2019年7月25日 (木)

財務省再生プロジェクト推進会議の有識者メンバーに就任いたしました。

すでに6月下旬から新聞等でも報じられておりましたのでご承知の方もおられるとは思いますが、当職が財務省再生プロジェクト推進会議の外部有識者構成員として就任いたしましたので、当ブログでもお知らせいたします。また、日経や朝日でも報じられておりますように、昨日(7月24日)第1回の再生プロジェクト推進会議が開催されました。

推進会議のメンバーは、財務次官と官房長、そして外部メンバーである小林喜光氏(三菱ケミカルHD会長、前経済同友会代表幹事)、秋池玲子氏(BCGパートナー&マネージング・ディレクター 財務省参与)と私の合計5名です。第1回の会合では、外部メンバーから①現時点までの再生プロジェクトの取組みへの意見と、②今後の再生に向けた取組みへの提案などが示されました(詳細については控えさせていただきます)。私は次官と官房長のほうを向いて、というよりも、スタッフ(課長および課長補佐)の方々のほうを向いて話をする時間が長かったかもしれません。決してパフォーマンスではなく、この方々(35歳から45歳)の意識が変わらないと(いろんな力学が働く組織であるがゆえに)財務省は変わらない(変われない?)、と思うからです。

なお、再生プロジェクト推進会議のほかに、私は(昨事務年度同様)コンプライアンス推進会議のアドバイザーも務めておりますので、会議終了後は7月に他省庁から戻ってこられて審議官等に就任された方々向けの研修を行いました。この1年間、財務省の内側を知ることができましたし、また情報公開法や公文書管理法の課題などを理解する機会も増えました。ちなみに秋池さんはこの1年間で300名以上の職員の方々と面談をされていて、改革案を検討されています(すごいなぁ・・)。ちょっと秋池さんの足元にも及びませんが、私なりに今後も、覚悟して財務省改革に取組む所存ですので、また有益なご意見等ありましたらお聞かせください。

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2017年5月19日 (金)

労働基準監督業務に関する民間委託の実効性について

9784532263355 当ブログでは政治の話はしないつもりですが、どうも「ロシアゲート事件」は深刻な事件になりつつありますね。ただ、トランプ氏が辞任しても、かつてニクソンさんが辞任したときほどのショックはないだろう・・・との見方が強いようなので、リスク管理の面からも、日本企業としては静観するところが多いのではないでしょうか。

さて、政府の規制改革推進会議の作業部会が、労働基準監督官の業務を補う役割を民間の社労士さんに委託するよう求める提言をまとめたそうで、厚労省もこれを受け入れる方針と報じられています(たとえばこちらの朝日新聞ニュース)。監督業務に民間人を活用することは、ILO条約違反ではないかと指摘されていますが、働き方改革が推進される中で、「正直者が馬鹿をみない」ためにも、監督官不足を補うことは喫緊の課題ということのようです。

「労働基準監督官の仕事って、いったいどんなものなのだろうか?」・・・・

こういった素朴な疑問を抱く方にお勧めしたいのが「労基署は見ている」(原論著 日経プレミアシリーズ 850円+税)です。本のタイトルには「労基署」なる用語が使われていますが、これは一般の方のために使用されているものであり、専門家の方は「労基署」とは言わないそうです。「監督署」「監督官(労働基準監督官」というのが通例とのこと。

上記民間委託の実効性を考えるにあたっても、この本を読むといろいろと理解が進みます。監督官の仕事として(電通事件に代表されるような)労基法違反の摘発に光があたっていますが、実際には労働安全衛生法違反事件の調査が多いこと(労災事故現場の立会等)、つまり警察や消防など公務員間の信頼関係・守秘義務が前提となる業務が多いことがわかります。

また、民間に業務を委託するにしても、監督官のどのような仕事であれば可能なのか。労働時間調査といったことが、民間委託の対象になるのでは、とマスコミでは報じられていますが、実際にたいへんなのは行政処分後の指導業務なので、おそらくそのあたりが委託の対象になるのではないかと思われます。この指導業務を民間委託できれば、監督官は多くの時間を臨検に割くことが可能となり、調査対象の事業所も増えるのではないでしょうか。

さらに民間委託反対論者の方々から、「監督官が不足しているのであれば増員すればよい」との意見が出されていますが、本書をお読みになるとおわかりのとおり、熱意がないと摘発はできないようです。筆者自身が、命の危険を感じながらもなんとか摘発に至った事例が紹介されており、失礼ながら、このような身の危険を承知のうえで事業者摘発に尽力する方がどれほどいるのだろうか・・・と。労災事故の現場で家族が悲しむ姿をみて、次第に「許せない」という気持ちが涵養されていくのかもしれません。

監督官を退職された筆者が(本書の末尾で)提唱されていますが、監督官不足を補い、監督業務の実効性を上げるためには、そもそも事業者が労務コンプライアンスの体制を構築することが大切だそうで、この点は私も共感するところです。いわば厳格な事後規制ではなく、事業所を活用した事前規制的手法です。どうすれば監督署から目をつけられない事業所になるのか、事業所自身が真剣に考える。そのためには現場の常識と労務行政の常識をつなぐ「通訳」が必要なのでしょうね。大切な人的資源を劣悪な労働環境から守るためには、この「通訳」をどう育てるかがポイントになるものと個人的には考えています。

あと、「民間委託」といっても、もちろん社労士さんだって「費用対効果」ですよね(当然といえば当然ですが)。そのあたりの議論は全くされていないようですが、ホンネで考えますと、委託料こそ実効性を考えるうえで一番大きな課題のような気がいたします。

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2016年12月14日 (水)

証券市場の健全性確保に立ちはだかる司法の壁?(K物産事件)

12月12日をもって証券取引等監視委員会の佐渡委員長が退任されました。日経ニュースによりますと、佐渡氏は(東芝事件で歴代社長の立件が困難を極めていることについて)「検察との関係などいろいろと検討すべき事案であり、新しい委員会で新しい視点で判断していただきたい」と述べられたそうです。金融庁VS検察庁の決着は、次の委員長の時代に持ち越されるそうです。このままでは証券市場の健全性は確保できない、といった強い意欲をもって金融庁が立件に動いたのですが、検察庁は司法判断のハードルの高さからか、なかなか積極的に動くことはないようです。

さて、「金融庁vs検察庁」の構図で司法の壁を痛感するものとして、東芝会計不正事件ばかりが報じられていますが、私はむしろ神戸物産事件のほうが深刻ではないかと感じています。自社株買いに絡む内部情報を漏えいしたことによる、日本で過去最高の巨額(50億円)インサイダー事件として今年2月に報じられた神戸物産インサイダー疑惑。同社内部でも徹底した調査を行ったそうですが、今年6月には法人および役員に対する神戸地検の捜査も行われたことが報じられました(会社自身もリリースで認めておられました)。しかしご承知のとおり、この12月9日に神戸地検は法人及び役員について(理由は明らかにされていないものの)不起訴処分とすることを決めました(会社のリリースに基づく)。

昨年11月に金融庁の調査が開始されたそうですが、今年2月以降は巨額インサイダー事件の報道で株価は急落、同社役員の名誉も失墜したそうですが、ここでも金融庁と検察庁との意見の食い違いがあったものと推測されます。ここからは私の完全な憶測にすぎませんが、この9月に東京電力株式の公募増資に関する関係者への課徴金命令取消判決が出たところなので、「情報提供者」を立件するインサイダー規制についても検察庁は相当に慎重になっているのではないでしょうか。しかし今回の神戸物産事件については、上場会社およびその一般投資家に及ぼす影響の大きさからみて、単なる金融庁vs検察庁の構図の話題だけで済む話ではないように思います。むしろ今後の証券市場の健全性をどのように規制していくべきか、といった大きな論点に関わる話ではないかと。

証券取引等監視委員会の佐渡委員長は、最後の記者会見にて「印象に残っているのは公募増資インサイダー事件だ」と述べておられましたが、一連の公募増資インサイダー事件を含めて、心残りになった事件もいくつかあるのではないかと(勝手に)想像しております。

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2016年11月29日 (火)

社会福祉法人改革によるガバナンスの強化の行方は?

今朝(11月28日)の日経新聞では監査法人や同族企業、そして社会福祉法人に関する企業統治が話題になっていました。そもそも経営諮問委員会のようなものを設置することが「ガバナンス改革」とまでいえるのかどうかはやや疑問ですが、内部の方々だけで組織運営していたところに外部の目を入れるという意味ではやはり改革といえるものがある、ということなのでしょうね。ともかく社会福祉法人の場合には、理事を選出する母体である評議員会の委員に(強制的に)社外者を選任させる、財務規律の強化を図る・・・ということなのでこちらは正真正銘「ガバナンス改革」といってもよいかもしれません。

ところで新聞記事(法務面特集記事)では、社会福祉法人のガバナンス改革はコンプライアンス経営のため、ということで「果たして理事らの不正を改革によって防止できるか」という視点がクローズアップされていました。しかし、私が過去に関与したいくつかの社会福祉法人の事例では、そもそも社外役員が就任した瞬間に、過去の不正が発覚したというものばかりでした。上場会社の役員経験者の方々が、ガバナンス構築に向けて組織内の調査を開始したとたんに、長年社会福祉法人内で行われていた不正が暴かれた・・・というものです。社会福祉法人のガバナンス改革は、上場会社にガバナンス・コードが導入されるのとはワケが違うということです。

したがって、私の感覚からすると、社会福祉法人のガバナンス改革の一番の目的は「今後、不正を防止できるか」といったゆるふわのマッタリしたものではなく、「現在行われている多くの不正をどれだけ暴くことができるか」という喫緊の課題解決だと考えます。私が過去に関与したものは、いずれもかなり規模の大きな法人だったので(事件は)地方新聞にも掲載されましたが、それほど騒がれない程度の不正が起きる比較的規模の小さなところまで含めると、たいへんな数の不正が暴かれるのではないかと推測いたします。

当然のことながら社会福祉法人では、現在「不正をどうやって隠すか、不正と言われないために、これまでの慣習をどう変えていくべきか」「社外の人材といっても、話のわかる昔からの知り合いでよいか」といったことに躍起になっておられるところもあると思いますし、これを指南するコンサルタントの方々も大忙しかと存じます(もちろん不正とは無縁の立派な社会福祉法人もたくさんあります)。いずれにしても、過去はどうあれガバナンス改革によって将来的に経営の健全化が図られることは好ましいと思います。ただ、社会福祉法人には「行政からの不当なイジメに対する正当防衛として、不正をしないと経営がやっていけない、不正をやることで、なんとか地域の福祉に貢献できている、健全化することで地域の弱者を切り捨てないといけない」といった切ない事情も多々あるので、そのあたりのジレンマが社会福祉法人統合化(=サービスの偏在化)とともに表面化する気がいたします。

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2012年6月18日 (月)

グリー社の事業活動と風営法適用問題を考える

もうすでに多方面で話題となっておりますが、先週金曜日に発売されました「四季報2012年夏号」におきまして、ゲーム運営会社であるグリー社の業績予想欄に「今後焦点は射幸性の高い仕組み自体への風営法適用に。当社含む業界6社で自主ルール作りによって徹底抗戦」との記述があり、たいへん驚きました。日経ニュースの5月22日付記事にて、グリーのコンプガチャ問題はとりあえず一件落着したかのように思えるが、火種は残っているとして「射幸性の高さ」に対する次の課題に触れておられましたが、ソーシャルゲームの問題は消費者庁から警察行政へと移行する可能性があるようです。

風営法が適用されるおそれ、というのは「射幸性の高い遊びの場を提供すること」自体が問題になる、というわけですから、ソーシャルゲームによる収益をパチンコ店やゲームセンターを運営して収益を上げるものと同様に扱う、というものです。私見としては、現行の風営法規制のままで摘発する、ということがなかなか困難ではないかと考えます。しかし、グリー社の収益事業の一部が「風営法違反のおそれあり」との評価が周知されてきますと、「法的にはグレーな事業」ということになり、「青少年の保護育成」という御旗のもと、グリー社に収益の機会を付与している周辺事業の大手企業が「コンプライアンス違反」ということで事業への協力を回避する傾向が出てきます。自社としては「グレーではなく、まったくのシロだ」と主張していても、周辺の事業会社が手を引く、ということになりますと、闘いたくても闘えない状況に陥ってしまうわけでして、事業者としては先手を打って「グレー」とされる原因を除去していかねばなりません(先の四季報にある「徹底抗戦」とは、このことを指しているものと思います)。

行政警察としては、この「グレー」のままで様子を見る、ということも十分効果的な時代になったものだと思います。摘発してしまえば、刑事事件ですから風営法違反に問えるのかどうか、かなり微妙な案件になってしまいます(検察警察側としても、裁判で下手を打つことは避けたいところ)。しかし「犯罪は成立する可能性はあるが、摘発はしない」という状況は、企業のコンプライアンス経営が重視される時代になればなるほど、対象企業の周辺における自粛的対応によって、いわば「摘発」と同視しうるほどの社会的制裁を投げかけることになります。企業としては、これを回避するために自律的行動に出なければなりませんので、行政警察としては、リスクを負わずに行政目的を達成することができるということで、事後規制社会における効果的な取締手法かと思います。

事後規制社会における効果的な取締手法といえば、6月16日の日経新聞朝刊で報じられておりました「違法ダウンロードに罰則」というのも同様です。ネット上に違法投稿された音楽や映像などを「海賊版」と知りつつPCやスマートフォンに取り込むと2年以下の懲役または200万円以下の罰金という刑事罰を科せられる法案が今国会で成立する見通しとなりました。一般の方々も犯罪者になってしまう、ということでセンセーショナルな話題となっております。しかし誤解をおそれずに申し上げますと、この刑事罰は(親告罪ということのようですし)ダウンロードした一般の方を犯罪者に仕立てる、というよりも、パソコンそのものを犯罪者に仕立てる、ということが目的かと思います。つまり、サイバー捜査を今よりも強力なものにするためには、一般人のPCの中身を強制的に捜査できる(自由に覗くことができる)理屈が必要なわけでして、いままではダウンロード自体が適法だったことから、そういった捜査はPC所有者の同意がないかぎりはできなかった。しかし今後は海賊版によるソフトをダウンロードした時点から「違法状態」が継続しているわけですから、犯罪捜査のためにPC上に強制的に侵入することも可能となり、そこから「巨悪」にたどりつくことが可能となるわけです。

この理屈の重要なところは、巨悪を摘発するためには「小悪」の幇助犯として捜査するのでは実効性がない、というところです。幇助犯構成だと、まず小悪をきちんと犯罪として立件しなければなりません。しかし、チマチマと「小悪」を立件している間に巨悪を取り逃がしてしまう可能性が高いわけでして、小悪には目をつぶってでも、巨悪を正犯者として抑え込むためにはどうしても(たとえ個人のプライバシー権侵害という問題が生じたとしても)必要な法改正ではないかと思われます。平成19年7月17日の最高裁第三小法廷での判決では、振り込み詐欺の主犯格をなんとしてでも摘発できるようにしなければ、国民の財産が危険にさらされることを意識して、「たとえ自分名義の預金口座を作る場合でも、後日その通帳またはキャッシュカードを他人に譲渡する目的があれば、銀行に対する詐欺罪が成立する」として、理屈の上では少し疑問が残る事案でも、主犯格摘発への道を開きました。今検討されているインサイダー取引規制の法改正なども、ひょっとすると同じ方向に向かうかもしれません。インサイダー情報を受領してお小遣い程度の利益を上げている犯罪者(もしくは行政処分対象者)を立件せずとも、営業活動の一環として、インサイダー情報を提供する側のほうが悪質なケースもあるわけで、やはり教唆犯や幇助犯として規制するのではなく、実行正犯として立件が容易になるように法改正を進めるほうが規制の実効性は上がるような気がします。

こういった「形式的な違法状態」を活用して「本当の」規制目的を達成する、という手法はダンスに関するクラブ規制にもみられるところであり、風営法の網をなんとかかぶせておいて、ほとんどのクラブを「いつでも強制的に立ち入ることができる状態で放置しておく」わけです。そして近隣住民から騒音問題で苦情が出たり、薬物利用の噂が広まったりした場合に、国民の安全を未然に守ることを目的に風営法違反で摘発に乗り出す、ということになります。風営法に詳しい法律家というのも非常に少ないこともあり、警察側には願ってもない便利な規制手法だと思います。ここにも、私が「行政法専門弁護士待望論」を主張する理由があります。

先のグリー社の収益事業と風営法適用に関する問題を考えておりますと、この「形式的違法状態」というものが、コンプライアンスの時代となって、ソフトローによっても実現可能になってきたのではないか、と思えるようになりました。

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2012年5月14日 (月)

闘うコンプライアンス-敵は行政だけではない(景表法問題)

ここ2週間ほど、コンプガチャ規制に関する騒動がマスコミやSNSを駆け巡りました。私はゲーム業界やソーシャルゲームによる事業経営に精通しているものではありません。それでも先週二度ほど本問題をエントリーいたしましたところ、たいへん多くの方に閲覧いただき、メールやコメントにて、多くのご意見を頂戴し、また私自身の基本的な認識の誤り等もご指摘いただきました。

本件は、ゲーム産業の騒動に留まらない、重要な企業コンプライアンスの問題を含むものと認識しておりますので、改めてここまでの意見を書き留めておきたいと思います。

前のエントリーでも書きましたが、これほど行政の事前規制の代替手法がうまく功を奏したケースはなかったのではないか、と思います。行政当局としては100点満点の効果ではないかと。コンプガチャは景表法違反の可能性が高いとの見解が示されると報じられると、グリー社、DeNA社を中心に、コンプガチャ廃止決定が次々とリリースされました。まるで各企業とも、消費者庁から一斉に排除措置命令が出されたかのような風情です。一社も「我々は違法だとは思っていない。もし消費者庁から何らかの処分が下れば断固闘う」といった姿勢を見せる企業は存在しません。とくにこういった企業対応を責めるわけではなく、高度にコンプライアンス重視の経営が進むと、こうなるのだなぁと実感する次第です。こういった状況のなかで、おそらく行政当局としては、大手を振って自身の見解が絶対に正しいものとして示され、そこに大きな権威付がなされることになろうかと思われます。

このたびの現象に味をしめて、おそらく消費者庁だけでなく、どこの行政機関も、今後同様の「正式な事前規制なき代替規制」によって各企業の営業活動への束縛を強めることになろうかと。なんといってもコンプライアンス経営重視の時代、業界団体や取引先企業の行動(コンプライアンス違反企業とは取引はできない、違反企業は業界団体として協力できない)によって、争いたくても争えない状況に立ち至ってしまうわけです。あたかも行政だけが相手方であるかのように思えるわけですが、実は「コンプライアンス」を錦の御旗として、利害関係者の行動によって事業の継続性に支障を来す事態に追い込まれてしまいます。これは本当におそろしい状況です。

しかしJFKさんも指摘されるとおり、コンプガチャの違法性については、あくまでも行政による見解であり、常に正しいとは限らないはずです。行政は国民の生命・身体・財産に対する安全を保護する立場にあります。したがって「国民の生命、身体、財産の安全にとって、何か被害があっては遅い」という視点で物事を判断します。そうなりますと規制(行政の見解)は拡大傾向(権利侵害的)になるのが当然です。とくに今回のように営業の自由の侵害に向けられた場合、その萎縮的効果が非常に気になるところです。こういったケースでは、司法判断を得る機会が付与されることで権利救済が図られるわけで、憲法上の裁判を受ける権利も保障されます。しかし、司法で救済されるべき行政による事前規制が縮小され、これに代わるソフロトー規制全盛の時代になりますと、裁判で権利が救済される意味も失われ、結局行政による恣意的な営業規制に歯止めがかからなくなります。

事後救済的見地からの思いつきでしかありませんが、やはりこういった行政当局からの圧力に対しては、企業側としても(当面は従うことはやむをえないものと思いますが、今後の事業継続のためにも)十分な法的判断を要するものと考えます。当然、消費者庁との継続的な審議の場が必要ですし、毎度同じことを申し上げて恐縮ですが、比例原則、平等原則、多事考慮の視点から行政当局の対応について吟味する必要があろうかと思います。

比例原則

まず弊害を除去する目的としてコンプガチャ規制廃止は過剰な規制にならないか?もっと他に、緩やかな規制はできないのか?という問題です。消費者庁が詳細なガイダンス等において、景表法違反とそうでない事業活動との境界線が明確になれば良いのですが、もしそうでないとすると、今後も業界団体等においてこの境界線を検討していく必要があると思います。ただし、コンプガチャ規制は行政当局にとっては必要最小限度の規制と考えており、もし公式な処分が出されると、その周辺領域にまで規制が及ぶ可能性があることも考えておかねばならないところです。たとえば本日の日経ヴェリタスの記事にもありますように、ビンゴ形式など同様に課金を促すシステムは無数にあり、規制対象がコンプガチャ以外に広がる可能性があります。そうなると、各企業とも業績への影響がどの程度なのか計り知れません。

平等原則

次に同様の規制対象行為は他の業界にも存在するのに、なぜゲーム市場だけなのか?という問題であります。ゲーム業界だけが景表法の対象となることについて明確な理由があるのかどうか、ここがはっきりとしなければ他の業界も、萎縮効果が発揮され、自由な営業活動が過度に自粛されてしまうのではないでしょうか。たとえばコメントでDMORIさんが指摘しておられるように、なぜダイヤルQ2の規制の件と今回は異なるのか?課金制度そのものにこそ問題があるのではないか?携帯電話会社にも国民の被害拡大に関する共犯的な責任があるのではないか?という問題にも明確な回答が必要になろうかと思います。

他事考慮

これは「警察と消費者庁との縄張り争い?」といった記事を紹介されている迷える会計士さんのご指摘が象徴的です。本当は課金制度にまつわる射幸性の高さや未成年者保護が問題であり、パチンコ規制と同様に規制すべきとの行政当局の真意があるのでは?といった問題であります。警察行政の手法として、一定の網(形式的、軽微な違法状態の存在)をかけておいて、政治的思惑をもって、ピンポイントでターゲットを絞り、別件を追いかけていく、という手法。たとえば賭博性の強さを規制するために、もしくは未成年者保護を主たる目的とするために(コンプガチャについては30代~40代が利用者の主流なのに)景表法を問題とするといった問題です。

本問は、各企業がコンプライアンス経営を重視する傾向にあるなかで、その企業の姿勢をうまく活用して行政目的を実現するという新たな事前規制代替手段の広がりを検証するために、きわめて興味深い事件です。被害者の会等によって、被害者の方々がゲーム各社に対して訴訟を準備していると報じられています。事後規制(権利救済)の世界において、コンプガチャの違法性が明確になるのかもしれないが、被害者が民事的に救済されることと、行政法的に問題が指摘されることとは論点が異なります(コンプガチャが違法だと認定されたからといって、民事上の契約が無効になり返還請求が認められるとは限りません)。          

むしろ企業がコンプライアンスの美名のもとに、過度に事業活動を自粛したり、他者を批判することに伴う経済活動への影響こそ、これからの大きな課題だと認識しております。この課題を企業自身が克服していかなければ、被害者救済だけでなく、事前規制の分野でもますます「弁護士の飯のタネ」を増やす結果になってしまい、企業のコストは増える一方であります。そういえば、最近「コンプライアンス上の問題行為あり」として、企業と対立する役員の告発事件が続発しております。そういった事件の代表的なものを、そろそろ取り上げてみたいと思います。

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2012年5月10日 (木)

闘うコンプライアンスー景表法違反で御社は闘いますか?その2

本日はBLOGOSさんやアゴラさんに転載いただくほど、たいしたことは書いておりませんので、先に申し上げておきます(笑)

皆様すでにご承知のとおり、コンプガチャ問題についてグリー社もDeNA社さんも5月末をめどにコンプガチャを廃止します、と発表されました。裁判問題もありますので「違法とは思っていないが」」と言わざるを得ないところですが、実質的には消費者庁の意向を汲んで、同システムから撤退、というところかと。いろいろと書きたいことはございますが、さすが常連のKazuさん、JFKさんが、私の書きたいことをすべてコメント欄でおっしゃっていただいているので特に付け加えることはございません(笑)

事前規制的なコンプライアンス問題には、今回のように素早い対応が(企業防衛的には)必要かと思います(食べログ問題のときのカカクコムの対応なども同様かと)。全面撤退が必要だったかどうか、たとえば自主規制機関によって未成年利用防止措置を促進する、という方法もあったのではないか等、いろいろと考えられるところですが、各社とも潔かったですね。このあたりの撤退の速さも、やはり新興企業の身のこなしですね。

しかしサイバーエージェント社の社長さんがインタビューで「絵合わせなど、法律違反とは全く知らなかった」と述べておられますが、Kazuさんもご指摘のとおり、そもそもコンプガチャのリーガルリスクについては各社とも全く想定していなかったのでしょうか、それとも意見書はとりつけていたものの、リスクを承知で見切り発車ということだったのでしょうか、そのあたりは私も知りたいところです。

また、今回ほど、事後規制社会への移行(小さな政府論)に伴う事前規制の代替手法がツボにはまった事例はないのでは?なにもしなくても企業が(政府の思うとおりに)動いてくれるという、まさに政府の思うツボ?効率的かつ効果的な行政手法とは、まさにこのたびのような事例です。良いか悪いかは別として、でありますが。

※すいません、本当は事件の進展が著しいアコーディアゴルフ社の件をブログで書きたかったのですが、本業が忙しく十分なフォローができませんでした。。。アコーディアの件、ホントに興味深いですね。

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2011年7月27日 (水)

浜岡原発停止問題と住田弁護士の委員辞任

またまた某雑誌の原稿締切が迫っておりまして、ブログを更新する時間があまりございませんので、小ネタをひとつだけ。

今朝(7月26日)の日経新聞の隅っこの、5行程度の小さい記事が目に留まりました。住田裕子弁護士が原子力安全委員会の専門委員を辞任したことを報じたものです(住田裕子弁護士って、あの「行列」の元検先生ですよね?私はまったく存じ上げませんが)。電子版のほうの記事では、もう少し詳しい辞任理由が説明されておりまして、

住田氏は6月22日の専門部会で、中部電力浜岡原発が政治主導で停止した理由などの説明がないまま議論を進めることに対し、「お勉強会だ」(住田氏)と反発、辞表を提出していた

とのこと。私は原発反対派でも推進派でもありませんが、当ブログをご覧の皆様ならおわかりのとおり、いまだに浜岡原発の停止問題については法的根拠がよく理解できず、くすぶり続けております(ご興味のある方は、中部電力役員の英断と一般株主の素朴な疑問  闘うコンプライアンス 経産省vs中部電力 などのエントリーをご覧ください)。あれは適法な行政指導だったのか、違法な行政指導だったのか、また中部電力は「政治圧力」を理由に停止したことを説明していますが、それならば事実上は行政指導ではなく行政行為であり、指導の違法性を第三者が争う原告適格もあったのではないか?等々、疑問は尽きません。

先日も、東京で日弁連の偉い方の前で私見を述べ、日弁連としての意見を聞きたい・・・と迫りましたが、ほとんど明確な答えをいただけず、未だに気持ち悪いままであります。こういった前例が増えていきますと、そもそも法治行政の原則はどこへ行ってしまうのか・・・という懸念が今もございます。私が原子力安全委員会の委員だったとしても(そんなことはありえないですが)、原子力の安全性に関する指針を策定する前提として、まずは浜岡原発を停止しなければならない根拠を明確にして議論することを考えると思います。そのあたりがあいまいなまま議論は進められないと思うわけでして、やはりこのあたりのことに「いちゃもん」をつけたい法律家が(私以外に)存在したことに少し安心をいたしました。

こういった問題も、時間の経過とともに忘れられてしまうのでしょうね。

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2011年5月11日 (水)

ユッケ食中毒事件-厚労省の見解変更は「後だしジャンケン」ではないか?

当ブログ的には富士バイオメディックス粉飾決算事件や債権法改正中間論点整理に関する話題を取り上げるべきなのかもしれませんが、ユッケ食中毒事件につきまして、どうしても個人的には興味があるもので、またまたそちらの話題でございます。

すでに申し上げたとおり、FF社の代表者の方のキャラクターがマスコミ各社を本気にさせてしまったばかりに、皆さまご承知のとおり、FF社や(生肉販売業者である)Y商店に関する不祥事の新事実が連日報道されております(やはりマスコミはコワイ・・・)。生食用として販売したことを示すメール、飲食店側でトリミングは不要と指示されたようなメールなど、どうも最近の報道内容からしますと、FF社よりもY商店のほうにマスコミの目が向いているようにも思われます。(5月11日午前追記:産経ニュースによりますと、平成21年の東京都調査結果では、約7割の飲食店が、卸から「生食用です」と口頭等で説明されればお客に出す、と回答しているそうで、こういったアンケート結果からみてもY商店側に目が向くことになるのでは)

FF社の手元にそんなメールが存在するならば、最初の記者会見のときにマスコミに示しておけばよかったのに・・・・・と第三者的には思うのでありますが、時間的な余裕もなく、FF社の代表者としては、おそらくそこまで頭が回らなかったのかもしれません。しかし5月2日の記者会見の際、このメールは経営陣からマスコミに示されたことが5月3日の中日新聞ニュースで明らかになっております。つまり、「生食用」としてFF社はY商店から買い受けたのである、またY商店からトリミングは不要だということの指示を受けたから、それまでやっていた細菌検査も、飲食店におけるトリミングもマニュアルからはずしたのである、というFF社側の主張を裏づける証拠として、メールを示したのですね。

こういった方向性からしますと、FF社として業務上過失致死傷を基礎づける根拠事実が存在しないのではないか、ともいえそうな気がしてきます。

しかしここで不思議なのは厚労省の見解の変更。本日(5月10日)の山形新聞のニュースによりますと、山形県の担当者が、厚労省の「生肉に関する衛生基準の解釈変更」によって、たいへん困惑している、というニュースです。一部だけ引用しますと・・・

県は9日、あらためて厚労省に衛生基準を確認。同省の判断のあいまいさに振り回された県の担当者は「生食用の表示がなくても飲食店での処理が適正であれば生肉を提供できるとの見解だった。これまでの指導内容と異なる回答で困惑している」と述べた。

厚労省は新たな解釈基準を5月6日の午後6時にHP上で公表したので、それまでの山形県による検査が無意味なものになってしまったそうであります。この厚労省のリリースは合同捜査本部の一斉捜査が開始された直後、ということになります。

その衛生基準の見解変更といいますのは、従来は生肉流通に係る衛生基準に基づく検査にあたっては、「生食用」という表示の有無を調査して、その表示がない場合には販売もしくは提供してはならない、ということを重点とするよう指針が出ていたそうです。しかし、今回の厚労省見解では、生食用という表示自体にはそれほど意味がなくて、たとえ生食用という表示があってもなくても、実際に販売業者、飲食店がトリミング加工や調理器具の衛生チェックを履行しているかどうかを中心に調査する、というものに変わったそうであります。

しかしそうなりますと、FF社の立場が不利になります。FF社はY商店の「生食用である」「トリミングは不要である」とのメールを信じて提供していた、といった主張をしていたのですが、そもそも表示はそれほど重要ではない、むしろ実際に衛生基準に準じたチェックを行っていたかどうかが重要なのだ、ということが厚労省見解として出てきましたので、これは業務上過失致死傷罪における「過失」を裏付ける事実が変わってくることになります。たとえば捜査機関が「本件はFF社とY商店の過失の競合によって被害が発生したものである」といった捜査方針をとっているならば、FF社がたとえ生食用であること、飲食店側でのトリミングが不要であることを信じていたとしても、衛生基準の重要性は実際にトリミング加工を飲食店側で行うことにあるわけでして、FF社経営陣の注意義務違反が問われやすくなるものと思われます。

前のエントリーで述べたとおり、生食用牛肉の衛生基準の内容からすると「食品偽装」というよりも「性能偽装」に近い偽装が行われるものと思いますので、この厚労省の見解の変更自体は私も正しいのではないか、と思います。しかし、メールの公表→捜査の開始→厚労省の基準解釈の変更、といった時系列からみますと、これはFF社経営陣の刑事責任が認められやすくするための厚労省の意図的な後出しジャンケンのようにも推測されます。いずれにしましても、今後FF社経営陣に業務上過失致死傷罪が立件されることがあるとすれば、規制ではなく、行政指導の根拠にすぎない衛生基準の解釈が問題とされる可能性は十分にあると思います。O-111感染ルートが未だ明らかにされていない現時点においては、FF社経営陣の刑事立件は相当高いハードルがあるように感じられます。

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2010年5月11日 (火)

証券取引等監視委員会(検査報告書)に対する文書提出命令

証券市場の健全性向上のため、日夜活躍するSESC(証券取引等監視委員会)さんでありますが、IHI社の有価証券報告書虚偽記載事件について、一般株主とIHI社(経営陣?)との損害賠償民事訴訟に巻き込まれてしまった、というお話であります。IHI社は、ご承知のとおり金融庁の審判手続きにおいて、課徴金賦課の対象事実を認める旨の答弁書を提出しておりますので、すでに16億円の課徴金を納付済みでありますが、一般株主が提訴している損害賠償請求訴訟では(どういうわけか)「虚偽記載ではない」と争っておられるようで、一般株主の方から、金融庁(証券取引等監視委員会)が所持する検査報告書への文書提出命令申立てを行い、裁判所がこれを認めた・・・という構図であります。(産経ニュースはこちら)法律的にみると、「公務秘密文書」(民事訴訟法220条4号ロ)における提出免除事由(同ロ記載事由ならびに同法223条3項ないし5項記載事由)が認められなかった、ということになります。

平成17年以降、有価証券届出書および同報告書の虚偽記載事件に課徴金制度が適用され、行政当局としては迅速かつ機動的に証券市場における違法行為を捕捉することが可能となり、これまで一定の効果を上げてきたことは誰もが認めるところであります。とりわけSESCが作成する検査報告書は、おそらく課徴金納付命令を勧告するにあたっての重要書類であり、今後の調査業務の信頼性確保のためにも、当局の内部文書として、おそらく外部には公開されたくない資料だと思われます。当然、今回もIHI社関係者の意向を聴取したうえで、裁判所に対しては提出しかねる旨の回答を出しておられたものと推測いたします。しかし、裁判所はおそらく平成17年10月14日の最高裁決定(署長判決の前提となる労働基準監督官作成の災害調査復命書に関する文書提出命令を肯定した決定)に従い、SESC作成に係る検査報告書においても、たとえば検査報告書にはIHI社の証言がそのまま記載(引用)されていない、課徴金納付勧告を妥当とする当局の意思形成の判断過程が含まれていない、といったことを認定したうえで、文書提出を認めることになったものと思われます。ひょっとすると、民事裁判における真実発見のためには、公務員の職務上の秘密が一部公開され、公務に支障が出るおそれがあったとしても、それが抽象的な「おそれ」にとどまるかぎりは「真実発見」を優先する、といった価値判断があったのかもしれません。また、こういった価値判断には、昨今の情報公開制度見直しの機運も影響しているように思われます。

いずれにせよ、今回の文書提出命令は、金融庁(証券取引等監視委員会)にとっても、ちょっとビックリ!ではないでしょうか。「とりあえず金融庁には頭を下げておいて、一般の投資家から訴えられたら争えばいい」といった、金融庁にとても都合のよい実務に影響が出てくるんじゃないでしょうか。先日は金融庁の指導に従っていたにもかかわらず、過払い金請求訴訟によって多大な損害を受けたとして金融業者から国賠請求訴訟を提起されたばかりでありますが、金融庁もいろいろとツツカれる存在になってしまったみたいですね(^^;

とくに、ビックカメラ社元経営者の審判決定が控えているなかでの、今回の文書提出命令は、ビックカメラ社の一般株主による民事責任追及訴訟にも波及する可能性がありますので、今後はこのような民事訴訟に利用される可能性を前提として、検査報告書が作成されることになるのかもしれません。課徴金処分事案であっても、事後刑事処分の対象となる可能性があれば「刑事捜査に関わる文書」として公開されずにすみそうですが、課徴金事案と刑事犯則事案を初期段階において振り分ける金融庁の実務を前提とすれば現実的ではありません。また、報告書に関係者の証言を逐一記載する運用も考えられますが、そんなことをしていたら、課徴金処分を設けた趣旨が没却されてしまうことになりそうであります。(追記:別のニュース記事によりますと、関係者の証言部分だけ削除して文書を提出せよ、といった内容のようであります。)

課徴金処分と文書提出命令との関係でいえば、もうひとつ、公認会計士さん(監査法人さん)に対する金融庁の処分などはどうなるのでしょうかね?会計監査人の法的責任が追及される場面において、もし金融庁による処分が先行しているような場合(たとえばナナボシ事件もそうですが)、公認会計士・監査審査会による検査実施報告書なども文書提出命令の対象文書となるのでしょうか?もちろん、金融庁の処分の前提となる「不注意な虚偽証明」と民事責任の前提となる過失(不注意)とは、その制度目的が異なるわけでありますが、検査実施報告書には、過失を基礎付ける具体的な事実が含まれていることは間違いないわけでして、とくに平成19年の公認会計士法改正によって、課徴金処分まで設けられておりますので、相当細かい内容が報告書には記載されているものと推測されます。こういった内容が、会計監査人の責任を追及する側の弁護士に開示される、となりますと、会計専門職たる審査官の判断基礎となる事実を参考にすることが可能となるわけでして、会計監査人の過失を立証するにあたり、非常に証拠価値の高いものにアクセスできることになります。こういった手法も、これからの訴訟事件のなかで活用されるかもしれませんね。

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