2023年5月13日 (土)

全国の社外取締役必読!(その2)-SBI新生銀行TOB意見表明書

6月の定時株主総会の時期を前に「おまえ、そんなことしている場合か?自分の心配が先ではないのか?」とご批判を受けるかもしれませんが(^^;)、昨日リリースされました「支配株主であるSBI地銀ホールディングス株式会社による当行(株式会社SBI新生銀行)株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」はきわめて興味深いリリースです(このようなリリースは忙しくても、どうしても条件反射的に読んでしまうのです・・)。

とりわけ全国の上場会社の社外取締役さんにとっては必読ですね。先日、こちらのエントリーにて、伊藤忠・ファミマTOB案件の決定内容も必読と書きましたが、SBI新生銀行事案もぜひ「自分が社外役員だったらどうするか」検討してほしいと思います。TOBの対象会社であるSBI新生銀行側に設置された特別委員会を構成するのは同社3名の社外取締役と外部有識者1名です。2019年経産省「公正なM&Aの在り方に関する指針」に沿って、取引条件の公正性確保のためのプロセス、及び一般株主による判断に必要な情報開示の適正性を担保する措置が執られるわけですが、当該委員会の4名中1名が反対意見、もう1名が補足意見を述べておられます(その理由も開示されています)。さらに、対象会社の別の社外取締役(特別委員会の委員ではない方)は、当該TOBへの意見表明について(委員会報告を受けた取締役会において)反対意見を述べておられます(審議・決議に参加した取締役6名中、反対は1名。反対理由も開示されています)。

本事案特有の問題もありまして(国が保有する株式への処遇、公的資金返済の必要性)、一般株主保護はTOB価格の公正性だけでなく、株主平等原則への抵触問題(会社法違反か否か)にも配慮する必要があります。ということで、パッシブ運用が主流となった証券市場を前提に、MOM条件も合意されていない親会社のTOBにどのように社外取締役が決断するのか・・・、いやいや、委員は厳しい立場に置かれますよね。ましてや、先日の伊藤忠・ファミマの地裁決定が出ていますので、自身の責任問題も意識しながら対応しなければならない。なお、あえて個人的な感想で申し上げると、私は特別委員会で補足意見を述べておられるT社外取締役(弁護士)の意見にいちばん近いかなあ・・・と(株主平等原則に違反するかどうかはわからない、という結論を、一般株主と買収会社のどちらの負担と結びつけるか、という点はまだ悩んでおりますが)。

ぜひ多くの社外取締役の方々にも悩んでいただきたい事案です。価格の妥当性やどこに株主平等原則との関係で問題が生じるのか等、内容につきましては、また続編を書きたいと思います。なお、こういった事案の場合、どうしても従属会社側の社外取締役の対応に関心が向きがちですが、買収する側の上場会社の社外取締役にもプレッシャーがかかることに注意が必要です。近時は機関投資家から「資源の最適配分」への要望が強くなりましたので当然のことではありますが・・・

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2015年6月11日 (木)

社外取締役・社外監査役に警鐘!セイクレスト事件大阪高裁判決

旬刊商事法務の最新号(2069号)のニュース欄に、この5月21日、セイクレスト事件の控訴審判決(役員責任査定決定に対する異議請求事件 大阪高裁第14民事部)が出たことが報じられており、高裁は、原審(大阪地裁)と同様、セイクレスト社の社外監査役さんの善管注意義務違反による賠償責任を認めたそうです(昨年4月に地裁判決を紹介したエントリーはこちらです)。社長が不当に会社資産を流出させる具体的危険性を社外監査役が感じ取った場合には、①他の取締役に対して社長の暴走を止めるための内部統制システムを構築するよう勧告しなければならないのに、これを勧告しなかったこと、②すぐにでも社長を辞任させるために臨時株主総会を開催するよう他の取締役に指示しなければならないのにこれをしなかったことが善管注意義務違反に該当する、という判断ですね。

ちなみに「重過失あり」として社外監査役の責任を査定したセイクレスト社の破産管財人の(反訴)控訴も棄却され、この社外監査役さんには重過失までは認められない(過失のみ認める)とのこと。つまり賠償責任は認められましたが、(重過失があると適用が除外されてしまう)契約に基づく限定責任の範囲内で損害額が算定されています。

監査役の皆様ならご承知かもしれませんが、このセイクレスト事件地裁判決は、かなり監査役に厳しい判断だったので「たぶん高裁ではひっくり返るだろう」といった楽観的な予想もありました(恥ずかしながら私もですが・・・)。しかし高裁も地裁判断をほぼ踏襲し、社外監査役の善管注意義務違反を認めたものです。ニュースで報じられている本件判決の争点は4つほどあるのですが、これをみると、後だしジャンケン的な判断ではなく、社外監査役の行為時にさかのぼって、当該社外役員が社長の暴走を止めることができたかどうか(予見可能性の有無)を慎重に判断しているようです。セイクレスト社の場合は債務超過による上場廃止の可能性が高まっていたという「有事」にあったわけですが、会社の有事にあたり、社長を監督する立場にある者はどこまでの対応が法的に求められるのか、本判決が示唆するところは大きいように思います。

セイクレスト社の破産管財人の控訴は棄却されるわけですが、高裁は棄却理由として「セイクレスト社の監査役会は社長に対して不適切行為の中止に関する要望を行っていたのであるから重過失あり、とまではいえない」としています。たしか地裁判断でも「社長に明確な報告を求め、監査役自身の辞任もほのめかしていた」ことを理由に重過失まではない、との判断でした。つまり、ここまで監査役がブレーキ役を務めても、本気で社長の暴走を止める行動に出なければ、また他の取締役と協働して社長の暴走を止めるための体制を構築しなければ善管注意義務違反とされてしまうわけです。

ガバナンス・コードの適用等「攻めのガバナンス」ばかりが話題とされる今日、セイクレスト事件控訴審判決は「守りのガバナンス」の実効性を確保するためには何をしなければ社外役員の法的責任が問われるのか、真剣に議論するための格好の材料になるのではないでしょうか。判決を読むと(ひょっとすると)社外取締役や社外監査役に就任することが怖くなるかもしれませんが、判例雑誌等で判決全文が紹介されることを願っています(また、できれば双方から最高裁に上告、上告受理申立をしていただきたいのですが、どうなったんでしょうかね)。

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2014年6月 6日 (金)

上場会社に社外取締役(複数?)導入を迫る5本の矢

ひさしぶりの企業統治のお話ですが、ついこの間まで「社外取締役の義務付けの是非」といった議論がなされていましたが、最近のニュースなどを読んでいますと、もはや複数導入や活用論、独立性基準の開示、役員研修導入にまで話題が及んでいます。ひょっとすると、このまま取締役会制度の価値観が変わりそうな勢いですね。

最近の調査結果によると、東証1部の6割の会社が既に1名以上の社外取締役を選任済みということですが、まだまだ上場会社に対する社外取締役導入を迫る外圧は続きそうな気配です。上場会社が社外取締役導入に動かざるをえないのは、①会社法改正法案、②コーポレートガバナンスコードの策定(日本再興戦略)、③スチュワードシップコードの策定といったところへの対応だとは思うのですが、本日の日経新聞でも報じられているように、④海外機関投資家の直接要求というのもあるのですね(私は存じ上げませんでした。ちなみに、主要な大会社に対してのみ、ということですが)。社外取締役の複数導入等を進めなければ2017年以降、総会における取締役選任議案について反対票を投じるとのことです。

さて、ここまでのインセンティブは比較的わかりやすいのですが、私はもうひとつ、「5本目の矢」が存在するのでは・・・と推測します。それは、⑤もうすぐ打ち出される政府の「新成長戦略」に盛り込まれる「金融機関のガバナンス改革」です。緊急構造改革プログラムの一環として上場銀行、持株会社には1名以上の独立社外取締役を導入することが求められるようですが、これは単に金融機関のガバナンスを改革することが目的ではなく、金融機関の融資先企業のガバナンスチェックに力を入れるための基礎固めが本来の目的ではないかと。自分のところに社外取締役が存在しないのに、融資先のガバナンスチェックなど偉そうに言えない、ということでしょうか。

前にも当ブログで述べましたが、金融庁が直接監督できるところを活用して、直接手を突っ込めない上場会社のガバナンス改革に影響を及ぼすということの一環です。機関投資家、格付け会社、監査法人と並び、銀行等の金融機関にも(上場会社の)コーポレートガバナンス改革を促進する役割を期待する、ということではないでしょうか。

外国人の株式保有比率が高い企業を中心に、「せめて外見だけでも欧米並みに・・・」といった後ろ向きのアリバイ工作的発想で社外取締役導入論が語られていた時期もありましたが、もはや企業として社外取締役に何を期待しているのか、どう活用するのか、社外取締役はどういった形で自社に貢献しようとしているのか、といった実質論が語られる時代になりつつあります。旬刊商事法務5月合併号(2032号)に、社外取締役の人材紹介で有名なプロネッド社の酒井氏が「社外取締役の役割を踏まえた取締役会の運営実態に関する調査」という論稿を発表されていますが、ご一読をお勧めいたします。アンケート回答企業について、社外取締役が有効に機能した事例や、社外取締役が有効に機能するための工夫などが、かなり具体的に紹介されており、社外取締役を真剣に有効活用しようと悩んでいらっしゃる企業の姿が読み取れます。

「社外取締役を入れると企業不祥事を防止できるか」「社外取締役を入れると企業価値が向上するか」といった漠然とした抽象的な話ではなく、個別の会社の社外取締役さんは、どんな社内情報に関心を向けているのか、非業務執行役員間でどのようなコミュニケーションを図ろうとしているのか、ラインの方々へ「モノ申す」環境作りの工夫はどのようにしているか(たとえばスタッフや任意の委員会の活用等)、管理会計、制度会計上の数値をどのように活用しようと考えているのか、といったあたりが、その会社の社外取締役の「期待価値」になってくるのではないでしょうか。社外取締役としても、やっぱり「お飾り」ではなく、本気で会社に貢献したいですよね。あくまでも個人的な意見ですが。。。

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2013年1月22日 (火)

東証独立役員セミナー「独立役員、こんなときどうする!?」

今朝(1月21日)の日経新聞法務欄に社外役員リサーチのプロネッド社による上場会社アンケートの結果が紹介されておりました。弁護士を社外取締役に選任する場合、「経営の幅広い知識や経験を持つ人材が不足していること」が懸念材料だそうであります。ちなみに企業が弁護士たる社外取締役に期待するのは「リスク管理」が中心であり、弁護士以外の社外取締役に期待している役割は、約6割の企業が「経営戦略の執行の監督」を挙げておられるそうです。

法制審議会会社法制部会長の岩原教授も、モニタリング・モデルとしての取締役会の第一の機能は「経営者の業績の評価」であり、とくに社外取締役に求められるのは、「経営陣が今後の収益予想に基づいて策定した経営戦略方針に基づく業務執行の成果が、当初の方針に照らし妥当であったかを、経営者に業績の結果に則して説明させ、責任を負わせること」にあるとされています(「月刊監査役」2013年1月号6頁)。経営者の成果を評価する何よりの指標は会計成果であり、だからこそ財務専門家としての独立取締役は重要だとされています。

社外取締役候補として、弁護士資格保有者が挙げられることは多いのですが、「経営パフォーマンスの評価」という視点から、企業価値の向上に資する社外取締役の役割を考えますと、上記プロネッド社のアンケート結果は当を得ているものと思います。上記記事で締めくくられているとおり、弁護士が社外取締役に就任する場合には、経営や事業への理解を深める努力を怠らないようにしなければ(リスク評価だけでは)一般株主の利益向上のために有用とは言えないかもしれません(でも、複数の社外取締役が選任されるケースでは、有事対応やD&O保険の適用問題など、弁護士が選任されているほうがかなり有用な場面もありますよ)。

中堅規模の上場会社の社外役員を8年間経験した者としては、弁護士が経営パフォーマンスの評価という観点から有用であるためには、まずは「儲けのからくり」をきちんと理解することが第一かと(私も「比較的単純なビジネスモデル」であるにもかかわらず、理解するまで時間がかかりましたので、あまり偉そうには言えませんが)。その業界の経営構造だけでなく、同業他社と比較したうえでの「当社の儲けのからくり」も理解しなければ、会計成果やリスク評価すら「とんちんかん」な意見しか言えないように思います。また、経営者の暴走を止めることことも重要な役割かもしれませんが、(個人的には)、経営者が経営スピードを思いっきり上げてもコケないように「道路に穴があいてないか、大きな段差がないか」を経営者に示すような意見が言えること(経営者の背中を押すこと)も大切だと思います。

さて、社外取締役と証券取引所ルールによる「独立役員」とは、その役割としては少し異なるところもありますが、このたびの会社法改正(附帯決議)でも明記されたように、今後は独立役員の役割についても再び注目が集まるところかと思われます。ということで、東京証券取引所は、2月5日、一昨年に引き続き、第二回目の独立役員セミナーを開催することとなりました(セミナーのご案内はこちら)。私もこのシンポに登壇することになりましたが、まさに弁護士の独立役員経験者として発言させていただきます。ちなみに、私は8年間の社外監査役(すでに昨年6月に退任)就任期間のうち、最後の2年ほど独立役員として登録されておりました。

どうみても経営戦略への知見が豊富な他のメンバーの方々と比較して、「なぜこの弁護士が?」と疑問視されるかもしれません。しかし、これにはきちんと役回りがある(と、思っております)。独立役員といいましても、現実は社外監査役が7割を占めており、上記アンケート結果の懸念されるとおり、経営の幅広い知識や経験が(若干)乏しい独立役員もいらっしゃるかもしれません。ということで、社外監査役出身の独立役員であっても、一般株主の利益保護の観点から、「ガバナンス、ファイナンス、資本政策、有事対応等、いずれの課題についても、最低これくらいは対応できたほうが望ましい」というモデルを示す役回りを期待されているものと(勝手に)推測しております。

証券取引所は、今後「社外取締役たる独立役員」の選任義務(努力義務)を、企業行動規範において明記するようですが、もちろん社外監査役たる独立役員も継続して就任されるところです。ハンドブック「独立役員の実務」(2012年 商事法務)のなかにも記載されているように、社外取締役と社外監査役では、一般株主の利益保護のために「異なるアプローチもありうる」とされています。そういったアプローチの手法も、どこかで示すことができれば・・・とも思います。

東証もしくは大証の上場会社の独立役員の方のみ参加可能ということなので、参加資格は絞られておりますが、もしご参加いただけます方は、神田先生の基調講演と共に、当シンポをご覧いただければ幸いでございます。

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2012年11月28日 (水)

社外取締役制度に対する最近の議論と若干の私見(その3)

欧州域内に本籍を置く上場企業に対し、2020年までに女性の非常勤役員の比率を40%まで引き上げる法案が成立するそうです。ダイバーシティの義務化が実現するようで、「女性役員が在職する企業のほうがパフォーマンスが高い」という実証結果を根拠にしているようです。

さて、社外取締役制度に対する最近の討論に関する若干の私見ですが、(その2)の続きを書きたいと思います。前回少しご紹介した「社外取締役を導入することが相当でない理由」に関する論点ですが、旬刊商事法務の座談会記事(1978号6頁以下)等を読みますと、やはり企業側にとって相当にハードルは高い、とのご意見が強いようです。

ただ私なりに(冷静に)この「社外取締役を導入することが相当でない理由」を考えますと、以下のような理由はいかがでしょうか。たとえば

企業の組織構造(多角化事業、グループ企業化、グローバル化、業態業種)からして、当社では社外取締役がその企業特性を理解するためには、相当の時間と労力を要する(いわば情報獲得コストが高い)。当社として意思決定のスピードがさらに要求される時代において、このような状況で外部第三者が経営に関与したとしても、企業価値の向上することが困難なばかりか、企業価値を毀損させてしまうおそれがある

というものです。もちろんすべての上場企業にあてはまる、というものではありませんが、組織構造が複雑な企業では、こういった理由も成り立つのではないでしょうか。企業としては、価値向上のために社外取締役を導入したいわけですが、独立性要件を満たすことができる「全く業界の異なるところ」から選任したい。しかし、そういった方に取締役として経営に参画してもらうには、よほど社内事情に精通してもらわねばならない、たとえば海外展開を中心にしている企業など、どうやって社外取締役の方が意見を述べられるのか疑問である、ということです。先の座談会記事におきましても、「相当でない理由」の妥当性については法律的に問題となるわけではなく、理由が記載されていない、理由が虚偽であるといったことでもないかぎりは、市場における評価の問題(つまり法的には問題とはならない)として捉えられています。どの程度「情報獲得コスト」がかかるのかは、社内の人間でないと理解できないところもありますので、こういった「社外取締役をおくことが相当ではない」理由も十分に考えられるところではないかと思います。

ただこういった理由を記載することについては(法的に正しい、正しくないという問題ではなく)「あまり評価できない」という意見は出てくるかもしれません。まず機関投資家が多い企業の場合、資金調達コストが高くなることが考えられます。先日もHP(ヒューレットパッカード)社が上場子会社買収にあたって、その会計不正に気付かなかったため、80億ドル以上もの損失を計上せざるをえなくなった事件がありましたが、機関投資家や運用会社は上場会社のガバナンスにとても強い関心を寄せています。このような状況のなかで、社外取締役を導入しない企業については、やはり企業価値向上よりも経営者監督機能において懐疑的な目を向けられることになると思います。ひとりでも社外取締役を導入すれば資金調達コストが下がる、というのであれば、むしろ導入したほうが全体のコストとしても下がるのではないか、との疑問が湧くところです。たとえ社外取締役が「一身上の都合」で辞任したとしても、市場ではそれなりのサインとして受け止められるわけです。ある意味、社外取締役の導入は保険的な意味合いがあると思います。

また、たとえ社内の事情に(社外取締役が)精通していなくても、コストに見合う働きはできるのではないでしょうか。たとえば意思決定の内容についてコメントできない場合でも、その意思決定の方向性についてモノは言えるのではないか、と思います。「利益が出ていない創業時代からの事業から撤退する」、「みんなが新規事業を成功させようと一丸となっているときに撤退基準について提案する」、「「日本一の技術者を擁する当社でも、原発事故は起こさない(起きない)、ではなく、事故は起きる(起こりうる)、というところからリスク管理をスタートさせる」、「ステークホルダーの利益が相反する重大な局面において、その優先順位(どちらを捨てるべきか)を決定する」といった場面において、果たして社内の取締役だけで十分な議論が尽くされるのでしょうか。

重要な経営判断であればあるほど、すべてのステークホルダーの利益を満足させることはできず、社長は最終決済者としてその利益に順番をつける必要があります。ときには情理に流されてしまいそうになる中で、「捨てるべきものを選択する」必要があります。これはたいへんストレスのたまる仕事です。その場における最良判断を模索することになるわけで、果たして社外からみて、その優先順位は正しいのかどうか、これを検討する機会を与えることも社外取締役の役割ではないかと(この優先順位において一般株主の利益を検討するのが独立役員たる社外取締役ではないかと)。きついストレスのたまる社長の経営判断を後押しするだけでもいいのではないでしょうか。ごくまれに「おかしい」と思える経営判断があったときは、堂々と意見を述べることができれば良いと思います。このような場合、「気づく」ことよりも「素人の考えを口に出す」勇気のほうが重要ではないかと思います。

また、経営学的見地からも、社外取締役の有用性は認められるのではないでしょうか。ドラッガー氏の代表的な著書のなかでも書かれています。

エグゼクティブが直面する問題は、満場一致で決められるものではない。相反する意見の衝突、異なる視点との対話、異なる判断の間の選択があって初めて、よく行いうる。したがって、決定において最も重要なことは、意見の不一致が存在しないときには決定を行うべきではないということである。(「経営者の条件」PFドラッガー 2006年 ダイヤモンド社 198頁)

そもそも日本企業の場合、社長の権限は絶大なわけですから、この社長の判断に資するものでなければ「企業価値向上のための社外取締役」は役に立たないのではないかと言うのがホンネのところです。社長のお仕事はいま儲かっている仕事に注力することと同時に、10年、20年先も事業が成長できるような礎を見据えることも必要です(だからこそ社長は孤独だと思うのです)。その10年、20年先を見据えた事業戦略に役立つのが「意思決定の方向性」をチェックする社外取締役の役割ではないでしょうか。

もちろん、そのような意見を口に出すためには、「ふさわしい社外役員」候補者がいなければならないことは当然であり、また就任後も社外役員に不断の努力が必要かと思います。最後は人間性の問題であり、就任した企業のことを好きになれるかどうか、ということに尽きるのかもしれません。今回の会社法改正の審議では、社外取締役がコーポレートガバナンスの向上のために、何を期待されているのか・・・というところで、推進派の方々がきちんと合意形成できなかったことに、反対派の方々に押し切られてしまった要因があるものと思います。いま「義務付け」が見送られた以上、今度は各企業ごとに「どうして当社では社外取締役が必要と考えているのか」というところを明確にして、具体的な選任理由を述べることが必要になってくるのでしょう。来年以降、おそらく社外取締役がじわじわと増えていくと思いますが、あるところからは一気に各企業とも導入に動く、というのが私の予想です。

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2012年11月26日 (月)

監査・監督委員会設置会社への移行と社外監査役の憂鬱

今回の会社法改正要綱をみますと、「第三の株式会社機関設計」として、新たに「監査・監督委員会設置会社」が創設されています。会社法改正により、社外取締役の導入義務付けが制度化された場合には、ずいぶんと脚光を浴びたのではないか、と言われています。たとえば上場会社の場合には、取引所ルールで「監査役会の設置」が要求されていますので、少なくとも(現状では)社外監査役が2名います。監査・監督委員会設置会社では、2名以上の社外取締役を要するので、監査役会設置会社が監査・監督委員会に機関変更してしまえば、現行の社外監査役2名をそのまま社外取締役にスライドできます。つまり、新たに社外取締役候補者を探したりすることも不要になるわけです。しかしながら、ご存じのとおり社外取締役の導入義務付けは見送られることになりましたので「これで監査・監督委員会設置会社への世間の関心も薄れてしまうのだろう」と、私などは考えておりました。

しかしここに来て、またまた監査・監督委員会設置会社への移行に関心が高まりつつあるようですね。経営トップによる迅速かつ柔軟な意思決定を可能とするには、今の監査役会設置会社よりも監査・監督委員会設置会社のほうが実効性が高いのではないか?とする意見もよく聞かれるところとなりました(旬刊商事法務にも、そのような趣旨の論文が掲載されています)。また最新号のビジネスロージャーナル(2013年1月号)の日経新聞編集委員の方の論稿も、企業統治を真剣に検討するのであれば、監査・監督委員会設置会社への移行も十分に検討すべし、と述べておられます。証券取引所も監査・監督委員会設置会社への移行を推奨しているところですし、さらに(監査役会設置会社だけでなく)委員会設置会社からの移行も検討されている、との話もお聴きするところです。

手続きが面倒そうだし、実益がないのであれば関心はないとする見解と経営者の思うままに会社を動かすためには結構有益では?とする見解と、どちらが正しいのかという点は、私自身、これまであまり深く考えたことはありません。ただ、そもそも議論の前提になっている「社外監査役→社外取締役」へのスライドというのは、そんなに簡単にできるものなのでしょうか?「ウチの会社は監査・監督委員会設置会社に移行するために定款変更を考えています。社外監査役のみなさんも、これからは議決権を持つ社外取締役に移行していただきます」と言われて、ハイそうですかと簡単に納得できるものでしょうか?少なくとも私が社外監査役であれば、「ちょっと待ってくださいよ。私は社外監査役であれば気持ちよくお請けしますけど、監査・監督委員会設置会社の社外取締役だったら、ちょっと考えさせてください」と申し上げるのではないかと。

まずなんといっても常勤の監査・監督委員の設置が任意であることです(監査役会設置会社では常勤監査役の存在は必須)。これまで常勤監査役さんに慣れてきた社外監査役が、いきなり内部統制に依拠する監査に果たして怖さを感じないのでしょうか?通常は、常勤監査役さんの往査の結果報告や出席した重要会議の結果報告等から、リスク評価を行うための情報を入手するところですが、もし内部統制システムに依拠した監査に移行するのであれば、人よりも組織を信用する態勢を覚悟しなければならないわけです。そうであるならば就任の条件としてはこちらが要求する内部統制システムを構築してもらわなければ、高い「監査見逃し責任」リスクからは抜けられない気がいたします。過去に非常勤社外役員の法的責任が否定された判例などもありますが、今の時代の流れの中で、同様の判決が出るとは限りません。

また、監査・監督委員会は(同委員会が選定した監査・監督委員を通じて、ということになりますが)株主総会で取締役の指名や報酬に関する議案提出の際に、委員会としての意見を述べることができます。ということは、委員会設置会社の指名委員会や報酬委員会の権限の一部を監査・監督委員が担うことになります。権限あるところに責任あり、ということになりますから、監査・監督委員といえども、社内の派閥間における支配権争いに巻き込まれることもあるでしょうし、社内事情に精通したうえでの説明責任も課されることになるのではないでしょうか。「意見を述べない」との選択肢も、社外取締役は社内のことがわからないから意見を述べない、では済まされないものと思います。

これに加えて、取締役に移行する社外監査役にとって「気持ち悪い」のが会社法423条3項の「利益相反取引に関する任務懈怠の推認規定」の排除です。監査・監督委員会が、取締役会における利益相反取引に関する承諾手続きの際に、これに同意した場合、後日利益相反取引によって会社に損害が発生しても、取締役会で賛成した取締役の任務懈怠の推定が排除される法的効果が生じます。もちろんしっかりした監査・監督委員の方が多い場合、その他の取締役の方々の監督機能に十分に期待できる場合であれば良いのですが、そうでない場合には経営トップが暴走することの「隠れ蓑」にされてしまうおそれがあります。監査・監督委員のメンバーが利益相反取引の妥当性についてきとんと判断できればよいのですが、そもそも判断の前提となる情報に監査・監督委員会が十分にアクセスできる保証はありません。そういった中で、利益相反取引が会社に損害を発生させない根拠をきちんと把握できるものかどうか、暴走とはいえないまでも、短期的利益追求を目指す社長と対決してまで取引に反対する社外取締役がどれほどいるのか、ということを考えますと、これはとても悩ましい課題ではないかと。

監査役会設置会社の社外監査役であれば、「監査役の独任制」によって社長と対立するということもあるかもしれませんが、監査・監督委員会の場合はそれも困難です。こういった有事における監査・監督委員たる社外取締役の身の処し方や法的リスクについての十分な議論がなされないまま、単純に「社外監査役→社外取締役」へのスライドに応じることはちょっとオソロシイ気がしますし、社外取締役に就任することの覚悟をもって臨む必要があろうかと思います。もちろん、経営者サイドからみても「この人は監査役としてなら就任してほしいけど、取締役となるとどうもなぁ」といった事態も出てくるかもしれません。そう考えますと、今後監査・監督委員会設置会社が増えることがあったとしても、やはり上場会社が新たに社外取締役を探してくる必要性は(従来の監査役会設置会社における労力と比較しても)それほど変わらないのではないだろうか・・・・・と思うところです。

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2012年11月12日 (月)

「社外取締役制度」に関する最近の議論と若干の私見(その2)

先週金曜日のエントリーの続きであります。最新号の旬刊商事法務(2012年11月5日号)に、気鋭の弁護士の方々による「『社外取締役を置くことが相当でない理由』の説明内容と運用のあり方」と題する論稿が発表されましたので、たいへん興味深く拝読させていただきました。これまでも上場会社の開示書類において、「社外取締役を置かない理由」の開示は求められていたわけですが、ご承知のとおり会社法改正要綱のなかでは、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を(事業報告において)示さなければならない、と明記されました。上記論稿でも明らかにされているとおり、今回の会社法改正要綱を読むかぎりでは、上場会社レベルの株式会社には、社外取締役を置くことが企業価値向上のためには一般的には望ましいとの判断があり、それでもなお個々の会社の事情により、社外取締役を置かない場合には、「当社では社外取締役を置くことが企業価値を下げてしまうのだ」といった理由を積極的に開示しなければならない、ということになりそうです(文言解釈としても妥当ですし、また会社法制部会での議論の経過をみても、そう解釈せざるをえないように思われます。そういった意味で、私は「社外取締役としてふさわしい人がみつからない」という理由は「社外取締役を置かない理由」にはなっても「社外取締役を置くことが相当でない理由」にはあたらない、と考えています)。

では、①いったいどのような理由を示せば「置くことが相当ではない」理由となりえるのか、②当該会社の規模や業種などによって理由を示しやすいところとそうでないところがあるのではないか(では、どのような業界であれば置くことが相当でない理由が示しやすいか)、③英国流のComply or Explainの実証研究を通じて、日本の「置くことが相当でない理由」の開示制度はどのように運用すべきか、といったあたりの課題が上記論稿で示されています。未だきちんと議論されたことがない点なので、上記論稿が今後の議論にも影響を及ぼすものになるかと思われます。ただ、現状として東証に上場している会社の半数が社外取締役を置かない企業なので、今後は「置くことが相当でない理由」に関する「ひな型」は作られるものと予想しております。

いったいどのような理由が「置くことが相当でない理由」になるのかは私もいろいろと考えるところですが、これを開示する上場会社にとって検討しておかなければならないことは、定時株主総会を前提とした少数株主権の行使として、社外取締役の選任議案が出された場合ではないか、と考えています。具体的に社外取締役候補者を目の前にして、会社側はどう対応するのか…という点にとても関心があります。少数株主としては、様々な理由を示して社外取締役候補者を特定して選任議案を出すわけです。会社側としては、事業報告に記載する「置くことが相当ではない理由」と、個別議案に対する反対意見とを矛盾なく説明する必要が出てきます。説明いかんでは、現経営陣が単純に「保身目的で置きたくない」と一般株主に受け止められてしまうことにならないか、このあたりは慎重な配慮が必要になってくるのではないでしょうか。

また、社外取締役を置くことが相当でない、という会社の経営判断(取締役会における専決事項)は取締役全員による審議の末の結論です。取締役会での審議を要することになりますので、出席している監査役も意見を述べることができる立場にあります。会社法が「企業価値向上のために社外取締役を置くことが望ましい」との価値判断があるのであれば、なぜ社外取締役を置かないのか、とりわけ一般株主にとっては関心が高い経営判断です。そうしますと、取締役会でどのような判断がなされたのか、独立役員たる社外監査役は一般株主の代弁者としてふるまう必要があります。つまり、株主総会において取締役の選任議案が上程され、審議されるケースでは、独立役員たる地位にある社外監査役さんに株主への説明が求められることになるはずです。こういったことこそ、独立役員に求められる役割であり、一般株主の立場からみても、社外取締役を置かないほうが好ましいのだ、という説明をしなければならないと思います。現実には議長である代表取締役が回答することになるかもしれませんが、一般株主利益に配慮しなければならない独立役員個人の見解を聞きたい、と考える株主からすれば、質問が独立役員に向けられてしかるべきではないかと思います。

さらに、いったん「社外取締役を置くことが相当でない」とする理由を開示した後に、翌年以降、諸事情によって社外取締役を置かざるを得ない状況になることも考えられます。グループ企業経営のなかで、子会社管理の一環として自ら子会社に社外取締役を派遣するケースも考えられます。自分の会社の事業では社外取締役を置くことが相当でないのに、どうして子会社事業の場合には相当なのか、昨年は相当ではないといっていたのに、どうして今年は相当だと判断したのか、そのあたりを矛盾なく説明しなければ、やはり「恣意的な判断である」と株主からツッコミを入れられるのではないでしょうか。会社側としては、企業価値向上という視点から説明することになると思いますが、上記論稿も結論として述べているとおり、説明が困難な企業は事実上社外取締役を置くことが強制されることになるのではないかと思われます(ただ、それでも開示規制ということですから、市場からどのように判断されても、毎年不透明な説明を繰り返して社外取締役を置かない企業もあると思いますが)。

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ちなみに、社外監査役ではなく、社外取締役たる独立役員を選任するよう要望する旨の上場ルールは今年5月に制度化されておりますが、今回の会社法要綱においては、上場ルール等によって各上場会社に社外取締役を選任するよう努力義務を課すことが要望されています。こういった流れの一環なのかどうかはわかりませんが、東京証券取引所編著「ハンドブック独立役員の実務」(商事法務 神田秀樹監修 税別1800円)が発刊されました。独立役員に指名された社外役員としてのベストプラクティスが示された本です。読む前は「いままでの東証の意見をまとめたものにすぎないのでは?」と思っておりましたが、さすが東京の大手法律事務所がアドバイザーとして関与されているだけあって、なかなか秀逸な本です。独立役員に求められる役割というものが、これまで以上に(総論各論に分けて)詳細に解説されています。とくにコーポレートファイナンス、ガバナンス問題、コンプライアンス問題に対する視点がとてもよくまとまっているなぁとの印象です。もちろん社外取締役に期待される役割と、東証ルールにおける独立役員の役割が一致する、ということまでは言えないかもしれませんが、一般株主の利益に貢献する独立役員たる社外役員の方々にはお勧めの一冊です。

「私見を述べる」といいながら、またまた今回も脱線してしまい、まだ書けていません。(その3)では絶対に書きたいと思います。

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2012年11月 9日 (金)

「社外取締役制度」に関する最近の議論と若干の私見(その1)

ご承知のとおり、今年9月に法制審議会にて了承された「会社法制の見直しに関する要綱」(会社法改正要綱)では、上場会社の取締役の一人以上が社外取締役でなければならない、との改正案は見送られることになりました。関係者の利害調整を目的とする会社法に、社外取締役制度の義務化がどのように位置づけられるのか、という「そもそも論」もありますが、特別取締役制度に関する現行会社法の規定からしますと(会社法373条1項)、少なくとも会社法が「社外取締役には経営者および側近の暴走を食い止めるという役割がある」と考えていることは明らかであります(江頭「株式会社法」第4版395頁)。しかし、結局のところ会社法で制度化(強制導入)されなかったことからすれば、個々の会社が社外取締役を選任することは自由であり、また選任するとしても、社外取締役に何を期待するかは個々の企業の立場で判断してよいのではないかと思われます。

以前と比べますと会社法改正要綱が決定されたことで、議論が沈静化したようにも思えるのですが、現状では社外取締役制度を採用する企業が増えているそうです(今年の6月総会を境にして、社外取締役が取締役総数の過半数を超えている東証1部上場企業が29社→39社に増加 日経産業新聞10月17日付けより)。いま、ちょうど6月総会に向けて取締役の人選をされている会社が多いと思いますが、来年に向けてますます社外取締役に選任される方は増加することは間違いないでしょう。

さて、「人選の時期だから」ということでもないかもしれませんが、ここのところ社外取締役の有用性に関する記事を目にすることが多くなりました。たとえば今年、法律雑誌の座談会でご一緒させていただいたオリンパス社の社外監査役である名取弁護士の「社外取締役は不正を暴くことではない(日経ビジネスオンライン)」などは、とても読み応えのあるもので、コーポレートガバナンスがどのような目的のために議論されるべきか、ということにまで踏み込んでおられ、とても参考になります。なお、論稿の最後に、社外取締役制度を導入しない会社がどのように「当社としては、社外取締役を選任しないほうが相当だ」とする理由を開示するのか、とても関心があるとされています。これは私も非常に関心を持つところです。

つぎに日本取締役協会の原氏(大和証券グループ本社名誉顧問)のインタビュー記事「シリーズ日本取締役協会」(サンケイビズ)では、原氏が今回の会社法改正の中で社外取締役の義務付けが見送られたことを「意外であり、非常に残念。日本的ガバナンスの改正がこれほどかと思うと情けない」とされています。証券取引所や証券会社の立場からすると、取引の活性化を促すためにも海外投資家の視線に配慮し、ガバナンス改革を推進すべし、ということになりますから、このような意見が強く発信されることになると思います。キッコーマン社の茂木会長のインタビュー(日経新聞)においても、厳しい競争に勝つにはCEOによる強力なリーダーシップが必要だが、社外取締役はCEOや取締役会が十分に機能しているかどうかをチェックするうえでも不可欠な存在だと述べておられ、リーダーシップと社外取締役制度は両立するものであることを語っておられるところに強い印象を受けました。

さらにJPプレス「日本の企業統治:振り出しに逆戻り」は、元オリンパス社長ウッドフォード氏やBDTI(会社役員育成機構)のベネシュ氏のインタビューなどから、あまりにも日本の企業がガバナンス改革に消極的であり、その消極的な態度から、市場における不信感を増幅させている現状を憂いています。社外取締役制度の義務化が見送られたことは落胆の一言に尽きる、とのこと。ちなみにウッドフォード氏が会長を告発する取締役会に出席し、動議への賛同を求めた際の社外取締役の方々の印象を「まるで教室にいる生徒のようにふるまった」と表現しています。おそらく近々出版される英語版「回想録」の表現ではないかと思います。ちなみにアメリカでも、いまガバナンスに変革の流れが起きているようで、アメリカの上場会社では「モノ言う幹部」が増加し「仲良しクラブ」からの脱却が目立っているそうです。会長と取締役会がCEOの経営を監視する、という新たなスタイルが増えているとのこと(朝日新聞ニュースはこちら

東京電力をどのように再生していくべきか、ということについて、社外取締役の方々がインタビューに熱く答えておられるところをみますと、やはり過半数が社外取締役というのは一人、二人の場合と比較すると大きく違うなぁとの印象を持ちます。ゼロと一人との違いも大きいわけですが、やはり一人と過半数の違いも、そもそも社外取締役に期待される役割が変わるほどの差になっているように感じます。タイトルに「若干の私見」と偉そうに書いたわりには、ここまで自説めいたものは何も書いておりませんが(スミマセン・・・)、義務化が見送られたこと、また上記のような最近の議論などを踏まえて、(その2)においては若干の私見を述べたいと思います。

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2012年2月 2日 (木)

社外取締役と監査役の機能の違い(明確にできるか?)

本日(2月1日)、日本監査役協会から「会社法制の見直しに関する中間試案に対する意見」がリリースされております(提出は1月31日とのこと)。監査役制度周辺に関するコメントが多いのは当然ですが、社外取締役制度の義務付けについては、有価証券報告書提出会社に限り、条件付きで賛成・・・・ということのようです。中間試案に対する監査役アンケートの集計結果でも、「社外取締役制度義務付け」については賛成と反対が拮抗しており、監査役会設置会社の監査役の皆様もご意見が非常に分かれていることがわかります。監査役と社外取締役の間に明確な機能分担ができるのかどうか・・・そのあたりへの考え方の相違が反映されているのかもしれません。また、昨年11月に、 「会社法改正ー監査・監督委員会の社外取締役・過半数の重み」のエントリーで素朴な疑問を述べましたが、やはりその素朴な疑問はけっこう大きな問題だったようであります。

金融・商事判例2月1日号の神田教授の巻頭言「会社法制の見直し」でも「監査役の役割と社外取締役の役割をどう調整するかが制度論をするうえでのポイントとなる」と論じられており、私もとりわけ社外取締役と社外監査役との役割が明確に区別できるか?という点は大いに悩むところです。法務省としては、経営監督機能と利害相反機能を社外取締役に期待される役割として整理されておりますが、それで明確な区別ができるかどうかは議論のあるところのようです。実際に、どのように役割を分担すべきか明確にされませんと、メルシャン事件の第三者委員会報告書43ページ以下に出てくるとおり、取締役と監査役さんとで「あれ?役員会に報告するのはアナタではないの?」「いやいや社長に報告するのはアナタでしょ」といった具合に、やっかいな業務は人任せにして、結局不正疑惑が何年も社内に温存されてしまう、という事態になってしまうおそれがあります(海外子会社の不正調査の場面などにも同様の問題があります。これは笑い話ではなく、けっこう不正事件には発生しております)。

理論的な整理をブログで論じるというのは(文字数があまりにも限られているために)適当ではないように思いますし、私の思考力を越えておりますので、高名な先生方や著名な実務家の方々にお任せすることとして、8年ほどの社外監査役の経験から論じるとすれば、やはり監査役と社外取締役とは(期待されている役割かどうかは別として)、大いにその機能は異なるものと考えています。なんといいましても、企業活動は「山あり谷あり」でして、企業の業績や業種ごとの経営環境の変遷によって監査役と社外取締役とで期待される役割は変わるからです。

監査役が不正や不備(いずれも取締役の職務執行の適法性にかかわるもの)を発見した場合、監査役はこれを報告し、またその「重大性」に関する意見を述べます。監査役が感じる「重大性」はあくまでも監査役固有のものであり(監査役それぞれが感じ方が異なる場合もあります)、この意見をもとに取締役が経営上の判断を行うわけで、その監査役の意見の重みを感じるのも個々の取締役で異なるわけでして、そこに社外取締役への期待があります(先日の「朝日法と経済のジャーナル」における阪神電鉄元社外取締役玉井氏の「秘話」とまったく同じ構造)。

社外取締役は「人の監査」をするわけではなく、あくまでも企業価値を向上させる仕事の過程で「組織の監督」をするわけですから、監査役の意見の重みを認識しつつも、監査役が期待する経営判断とは全く異なる判断に与することも十分ありえると考えます。重大なコンプライアンス違反が指摘されたとしても、これとは別に重大な経営問題があればその優先順位を検討しなければなりませんし、経営資源の配分についても配慮しなければならないと思います。オリンパス事件や大王製紙事件のインパクトが強かったために、不正抑止という視点ばかりが強調されておりますが、取締役の違法行為を指摘するという監査役の役割と、株主からの信認義務を取締役が尽くすという視点から経営判断の健全性を確保するという社外取締役の役割は異なるものであり、ときには監査役と異なる判断をするのも当然のことと思います。

あくまでもコンプライアンスの視点に限ってのお話ですが、経営判断に対して「人の監査」を通じてブレーキをかけるのが監査役の仕事であり、社長と一緒に業績を上げることに没頭しながら、つまりアクセルを踏みながら最良の選択を模索するなかでコンプライアンス経営を実現するのが社外取締役の仕事ではないでしょうか。会社が大きなカーブに差し掛かったときには監査役の機能が生きるでしょうし、長いストレートをアクセル全開で駆け抜けるときには社外取締役の機能が生きるわけです。このたびの決算発表をみていても、会社は生き物であり、良い時もあれば悪いときもあるわけでして、事業継続に向けて、どちらの機能が生かされるのかは企業の置かれた環境によって異なるものと思います。事故を回避するためにはブレーキを踏むことだけではなく、巧みなハンドルさばきも必要だと考えます。

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2009年11月26日 (木)

日本の社外取締役の役割-その「外観的独立性」

一昨日のエントリー「日本の社外取締役の役割-その有効性と効率性-」はたくさんの方にお読みいただきまして、ありがとうございました。m(__)m 私が日経新聞の「プロフィール」に顔写真入りで登場したことや、BLOGOSで「読まれているブログベスト10」に(めずらしく)ランクインしたことなどが重なったことによるものと思われます。

私自身はとくに意識していたものではありませんが、社外取締役の報酬が高いと独立性が保持できないのではないか?といった話題がコメントのなかで出てきておりましたので、ある方よりメールにてご意見を頂戴いたしました。ご意見は以下のとおりであります。

いつも「ビジネス法務の部屋」で勉強させて頂いています。

「日本の社外取締役の役割」というエントリーのコメント欄を拝見していて社外取締役の報酬は当該取締役個人が必ず受け取ることが自明のこととなっていることに少し違和感を感じました。

業務命令で他社の社外取締役に就任する場合には、相手先企業からの役員報酬は当該社外取締役が直接収受せず、自社(派遣元)企業が受取るという企業もあります。理由は自社の業務としての対価である自社からの給与を貰っているため、これに役員報酬を受け取ると二重取りになるためです。

一方、社外取締役の賠償責任の上限は役員報酬にリンクするという規定になることが多く、かつ社外取締役としての責任はあくまで当該個人が追うという法律の建付けのため、派遣先の会社と交渉し社外取締役報酬を可能な限り引き下げてもらうこともあります。だからといって、当該社外取締役のモチベーションが下がることはなく(自社から貰っている給与に変わりは無いので)、中立の立場で真摯に社外取締役としての業務をそれらの人は勤めています。以上ご参考まで。

ご意見どうもありがとうございました。そうなんですか・・・。社外取締役の報酬は派遣先企業からは支給されず、派遣元(親会社?)から支給される、という上場企業さんもある、ということなのでしょうか。賠償責任の問題まで配慮して派遣先からの給与も引き下げる・・・ということですが、そういった話は存じ上げませんでした。要は派遣元である企業の常勤業務の対価をもらっているのだから、派遣先である企業の社外取締役としての職務執行の対価は派遣先からはもらわない、ということなんでしょうね。

たしかに社外取締役が報酬をもらわない・・・ということは、高額の報酬をもらっている場合と比較すれば「会社に迎合しない」ようにも思われます。つまり一般株主の利益のために行動することが期待できる・・・ということなんでしょうね。ただ、ひとつ疑問が生じますのが、ここで上げられている例は親子上場のケース、もしくは親会社が非上場(子会社が上場会社)のケースだと思われます。親会社の業務の一環として子会社の社外取締役に就任されている方など、表面上は無報酬での業務かもしれませんが、親会社の利益と子会社の一般株主との利益が相反するようなケースの場合、はたして子会社取締役の方に公正な立場での職務執行を期待できるのでしょうか?社外取締役の独立性を議論する場合、企業内からの不当なコントロールの排除の問題と、企業外からの不当なコントロールの排除の問題が分けて議論されますが、ここでは後者の問題であります。

たとえば今年6月17日に公表されました経産省企業統治研究会報告書の立場では、社外取締役の実効性と独立性のバランスが重視されており、親会社から派遣されている、というだけで社外取締役に就任できない、というのは企業価値向上ということ(実効性)からみると妥当ではなく、たとえ親会社出身者であっても、上場子会社の一般株主保護を十分に期待できるような独立性を確保できればいいのではないか・・・ということが趣旨だったように記憶しております。この趣旨からすると、親会社の役員(もしくは従業員)が、上場子会社の社外取締役に就任することは、それだけでは禁止されるべきではないけれども、公正性を疑われないような外観的な独立性については配慮されるべきではないかと考えられます。そして社外取締役として就任している企業から報酬をもらっていない(逆にいえば親会社から業務対価として、その分の報酬をもらっている)ということであれば、どう考えましても親会社と子会社との利益相反関係が生じるような経営問題につき、親会社の利益を最重要視することにはならないでしょうか?もちろん、誠実で人格の高い方が社外取締役に就任され、そのようなことはない、と言われるケースもあるでしょうが、ここで問題となりますのは「外観的独立性」であり、「公正さが疑われるような外観」が認められれば禁止せざるをえないように思われます。

金融庁の内閣府令の改正により、今後は役員報酬の開示方法が変わるようでありますが、役員ごとの報酬の決定方法を明記する、といった改正により、社外取締役の報酬がゼロであるかどうかは、今後外からもわかるようになりそうです。本来役員報酬がゼロであるにもかかわらず役員に就任するということは、逆にいえば常勤として勤務する会社と当該会社との関係が問題視されることになるでしょうし、社外取締役として公正な職務執行は期待されないような事態になりそうであります。海外ではあまり親子上場などが認められていないものと聞き及んでおりますが、その原因が親会社と子会社一般株主間における利益相反状況にある以上は、むしろ子会社の社外取締役に就任する親会社出身者としては、正当な範囲内の役員報酬は受領すべきでしょうし、このあたりが社外取締役の実効性と独立性のバランスをはかるべきポイントではないかと考えております。

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