々な困難が伴うかもしれませんが、まず「導入ありき」で検討してみることも一考かと。

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2020年12月30日 (水)

皆様、良いお年をお迎えください

コメント欄にがばこさんもお書きになっていますが、プラスチック成型大手の天馬社で、また大きな動きがあったようです。28日の適時開示によると、監査等委員会が、外国公務員贈賄事件発覚時において不適切な行動があったとして前取締役ら6名を被告として損害賠償請求訴訟を提起したそうです(提訴は25日付け)。

4月に公表された第三者委員会報告書をもとに、監査等委員会(社外取締役4名によって構成されています)が提訴を決定した、とのこと。当ブログでも何度かご紹介したとおり、天馬社では社内でいろいろと騒動が発生しましたが、いずれの側の取締役さんも被告になっていますね。昨日のエントリーで「監査役の影が薄くなっているのでは」と書きましたが、気骨のある監査等委員の方々はいらっしゃるものです。

開示情報からは明らかではありませんが、天馬社には社外取締役さんが6名いらっしゃいますので、残る2名の社外取締役の方々が、この訴訟提起に対してどのようなスタンスで臨んでおられるのか、とても興味があります。たしか第三者委員会報告書の開示にも時間を要していましたが、この訴訟提起に関する開示については問題は発生しなかったのでしょうか。社外取締役に期待される役割がいろいろと議論されていますが、抽象論ではなく、こういった現実に発生した事態において、(監査等委員ではない)独立社外取締役がどのような行動に出るべきなのか、個別企業の経営環境を念頭に議論することは、他社においても大切だと思います。

さて、(天馬社の件はまた来年続編を書かせていただくとして)今年もお世話になりました。第三者委員会委員長として多忙を極めた1月と9月、10月はほとんどブログを更新できませんでしたが、また来年もマイペースでブログを更新していきたいと思います。首都圏ではコロナ感染がますます広がっています。どうか感染にご留意いただき、年末年始を健やかにお過ごしくださいませ。来年もどうか拙ブログをよろしくお願いいたします。弁護士 山口利昭

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2020年11月20日 (金)

「日本版議決権行使助言会社」はなぜ誕生しないのか?

東京で予定されていた仕事が次々とキャンセル(延期)となっておりまして、また「緊急事態宣言状態」に戻りつつあります。仲間内での忘年会もむずかしそうな感じになってきましたね。

企業統治改革が進み、とりわけ機関投資家の受託者責任(スチュワードシップ)に光が当たる中で、日本においても俄然ISSやグラスルイスといった議決権行使助言会社の存在に注目が集まりました。今朝の日経新聞9面では、代表的な議決権行使助言会社であるISSがドイツ取引所に買収される(株式の80%をドイツ取引所が取得する)と報じられており、素直に驚きました。

取引所ビジネスの在り方にも驚きましたが、私の「素人考え」では、ISSは中立公正な立場で議決権行使助言を行う事業であるものの、厳しい規制もなく(?)、意外にあっさりと株式売買の対象になってしまうという点です。ISSの保有するデータの利活用が買収の目的であり、議決権行使助言業務には関与しない(組織内にチャイニーズウォールを築く、ということ?)なのでしょうか。

しかし取引所のビジネスとして議決権行使助言会社を傘下に置ける、というのであれば、日本取引所も和製の議決権行使助言会社を作ればよいのではないでしょうか。海外でもローカルの中小規模の議決権行使助言会社があるように聞いたことがありますが、機関投資家の費用対効果に見合うような議決権行使助言業務を手掛ける組織を日本でも育成できるのではないかと。

ひょっとすると、すでにそのような取組みは進んでいるのかもしれません(私が単に情報に疎いだけかも・・・・(*´Д`))。日本企業も本腰をあげてESGに取組む状況がこれからも進むのであれば、ビッグデータの収集も含めて議決権行使の推奨を真剣に判断する事業が日本製で生まれても不思議はないように思います(ISSやグラスルイスの寡占状態に風穴を開けることが、議決権行使助言業務全体の質の向上にもつながるのではないでしょうか)。

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2020年8月 7日 (金)

ISS議決権行使基準の厳格化方針と経産省「社外取締役実務指針」

8月5日にリリースされた大和総研リサーチ「ISSが議決権行使の厳格化を検討、意見募集」によりますと、議決権行使助言最大手のISSが、日本の上場会社向けのローカルルールにおいて、上場会社に対して厳しい基準改訂を検討しておられるそうです。機関投資家向けに意見募集を行っている、とのこと。

上記リサーチによると①監査役(会)設置会社における社外取締役の比率が3分の1以上でないと経営トップの再任に反対、②大規模な政策保有株式を保有する会社の経営陣の再任に反対、③取締役会構成員の属性に関する事項への関心、というもの。なかでも研究員の方もおっしゃるとおり、すでに社外監査役が2名以上存在する上場会社において、さらに3分の1以上の社外取締役を選任せよ、というのは現実的に相当に厳しい基準です。

しかも7月31日にリリースされた経産省CGS研究会「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」は、令和元年会社法改正において(公開会社に)社外取締役の設置を義務付けた趣旨を十分に汲んだ内容であり、「社外取締役を導入することで企業価値が向上するかどうかはともかく、投資家や資本市場からの信頼を高めるために社外取締役の選任は必須」ということで、投資家が期待する社外取締役の在り方を追求するものです。

したがって、上記経産省「社外取締役ガイドライン」に求められる役割を果たす社外取締役を「3分の1以上の比率」で取締役会構成員として選任せよ、となれば、これは上場会社にとって相当高いハードルになります。このうえで、ISSの関心事項とされる(1)ジェンダーダイバーシティ(女性役員の選任)、(2)取締役の兼任制限、(3)在職期間(8年から10年)という基準を導入するとなれば、上場会社としては「どないせーっちゅうねん!」となる予感がいたします。

今年の定時株主総会の動向などをみておりましても(先日の東芝でもそうでしたが)、日本では議決権行使助言会社の影響力はますます高まっているものと思われます(機関投資家の議決権行使結果・理由の開示制度が運用されるようになって、さらに強まったのではないかと)。日本版スチュワードシップ・コード改訂版(2020年3月24日公表)は、このような議決権行使助言会社の影響力に配慮した原則8を策定しましたが、私的にはこの原則がそれほど助言会社の影響力を制限するようには思えません。

ということで、上場会社の今後の対策としては、厳格化される議決権行使基準を真摯に受け止めるか、もしくは基準に従わない理由を「建設的な対話」によって機関投資家に説明して回るか(開示も含めて)、今後検討を要することになるのでしょうね。「社外取締役選任基準」とは別に、最近は「社外取締役行動規範」を策定する上場会社も散見されますが、こういった「行動規範」をきちんと策定して自社の態度を明確にすることもひとつの対策になるかもしれません。

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2020年7月28日 (火)

かんぽ生命不適切販売事件に学ぶ-社外役員(社外取締役・監査役)を後押しするセカンドオピニオンの必要性

本日(7月27日)の朝日新聞デジタルの有料版記事「『金融庁の逆恨みだ』かんぽ経営陣が逃した3度の機会」は、永くかんぽ生命不適切販売事件を追ってきた藤田記者の渾身の記事であり、何度も読み返しました(第三者委員会による追加報告書をもとに、取材された内容だそうです)。

不正販売問題が報告され始めた2016年11月に「幻の不正防止策」と言われた対策案が作成された時期、2018年4月にNHKクローズアップ現代で「かんぽ不正問題」がスクープされた時期、そして同年11月、金融庁から調査要請がなされた時期と、日本郵政グループは、経営陣が自主的に全容調査を行うことができた機会が3度ありましたが、経営陣は全容解明には動かなかった。ではなぜ自主的な対応ができなかったのか、とても考えさせられます。

こういった事件では、どうしても「後出しジャンケン」によって責任追及をしたくなります。そうではなく、当時の状況を冷徹に再現したうえで、たとえ周囲が「たいしたことではない」とか「すでに一生懸命やっているから様子を見ようではないか」といった意見が多数を占めていたとしても、「いや、この程度では済まない、もっと広範囲の調査が必要」と言い出せるかどうか。

空気を読まずに積極的な意見を述べることができるのは社外取締役さん、社外監査役さんくらいかもしれませんが、7月21日の読売新聞朝刊(経済面)にも記載のとおり、かんぽ生命の社外取締役の方々は情報を共有していなかったので、機能不全に陥っていたそうです(ちなみに本日の日経夕刊1面記事「監査役会、昨年度は平均14回開催 内閣府令改正で開示」という記事によると、日本郵政の監査委員会は昨年28回も委員会を開催したそうです)。

しかし、いくら情報共有ができなかったとしても、さすがにNHKのクロ現のスクープを、社外役員の方々が「知らなかった」ということはなかったはず。いわば「情報共有」の端緒は存在していたわけですから、問題は社外役員自身がどこまで積極的に情報収集をしたのか、という点も問題視してよいのではないでしょうか。ただ、丸腰で社内の取締役さんに「不正疑惑に関する判明事実を教えよ」と言っても、やはり問題の核心に迫れるような情報を入手することは困難です。したがって、社外役員さんのためには「コンダクト・ルール(顧客本位の企業姿勢)」で物事を考えることを支援するセカンドオピニオンが必要ではないでしょうか。

会社の顧問弁護士さんは、どうしても会社もしくは経営陣に有利な法的支援サービスを提供する傾向があります(もちろん、中立公正な意見を述べる方もいらっしゃるかもしれませんので、あくまでも「傾向」と言っておきます)。「会社の活動は、顧客の視点からはどう見えるか」といった立場でのセカンドオピニオンこそ、社外役員の勇気ある行動を実現させるためには必要だと思います。

もちろん社外役員だって無為に会社と揉めたくありません。「社内の役員との関係を良好に保ちたい」といった「ヤワ」な気持ちからか、どうしても社内の空気を読みたくなるかもしれませんが、自身の抱いた違和感が独りよがりのものなのか、それともやはり専門家の立場からも違和感を抱かれるのか、このあたりの判断を手助けしてくれる外部のアドバイザーがいれば、社外役員も自信を持って(自ら必要と判断する)情報提供を要求できるはずです。

今朝の日経朝刊「経済教室」では、私が懇意にしている山田仁一郎教授(大阪市立大学)の「社外取締役制度の課題㊦ 多様化だけでは機能せず」と題する論稿が掲載され、海外でのガバナンス研究も豊富な山田教授による「日本企業における社外取締役制度」に対する厳しい指摘が印象的でした。ガバナンスを機能させるためには、社外取締役の数もあるが、差し違えるほどの真摯さをもって物を言う人物が関わっているかがカギではないか、との意見はまさに山田教授のおっしゃるとおりです。

ただ、社外役員に「差し違えるほどの真摯さ」を持つだけの自信がどこから生まれるのか。それはひょっとしたら「世間知らずのピエロの放言」「独りよがりの成功体験」となり、企業価値を毀損させてしまうことにならないのか。私自身も含めて、多くの社外役員経験者が思い悩むところだと思います。会社が顧客本位の経営姿勢を貫くために社外役員を有効に活用するためにも、ここをなんとかクリアする必要があると思うのです。

もうすぐ策定される経産省「社外取締役の在り方に関する実務指針(仮称)」でも提言されるかもしれませんが、

コンプライアンス対応の強化など、内部統制システムの構築・運用という「守りのガバナンス」においても、社内の常識にとらわれない視点を取り入れることが強く望まれる(仮案19頁より)

のであるならば、社外役員が会社費用をもってセカンドオピニオンを入手することは積極的に推奨されるはずです。もうそろそろ、社外役員(社外取締役、社外監査役)を支える専門家の存在がクローズアップされても良い時期に来ているのではないでしょうか。かんぽ生命・ゆうちょ銀行事例などを読んでおりますと、本当に社外役員を活用すること以外に経営陣を自律的な行動に誘導できる方法はないのでは、と考えてしまいます。

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2020年7月15日 (水)

今の東芝には「オオカミ少年」になれる取締役が必要ではないか

ここのところ、東京の企業さんからリモート形式での役員セミナー等のお問い合わせを受けることが増えました。打ち合わせもZoomやTeamsで行うのですが、なんとか担当者の方々ともコミュニケーションをとれそうなので、ウェブセミナー形式も前向きに対応したいと思います。また、ご用命がございましたらご連絡をお待ち申し上げております(以上、広報おわり・・)。

7月14日の日経朝刊13面に「東芝 エフィッシモに打診-法令順守の有識者会議に参加」との記事が掲載されています。当ブログでもご紹介したとおり、アクティビストファンドであるエフィッシモは、東芝のコンプライアンス経営が不十分として、3名の社外取締役の選任を株主提案しています。これに対して、東芝側は有識者会議を設置して(すでに内部統制やコンプライアンス経営に詳しい有識者の方々を選任していますが)、エフィッシモが推進する取締役候補者の方々に、こちらの会議体のメンバーとして迎え入れることを打診しているそうです。いわば東芝側からの和解的な提案かと思われます。

上記報道によれば、この提案についてエフィッシモ側は難色を示している、とこのと。有識者会議のメンバーも重要かもしれませんが、今の東芝にはコンプライアンス経営強化のための「独立取締役の選任が必要」と判断しているものと考えられます。なお、上記記事では「今後も(東芝とエフィッシモとの間で)水面下での調整が続く」とありますので、今後のエフィッシモ側の動向については、私は全く知る由もありません。また、私が尊敬申し上げる古田先生(元最高裁判事)と太田氏(私からみれば元日本監査役協会会長)によるインタビュー記事(こちらの東洋経済の会社側大反論)も、会社側の反対意見がよくわかるので、とても参考になります。

全くの野次馬である私からしますと、本件については、東芝が指名委員会等設置会社の機関形態をとること、最近、内部監査部門の大幅増員によって内部監査機能の強化を図ることを決定したこと、そしてグループ会社の不正リスク管理の在り方との関連で、取締役会の構成を検討する必要があると思います。監査役のいない、つまり取締役監査委員で構成された東芝の監査部門は、必然的に内部統制システムを活用した監査活動を中心とせざるを得ない。東芝に常勤社外監査委員の方がいらっしゃるとしても、理屈は同じかと思います。内部監査部門が大幅に強化されるわけですから(たとえ内部監査部門が社長直轄の部署だとしても)、監査委員会の権限強化のためにも内部監査部門との連携強化が望まれるところです。とりわけ今回はグループ会社で発生した不正事案なので、監査委員会の体制強化にも一理あるように思います。

ところで東芝は「指名委員会等設置会社」としての長い歴史を有する会社です。5年前の会計不正事件を契機として、少数だった社外取締役を大幅に増員して、モニタリングモデルとしての指名委員会等設置会社の強化を図ったものと思います。社外取締役にも、(会計不正事件時の第三者委員会報告書の提言を反映して)本当に立派な方が多いことは間違いない。ただ、内部監査部門が強化され、実質的に内部統制システムを活用する監査が充実するとなれば、「オオカミ少年」になりきれる人が取締役に必要ではないかと考えます。今まで東芝の役員には「オオカミ少年」になりきれる方がいらっしゃらなかったのではないか。エフィッシモ側の取締役候補者の方々には失礼な物言いで恐縮ですが「いざというときに、組織のために恥をかける人」「その言動から、能力面において誤解を受けることにも臆さない人」こそ、グループ会社を含めた経営管理に必要ではないか。「攻め」だけでなく「守り」の面でもリスクテイクできる人が必要ではないかと。

今朝の日経でも「空売り規制が粉飾事件の抑止を不全にした」といった事例が(一目均衡で)報じられていましたが、以前にも述べたようにエンロン事件の発端となったのも空売り専門の運用会社の(世間的にはかなり批判されていた)行動でした。今の東芝の取締役候補者は「正解を導く能力」に長けた人たちで構成されていますが、「現場情報から仮説を立てて、(たとえバカにされても)あるべき東芝の姿からみた問題を提案できる人」が不足しているように思えてなりません(これは関西電力の取締役候補者の方々にも共通しているように思いました)。

上記日経の記事で、東芝の取締役会議長の方が「コンプライアンス経営という意味では9割はやってきたつもりだが、まだ外からは信用されていない。不正会計以降の東芝の信用回復はまだ50パーセントくらいだろう」と回答されています。一番近くで東芝のガバナンスを理解している方からすれば「東芝のために役に立つ」という視点ではほぼ完成型なのかもしれませんが「東芝のガバナンスにとって意味がある」という視点ではまだまだ不足していると思います。ここに「信用回復という点では5割に映る」原因があるのではないでしょうか。まさに有識者会議の構成メンバーということだけでなく、増強された内部監査部門と連携して組織風土を変える可能性を世間に知らしめる社外取締役だからこそ「意味がある」のではないかと。

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2020年7月13日 (月)

上場会社の役員報酬はダブルチェックの時代が到来する(令和元年改正会社法)

7月12日の日経朝刊1面に「株で役員報酬 導入5割増しーJT・三井不動産など800社 株主視点の経営促す」との記事が掲載されています。今年6月末の時点で、自社の現物株を役員報酬として付与する企業が過去1年間で5割増え、上場企業全体の2割に達したそうです。コーポレートガバナンス・コードでも業績連動報酬の導入が推奨されていますが、コードを遵守する姿勢により、中長期的に株価を高める経営を行うよう役員に動機づける狙いがある、とのこと。

しかしソフトローだけでなく、ハードローの改正によって、さらに役員報酬制度は大きく変わります。当該記事の末尾にも記載されているとおり、役員報酬制度の改正は、このたびの令和元年改正会社法の改正の重要項目であり、実務に大きな影響を及ぼすものとされています。

上記記事で紹介されているような特定譲渡制限付き株式(リスクリクテッドストック、いわゆる「RS」と称されるもの)も、これまでは報酬総額の範囲内であれば、取締役会が自由に交付することができたわけですが、改正会社法のもとでは、株式や新株予約権の内容(上限と政令で定める事項、たとえば交付条件等)を株主総会が決めることになります。有価証券報告書だけでなく、事業報告でも「役員報酬等の決定方針に関する事項も開示されることになりますので、(役員報酬の総額が妥当かどうか、ということだけでなく)ようやく個々の役員の報酬が妥当なのかどうか、株主総会で議論される時代になります。

また、「役員報酬等の決定方針」の決定は、特定の取締役に委任することはできず、かならず取締役会で決定しなければなりません(主に上場会社である監査役会設置会社、監査等委員会設置会社)。個々の取締役の報酬決定を代表取締役に一任する(株主総会からみれば「再一任」になりますが)ことを決議することも可能ですが、そういった再一任するかどうか、報酬委員会があれば当該再一任にどのように関与するのか、といったことも「決定方針」として取締役会で決議することになります。とりわけ自社の現物株を役員報酬として付与することになれば、決定方針との関係で、そのような報酬を付与することが整合性があるのかどうかきちんと各取締役が理解したうえで、審議されることになるので、取締役会としての監督機能も発揮されることが期待されます。

実際のところ、金銭と現物株との比率(なぜ当該比率が短期ではなく長期的な成長のインセンティブとなりうるのか)、交付条件を判断するKPIとして、なぜ当該項目を選択したのか、業績ではなくESG経営の推進に寄与したことはどうやって判断するのか等、事前交付型のインセンティブ報酬はむずかしい判断を含みます。令和元年改正会社法の施行後は、株主から「当該プランに合理性があるかどうか」厳しくチェックされることになるので、その前提として実質的な議論が取締役会でなされる必要があります。監査等委員会設置会社の場合には、(個別の役員の報酬金額について意見形成義務を有する)取締役監査等委員の関与(判断過程)についても、株主から質問が来るでしょうね。

以前にも述べましたが、平成30年9月29日東京高裁判決(ユーシン社株主代表訴訟判決)は、役員報酬の決定過程や判断内容に明らかに不合理な点があれば、取締役の善管注意義務違反となりうることを明示しています。これは現行会社法のもとでの判断ですが、令和元年改正会社法のもとで、役員報酬の決定方針が決議され、また現物株を報酬とすることの相当な理由(業績連動報酬を採用することの相当な理由)が総会で示されるようになれば、さらに善管注意義務を尽くすべき範囲も広がるものと思われます。ということで、今回の会社法改正(施行はおおむね2021年5月ころ)によって、上場会社の役員報酬の決定過程は株主総会の取締役会によるダブルチェックのもとで、実務は大きく変わるものと予想しています。

経営陣にとって一番触れてほしくないのが「社長人事、役員報酬、株式持ち合い」ですが、社外取締役の活動自体を機関投資家が監視するような制度運用がなされるとなれば、もはやタブーとされる領域はどんどんなくなっていくのかもしれませんね(逆に取締役会の監視機能が高まることによって、皮肉にも「報酬諮問委員会」自体が経営者の隠れ蓑になってしまう、というおそれもありそうな気がいたします・・・「私の報酬は報酬委員会からお墨付きをもらっているのだから」といった言い訳が増えそうな気がします)

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2020年7月 2日 (木)

社外取締役の業務執行-外部からの評価基準となりうるか

このところのタイガースの戦いぶりをみていて「例年通りに開幕していたら、阪急阪神ホールディングスの株主総会は大荒れになっていたのではないか。藤浪のコロナ騒動どころではモノ言う株主は収まらなかったのではないか」と思わざるを得ません。東京ドームでさえ、半分は阪神ファンで埋まるわけですが、このチームは本当にファンのリアル観戦がなければ闘えないのではないか・・・と。あまりのふがいなさに言葉もありません💢

今週号の東洋経済(2020年7月4日号)では「なぜ取締役会に出席しない?-会社側の苦しい『言い訳』」と題する記事で、社外取締役・社外監査役(取締役監査等委員含む)の出席率ワーストランキング表が実名にて掲載されています(かなり厳しい記事ですね。。💦)。取締役会に3分の2は出席していてもランキング表に掲載されてしまうのですから、やはり最低でも(?)75%は出席しておかないとマズイのでしょうね。「そもそも忙しくて出席できないんだったら、早く辞めればいいじゃん」と言われたら、たしかにそうとしか言いようがありません。💧

ただ、私、比較的小さな上場会社のお手伝いをすることが多いこともあり、この表にランクイン(?)しておられる何名かの社外役員さんを存じ上げています。たしかに取締役会への出席率は悪いのかもしれませんが、中小の上場会社であるために、①指名・報酬委員会では中心的な役割を担っていたり、②内部通報の窓口を担当していたり、③大規模第三者割当における独立委員やM&A時の特別調査委員会委員をされていたり、④M&Aの相手方を見つけるために自らの人脈を辿って交渉にあたっている姿をお見かけします。かなりお安い報酬で「リスクを承知でここまでやるって、本当に頭が下がるな・・」と感心することもあります。

そういった方は、月1回取締役会に出席しておられる方よりも、ずいぶんと多くの時間と労力を当該会社のために費やしているわけです。この6年間で企業統治改革が進み、任意の委員会の構成員を含め、社外役員の担うべき役割が増加する傾向のなかで、社外役員の活動は取締役会の出席率だけでは到底評価できない状況に至りました。ただ、上記東洋経済の記事にもあるように、ほかの評価基準が存在しないのも事実であります。ちなみに「取締役会に出席せずして情報など得られるわけがない」とのご意見もありますが、社外役員が業務執行に関わることができれば必要な情報は執行担当者から入手できます。

その「社外役員の業務執行」についてでありますが、令和元年改正会社法348条の2は、株式会社が社外取締役を置いている場合において、(たとえば取締役会設置会社のケースでは)一定の条件のもとで会社の業務執行を社外取締役に委託することを認めています。会社法に詳しい方はご承知のとおり、この規定は「セーフハーバー・ルール」を定めたものであり、決して改正会社法348条の2で定めた場合以外には社外役員が業務執行に関与することができない、というわけではありません。

ところで「社外取締役を有効活用せよ」ということで、明文をもって社外取締役も業務執行ができる(正確には会社法2条15号イに記載された業務執行にはあたらない業務なら執行できる)、とされたわけですから、たとえば事業報告の「社外取締役の活動状況」によって、改正会社法348条の2によって委託された業務、その他、業務執行取締役の指揮命令系統に属さないために関与した業務の内容の概要を開示すればよいのではないでしょうか(委託された事案まで記載する必要はないと思うので、とくに会社のインサイダー情報が外部に漏れる、ということにもならないと思います)。企業統治改革の進展状況を、そのまま開示情報に反映させればよいのでは、と。

社外役員の職務の独立性については、多くの機関投資家が重視することは事実ですが、むしろ社外役員が関わった業務執行を明らかにして、その執行状況等が業務執行取締役の指揮監督下で行われたものではないことを開示したほうが、職務の独立性をアピールすることになるように思います。

なお、当ブログでは以前から何度も申し上げているとおり、会社法上の「社外取締役」ではない(東証にも独立役員として届出をしない)「社外取締役」さんもいらっしゃることを付言いたします。大手企業の社長経験者で、「俺は業務執行をやらせてもらうなら非常勤取締役になってもいいぞ」という方もいらっしゃるわけで、最初から非常勤業務執行取締役として活躍されています。リスクを共有する社外取締役なので(指揮監督される)社長・会長にもきわめて厳しい意見・提言をされます。攻めのガバナンスにも、守りのガバナンスにも、本当に役に立つ社外取締役さんというのは、そもそもオモテからはよくわからない「非常勤業務執行取締役」さんではないかな・・・・と思ったりもします。

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2020年6月22日 (月)

任意の指名・報酬委員会の実効性と取締役会の付議案件との関連性

昨日(6月21日)の日経朝刊(総合1面)に、「任意の指名・報酬委 東証1部の5割超が設置-年1、2回半数、実効性課題」と題する記事が掲載されていました。東証1部の会社(監査役会設置会社、監査等委員会設置会社)のうち、任意の指名・報酬委員会を設置している会社は、指名委員会は52%、報酬委員会は55%に上るそうです。ただ、設置している企業の半数程度は開催頻度が年1回、2回程度ということで、本当に実効性があるのかどうか疑問も呈されている、とのこと。

上記記事において、デロイトトーマツのパートナーの方が「(指名・報酬委員会における議論は)形式的な議論にとどまっている可能性がある」と指摘しておられますが、私もかなり近い意見を持っております。一般的には(役員人事や報酬に関する)経営執行部が作成した原案が委員会に持ち込まれ、委員である社外取締役は、当該原案の作成プロセスの説明を受け、著しく不公正な点がない限りは、これを追認する、といった運用がなされています。プロセスチェックがなされていれば、一応監督機能が果たされている、と考えるのであればこれで良いのですが、株主・投資家が指名・報酬委員会に期待している点とは合致していないと思います。「形式的な議論にとどまっている」と指摘されるのは、こういった期待ギャップに原因があります。

指名・報酬委員会において「実質的な議論」が行われるためには、次のような要点を確認しておく必要があります。たとえば「誰が次期社長にふさわしいのか」という点を判断するのであれば、①5年後、10年後に会社が向かうべき道筋が明確になっていなければ、委員である社外取締役は自信をもって選べない、ということ、②指名委員会は、業務遂行能力だけでなく、監督能力も含めて評価を行うこと。「役員の誰にどれだけの報酬を付与することが適切なのか」という点を判断するのであれば、①役員報酬の決定方針の策定に社外取締役が関与していること、②業績連動報酬の方針が会社の事業戦略の方向性と合致していること。つまり、取締役会において、グループ会社を含めた重要な事業戦略がきちんと社外役員も含めて議論されていなければ、そもそも指名委員会も報酬委員会も実質的な議論はできない、ということです。

以前、私は「社外取締役が過半数を占めるような指名・報酬委員会で実質的な議論など無理。プロセスチェックだけ行っていれば善管注意義務を尽くしていると言えるのではないか。会社が有事に及んだ場面のみ、委員会が実質的な議論を果たせばよいのではないか。」と説明してきました。しかし、令和元年改正会社法においては(有価証券報告書提出会社に対して)社外取締役の一人以上の設置が義務付けられ、その条文の趣旨が

「わが国の資本市場が信頼される環境を整備し、上場会社等については、社外取締役による監督が保証されているというメッセージを内外に発信するため、会社法において、上場会社等には社外取締役を置くことを義務付けることとしている」-竹林俊憲ほか「令和元年改正会社法の解説(Ⅴ)」旬刊商事法務2226号7頁。

と正式に解説される現在、(社外取締役が中心メンバーとなる)任意の指名・報酬委員会の運用についても、株主・投資家の期待する役割を無視することができない状況に至ったと考えています。したがいまして、かつてはソフトロー(コーポレートガバナンス・コードや経産省実務指針)を理解したうえで、指名・報酬委員会はプロセスチェックに努めていればよかったのかもしれませんが、ハードロー(改正会社法)の趣旨を理解したうえで、構成委員としては実質的な議論をしなければならなくなった、と思い直しております。

たとえば私が報酬委員会委員長を務めたときの経験(ニッセンホールディングス社 2015年~2016年)や、令和元年改正会社法における報酬規制の改正の趣旨などを参考にして、報酬委員会で実質的な議論をしたと内外に説明するためには、①なぜ社長に報酬決定を再一任することが、当社にとっては妥当であると判断するのか、②なぜ、当社の役員報酬の決定方針をそのように定めたのか、現金報酬と株式報酬の比率はどうやって決まったのか、③なぜ当社では報酬総額をそのように定めたのか(今後、大幅な取締役の増員を予定しているのか)、④なぜそのKPIを、当社における業績連動報酬の判断に活用するのか、といったところは最低限度理解しておく必要がある、と考えています。

とりわけ、このたびの天馬社の事例などをみておりますと、監査等委員会設置会社に任意の指名・報酬委員会が設置される場合、有事には監査等委員会と指名・報酬委員会のどちらが人事・報酬の意見形成で主導権を握るべきなのか、かなり混乱を生じることが予想されます。平時から、そのあたりの社内指針を策定しておくほうが良いのかもしれませんね。

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