2021年11月19日 (金)

会社役員の敗者復活戦を支える-会社補償契約のススメ-

ここのところ、事務所にはあまり帰ってきておりませんので、(もろもろの)取材はお受けできない状況です。←〇〇スーパーとか(笑)。決して「愛想が悪い」「居留守を使っている」のではございませんが、ホンマに「貧乏暇なし」ということで悪しからずご了承ください<(_ _)>。以下本題であります。

本日は会社役員、とりわけ上場会社の取締役、監査役の皆様のリーガルリスクに関する話題です。モノ言う株主の急増、コンプライアンス・ESG経営への関心の高さゆえ、近時、上場会社役員の「敗訴リスク」に変化はなくても「提訴リスク」は上昇していることは間違いありません。ということで(?)、会社補償契約への注目度がアップしているようです。

「D&O保険に20億くらい加入していればよくね?」といった気持ちを(最近あまり勉強していない💦)私は抱いておりましたが、旬刊商事法務2278号(2021年11月15日号)のスクランブル「上場企業が早期に会社補償契約を導入すべきわけ」を読んで、(社外取締役として)これは早く会社補償契約を締結しなければ・・・という気持ちになっております。

会社補償契約とは、令和元年改正会社法で新たに規定が設けられたもので(改正会社法430条の2)、役員等(取締役、会計参与、監査役、執行役または会計監査人)が職務の執行に際して負う損害賠償責任やその防御に要する費用(争訟費用)を会社が負担(補償)する制度です。改正会社法は、会社が役員等との間で締結する補償契約について、補償契約の内容を決定する手続や補償契約に基づき補償する費用等に関する規定を設けました。

補償契約によって会社が補償できる範囲は限られていますが(たとえば株主代表訴訟で敗訴した場合の損害賠償責任については除外)、争訟費用(たとえば弁護士費用)については広く補償の対象となりますので、まさに「提訴リスク急増の時代」にはピッタリです。改正会社法は社外取締役が一定の要件のもとで業務を執行することも認めていますが、会社補償契約は、このような社外取締役の積極的な活動を支えることにもなりえます。

D&O保険も争訟費用を補填しますが、保険金が下りるまで時間を要するケースもあり、スピーディーな支払いが期待できる会社補償制度にはそれなりのメリットがあります。いわばD&Oと会社補償契約は相互補完機能を発揮する、といっても過言ではありません。D&O保険の免責事由が比較的緩やかにに認められている(たとえば善管注意義務違反となることを認識しながら経営判断に至ったケースには保険は下りない等)ところからみても(金融・商事判例1628号12頁以下 東京高裁判決令和2年12月17日判決)D&O保険だけでは安心できない、というのも偽らざる心境です。海外からの集団訴訟の弁護士費用なども、保険金が出るのかどうか微妙です。

また、「そうはいっても、今まででも実務的には契約を締結していなくても会社補償は可能とされてきたんだから、あらためて契約を締結する必要はあるの?何か問題が発生してから締結すれば足りるんじゃない?」と私は安易に考えておりました。しかし、上記スクランブルを読む限りそんな甘いものではなく、これからは会社法上の補償契約を締結していない限りは、補償は困難になるのではないか、とのこと。最近の会社法セミナーではあたりまえに解説されているのかもしれませんが、勉強不足の私は「ええ!?」と驚いてしまいました。

要は会社・役員間の委任契約(任意契約)の内容について、民法650条3項(役員に過失がない場合に弁護士費用等を会社に請求できる根拠規定)は任意規定なので、役員に過失がある場合でも民法の特約として会社が弁護士費用を補償できると(個々の事案ごとに)解釈することが可能だったわけですが、改正法によって会社補償契約の内容を決定する手続き(取締役会の承認)や補償できる範囲が条文で明確になったので、民法650条3項と異なる内容の補償(特約)を認めることは委任契約の解釈としてはとりえない、というものです。

これが異論の余地なく絶対正しいとまでは申し上げる自信はありませんが、会社法上の会社補償契約はこれまで実務で行われていた民法650条による補償を制度化したもの、もともと利益相反的な契約、といった制度趣旨を前提とすれば、たしかに裁判官がこのように判断してもおかしくないように思います。ということで、社外取締役、社内取締役、監査役等の皆様にとって、健全なリスクテイクを支えるためのインセンティブとして、会社補償契約を会社法上のルールに従って締結することは上場会社のトレンドになるのではないかと。外部から経営者を連れてきたり、優秀な社外取締役を招くためにも「うちの会社では補償契約を締結することがルールになっています」と説明できそうです。

もちろん、補償費用の支払いにあたっては、モラルハザードを防ぐための措置も必要ではありますが、株主や会社第三者からの訴訟提起、行政機関からの法的手続きから身を守り、役員としての「敗者復活戦」の機会を確保することは、これからの上場会社にとって「攻めの経営」のためには不可欠の経営環境ではないでしょうか。

私利私欲を追求するような経営判断は論外ですが、失敗を許容できる組織風土はとても重要だと思います。上場会社の役員の皆様におかれましては、ぜひとも御社の顧問弁護士さんと相談のうえ、会社補償契約締結の必要性についてご検討されてはいかがでしょうか。

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2021年11月 9日 (火)

関西スーパー経営統合事案に法廷闘争という「第2ラウンド」がありそうですね

(9日午前 追記・更新)

つい先日、「関西スーパーの臨時株主総会-オーケーに学ぶこれからの戦略法務の在り方」なるエントリーにて、オーケー(スーパー大手)の経営者は潔い負けっぷりだな・・と書きましたが、11月8日の日経スクープ記事によりますと、10月29日の関西スーパーの臨時株主総会で決議されたエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)グループとの株式交換契約について、オーケーは9日にも神戸地裁に差し止めの仮処分を申請する方針を固めたそうです。

オーケーは「総会検査役の報告書で明らかになった議決権集票の過程に問題がある」と判断したことが紛争再燃の理由とのこと。たしかに総会検査役の報告書の内容が日経ニュースのとおりであるなら、統合決議の結果がひっくりかえる可能性が出てくるわけですから、オーケー側が経営統合の差し止めを求めて提訴することも納得します。

私の見立てが間違っていないとすれば、関西スーパー、オーケーいずれの陣営もアドバネクス事件の東京高裁判決(2019年10月17日付)の射程距離をどう理解するか、というところをきっちり押さえた上での法廷闘争になると思います。関西スーパーにとって「自分の議決権行使結果を確認したい」と申し出た法人株主が議決権行使書とは異なる内容で議決権を行使する意思を有していないことが明らかだったといえるのか、つまり法的な意味での「出席」はしていなかったと評価できるのかどうか。アドバネクス事件の場合とは状況が異なるように思えるので、とても微妙な問題を抱えているようです。(9日午前の日経ニュース更新版を読むと、総会現場では間違いが起こらないように「十分なアナウンスはあった」とのことで、このあたりも裁判では斟酌されるかも)。

また、議決権の事前行使で「反対」としながら、当日出席して賛成票を入れた株主さんはいなかったのでしょうかね?いったん票読みが終わった後で、個別の株主からの申し出を認めて、その結果を決議に反映させるということになると、会社側の恣意的な総会運営を許すことにならないのでしょうか。

ただ、そもそも僅差となることがはじめからわかっていた株主総会であり、総会検査役まで選任されていたのですから、関西スーパー側が、本件のような株主権行使は普通に想定されていたはずです(実出席者も130名程度の総会なので、本件のようなことが起きないように総会の受付において確認しておくことはできたはず)。関西スーパーの株主総会で、アドバネクス事件のような会社法上の論点が浮上することにとても驚いております。

それにしても株主総会の検査役は重要な役割を担っていることがわかります。

(9日午前追記)こちらの毎日新聞ニュース(有料版?)を読むと、さらに緊迫の現場の様子がわかります。これはたいへんですね。

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2021年11月 2日 (火)

関西スーパーの臨時株主総会-オーケーに学ぶこれからの「戦略法務」の在り方

週末の日曜日(10月31日)、妻と一緒に投票を終えて、相も変わらず天王寺に買物に出かけまして、近鉄百貨店の「バッファローズ優勝記念セール」でお値打ち冬モノを購入してまいりました。その後(これもいつも通りですが)あべのベルタの関西スーパーにも出かけましたが、こちらは「株主総会勝利記念セール」はやってなかったみたいで、いつもの風景でした。(=^・^=)ホント、隣のイトーヨーカドーとの共存共栄は、老舗の関西スーパーあべのベルタ店における「品ぞろえの妙」としか言いようがありません(笑)。

それにしても10月29日(金)の関西スーパー臨時株主総会はずいぶんと盛り上がりましたね(全国紙でも大きく取り上げられていましたね)。議決権行使について2時間以上かけて集計されましたが、会社案への賛成が66・68%という信じられない僅差だったそうです。可決には出席株主の3分の2以上の賛成が必要で、そのラインをわずかに上回る結果となったわけで、H2Oリテイリングとの経営統合が成立し、オーケーはTOBを断念することになりました。

関西スーパーが取引先株主らに対して「出席せずに議決権行使を棄権してほしい」と要請していたことが日経ニュースで報じられていましたが、もしそうだとするとガバナンス・コードとの関係では若干問題があるように思いました。ただ、私のような「場末の弁護士」のそんな懸念をふっとばしたのがオーケーの経営者の言動でした。こんな僅差による敗北は受け入れがたいのでは?不服申し立てはしないのか?との記者からの質問に対して、オーケーの経営者は「しっかりと総会検査役にみてもらったのだから(結果は受け入れる)」との発言(10月30日 産経新聞朝刊関西版のインタビュー記事より)。経営支配権を争う当事者(しかも負けたほう)から総会検査役へのリスペクトの言葉など、今まで聞いたことがありません。

オーケーは、たしかに総会では敗れたかもしれませんが、今回の一連の「TOB予告作戦」によって実質的には大きな勝利を収めたのではないでしょうか。なんといっても関西の消費者にオーケーというスーパーの存在、およびその特色を周知させました。どんなに広告費用を出すことよりも、大きな宣伝効果が得られました。また、オーケーのTOB予告価格の提示により、関西スーパーは、H2Oとの統合効果について(イズミヤやオアシスとのシナジーも含めて)対外的に説明することを余儀なくされました。統合効果についての実効性には疑問も残りますが、オーケー側にとっては(自らの手の内を見せることなく)首都圏のスーパーが関西市場への進出の足がかりがつかめたことはとても意味のあることだと思います。

オーケーの撤退により、週明けの関西スーパーの株価はかなり落ち込んでいますが、経営統合が市場の好感を呼ぶとすれば、関西スーパー株を高値で売って、次の投資に振り向けることもできるわけで、結局のところほとんどお金を使うことなくオーケーの企業価値を大きく向上させたといえます。今回のオーケーの関西スーパーに対する7月ころからの一連の行動を俯瞰するに、法務を「守り」に使うのではなく「攻め」に活用する・・・いわゆる「戦略法務」のお手本を、現在進行形で学ばせていただいたように思います。

徹底的に闘い、潔く撤退する(結果として一定程度の株主の賛同も得られた)というストーリーは、企業の社会的評価を毀損することもなく、ステークホルダーとの信頼関係を毀損することもなく、結局のところオーケー経営者のしたたかさを痛感する事案だったといえそうです。

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2021年10月13日 (水)

経済安全保障政策を意識したESG経営の視点が不可欠と考える

今年7月27日のエントリー「企業のESG経営-『E』と『S』はつながる時代へ(オランダの裁判事例とEUにおける環境カルテル)」において、近時のオランダにおける裁判例をご紹介して「環境問題は人権問題のひとつとして捉えられる時代になるのでは?」と書きましたが、10月8日、国連人権理事会は、清潔で健康的な環境へのアクセスは基本的人権であるとの決議案を賛成多数で可決したそうです(有償版ですが、毎日新聞ニュースはこちらです)。日本は棄権したものの、決議は理事国47か国中賛成43、反対0ということで可決しました。

日本企業としても、もはや「環境問題は人権問題でもあること」を理解しておいたほうがよさそうです。国連人権理事会の次の狙いは①人権侵害に基づく損害賠償請求に関する緊急管轄の創設、②被害者の選択による準拠法選択に関する特則の制定明記というところにありますので、いよいよ世界レベルでの人権侵害行為や環境問題への不作為に対するハードロー化、つまり救済アクセスの充実が求められることへの企業対応を検討しておく必要があります。この件については抵触法(国際私法)の最新事情も踏まえて、また別途エントリーで詳しく意見を述べたいと思いますが、以下本題です。

前回のエントリーでは、文藝春秋最新号の財務次官論稿について少しだけ触れましたが、本日は同号「アップルとかく戦えり」と題する前公正取引委員会委員長の論稿についての感想です。

日本製鉄の東京製鉄への敵対的TOBについては今年2月のエントリー「日本製鉄→東京製綱・敵対的TOBに関する素朴な疑問」において「公取の事前審査の潜脱行為では?」と疑問を呈しましたが、案の定、公取から厳しい指摘を受けて、日本製鉄は元の持ち株比率に戻すそうです(こちらのNHKニュースが報じています)。このような公取委の対応はかなり厳しいなぁと思いますが、冒頭の「アップルと・・」を読みますと、(論稿はあくまでも前委員長の個人的な見解かもしれませんが)公取委としては今後さらに「公正な競争市場の形成」に向けて積極的な行動に出ることを確信いたしました。

とりわけ「社会主義はデジタルで甦る」というご意見はそのとおりかと。「先端半導体」「一般半導体」の技術をはじめ、国家監視資本主義の実践に必要な技術が中国に流出することで、自由資本主義国家の安全保障が揺らぐ可能性を欧米諸国と日本が共通課題と考え、各国の競争規制当局が足並みをそろえて監視資本主義に対抗する姿勢は、日本企業のコンプライアンス経営に、とても大きな影響をもたらします。中国がアリババやディディ(滴滴出行)に対して競争法によって規制を強めているのと同じ理屈ですよね。

おそらく公式には「経済安保」とは言わないけれど、西側諸国は「公正な競争市場の確保」という錦の御旗のもとで、環境や人権への取組みに熱心でない日本企業に対しては「公正な取引条件の不備」を問題視してハンデを背負わせることが想定されます。

ESG経営をどこまで追求すべきか、といった点について同業他社と協議することの是非はいろいろと議論されているところですが、少なくとも自由資本主義体制が目指す公正な競争条件の形成を阻害する行動(たとえば①品質偽装、②情報漏えい、③営業秘密の侵害に対しての泣き寝入り、④現地公務員への贈賄等)や、GAFAのプラットフォームのように監視資本主義に活用されるおそれのある企業への「事前規制」には要注意ですし、その規制に反する行動へのペナルティは、世界的にとても厳しいものになると予想しています。

少し前までは「ESG」といえば「企業による社会的責任に基づく実践行動」というイメージを持っていましたが、最近は経済安保問題や経済覇権行動に対する後出しジャンケン的な理由付けなど、もっとドロドロした世界をきれいにウォッシングするために活用されるイメージが強くなったように感じるのは私だけでしょうか。

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2021年10月 7日 (木)

監査法人交代事例の急増とオピニオンショッピングに伴う「倫理観」

本日は日本公認会計士協会近畿会の組織内会計士委員会主催の研修にてお話をさせていただきました。リアルとリモートのハイブリッドセミナーでしたが、ご聴講いただいた皆様、本日はお世話になりました。ということで(?)、監査法人ネタについて少しだけ書かせていただきます。

今朝(10月6日)の朝日新聞(朝刊・経済面)に「監査法人の交代相次ぐ 変更207社 前年より5割増」なる見出しで、監査法人を変更する上場企業が増えていることが報じられています。コロナ禍による業績の悪化で監査報酬を抑えたい企業側の狙いがあるほか、契約期間が長期化した監査法人を見直す動きが広がっていることが原因とされています。

記事の中で青学の町田教授が「企業側にモラルハザードが生じ、自社に都合のいい監査法人に代えるケースがあるならば問題だ」とコメントされているのはまことにその通りかと。かつて八田進二先生から「会計の世界にセカンドオピニオンはないが、オピニオンショッピングはある」と教えてもらいました。昨今の上場会社側の監査人変更の裏には会社側は「セカンドオピニオン」をもらえるところに変更するのであって、自社に都合の良い会計処理を許容してもらえる(オピニオンショッピングできる)監査人に交代するのではない、という意識が強いように感じます。つまり自己正当化です(悪気がないので倫理観の欠如とはいえないように思います)。要は先の八田先生の名言を広めることが必要かと。

一方で、監査法人側の事情については、私はやや記事とは違う見方をしております。記事では「海外提携先の会計事務所から、採算の合わない監査先を見直すように日本の大手監査法人は求められている」とありますが、「採算」の問題ではなく「不正リスク」の問題ではないでしょうか。新興企業では内部統制が脆弱であり、上場時から監査を継続しているものの、不正リスクが顕在化する前に契約を解消しておこう、という気持ちが強くなるのではないかと。歴史の長い上場会社であったとしても、昨今のガバナンス改革が「資源の最適配分」を強く要請していることもあり、不採算部門における会計不正リスクはかなり高まっています。民事賠償、行政処分のリスクを考えると契約先の見直しを検討する監査法人側の事情もある程度は理解ができるように思います。

「会計監査の在り方に関する懇談会」が金融庁で始まりましたが、そこでもKAM(監査上の主要な検討事項)の適用開始,監査に関する品質管理基準改訂の動きなど,監査法人を取り巻く環境が変化していることから、監査の品質をどうやって向上させるかが議論されるそうです。ポイントとなるのは中小規模監査事務所の監査品質の向上、ということなので、今回の監査法人の交代急増の事実はむしろプラスと考えて、監査品質向上のための良い機会ととらえるべきではないでしょうか。

ただ(先日、こちらのエントリーでも申し上げましたように)何事も失敗を繰り返さなければ「品質の向上」などありえないはずです。監査上の失敗の社会的損失をできるだけ少なくしつつ、その失敗から得たものを社会的資産として共有できるシステムが「監査の品質向上」には不可欠だと思いますね。

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2021年4月 8日 (木)

CVC、東芝へ買収提案-なぜ初期提案の情報が洩れる( *´艸`)?

Img_20210407_212957_512 英国ファンドのCVCが東芝に2兆円買収提案、という記事は、胸のすくようなひさしぶりの日経新聞トップスクープでしたね。東芝が本日午前8時半に開示した内容は、「今朝の買収提案に関する日経報道は当社が発表したものではありません。昨日CVCから初期提案を受けたばかりであり、詳細情報を集めて取締役会でこれから検討いたします」というものでした。

しかし日経のトップ記事を読むと「CVCは今後、自らの提案に賛同するファンドを募って共同で買収する」とか「現在の株価にプレミアムを3割ほど乗せることができる程度のレンジを想定する」とか、本来は東芝側が判断すべき理由である「非公開化によって経営判断を早める」といった非公開化の目的まで書かれてあります。いくらなんでも昨日の初期提案の内容から、朝刊記事の締め切り時間(4月7日未明)までに書ける内容ではないような・・・( ̄▽ ̄;)

どうして初期提案の情報が日経記者さんに漏れるのかな・・・そういえば日経さんのスクープ記事といえば、2007年のJTと日清食品が加ト吉社買収の検討を行ったときのこと(こちらのブログ記事)を思い出しました。(;^ω^)どう考えても日経さんにタイミング良く「書いてもらった」としか言いようがない(笑)

「いやいや、まだ初期提案を受領したばかりであります。もちろん、今後正式な提案があれば取締役会で真摯に検討してまいります」って、ホンマかいな(笑)と素直に思ってしまいますよね。東芝の現会長さんがCVC会長から転身されたときの記事(2018年2月のこちらの記事)でも、「将来、CVCが東芝の支援をする可能性は否定できない」って書かれてありますし、今後TOBが開始される予定であるにもかかわらず(国益とも関わる東芝の情報技術やエネルギー技術の保護について)経産省や財務省の審査(外為法規制)のための事前相談もまったくなされていないとも考えられないですし、なんといっても日経スクープの早さからしてすでに関係者間でのストーリーが出来上がっているのでは、と思うのは私だけでしょうか(笑)。過去に英国ファンドがJパワーの買い増しに動いたときに、財務省が外為法で中止命令を出した状況とはずいぶんと異なるように思います。

しかしそうなると、東芝の現株主であるファンドの皆様は、3割のプレミアムが上乗せされる、といわれる現在の株式価格が本当に東芝の企業価値を反映したものかどうか、疑いを持つのではないでしょうか。本来ならばもっと株価が上がるような有利な情報を開示していない、といったことはないのでしょうか。子会社における架空循環取引や定時株主総会における議決権集計問題等、株主に対して十分な説明責任を果たしてきたと言えるのかどうか。もちろんCVCの正式な提案があれば、これに対抗する提案も飛び出すかもしれませんが、仮にストーリーがあるとしても、今後シナリオ通りにはなかなかいかないような気もいたします。

もちろん、上記は野次馬的な立場にある私の推測にすぎません(株式取引は自己責任でお願いいたします)。ただ、長期保有を前提とするPEによる(企業統治の在り方が問われる)TOBというのは極めて異例だと思いますし、今後どのような展開となるのか注目しておきます。

 

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2021年2月22日 (月)

今こそ会社法上の「会計監査人設置義務」への関心を高めよ-フタバ図書粉飾案件に思う

日曜日の夜の東京新聞ニュースでは「電子機器や服飾を含む日本の主要小売り・製造業12社が、中国新疆ウイグル自治区などでの少数民族ウイグル族に対する強制労働への関与が取引先の中国企業で確認された場合、取引を停止する方針を固めたことが21日、共同通信の取材で分かった」と報じています。先日、東京オリ・パラ元組織委員会会長の発言問題について、スポンサー企業がどのようなコメントをしたのか、という点が(比較されて)話題になっていましたが、もはや「ESGは企業価値向上に役立つか」などとフワっとした議論をしている時代ではなくなってきましたね(たいへんだぞ、これは・・・)。以下本題です。

2月20日の中国新聞デジタルのニュース「フタバ図書、10年間粉飾 在庫や資産償却を不適切記載」では、広島の書店チェーン大手のフタバ図書(非上場会社)が10年にわたって決算書に書く在庫を実際より多くしたり、固定資産の償却を小さくしたりして、不適切な計算書類を作成していたことが報じられています。また、別の中国新聞記事では、借入先の金融機関の数を少なく記載して、過小の債務総額を取引先金融機関に示していた、とも報じられていました。

これまで粉飾を説明してこなかったのは「上場会社のような開示義務がある企業を除き、企業価値を損なわないぬよう非開示が原則。信用不安からの破綻を回避しようと考えた」というのが会社側の説明だそうです。しかし、上記中国新聞の記事が正確に伝えているとすれば、この会社側の表現は誤解を招くものと思います。

上場会社ではなくても、株式会社である以上(つまり会社法が適用される会社である以上)、フタバ図書には計算書類(BSやPL)や事業報告について開示義務があります(会社法440条1項、同442条1項1号)。実際には開示義務を果たしていない非上場会社が多いことは事実ですし、また有価証券報告書の提出義務はありませんが、「法律上の開示義務がない」とは言えません。さらに、計算書類の内容についても、会社法では虚偽記載は過料の制裁が規定されていますので(同976条7号)、破綻を回避するために(会社の信用を維持するために)不適切な記載が許されるわけでもありません。

とりわけフタバ図書の場合、そもそも同社は金融機関からの借り入れだけでも総額235億円に上るということですから、会社法上の「大会社」に該当するはずです(同法2条6号。「大会社である」と断定できないのは、最終事業年度の貸借対照表に負債200億円以上が実際に計上されているかどうかはわからないため)。

ご承知の方も多いと思いますが、会社法上の大会社に該当すれば、会計監査人の設置義務がありますし(同法328条2項)、内部統制の基本方針についての決議義務も発生します(同法362条5項)。同社が会計監査人を設置していれば、まちがいなく粉飾決算を防止でき、仮に防止できないとしても、粉飾に対して早期に対応できることになり、今回のようにステークホルダーに迷惑(9割の貸付債権免除)をかけることもなかったはずです。

会社としては「当社は会計監査人設置会社である」という認識はなかったのでしょうか?あるいは、取引先金融機関として、会計監査人を設置すべきだ、と要求することはなかったのでしょうか?ぜひ、このあたりは更なるニュースで明らかにしていただきたい。

ところで、2010年に発覚した林原の会計不正事件のときにも思いましたが(2013年8月19日拙ブログエントリー「金融検査の見直しと林原の破綻」参照)、会社法上の大会社のように、会計監査人を設置しなければならないにもかかわらず、これを放置している会社が、日本にはかなり多いはずです(以前、日本公認会計士協会が、登記簿上の5億円以上の資本金を調査したことがあったように記憶しています)。林原のケースでは登記簿上の資本金5億円企業なので明確ですが、フタバ図書のように「負債額200億以上」となると、取引先金融機関でもなければ、なかなか指摘することはできないのかもしれません。

今後、金融機関も融資先の事業リスクの定量化を図り、M&A等の仲介事業なども手掛ける時代となりますと、これまで以上に融資先の会計不正には注意を向けなければならないと考えます。そうであれば、融資先に会計監査人設置義務があるのか、財務報告に関連する内部統制の構築義務があるのかどうか、という点には強い関心を示す必要があるのではないでしょうか。今回のフタバ図書の事例では「借入先金融機関の数を過少説明され、債務総額が見えにくかった」という事情があったのかもしれませんが、そもそも「会計数値」への信頼が融資業務において軽視されてきたのではないか、といった疑問がわいてきます。

当ブログでは何度も「会社法上の過料規定-976条-は時代に合わなくなってきたので、必要に応じて刑事罰規定に改正せよ」と言ってきましたが、計算書類の虚偽記載規定とともに、会計監査人の設置義務違反についても刑事罰化することが、「担保」偏重ではなく、事業リスク重視による金融機関の融資姿勢の変化を促すことになるのではないか、と考えております。

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2021年2月16日 (火)

働き方改革が進む中での営業秘密漏えいリスク

少し前になりますが、先週木曜日(2月11日)の産経新聞朝刊「経済♯アナトミア」の一面特集として「転職で機密流出 デジタル社会の穴-賠償すリスク『持ち込ませない』対策急務」なる記事が掲載されており、近時の働き方改革が進展するなかでの営業秘密漏えいリスクの高まりを認識いたしました(産経新聞をお読みになれる方はぜひご一読をお勧めいたします)。

①警察庁の調べでは、令和元年の営業秘密侵害事案は、平成25年の5件から21件に急増していること、②先日発覚した元ソフトバンク社員による機密情報漏えい事件は(経産省担当者によると)「事件化できたのは、ソフトバンクが営業秘密対策をしっかりとっていたから(中小事業者であれば、おそらく気が付かないか、 泣き寝入りに終わるであろう)」であること、③高額の賠償リスクを考えると、持ち込まれる側の企業にも訴訟を念頭に置いた不正対策が必要となること等が示されています。

とりわけ、コロナ禍におけるテレワーク、兼業、副業等による秘密漏えいの「機会」が増加していること、DX戦略における他社とのネットワーク作り、合弁事業を前提としたオープンイノベーションの増加が、今後の営業秘密対策の必要性を高めているようです。ただ上記記事でも示されていますが、秘密漏えい対策を強化することによって、社員による業務遂行の効率性に支障が出ることにもなりますので、この二つの要請をどう調和させるかがポイントになります。ここでもやはり「事前規制的発想」から「事後規制的発想」に転換する施策が必要になるのではないでしょうか。

ところで統計的にみても転職者による営業秘密漏えい事犯の数が多いそうですが、そもそもライバル会社に転職する、というのは、当該社員の経験知見をみこまれたからですよね。では当該社員の頭の中にある営業秘密を転職先で活用することは不正競争防止法違反にあたるのでしょうか。

もちろん、転職元企業が秘密として管理していた情報をたまたま記憶していて、その情報を活用するとなれば営業秘密の侵害行為にあたるでしょう。しかし、当該社員が価値ある情報として把握していながら、いまだ転職先に伝えていない情報については、転職先で活用することは問題ない、ということになります。また、長年の経験に基づいて培ったノウハウについても、当該ノウハウがすでに知的財産権として保護されているものでなければ、当該ノウハウを活かして転職先でバリバリと働くということも不正競争防止法違反にはならない、ということでしょうね(ただし民事上の競業避止義務に違反するかどうかは別として)。

このあたりの法律問題は知的財産に詳しい専門家の方の意見をお聴きいただくべきと思いますが、上記のとおりポストコロナの時代の転職者増加の時代となれば、「頭の中に残る営業秘密」問題は、結構悩む方も多いのではないでしょうか。転職者だけでなく、転職者を受け入れる企業側も、できれば「分別管理」などの工夫のよって訴訟リスクを低減させる必要があるように思います。

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2021年1月 4日 (月)

社長が知りたい「法務」の話とはいったい何だろう

昨年12月29日の日経朝刊(6面)に「日本企業、また敗れるのか」と題する梶原編集委員の論説記事が掲載されていました。今朝(1月3日)の同氏の論説「日経平均3万円の条件」(5面)とも重なる内容ですが、失敗をおそれる日本企業の文化が90年代半ばのIT革命における敗北、08年直後のリーマンショックからの復興での敗北を招き、さらに今回のコロナ後の復興でも敗北を喫する要因となる、とのこと(なるほど)。

そして、失敗をおそれる企業文化とともに、「企業の変革に必要な手つかずの課題」として取り上げられていたのが「法務部門の覚醒」です。新しいことにチャレンジするためには、経営者が法務を手元に置く必要があることが示されています。グレーゾーンにおけるリスクテイクの判断やルール・チェンジ(ルールメイキング)のための企画作りに法務を活用することはとても重要だと思いますし、ここ数年「攻めの法務」は様々なところで検討されていますね。

ただ、理屈としてはその通りなのですが、上場会社の現実をみると「法務に予算をつける権限を持つ」社長さんの意識はどうか。正直、会社の有事(不祥事やM&A、重要な株主提案等)の場面では別として、「攻めの経営」に法務を活用することを重視しておられる方は少ないように思いますし、理屈と現実の間には大きなギャップがあり、まずはこのギャップを埋める作業が必要だと考えております。

理屈からすると法務かどうかはわかりませんが(むしろアヤシイ?)、社長さんに「法務らしい」ことへの興味を持ってもらうのが、このギャップを埋める早道ではないでしょうか。ということで、私が日ごろ個人的に相談相手になっている3人ほどの社長さん(会長さん)にウケる話題はなんだろうか、と考えますと、二つしかありません。ひとつは内部統制の話です。「ガバナンス」ということになると、あまり関心を示してもらえませんが、内部統制ということですと「自分の考えが間違っていないかどうか」といった場面でよく相談の依頼があります。経営者相手ですと「意見書」など読んでくれる時間もないので、ともなく相談の場で「合ってるか、合ってないか」の判断が要求されます。

そしてもうひとつが「不祥事の他社事例」の話です。これはどの社長さんもメモをとって「なぜそんなことが起きたのか」「うちの会社と組織は似ているのか」「社長は普段からどんなことをしていたのか」と(私が知らないことまで)根掘り葉掘り質問されます。幸い、ブログを15年ほど書いているので、新聞ネタだけでなく、企業不祥事発生時の調査委員会報告書なども頭に入っていますので、あれこれと同社のビジネスに近い案件などの例をお話しするととても喜ばれます。こういったことの繰り返しで「なるほど、新しい案件を進めるにあたっては法務の話を聞かないと」といった意識が社長さんに芽生えてくるのではないかと。

この「法務らしい」「法務っぽい」というところがミソでして、私は自分の関心分野から上記の二つくらいしか話題を提供できないのですが、知財や労務、競争法など、それぞれの関心分野周辺の話題であれば何でも構わないと思うのです。「それはビジネスにとって美しい、美しくない」といった価値基準にひっかかりそうな話題であれば、結構社長さんは関心を寄せてくれるのではないでしょうか。ゼネラルカウンセルやCLOの地位にあれば別ですが、しょせん最後の経営判断は社長さんが行うわけですから。

昨年、社内のある環境問題の解決が(社内でたらい回しとなり)放置されていたところ、その問題を知った反社会的勢力から揺さぶられ、大きな不祥事に発展した事例に関与しましたが、守秘義務に反しない範囲でこのお話しすると、某社の社長さんもビックリで「やっぱりESG担当に重要な人材を配置しよう」ということになりました。「これから情報セキュリティとESGがカネになる・・・」というのは、あっちの世界の方々も同じ意見なのです。

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2020年12月23日 (水)

エフオーアイ粉飾事件・最高裁判決-内部監査室長の積年の恨みは晴らせたか?

昨日(12月22日)、速報版でご紹介したとおりエフオーアイ事件(多額の粉飾を隠して上場した会社の上場手続関与者に対して、エフオーアイ社の株主からの損害賠償請求事件)の最高裁判決が出ました(損害額を確定するため原審に差戻し)。原審(東京高裁)の判断を覆して、最高裁はエフ社の上場時における引受証券会社(主幹事)であるみずほ証券の損害賠償責任を認めました。主幹事証券会社に金商法21条に基づく損害賠償責任が認められるのは初めてです。

主幹事証券会社の責任根拠となる金商法21条1項4号、同条2項3号の解釈の枠組みは原審とほぼ同様と思われますが(※)、有事における信頼の原則(会計監査人と主幹事証券会社との役割分担に由来する責任限定法理)が適用される前提としての調査確認の程度については、相当程度信ぴょう性の高い匿名投書(事実上は事件当時の内部監査室長による内部告発)の内容に(主幹事証券会社が)接していたことを考慮したうえで、財務計算書類に対する会計監査人による監査手続きの十分性自体を自ら精査する必要があるとしています。

※・・・法律家の判例解説であれば、本来金融商品取引法第21条1項および2項の解説からスタートすべきですが、ブログの読者の方々に向けたお話なので、ここでは割愛させていただきます。

この点、東京高裁は(匿名投書を受け取った主幹事証券会社は)会計監査人の追加監査手続きの証憑に依拠しながら「監査結果に関する信頼性についての疑義が払拭されたと合理的に判断していれば、引受証券会社に通常要求される注意義務を尽くしたと言える」としていました。しかし、最高裁は「それだけでは粉飾の可能性を否定するに足りる監査手続きが実施されているか否かを確認したとはいえない」と判断しています。

基本的には事例判決であり、最高裁判決の射程範囲はそれほど広いものではないと思いますが、内部監査室長からみずほ証券に対して2度にわたって内部告発がなされた点(しかもその告発内容が会計監査の信用性に疑義を生じさせるに十分である点)が、主幹事証券会社の責任を認めるにあたって、大きな影響を与えたことは間違いありません。2018年4月18日付けエントリー「会計監査人、内部告発者に参考となるエフオーアイ事件高裁判決」でも述べましたが、今後、従業員が不正を指摘するにあたって、弁護士や会計士のアドバイスをもらって上手に内部告発を行えば、東証や主幹事証券会社の法的責任が問題となりうる、つまり、相当程度厳格な上場審査が必要となる、ということです。

(以下の事実の記載は、東京地裁の一審判決が認定した事実からの引用であります)エフオーアイ社の元内部監査室長による投書を受け取った主幹事証券会社は、エフオーアイ社経営陣から「あいつは精神的に不安定」「会社の和を乱しているから」といった説明を真に受けて、直接ヒアリングをすることはありませんでした(結局、その後、内部監査室長は異動されています)。もちろん、それまでに何度か主幹事証券会社も当該内部監査室長と面談をしているのですが、「なんだかプライドが高くて独善的な人」ということで、上場妨害因子だとレッテルを貼っていました。常勤監査役からの信任も得られていなかったようです。

そもそも最初に投書が届いた際、エフオーアイ社から「これは内部の不満分子によるものだ」との説明を受けたことで、主幹事証券会社は「内部の不満分子が第1投書を作成したのであれば、そもそも御社の労務管理体制自体に問題があることになる。この投書の作成者が特定されなければ御社のレピュテーションリスクが内在し続けることになる。このまま上場したければ、まずは投書者を特定し、内部者であれば社内処分をすべき」と述べています(第一審判決書130頁~131頁)。今から10年以上前の話なのでやむをえないかもしれませんが、公益通報者保護法の改正法が施行される2022年以降は、これは犯罪行為になりうるので注意が必要です(改正法12条違反行為の教唆)。

一方、主幹事証券会社の立場からすると、「東証にも同じ投書が届いたので、監査法人と東証と三者で対応を協議して、調査方法については東証も納得していたではないか。また、有事対応については顧問弁護士にも相談し、さらに大手法律事務所にも意見書をもらってOKが出ていたではないか。どうして当社だけが責任を負うのか」といった気持ちもあると思います(引受審査に関する資料の正確性を前提とした意見書だったので、そもそも資料が偽装されていたことについて思いが至らなかった点はマズいと思いますが)。このあたりが高裁での判断では重視されていたのかな・・・と。

いずれにしましても、社内で「異常者」のレッテルを貼られ、事実上の不利益処分まで受けていた元内部監査室長の告発の正当性が、ようやく認められたのではないでしょうか。改正公益通報者保護法が施行される前に、内部告発への対応に光をあてた最高裁判決が出た意味はとても大きい(公益通報者保護法の改正作業に関与してこられた宇賀先生が判事として関与していた点も見逃すことができないように思います)。

 

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