日産・ホンダ統合撤回問題と日産取締役の責任について
私は個人情報保護法にはあまり詳しくないのですが、前から大阪万博のチケット購入時の個人情報取得には危険な匂いを感じておりました。本日(3月3日)の弁護士ドットコムニュース「大阪万博チケット購入で「個人情報が流出する?」不安の声 弁護士は『さまざまな法的問題がある』と批判」を読みましたが、同法に精通された弁護士の方の解説で「やっぱりマズイよねえ」と認識した次第です。おそらく協会のほうで修正されるとは思うのですが、すでにチケットを購入された方もいますので、ホント大丈夫かなぁ。以下本題です。
これまで「取締役の責任問題」といえば企業不祥事発覚による経営責任・法的責任追及が議論される傾向が強かったように思います。しかし、本日(3月3日)の日経ビジネス「日産、ホンダから出資受け入れ再検討へ 破談から一転、内田社長は退任濃厚」(有料記事?)では、ビジネス上の重大な経営判断に問題があった際の取締役会構成員全員の経営責任の取り方が議論されていて、企業統治改革が進むガバナンスとの関係でも今後の議論の進展に興味が湧きますね。このような議論は、定時株主総会における機関投資家の議決権行使の判断にも影響を及ぼすかもしれません。
最近、私の講演でも「攻めのガバナンスと役員の経営責任・法的責任」を扱うことが多くて「社長の交代という経営責任の取り方だけではガバナンスは変わらないのではないか」と考える事案も課題に含めています。当然のことながら、経営判断には失敗は付きものですから、結果だけをみて経営責任を問うことは思考停止に至ると思います。なぜ失敗したのか、失敗に至るリスクはいつから考慮していたのか、軌道修正をする議論は行われていたのか、といったところをステークホルダーにきちんと説明できればステークホルダーからの「信認」は揺るぎません。ただし合理的な説明ができなければ監督する立場にあった取締役にもそれなりの経営責任が発生するのではないでしょうか。
今回の日産の事例でも、いったんホンダとの統合を日産の取締役会は否決したわけですから、(再協議の決断に至るのであれば)社長交代だけで済む問題ではないように思います。U社長の交代を長い間検討してこなかった指名委員会も同様でしょう。ただ、「経営責任あり=交代」というのが唯一の責任の取り方とは思えません。ガバナンスの失敗(反省)の根本原因を解明したうえで、(これまでのメンバーが相当程度残る形で)次のガバナンス構築に失敗の教訓を活かすということも検討すべきです。とくに社外取締役の方々については交代よりも継続していただくほうが得策ではないかと。
上場・非上場に関係なく「資本効率経営」「資本コストを意識した経営」が求められる時代となり「経営判断のスピードがビジネスの勝負を決める」となれば、当然役員の責任判定も法的責任から経営責任へと関心が移ることになります(企業の有事において「第三者委員会」が重宝される理由もそこにあります)。だからこそ、有事において株主を含めたステークホルダーから納得が得られる責任の取り方(責任をとるべき合理的な理由)を社会の共有資産として検討する時期に来ていると感じています。