2022年5月11日 (水)

PEファンドとコーポレートガバナンス

まったく更新できておりませんが、備忘録程度にほんの一言だけ。

本日(5月10日)は東京の某研究会にて、ユニゾンキャピタルの代表取締役の方とお話ができました(ひさしぶりにインプットする機会が得られてよかったです)。なぜ最近、PEファンドがガバナンスに関心を持っているのか・・・という点が、お話をお聞きして納得できました。もちろんガバナンス3.0への関心ということもありますが、それ以前に長期的に企業価値を向上させるためには(多少高くついても)ガバナンスの整備と適正運用が不可欠というPEの考え方がよく理解できました。

また何かの機会にお話しできればと。しかし20年以上、リスクをとりながらハンズオンで企業と向き合ってきた人の話というのは、なかなか説得力があるなぁと感心いたしました。数値化による説得力とアートの両方のセンスが必要ですね。ちょっと私にはまねできないかも('◇')ゞ。

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2022年3月 8日 (火)

投資家派遣の社外取締役と、独立社外取締役とのコミュニケーション

本日(3月7日)の日経朝刊では「役員に投資家、統治強化へ 利益相反など課題に-米国発『ボード3.0』」なる見出しで、日本企業でも長期投資家を社外取締役に迎え、取締役会の情報収集力やアクティビストとの交渉力などを高める取り組み、いわゆる米国発の「ボード3.0」と呼ばれる動きが注目されていることが報じられています。最近、世間の流れに追いついていないので初めて知りましたが(^^;)、ボード3.0の考え方は、今年6月のCGSガイドラインの改訂に盛り込まれる可能性があるそうです。

私が世話人を務めております社外役員の自主研究会の会合(3月5日)でも、社外取締役間におけるコミュニケーションの在り方がテーマでして、「大株主から派遣されてきた社外取締役さんにはどこまで重要な議論に参加してもらうか」ということが問題になっておりました。これだけ取締役会に社外取締役が増えてきますと、重要案件の成否は社外取締役の議決権行使にかかってくるわけで、社外取締役間で取締役会直前に開催する「社外役員連絡会」の審議内容に、大株主から派遣されてきた方も加えてよいか、という問題です。

上記記事にもあるように、機関投資家等の大株主出身の方は一般株主との間で利益相反の関係になるので、フェアーディスクロージャールールに従って、社外役員間の協議にはご遠慮願うのが筋なのでしょうね。もちろん「私は監督者として職務を行うのであり、利益相反を疑われるような行動はしない」「会社側でチャイニーズウォールを敷いているから心配ご無用」との意見もあるかもしれません。しかし、今回のSMBC日興証券のように、プロ中のプロでもチャイニーズウォールに穴があくような事態もあるわけですから、ここは「外からどう見えるか」という判断基準で対応したほうが(少なくとも独立社外取締役の立場からは)無難のような気がします。

以前、私が社外取締役を務めておりました某上場会社では、大株主から派遣されていた社外取締役の方もおられましたが、このあたりはきちんと理解しておられて「本日は、私は社外役員連絡会には参加しないほうが良いと思いますので欠席します」と自ら申し出ておられました。「独立性」や「利益相反」という問題は、とても曖昧な概念なので、問題に直面した際の「気づき」が大切ではないかと思います。

ちなみに当ブログでは再三申し上げておりますが「非常勤取締役」のほうが企業価値向上には寄与すると私は思っております(業務執行を行う社外取締役、つまり会社法上の社外取締役ではない非常勤役員です)。「一緒にリスクを背負う社外役員」だからこそ社長は意見を尊重し、事実上の監督機能も果たせると思うのですが、あまり話題にならないですね(笑)

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2022年2月22日 (火)

人材価値の開示は本当に投資判断に資するものだろうか?

日経新聞2月19日朝刊に「人材価値の開示、投資判断を左右-日米欧、年内にも新基準」なる記事が掲載されており、上場会社には多様性、社内教育、離職率等の開示が求められるようになる、と報じられています。企業価値向上のためには無形資産に光を当てる必要があるということで「人材」の価値を評価する必要があるそうです。

私見ではありますが、「人材」は「能力」だけでは企業価値向上に結び付かないと思います。「能力」×「ヤル気」=パフォーマンスであり、「ヤル気」を出す組織がなければ「良い人材」であればあるほど「離職率」の高さに結び付くのではないかと。その「ヤル気」ですが、私は「人材」のネットワーク(「助けて」と言える環境)と当該企業の組織風土だと考えます。つまり、いずれも無形資産である「人材」「ネットワーク」「組織風土」が評価基準となることで、はじめて無形資産が投資判断を左右するものになると思います。

たとえば上記記事では、この夏にも情報開示に関する指針が公表される予定だそうで、「女性や外国人社員の比率」「中途採用者に関する情報」「リスキリング等の社員教育」「ハラスメント行為の防止策」などが開示対象になる見込みのようですが、外国人機関投資家が求める人材開示は「従業員の給与水準」「従業員教育のコスト」「事故件数」「離職率」といった他社比較が可能な基準であり(英国シュローダー社)、やや開示対象に違いがあります。

そもそも「人材価値」に投資家が注目しているのは、新型コロナや気候変動、地政学(経済安保)に象徴されるVUCA(不確実性)の時代における企業の経営環境適応力を知りたいわけですから、企業の持続的成長にとって「人材の多様性」を重視するか、「ヤル気を促すこと」を重視するか、そこは企業と投資家の対話によってすり合わせをしていくしかないと考えています。おそらく「人材価値の開示」はそのためのネタになるはずです。

ただ、本当に「人材価値」を開示するのであれば、まずは自社の現状認識からスタートしなければ説得力がないと思います。なぜハラスメントが多いのか、離職率が高いのか、理系大学生からの就職希望ランキングが低いのか。。。だからこそ、どのような人材を育成・採用したいのか、そのような施策として何をしているのか、といった流れがないとエンゲージメントのネタにもならないのではないかと。どこかの企業の「好事例集」が公表されて、これを参考に・・・といった(経営企画や人事部が忙しくなるだけの)流れになるのだけは避けたいですね。

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2022年2月14日 (月)

取締役会改革-社長の選解任・後継者計画の実践で「一番大切なこと」を考える

日本の上場会社において、2021年の改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応は、昨年末のガバナンス報告書の開示でほぼ完了したものと思います。大きな上場会社では、外部アドバイザーを交えて、取締役会の実効性評価を行っているところも多いようですが、気になっておりますのが指名諮問委員会(任意の委員会を含む)の実効性です。

社外取締役が過半数もしくはそれに近い構成となる指名諮問委員会が「社長の選解任」「サクセッションプラン」の中心的役割を占める、ということが「勇ましく」推奨されているわけですが、いざ実践するとなると難題にぶつかります。それは「社長に指名された人はいいけど、指名レースに敗れた人はどうなるの?」「指名レースに敗れた人に、何を言えばいいの?」という問題。

これまでの「なんちゃって指名委員会」であれば、社内慣行をなぞるだけでよかったので、社内に波風が立つこともなく、社外取締役にもストレスが溜まることはありませんでした。しかし「後継者育成計画」を立てて、社内候補を6人⇒3人⇒1人と絞るなかで、指名レースが行われるわけですから、当然のことながら「社長レースに敗れた人」が出てきます。「派閥の論理」や「鶴の一声」によってレースが終わればまだしも、指名諮問委員会の評価によって勝敗が決まるとなると、その敗者となった方にはどうナットクしてもらうのでしょうか。

海外では「経営者市場」がありますので、たとえ指名レースに敗れたとしても、他社のCEOとして活躍する場面もありますが、日本にはそのような市場はありません。かといって「指名レースに敗れた」ということがある程度知られた社内に残ったとしてもモチベーションは上がらないし、年功序列が慣行とされる中で敗者復活戦もないはずです。社長指名レースに残るほどの人は、会社にとっても貴重な人材ですが、そのような方が会社に残るにせよ、去るにせよ、会社にとっては大きな損失ではないかと(とくに最終レースにまで残った人であればなおさらです)。つまり、社外取締役が熱心に職務を遂行すればするほど、(有力な経営人材を失うことによって)企業価値が下がるというジレンマに陥るのではないでしょうか。

もしガバナンス改革に熱心な会社で、そのあたりをうまく対処しているところがあれば、ぜひ教えていただきたいところです。「取締役会改革」という方向性には反対しませんが、社外取締役が期待された役割を果たすためには、その前提となる部分に「地ならし」が必要です。その「地ならし」まできちんと配慮しなければ、やはり取締役会改革は「なんちゃって改革」のままで終わりそうな気がします。

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2022年2月 9日 (水)

社外取締役を「お飾り」にしないための処方せん-ダイバーシティとスキルマトリクス

(2月9日13:35 更新あり)

本日(2月8日)の日経産業新聞に、「お飾りにしない社外取締役の在り方」として、企業法務で著名な弁護士の方のロングインタビューが掲載されていました。経営者の「お友達」を排除するための仕組みや社外取締役が独自に情報収集することの重要性を語っておられましたが、共感できる点が多いですね。「社外取締役が能動的に情報を入手する発想は、従来はあまりなかったが、本来はそうすべきだし、もし怠れば経営責任を問われる可能性も心掛けるべき」との意見は全く同感であります。

先週2月2日、私も(社外取締役として)エンゲージメントのオファーを受けておりました海外の大手機関投資家と1対1でのWeb-Meetingに臨席いたしました(なお、取締役会事務局1名、通訳1名も入りました)。意見交換の内容については詳しくお話できませんが、冒頭「法律資格者であり、ガバナンスに詳しい山口サンと話がしたい」との説明を受け、約80分ほど、ESG経営やガバナンス、今後の「収益を上げるべき事業領域」を中心に対話が続きました。

途中で何度か投資家の要望に対して(生半可な約束は厳禁と思い)「お茶を濁す」場面もありましたが、(次に指名される機会があれば)自身の立場で「ほしい」と考える会社情報を収集し、それを自分なりに咀嚼したうえでの「Yes」「No」を明確にしておく必要があると思いました。また、海外投資家とのエンゲージメントを通じて「なるほど、ダイバーシティやスキルマトリクスはこういう場面で役に立つのだな」と、感じましたね。

投資家は単に社外取締役と話がしたくて貴重な時間をエンゲージメントに使うのではなく、投資家が将来価値判断に必要と考える会社情報を収集し、不足があればそれを「社外取締役に対する行動要請」へとつなげたい、という思惑が強いはずです。取締役会構成員の多様性(ダイバーシティ)が強く要請されるのは、経営面でも、株主による監視の面でも、それぞれの社外取締役が情報収集を能動的に行う場面で初めて活かされる。また、スキルマトリクスがあれば、どの社外取締役にアポイントをとれば有用な意見収集や要望を出せるか、投資家にとってもたいへん便利です。

(追記)ある運用会社の方から「このような視点で社外役員とのエンゲージメントに臨むことは機関投資家に課されたフィデューシャリー・デューティーとして当然」との意見をいただきました。ありがとうございます。

2021年12月末時点における上場会社の「改訂コーポレートガバナンスコードへの対応状況」が1月26日に公表されましたが(東証)、企業の中核人材への多様性確保にコンプライしている1部上場会社は全体の66.8%です。本当に社外取締役が情報収集に熱心であれば、人材の多様性やその開示(スキルマトリクス)は会社経営にとってプラス思考でコンプライできるのではないでしょうか。

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2021年11月15日 (月)

東芝ガバナンス強化委員会報告書が示したコンプライアンス上の視点について

すでに皆様ご承知のとおり、東芝は(独立社外取締役5名により構成される戦略委員会の判断によって)総合電機メーカーとしての看板を下ろして事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定しました。ガバナンス改革の潮流にも乗り、東芝による主体的な判断であることは確かだと思います。ただ、2014年の2名の社員による(会計不正に関する)内部告発が端緒となり、紆余曲折を経てこのような結果に至ったことについて、いろんな思いが湧いてきます。

そして、この報道によってそれほど話題になりませんでしたが、同日(11月12日)、「ガバナンス強化委員会によるお知らせ」として、2020年7月に開催された東芝定時株主総会における「圧力問題」に対する役員の責任(法的責任及び経営責任)を判定した報告書が公表されました。自身の本業にも役に立つものと思い、当該報告書にざっと目を通しました。

当該報告書にはいろいろな論点が含まれていますが、コンプライアンス経営という視点からは二つのポイントがあるように思います。ひとつは取締役・執行役の法的責任(善管注意義務違反)が認められない場合でも「市場が求める企業倫理上の視点」から経営責任を問いうる、ということです。おそらくこのような報告書では、市場が求める企業倫理の中身を対外的にも説得力のある理由で示すことが重要だと考えました。

そしてもうひとつがコーポレートガバナンス・コードが求める役員の行動規範、開示規範に反する行為があったとしても、(そして企業自身が当該コードをコンプライしていると宣言していたとしても)それだけで役員に善管注意義務違反が認められるわけではない、という点を明らかにしたことです。

私は2015年以来、当ブログでもこの点について問題提起しておりましたが、「コード自身はソフトローだとしても、実施すると宣言した以上は、これを実施しなければ善管注意義務違反になるのでは」と言い続けておりました。この点、結論については諸々申し上げたいことはございますが(なかなか詳細に述べる時間的余裕がございませんので)ガバナンス強化委員会報告書を生きた題材として、また議論が進展することを期待しております。

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2021年9月13日 (月)

社長を解任した社外取締役(たち)はその後、別の上場会社で候補者たりうるか?

9月10日の日経ビジネス(有料版)に掲載された著名投資家の方の記事「もっと経営者をクビにしよう、社外取締役偏重では不祥事は防げない」はなかなか核心を突いた内容でとても共感いたしました。月に1回程度の出社という「情報不足」、しかも会社から役員報酬をもらっているという「利益相反的立場」にある社外取締役が、不祥事を発見したり、リスクをとりたがらない社内経営陣にリスクをとるように迫る、といったことは過度の期待である、このように一般の株主は完全になめられている状況では、株主権行使によってもっと社長をクビにしよう、といった趣旨の論稿です。企業統治改革の趣旨が、一般の投資家の方々にも浸透してきたことがうかがわれる内容です。

昨年経産省から公表された「社外取締役ガイドライン」とともに、今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂2021でも「社外取締役の究極の役割は社長の選解任権を適切に行使することである」という点が明確に示されたので、企業活動の効率性や健全性に問題が生じて企業のパフォーマンスが低下したときには「社長をクビにすること」が独立社外取締役には強く求められています。これは「市場からの期待」といってもよいでしょう。

一方、社外取締役に就任している側も、最近はかなり市場からの期待を意識しています。社外取締役は近時の企業統治改革の趣旨を理解して、どうすれば企業価値の最大化(株主共同利益の最大化)のためにその役割を果たしうるか、という点については、数年前とは比べ物にならないほどに研修や自己研鑽(トレーニング)を積んでいます。つまりコーポレートガバナンス・コード原則4-14に基づいて「社外取締役としてのスキル」をかなり熱心に磨いている方が増えていることは事実です。たとえば経営者評価を行うにしても、まずは報酬面で「あなたへの評価をこう考えている」といったシグナルを発信し、それでも将来的な企業価値の向上に疑問がある場合に「不再任、解任」というカードを切ります。

しかし、「あの会社では3人の社外取締役が社長を再任しない、という判断を下し、社長交代に至った」との評判が世間に知れ渡ったとき、この3人の社外取締役のところへ別の会社から「ぜひ当社の社外取締役に」とお声はかかるでしょうか。行政当局やマスコミでは「ガバナンスが機能した例だ」と言われて評価を受けるものの、おそらく「そんな本気度の高い社外取締役さんはちょっとごめんこうむりたい」といったところが企業のホンネではないでしょうか。せっかく熱心にトレーニングを積んだにもかかわらず、お声がかからないというのは矛盾のような気もします。

こういった社外取締役の方は、機関投資家側からすれば「有能な社外取締役候補者として株主提案したい」と思われるのかといえば、どうもそうでもなさそうです。機関投資家側も、ご自身方の利益を図ることに期待がもてない(忖度しない?)ことから、やはりホンネのところでは敬遠するということにならないでしょうか。つまり、近時のガバナンス改革で求められる役割を果たす社外取締役さんは、結局のところほかの企業や機関投資家からお声をかけてもらえずに、熱心にスキルを磨いたにもかかわらずオワッてしまうおそれがあるように思います。

証券市場の活性化というマクロの視点で考えた場合、冒頭の投資家の方の論稿にあるような、投資家自身が株主権を行使するガバナンスはかなりハードルが高いと思うのでありまして、私はエージェンシーコストを下げるためにも、有能な社外取締役の活用は必要だと思っています。ただ上記のようなジレンマをどう解決すべきか、日本でも検討する時期に来ているのではないでしょうか。

私は(東証の新市場区分への移行問題の影響も考えますと)今後は社外取締役の数が増えることから、「各企業の社外取締役の行動文化」というものを構築すべきと考えます。わかりやすくいえば「〇〇社の社外取締役メンバーは、経営者評価をどのようなプロセスを経て行う風潮なのか」というモノサシ(風土?行動準則?)を明確にしておくことです。就任している社外取締役個々の個人的素養だけで解任や不再任が決まるのではなく、その会社の「社外取締役の行動慣行」によって決まる傾向を会社ベースで形成すべきと考えます(ガバナンスコードに出てくるダイバーシティは経営幹部の人的資源に関するものですが、社外取締役候補者のダイバーシティも、このレベルで検討すべきではないかと)。

社長方針とぶつかった社外取締役さんには「辞任する」という選択肢もあるでしょう。情報の非対称性からすれば「なぜあの社外取締役は辞任したのか」ということが社外で話題になったとき、かなり高い確率で社外取締役さんのほうが世間的に「悪者」になると思います。ただ「ああ、あの会社は以前から、社長と意見が合わない場合には早期に退任するのが『社外取締役のオキテ』だから」といったモノサシがあれば、また他社からもお声がかけやすくなるのではないでしょうか。このような「組織内における暗黙知の見える化」は、これから社外取締役の数が増えるからこそ検討すべき対策であり、そもそも米国のように「取締役会メンバーのほとんどが社外取締役」という構図になれば不要なのかもしれません。

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2021年8月30日 (月)

取締役会における監督機能の発揮と「スキルマトリックス」の関係(素朴な疑問)

週末の日経朝刊(8月28日)では「社外取締役 ESGも主導-統治以外の役割広がる」なる見出し記事が目に留まりました。国内外の上場会社において、社外取締役が「サステナビリティ委員会」「CSR委員会」「コンプライアンス委員会」「イノベーション委員会」「サイエンス委員会」等で活躍する機会が増えている、そういった専門性の高い社外取締役を探すのはたいへんだが、中長期的な企業価値向上の視点から社外取締役が監督機能を発揮することに期待が寄せられている、スキルマトリックスの開示ということにも注目が集まる、といった内容です。

今回の改訂ガバナンスコードでも社外取締役のスキルマトリックスの開示が要請されていますが、これはむしろ(ガバナンスコードが要望している)モニタリングボードではなく、マネジメントボードとしての取締役会と親和性が高いのではないでしょか?おそらく社外取締役候補者としても、求められるスキルの発揮を会社側から要望されれば、重要な経営判断の場における経営指導的な活躍が期待されている、と認識するのが一般だと思います。ということで、そもそも素朴な疑問として「スキルをもってどんな方法で監督機能(モニタリング)を発揮するのか」というところが、いまひとつよくわかりませんし、本当にそのようなことが可能なのであれば、経営者はわかりやすく社外取締役候補者に伝える必要があります。

昨年7月に経産省から公表された「社外取締役ガイドライン」の参考資料2のアンケート調査結果をみても、多くの会社が現実にはマネジメントモデルの取締役会を運用しているわけですから、私はまず社外取締役になろうとされる方は、ガイドラインの求める「社外取締役の理想像」を実践することよりも先に、会社の現実を見据えることが大切だと思います。マネジメントモデルであれば、自身のスキルを(重要な経営判断に活かせるように)存分に発揮すればよいと思います。もしモニタリングモデルの運用がなされている、もしくは移行しようと努力している会社であれば、どのような形で自らのスキルを監督職務に取り入れるべきか、会社側とよくすり合わせをしておくべきではないでしょうか。

※ ちなみにガバナンス・コードや経産省社外取締役ガイドラインが求めている「監督」とは、CEOに対する評価と、CEOの選解任および報酬決定への主導的役割を果たすこととされています。このような「監督」に社外取締役のスキルがどのようなプロセスで反映されるのでしょうか。

そしてもうひとつの素朴な疑問は、社外取締役のスキルに関心が集まり、上記記事にあるように「取締役会の諮問機関」として活躍することに期待が集まるのであれば、そもそも社外取締役である必要はなく、顧問やアドバイザーとなって(社外取締役では困難とされる)業務執行の一端を担うほうが企業価値の向上につながるのではないか、ということです。スキルマトリックスが求められるほどに重要な経営判断の決定に外部専門家が必要とされる時代であれば、社外取締役のような形でなく、もっと業務執行に近いところで活用されるほうが戦力になるのではないかと。

「いやいや、環境や人権、サイバーセキュリティに精通した有識者が社外取締役であることが重要なのだ」とされるのであれば、そういったスキルをお持ちの方が「取締役会において議決権を持つ意味」がわかりやすく社外取締役候補者にも伝えられる必要があると思います。いずれにしても、社外取締役になろうとされる方々は、対象会社の取締役会のモデルがどうなのか、という点を冷徹に認識することが大前提でしょう。そこを飛び越えて、近時のコーポレートガバナンス改革の理想論から「あるべき姿勢」に倣うことは会社にとっても社外取締役にとっても悲劇の始まりのような気がいたします。

ちなみに私にとって「社外取締役にとっての最高のスキル」は、経営陣をどのように監督すれば株主のエージェンシーコストを下げることができるのか、そこを理解することだと考えています(社外取締役と機関投資家との対話において、とても有意義な話題になると思います)。

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2021年8月11日 (水)

コーポレートガバナンス・コード改訂2021の楽しい勉強法について

Img_20210810_211317_400 8月9日に出版されたばかりの「コーポレートガバナンス・コードの実践 第3版」(武井一浩氏編著 日経BP 2,800円税別)をご著者の方から献本いただきました(たぶん西村あさひの武井一浩先生ですよね?どうもありがとうございます🐱)。先日、2度目のコード改訂が行われましたので、本書ももう「第3版」なのですね。改訂2021への各社対応は、今年12月更新までのガバナンス報告書で明らかになりますので、このタイミングでの第3版は各社が参考にされるでしょうね。それにしてもご著者の皆様はお忙しい中、タイムリーに改訂作業を進めておられるのには頭が下がります。さっそく改訂部分を中心に拝読させていただきます。

ところで企業統治改革が始まってからすでに6年~7年が経過しますが、コード改訂版はかなり「てんこ盛りガバナンス」の内容に仕上がっているように思われます。そこで、合格最低点を目指して、改訂版をいかに「楽しく」勉強するか、ということを考えることも大切です。先日、コード改訂実務に近い立場にあった方のプライベートな講演会を拝見(WEB)しましたが、その際にとても面白いコメントが聞かれました。コード策定時(2014年ころ)と現在とでは、「中長期的な企業価値向上のためのガバナンス」という改革の方向性はブレていないけれども、なんだかいろんなものがくっついちゃった、とのこと(笑)。このあたりが「楽しい学習」のための切り口になりそうです。

ご承知のとおり、2014年頃から今年に至るまで、ガバナンス関連のいろんな「指針」やら「ガイドライン」やらが経産省、金融庁、法務省、内閣府を中心に策定されていますが、これらは各省庁担当課長の「実績作り」の一環だそうで、異動前になると、成果品として各省庁から発表されるのが常のようです。それぞれの担当課長の成果品であるがゆえに、コード改訂の際にもどこかで成果品たる指針やガイドラインの趣旨を盛り込まねばならないということになり「ずいぶんといろんなモノが改訂版にくっついちゃった」結果になってしまったとか・・・( *´艸`)

私も財務省のアドバイザーや有識者メンバーに就任していますので「なるほど」と思いましたが、たしかに官僚の皆様には(実績のための)「異動の花道」がありますよね(その「花道」を首尾よく作ってあげて気持ちよく異動させる部下はきっと出世するのでしょうね)。ここ5年ほど、〇〇実務指針とか▽▽ガイドラインなるものがガバナンス・コードの周囲にもたくさんできましたが、年を追うごとに増えていることは明らかでして、それらすべてにコードが「挨拶」をしておりますと、改訂版の中身は必然的に分量が増加し、内容も複雑化してくるわけです。では、改訂部分のどこが、どの指針やガイドラインと結びついているのだろうか・・・といったあたりを考えながら勉強する、というのも頭に残りやすい(理解しやすい)学習法かもしれません(いや、完全に個人の趣味かもしれませんが・・・)。

そういえば思い出すのが平成18年会社法改正のときの法制審議会委員だった方々の座談会記事(旬刊商事法務)。法制審における改正作業の最終コーナーを回ったあたりで某自民党議員の方による突然の「内部統制に関する条文挿入」の要望があり、いきなり「体制整備に関する決議義務」が法文化されましたね。商事法務の座談会では「いままで議論もしていなかった条文の突然の挿入について『いやァ、変なものが入ったちゃったなァ』という気持ちでした」と和気藹々な雰囲気で法制審委員の方々が語られていました。(これは私の推測ですが)あの当時から法務省官僚の方々の意向が学者委員の方々の意見よりも強くなってきたのではないかと。その後、金商法上の内部統制と会社法上の内部統制との関係など、理屈の上で難問が出てきたことは皆様ご承知のとおりです。

そのように考えますと、今回の改訂2021への対応については(周囲を見回しながら)理路整然と「コンプライ」することにこだわるよりも、会社としてどのように稼ぐのか、そのストーリーに必要な範囲でコードを自由に解釈して「対話に役立てる」「コンプライにこだわらない」姿勢が投資家にも、また経営陣にもウケが良いのではないかと思います。コンプライにせよ、エクスプレインにせよ、なぜ当社のガバナンス構築が中長期の儲けにつながるのか、そこの説明に必要な範囲で改訂版コードを活用すべきではないかと思います。

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2021年8月 5日 (木)

ガバナンス改革はJ-SOX(財務報告内部統制)と同じ道をたどるのか?

昨日(8月3日)の日経朝刊9面に「日経地銀実力調査 再編先行組が健闘-山口は『統治』で低評価」なる見出しの記事が掲載されています。当該記事によりますと、山口FG傘下の山口銀行は、収益力が評価されて総合ランキングでは上位とされていますが、ESG評価は「C」(68位)とのこと。その理由としては「グループトップが、6月の総会後の臨時取締役会で再任を拒否された事案が評価に響いた」そうです(ちなみに再任を拒否された事案の概要は日経ビジネスのこちらの記事が詳しいです)。経営の中枢部分に不安定要素がある、ということが低評価とされたものと推測されます。

しかし、上記事案(6月総会後の社長不再任)は、そもそも元社長の不適切行為に関する内部通報が経営陣に届き、その後は社外取締役(10名中7名)が中心になって社長の再任拒否といった結論になったわけですから、いわば「社外取締役が機能した」と評価できる事案ではないかと。現に7月25日の朝日新聞WEB有料記事「『納得できない』-改革派地銀トップはなぜ解任されたのか」では、金融庁幹部の方も「今回の件はガバナンスが機能した」との評価を下しています。

素朴な疑問ですが、上記日経地銀実力調査の結果からすると、コーポレートガバナンス・コードが理想とする社外取締役の行動をとった企業は「ガバナンスに問題がある」と評価され、「モノ言わない社外取締役」が沈黙して安定的な経営がなされている企業が高い評価を受けるということになるのでしょうか。しかし、私の理解するところでは、今後のいかなる経営環境の変化にも対応できるだけの多様性を備えた取締役会こそ(少なくともESGという視点からは)高い評価を受けるのであって、ガバナンス上の経営権問題が表面化したことをもって低い評価とするのはどうもおかしいように思います。

ちょうどJ-SOXの運用において、会計不正が発覚するまでは「内部統制は有効」と開示しながら、会計上の問題が発覚するやいなや訂正報告書を提出して「内部統制は有効とはいえませんでした」と修正して「ハイ、一件落着」と片付けるのと同じではないかと(これまで、修正によってペナルティを受けた上場会社はひとつもありません)。

つまり、上記のような評価がなされるのであれば「外から言われたことを粛々とこなしておいて、なにか問題が生じればそのときに有事対応で問題を解決すれば足りる」といった企業姿勢を助長することになりそうですし、企業の不正リスクに関する警鐘を社内から鳴らす「オオカミ少年」が育成されないことにつながります。これでは何のためのESG開示であり、エンゲージメントなのかわからなくなります。いわば「J-SOXの二の舞」であり、企業としても「その程度の対応で足りるのか・・・やれやれひと安心」ということになるかもしれません。取締役会の実効性評価にしても、将来的な企業価値との関係で評価を行うものと理解しております。過去に発生した事実から評価を下すというのは、せっかくのガバナンス改革のための知見を無駄にしてしまうことになりそうで、もったいない気がいたします。

それにしても、不祥事が発生すれば「社外取締役は何を見ていたのか、機能していない」と言われ、不祥事防止のために目立った行動に出れば「経営の中枢がゴタゴタしているからガバナンスが問題」と言われるわけですから、いったいどうしたらよいのでしょうかね。。

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