2011年4月13日 (水)

イオン社の事業提携・ガバナンス提案とパルコ社の「断固拒否」

(4月13日午後:追記あり)

毎度申し上げているところでありますが、私はM&A実務に詳しい弁護士ではございませんので、以下はあくまでも上場会社の社外役員という立場からみた素人的な感想でございます。

イオン社がパルコ社に対して事業提携提案とガバナンス提案を行い、パルコ社経営陣はこれを断固拒否している状況が続いております。パルコ社側は、従業員組合が現経営陣を支持する(つまり、イオンの事業提案に断固反対する)旨の意思を表明していたところ、本日、組合外の一般社員からも、事業提携案に反対する旨の表明書が提出されたそうであります。つまり、パルコがイオン化(事業提携→子会社化)してしまうことについて、パルコ社は全社あげて反対の意思表明を行った、ということのようであります。

サントリー・キリン統合劇のときにも申し上げましたが、私は①救済による場合、②国際競争力を向上させるような大義名分がある場合、もしくは③血も涙もないカリスマ創業社長が存在する場合以外で、従業員の反対が強いケースにおいて事業統合は成功しない、という信念を持っております。(たしかに、ときどき「有事に強い」プレイングマネージャーがおられて、うまく事業統合を進める方がいらっしゃいますが、そのような方は「平時」になりますと、社内で煙たがられてどこかへ飛ばされてしまうのではないでしょうか。)私自身が役員をしている企業の統合破談の経験からも、そのように確信しています。なので、今回のパルコ社のケースにおきましても、このままイオン社が強行した場合、うまくいく確率はかなり乏しいのではないかと。

素朴な疑問でありますが、ここまで社員の反対の意思が表明されていながら、イオン社および森トラスト社はパルコ社の企業価値を上げることが果たしてできるのでしょうか?これまで、こういった事態で経営権の奪取を強行して、うまくいったケースというものはあるのでしょうか(あればぜひ、調べてみたいので、どなたか教えていただきたいです。私は同様の状況で経営権奪取を強行した春日電機さんの例くらいしか思い浮かびません)。スティールPによるアデランス経営陣交代劇は、結局のところ失敗に終わってしまいましたし、MBO後のすかいらーく経営陣交代もいまだ軌道に乗っていません(なお、katsuさんより、「すかいらーくは、グループ全体としては業績が上がっていますよ」とご指摘いただきました)。状況は違いますが(TOB事案)、王子製紙による北越買収も、日本電産による東洋電機製造買収も、労働組合による買収反対表明により、断念されております。

たしかドンキホーテ社がオリジン東秀さんを敵対的買収で取得しようとした際、ホワイトナイトとして登場したのがイオン社であり、その際にはオリジン社の従業員組合がイオンの傘下となることに賛成の意思を表明したがゆえにイオンのオリジン子会社化が成功したものと記憶しております。あの事件からしても、イオンさんは「強硬な支配権取得は従業員の賛同がなければ奏功しない」ということを認識されていらっしゃるのではないかと思いますが。

パルコ社側の買収防衛策発動、転換社債の転換権行使など、強硬手段はあるにしても、法律上の問題点がありますので、イオン社と森トラスト社による株主権行使のほうが圧倒的に有利であることは承知しております。しかし、そもそも、45%の株式について共同議決権行使を行うイオン社と森トラスト社との利害関係は、今後も一致し続けることの確証はあるのでしょうか。また、自ら買収防衛策を導入しておられるイオン社として、同じく防衛策を導入しているパルコ社の事業提携等に関する検討の時間を不要として、森トラスト社と株主提案権に乗っかって検討を急がせる根拠はどこにあるのでしょうか?他社にルールを遵守するよう要求していながら、自社はルールを守らないでよい、とする正当な理由はどこにあるのでしょうか?とくに、このあたりは「そもそもルール違反ではないし、パルコの一般株主の利益を害するものでもない」とするイオン社の社外取締役の方々の判断理由を拝聴してみたいものです。私はどちらに肩入れするつもりもないのですが(むしろガバナンス提案の内容は興味深い)、社外役員という立場から、このあたりの理由がよくわからず、とても逡巡するところであります。

(4月13日午後 追記)

「パルコ、アジア最大の商業施設運営会社との提携を発表」(日経新聞ニュースより)

剰余金配当増額のお知らせとともに、適時開示情報が出ております。

パルコ社の一般株主の方々にも、いろいろご意見あるかもしれませんが、企業価値向上のために経営者同士が(株主にもわかるように)長期シナリオを掲げて戦う姿、個人的には好きです。

4月 13, 2011 企業買収と企業価値 | | コメント (17) | トラックバック (0)

2008年10月 2日 (木)

東洋電機製造社、日本電産に質問状送付(買収防衛手続き開始)

これまで多数の企業を買収してこられた日本電産社ですが、初めて明確な事前合意のない状況での買収提案を行った相手先企業(東洋電機製造社;東証1部)より、質問状を受領したそうであります。(東洋電機製造社のリリース日本電産のリリース)今年7月に東洋電機製造社が導入した事前警告型買収防衛策に沿った対応ということのようです。

東洋電機製造社としては、防衛ルールに則った手続きを開始されたわけですので、(当事会社としてはたいへんかと存じますが)今後の展開次第では、経済産業省から出されている「買収防衛策の在り方」報告書(指針)が実務でどのように反映されるのかが試される格好の機会になるかもしれません。とりわけ、最終的に友好的買収事案として収束していくとするならば、ファンドによる買収ではなく、競業(隣接?)他社による正式な企業価値向上策の出された上での東洋電機製造社役員らの説明責任がどのように尽くされるのか、また独立第三者委員会はどのような対応をとられるのか、とても興味深いところであります。(しかし、日本電産社から事前に公表されている事業戦略のプレゼンテーション資料は、素人にもわかりやすく、勉強になりますね。本日はとりいそぎ備忘録程度で失礼します)

10月 2, 2008 企業買収と企業価値 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年4月 9日 (水)

株主総会想定悶答(その2-買収防衛策編・・・あまり深く考えないでね 汗)

今年も買収防衛策を導入する企業は40社近くにのぼり、これまで導入している企業と合わせて400社を超える勢いだとか。(←日経新聞の報道による)先日ご紹介した指南書で、著名な弁護士さんがご指摘のとおり、「勧告型の導入決議が認められるのであれば、株主側からもいろんな勧告型の提案をしてもいいのかな・・・」といった鋭いツッコミも入るかもしれませんが、そういったムズカシイことはおいといて・・・・・(^^;;

大阪に本社のある上場企業におきまして、定款変更とともに事前警告型買収防衛策(ライツプラン)を導入する議案が上程された場合を想定しております。(あくまでも素人株主による質問です)

「なんや世間では買収防衛策って、よう話題になっとるけど、こんなもん、ほんまに必要なんやろかいな」

「私どもは、長期的視野にたって当社の成長を願う皆様方の共同の利益を守ることが職責であります。会社を食い物にしようとする者が出現する場合にそなえて、こういった防衛策を導入することを検討してまいりましたので、どうかご賛同のほど、よろしくお願いいたします」

「招集通知は一生懸命読んできたんやけど、これって株主総会で決めなあかんのでっか?そんな食い物にするような連中が来よるんやったら、おたくらで勝手に決めてくれたらええんとちゃうの?」

「昨年、買収防衛策に関する裁判がございまして、裁判所はこのような場合には、できるだけ株主総会で決するように、といった判断を出しております。私どもとしましても、防衛策を発動するかどうかは重要な決定事項であり、特別決議をもって株主様方に決めていただきたいと考えております」

「エ?わしらが決めたら裁判でも勝てるんでっか?もし負けたら誰が責任とるんでっか?たとえば、すちーるなんとか・・・みたいな会社が「なんちゅうことすんねん」みたいなこというて損害賠償とかかけてきたらどないなるんでっか?わしらが決めたからいうて、まさか株主が賠償請求されるんとちゃいますやろな?会社を食い物にするってゆうたって、あんた25%くらいの株をほしい場合までわしらが何で判断せなあかんのやろか?そんなときまでわしらの責任にされたらかなわんで・・・」

4月 9, 2008 企業買収と企業価値 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2005年8月19日 (金)

敵対的企業買収は誰のためのものか

昨日も紹介しました「商事法務」8月5日・15日合併号の巻末コラム「スクランブル」に、題名のようなコラムが掲載されております。今年のM&A事例をいろいろとみてきて、経営者の方が心の中では思っていても、なかなか口に出していえなかったようなことを、一気に表明してくれたような爽快感があります。学説も、裁判所も、弁護士もみな新古典主義経済学者のようであって、アメリカ型株主主権主義をそのまま持ち込んで賛辞する、という態度への批判、経営者への過大な負担とリスクの要求が最終的には株主の利益にはならない、という提言は、これを読んだ方が思わず納得、言いえて妙、と感じられたのではないでしょうか。最後の締めの言葉も「企業は何のために上場するのか考えろ、ではなく、市場こそ、どうすれば上場してくれるのか、を考えるべきである」というあたりは、私もそのとおりだと思います。そろそろ「株主権の内在的制約」理論というものがあるのか、ないのか、あるとしたらどういったときに株主権に合理的な制限が加えられるのか、株主平等原則に合理的な制限が認められるのか、そういった問題にスポットをあてるべきではないか、と思うのであります。

このブログも「企業価値」とは何か・・・というものへの自問自答から始まりました。そろそろ企業価値論についても議論の進化が薄れ始めてきたのではないかと感じています。今後はおそらく「社外取締役」が具体的に活躍する場面において「企業価値」をどのように検討したか、等もうすこし具体的なモノサシをあてることで議論が進化していくのではないか、と予想しています。いまのところは、おおよそ株主の将来における価値の最大化を図ることこそ、企業価値の実現であるという言い方さえすれば間違いではなさそうです。今後は、ぎゃくに「株主の権利」というものは、多数株主の「共同利益」のために制約を受けるのか、とか「企業の社会的責任」によって制約を受けるのか、といったあたりの議論に期待しています。そういった議論は直接的に株主の法的権利にもつながっていくように思われるからです。日本の文化や伝統、慣習によって影響を受ける「株主権」を認めるのかどうか、グローバルスタンダードを重視して、新会社法のもとでの「株主の権利」は万能なものと解釈されるものなのか、そのあたりと見極めていきたいと思います。

いずれにせよ、関西の経済団体での会合においても、この「スクランブル」のコラムで書かれている立場というのが経営者のホンネの部分だと確信します。これは私が専門的に勉強している内部統制の議論でも同じです。過大な負担を経営者に押し付けて、本当に見合うだけの効果があるのかどうか、単にアメリカの議論を持ち込んできたにすぎないのではないか、という疑念はぬぐいきれません。防衛策にせよ、内部統制にせよ、大きな視点から、その拠るべき根拠を示す必要があると思います。

8月 19, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年6月22日 (水)

ニレコ新株予約権発行差止事件の補論

大阪地裁の地下書店で「ビジネス法務8月号」を購入しましたところ、その20ページ以下に三苫裕東大助教授の「補論=ニレコ新株予約権発行差止仮処分事件地裁決定について」と題する論稿が掲載されておりました。いわゆる鹿子木決定に対するご意見ですが、私がこのブログで6月2日以来、いろいろと勝手な意見を述べてきたことと、ほぼ同旨であったことでホッと胸をなでおろしているところです。とりわけ、新株予約権の行使条件については、取締役会で発行を決議した場合だけでなく、株主総会の意思が反映される仕組みが組み合わされている場合でも、(行使条件の成就が)取締役会における緊急避難的措置が許容される場合に限られるという趣旨であることを前提として、ほとんど有事導入型と、その要件においては変わらないとされ、あえて平時導入にメリットがあるとするならば、行使条件をあらかじめ明確にしていることから、有事の際の取締役会の行動の相当性を立証しやすくする程度であること(敵対的買収者の悪性の推認)ぐらいであろう、と説明されており、これまでエントリーしてきました私の意見とほぼ同一のものであります。

ただ(たいへん偉そうな物言いで恐縮ですが)、この三苫助教授のご意見で、ひとつ欠落している重要なポイントがありまして、有事における発動要件の判断者として重要な地位を占める独立第三者の判断領域に関する点であります。私は、社外取締役、社外監査役に発動要件の最終判断者たる地位を付与するのであれば、もっと広く「企業価値とは何か」「ステークホルダーの利益というものを企業価値判断に含めてよいのかどうか」裁量の幅を持たせるべきではないのか、との自論を有しておりますが、この鹿子木決定によるならば、その判断領域はたいへん狭いものになるわけでして、平時導入型ライツプランにおいて、行使条件を明確に規定した場合には、その独立第三者による発動判断はほとんど狭小なものとなってしまうおそれがあります。経済産業省、法務省の発表したガイドラインを前提とするならば、企業価値もしくは「脅威」の判断というものを、やや抽象化した概念として捉えて(このあたりがたいへん巧妙だと感じ入ったのですが)、司法は「発動までのプロセス判断を行うことに特化するもの」と役割を限定して、今後の社外第三者の議論の発展を期待できたのですが、この鹿子木決定を前提とするならば、独立第三者が企業価値、脅威の有無についての判断者としては期待できないということで一蹴されてしまい、今後の議論の発展がなくなってしまうところがちょっと悲しいところでもあります。

なお、たいへん著名なブログの管理人の方より、TBをいただきましたので、ふたつほどコメントさせていただきたいのですが、ひとつは鹿子木裁判官が無国籍的に企業買収を奨励するものである、とまでは、ニッポン放送事件とニレコ事件だけでは論じられないのではないか、と思う点であります。もし、新会社法の運用やこの企業買収防衛策の制作にあたって、米国流を本旨とするならば、先に述べましたようにもうすこし独立第三者の活躍に対する期待というものが感じられたのではないかな・・・と思います。鹿子木裁判官としては、たとえアメリカ流の株主利益の代弁者に期待を寄せたとしても、この日本の企業社会では無理があると考え、むしろ司法が政策形成のために前面に出た場合に、その実体判断が容易になるような「法と経済」を融合した解釈指針をもって今後の解決にあたる、という気概をもっていることが今回の決定理由に一番現れているものと思います。

そして、もうひとつの点ですが、この問題に司法が積極的に関与して、政策形成機能を果たすことへの批判が考えられます。以前のエントリーをお読みいただければおわかりのとおり、高裁赤塚決定のほうが司法の謙抑性を趣向するものとして私の好みに合致しています。ただ、現時点で実務界に混乱を生じさせるのと、すでに多数の企業が多額の費用を投下して信託型ライツプランを導入した後に、司法判断が出て混乱を生じさせるのでは、実務に及ぼす影響の度合いは比較にならないと思われますし、今の時点で司法の見解を示すというのも「ありかな・・・」ともちょっとだけ考えたりもします。鹿子木裁判官は最高裁の事務局で勤務されていた時期もあり、そういった司法行政についての自論もお持ちなのかもしれません。すこし話は変わりますが、債権放棄と無税消却に関する昨年12月の最高裁判決によって、倒産実務が大きく変わり、私のような破産管財人業務を行う弁護士にとっても、仕事のやり方が大きく変わりましたが、この判例がもっと早く出ていたら銀行の不良債権処理ももっと早く促進されていたのではないか、と思えてなりません。実際にこのような大きな政策形成機能をもった判例の効用を目の当たりにすると、企業社会に対する司法の役割(とりわけ今後飛躍的に増加する法曹の数からみても、その影響力が大きくなることは避けられない現実です)は、変えていかなければならない、という考え方を持った裁判官が登場することもあながち不思議ではないように思っています。また、ご意見ございましたらご教示ください。

6月 22, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (7) | トラックバック (1)

2005年6月17日 (金)

株主価値と社会的責任論(CSR)

企業のCSR経営ということを最近よく耳にします。日経のCSRプロジェクト記事では、株主価値を最大にすることこそ、CSR経営の本質である、と言われたり、いやいやそれはアメリカ流であって、欧州流の「ステークホルダーの利益と株主の利益をそれぞれの企業が比較考量して、持続的成長をめざす手法」が本流だ、と別の本では言われたいたり。いずれにせよ、「企業の社会的責任」という言葉から、ただちに会社法上の法的義務が発生することがないというのは現状の把握としては正しいと思います。

たいへん痛ましいJR福知山線の事故で、電車が衝突したマンションの住民の方がたとJR西日本との補償交渉が始まりました。私の感情論からすれば、この住民方への補償については、購入価格を上回る補償、具体的にはすでに組んでいる住宅ローンの金利を含め、別の同一条件でのマンションが購入できるだけの金員補償+それぞれの迷惑料を支払うべきか、と思います。

しかしながら、裁判における現在の損害賠償理論からすれば、このような水準まで賠償する必要はないものと思われます。そこで、もし取締役らが、私の意見のような補償金を住民の方がたへ支払ったとすれば、JR西日本の株主からすれば、なぜ裁判をされても届かないような金額の補償をするのか、その合理的な説明をせよ、と取締役へ釈明を求めることも考えられますし、理論的には株主代表訴訟を提起されることも考えられるのではないでしょうか。

このようなとき、企業の社会的責任という言葉によって、なんとか取締役の説明義務を尽くすことはできないでしょうか。たしかに、本件マンション住民への補償金額は、通常の法的な支払い義務を超えたものかもしれないが、真摯に対応することで大きな事故を発生させた企業の誠意を地域住民の方がたに評価していただき、長期的にみれば株主の価値向上にもつながる、と。もしくは、このまま法的交渉が長引けば、それだけマスコミによる非難も継続し、企業の名声(評価)が毀損されてしまうことよりも、若干法的な根拠のない上乗せがあったとしても、そちらによる毀損のほうが企業価値低下という面からは少ないものであると。

ただ、この手法によると、「それではどういう場合に超法規的措置をとり、どういったときには賠償理論どおりの措置しかとらないのか、明確な基準はあるのか」と聞かれた場合に、株主に切り返す言葉があまり見当たらないように思います。広く報道された場合に限る、と説明したとしても、なんとなくあいまいな説明になってしまいそうですし。

感情と正義感で自分の意思を律することが可能な一般株主ならば、代表訴訟を提起するということも考えないでしょうが、他人から大事なお金を預かって運用している機関投資家であれば、そんな感情のことなどいってられませんし、むずかしい問題だなあと思ってしまいます。

PS 大阪弁護士会でも、兵庫県弁護士会の救援活動に次いで、福知山線事故の被害者の方がたへの法律相談を開始しました。おもに精神的に負傷された方のための救済を中心に支援しているようです。

6月 17, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2005年6月16日 (木)

ニレコ抗告審決定への意見(総括)

なんとか早足で東京高裁15民事部の抗告審決定、全文読んでみました。

昨日、ネット記事で決定要旨を読んだときとは違い、実際に決定全文を読みますと、異なった印象を持ちますね。(これだからきちんと判決や決定に目を通さないと、意見を書くのはコワイです。 Σ(^^;)゛)
私の意見をひとことで言うと、「ニレコの代理人の方からすれば、抗告審まで争った甲斐があった」ということですね。すくなくとも、この決定を高裁が出したということは、ほかの信託型ライツプランに対する司法の影響が、かなり薄まったといえるのではないでしょうか。
昔から「司法の謙抑性」(司法は当事者の紛争解決に必要な範囲で法解釈、事実認定を行うものであり、解決の必要以上の社会に影響を及ぼすことは慎むべきである)といいますが、この高裁決定は実に「オトナの判断」だと思います。本件新株予約権の発行が「著しく不公正な発行」かどうか、という点について、防衛策の厳格要件やその相当性などについて深く立ち入ることなく、既存株主が本件発行によって不測の損害を被るかどうか、という点だけに絞って「著しく不公正な発行」と認定し、その余の論点には触れていません。さらに、保全の必要性についても、原審では最高裁決定(平成16年8月30日 住友信託、UFJ仮処分決定事件)の保全要件(保全の必要性に関する要件)との抵触について、かなり真正面から取り上げて、事後の損害賠償請求では償えない損害がある、と認定したのに対して、この抗告審は商法上の実体法としての「差止請求権」の存在を根拠として、「実体法」の解釈という手法を用いて(つまり、回復不可能な損害とまでいわなくても、実体法で差止請求権が規定されてるじゃないか、株主が「損害を受けるおそれ」があれば実体法で差止が認められるのだから、その保全目的のための必要性がそんな厳格な要件になるわけない)として、「民事保全法」上の要件を解釈した最高裁決定との矛盾がまったく発生しないように巧妙な解釈を施しています。(この点、保全異議審のときに、一部債権者側代理人の主張のなかでも触れられていたのですが、そこでは保全法上の「必要性」解釈というレベルを超えたものではありませんでしたので、最高裁の判断との整合性を問題とされていたようです)さらに、債権者の特色(投資ファンド)を持ち出して、事後における損害回復では償えない面もある、と締めくくるあたり、プロの責任ある法律家としてレベルの高さを感じました。(あくまでも、私の印象なんで・・・ )
司法の政策形成機能を強く打ち出した鹿子木決定と、オーソドックスな「オトナの裁判」を見せつけた赤塚決定とを比較した場合、話題として取り上げておもしろいのは鹿子木決定ですが、やはり私個人の好みとしては今回の高裁決定を推したいと思います。防衛策のスキーム如何によって、証券マンの方々が一般顧客に奨める銘柄が変わる、という事態になるのは時期尚早ではないでしょうか。今回のニレコさんのプランは特別だった、でも他のプランへの影響はまだわからんよ、そういった印象を残したまま、もうすこし買収防衛についての最適方法を(ライツプランということだけでなく)みんなで検討する時間があってもいいように思います。今回の高裁決定が地裁決定の影響を払拭するとはいえませんが、冒頭に述べた結論のとおり、防衛策導入へのいろいろな可能性を残したまま、司法判断の幕を引けたのではないか、と認識しています。

PS

この高裁の論理と、保全法解釈に関する最高裁の判断内容を綜合すると、たとえば事業再編時の独占交渉権に関する契約書のなかに、「AはBから、独占交渉の趣旨に反する行動があった場合には、差止請求されても異議ないものとする」という明文規定を設けておけば、独占交渉権侵害について交渉差止め仮処分が認容される、といった結論になるのでしょうかね?どっかで使ってみたいですね。

6月 16, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (4) | トラックバック (1)

2005年6月15日 (水)

ニレコの抗告審やはり差止認容(決定全文あり)

(6月16日午後5時 追記)

ちょっとわかりにくいのですが(高裁のホームページのメインには表示されていないので)高裁の6月15日保全抗告棄却決定の全文が掲載されておりますので、お知らせしておきます。

 ニレコプラン差止に関する抗告審決定全文

(理由中、一部マスキングされているところがありますね?なんでだろう。)

なんだかんだと本業が忙しいため、また夜にでも目を通したいと思います。

(追記おわり)

本当に15日の夕方までには、決定は出るもんですね。

朝日ネットの決定要旨を読みましたが、あまり目新しい論点は出ていないようです。ライブドア・ニッポン放送事件のときは、三審理とも、それぞれ特有の意見があって、面白かったのですが。(高裁HPは全文掲載っていうのは遅いような気がします。)

ニレコは臨時取締役会で新株予約権発行取りやめの決議をされたようです。とりいそぎ速報のみにて。

6月 15, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (3) | トラックバック (3)

2005年6月14日 (火)

ニレコ保全異議決定全文を読んで

総会リハーサルのため時間がありませんし、明日にでも抗告審決定が出るんじゃないか、という段階ですから、深い検討はできませんが、やっぱり一言エントリーしときます。

私は決定理由よりも、まず第一に「債務者側代理人がどこに力点を置いて保全異議を申し立てたのか」そこが一番知りたかったところです。残念ながら「総花的」な主張となっており、いずれの論点も、債権者側代理人から余裕をもって反論されてしまった、という印象です。(決定文にまとめられた債権者の主張、債務者の主張からの印象ですので、誤解があれば訂正いたします)とくに、保全の必要性に関する鹿子木決定批判の部分では、初歩的なミスもあったりして、短時間で異議申し立てをしなければならない債務者代理人側の苦労がたいへんなことがうかがわれました。「逆転」という実をとることを最重要課題とするのであれば、市村決定が理由部分でもっとも逡巡していた部分、つまり保全の必要性に関する論点のうち、最高裁判決との整合性の部分にエネルギーを集中してもよかったのではないかな・・・と思ったりしました。ただ、そのような方法ですと、せっかくの保全異議が、ほかのライツプランに影響を与える論点について(鹿子木決定の修正は)無視せざるをえない、ということになりそうですが。

さて、この決定理由を全文読みまして、通常の信託型ライツプランへの司法判断の影響というものが、ほぼ理解できましたでしょうか。平時に株主総会の決議を得て、有事にライツを消却しない、という判断を取締役会(もしくは特別委員会)が決議する、というスキームを採用している場合、新株予約権の発行もしくは有事の新株の発行自体、差止の対象となりますでしょうか。数日前のエントリーで紹介いたしましたとおり、西濃運輸さんは、明確に「差止はされない」と株主様に説明しておりますし、私は「差止の可能性大」と述べました。

西濃運輸さんの説明では、このニレコの事例は「取締役会決議で平時に導入したものだから、有事発動の条件がきわめて厳しいが、平時に株主総会決議で導入すればもっと有事発動の条件は緩和される」という論理が前提となりますが、この保全異議決定を読んで、その論理が確認されたとは思えません。むしろ、裁判所は「平時において、取締役会が株主総会より有事の際の企業価値破壊者からの防御のために、緊急避難的防衛措置の委任を受けることはあったとしても、それ以上に企業価値の大小を比較検討するところまでの委任はできない。企業価値の比較、どちらが経営者としてふさわしいか、ということは本来的に株主が決めることである」と考えているように解釈するのが素直だと思います。かりに一歩譲って、平時に株主総会での決議で導入することで、有事発動条件が緩和される(なぜ株主総会の決議だと緩和されるのか、ちょっと私には理解困難ですが)としても、取締役会が恣意的な判断ができないほどに条件が明確でなければならないわけですが、西濃さんのスキームの場合①社外第三者による取締役会判断への拘束性②行使条件の明確性、いずれの面においても東京地裁決定を前提とする場合、手段の相当性に問題があると思われます。

また、抗告審の判断が待たれるところです。

6月 14, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年6月11日 (土)

信託型ライツプランに対する西濃運輸の見解

6月9日、西濃運輸さんは、自社ホームページにおいて、導入予定の信託型ライツプランが株主へ迷惑をかけるものではなく、その発行が適切なものであることを(ニレコの新株予約権発行への東京地裁決定を引用しながら)説明しています。

信託型を採用していることで、実質的には随伴性のある新株予約権を、行使時点の株主に交付することから、買収希望株主以外の一般株主に不測の損害を与えるものではないこと、取締役会決議によって導入するのではなく、株主総会の特別決議によって導入するものであるから、有事における発動要件については相当性があることなどを、鹿子木決定と比較しながらかなりわかりやすい説明で「Q&A」方式でなされています。

ニレコの新株予約権発行と異なり、信託型を利用していることによって一般株主に不測の損害を与える可能性が薄いことや、現株主がこの信託型ライツプランを導入することによって明確な損害を被る可能性が低いことについては納得できます。しかしながら、従前から私が鹿子木決定のうち、もっともライツプラン導入にとっての「足かせ」となりそうな「悩ましい問題」と考えていた点(「ニレコに対する東京地裁決定への意見」参照)への回答部分については、よく読んでも私の頭では理解できないのです。

西濃運輸さんの上記「Q&A」のうち、Q15の部分が、私が以前より「悩ましい問題」として考えている点への西濃運輸の回答です。新株予約権を実際に行使する場合の要件ですが、鹿子木決定は、かなり要件を厳格に考えているのは、ニレコのプランが「取締役会決議に基づいて発行される場合」だから、株主総会の意思を反映した西濃運輸の信託型ライツプランとは場面を異にしており、直接問題となるものではありません、と述べておられます。また、実際の鹿子木決定の理由中の文言を引用して、厳しい行使条件は、あくまでも取締役会決議によって発行された場合に限定されるのだ、ということを力説されています。私も、この鹿子木決定を最初に読んだときには、この西濃運輸さんと同じように考えました。(というよりも考えたい、と思いました)しかしながら、まず西濃運輸さんが鹿子木決定から引用している文章は、一般的な行使条件についての鹿子木決定の見解を述べた部分ではなく、その後につづくニレコ事例への「あてはめ」の部分を引用しているにすぎないのでありまして、裁判官の法律解釈(法律判断)の後の(その判断を前提とした)事例へのあてはめ部分である以上、本事例を紹介する際に「取締役会決議の基づく場合には」という文章が導入されることは至極あたりまえのことでして、文言の反対解釈として、株主総会による承認がなされた場合を排除している、とまで読むことは明らかにおかしいと思われます。

また、西濃運輸さんは、取締役会で発行を決議した場合と株主総会の承認を得て導入を決定した場合とでは「場面が異なる」と述べておきながら、それでは「株主総会で承認を得た場合には行使要件が緩和される」とは一切述べていないところが歯切れが悪いです。行使要件がもし緩和されるとするならば、それはなぜ緩和されてもよいのか、そのあたりを明確に説明できないところが悩みといえるのではないでしょうか。

さらに、鹿子木決定がライツプランの有事における行使条件について、一般的な見解を述べている部分(決定書では2の(2)のイ)では、会社の経営支配権に現に争いが生じていない場面においてでも、取締役会決議でライツプランを導入できる場合があることの説明として「次期株主総会までの間において、会社に回復しがたい損害をもたらす敵対的買収者が出現する可能性をまったく否定できない」ことを理由として掲げています。ここだけを読むと、たしかに「要件が厳格なのは、ニレコが取締役会決議で発行するからなのかな」とも考えられるのですが、その後に鹿子木決定は「ただ、この場合においても新株予約権の発行に株主総会の意思が反映される仕組みが必要というべきであり」とされていますので、この理論からすれば、事前に株主総会での発行承認を得た場合と、取締役会で発行を決議して事後に(追認されて)株主総会での承認を得た場合とで、その発動場面における行使要件を一方は厳格で、一方は緩和されてもよい、と解釈することは矛盾を生じます。つまり結論としては、事前にきちんと株主総会での承認を得た場合というのは、株主に不測の損害を与えないものであることについて防衛策の適法性を高めることや、手段の相当性のうち、行使条件の基準が明確となるとなることによって、現経営者側の相当性立証が容易になることへの利点はありますが、発行時のスキームの相当性のうち、行使条件が比較的緩和される、ということまでは鹿子木決定では明確にされていない(むしろ、取締役会決議で発行する場合と変わらない)と思われます。

ほかにもまだ2点ほど、「これは苦しいのでは・・・」と思われる部分がありますが、ちょっと時間の関係でまたの機会にさせていただきます。なんの利害関係もない外野の弁護士の見解ですから、いろいろ間違ったところもあるかもしれませんが、週末にもしお時間がございましたら、一度ご検討いただきたいと思います。

なお、ニレコ保全異議審の決定についてはまだ読めておりません。

6月 11, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2005年6月10日 (金)

ニレコの新株予約権発行差止異議審

ニレコの防衛策に関する保全異議決定が出ましたね。同じ東京地裁第8民事部の別の裁判官三名によって審理、決定がなされましたが、結論は原審と同様、無担保での差止認容ということだそうで、ニレコは即時、保全抗告を高裁に対して行ったそうです。(6月16日が発行予定日ですから、それまでに抗告審が決着するのでしょうかね?)

明日ころに東京地裁のホームページに異議審の決定全文が出るものと思いますし、まだネット記事程度しか読んでおりませんが、今年3月末現在の株主に対して新株予約権を発行する、というニレコ防衛策特有のスキームの部分について、「株主全般に不測の損害を与える」ということが被保全権利の認定、保全の必要性認定のいずれの場面でも強調されているようですから、一応ほかのライツプランへ与える影響というのは少ないのでは、と思います。というか、特定日における株主への割当、というスキームについてはガイドライン発表当初から相当性に疑問あり、とされていましたから、ちょっとひっくり返る可能性は少ないとは予想していましたが、ただ原審(鹿子木決定)で、スキームの相当性があるといえるためには、(たとえ防衛策の策定に株主総会の意思が反映されていたとしても)独立した第三者の意思決定に拘束された取締役会の判断が「濫用的買収者から一般株主を守るための緊急避難的事態かどうか」という点のみに限られる、というかなり限定的な場合しか発動ができないような趣旨でしたから、そのあたり、(もし株主総会の承認をもってライツプランを導入した場合に)取締役会(もしくは特別委員会などの独立第三者機関)の構成や、発動できる要件の解釈など、緩めの防衛策を肯定できるような趣旨のことが記載されているのかどうか、私個人的には非常に注目をしております。(ネット記事からでは、そのあたりまでは読み取ることができませんでした。ただ、判決や決定というものは、そもそも事案解決に必要な部分でのみ理由を付せば足りるとも言えますので、この裁判官の判断で、「一般株主に不測の損害を与えるような防衛策ということであれば、それだけで相当性なし」と蹴ってしまうこともできるのでありまして、そのほかの論点に言及していない、ということも考えられます。

来年の新会社法が施行されますと、スキームの相当性に問題のある新株予約権を使った防衛策に対しては導入部分から司法判断の対象となりやすい(差止請求+新株予約権発行無効確認訴訟 現行法では無効確認訴訟は不適法との判例がありますが、新会社法案では法案828条に明文化されています)のですが、株主総会の承認を得た形であれば、なんとか乗り切れるのではないでしょうか。ただ、鹿子木決定を前提とするならば、株主総会の承認を得た形であったとしても、有事における防衛策発動の場面において、発動要件が非常に厳格なために、どのような結論となるのかは、不透明だと思われます。(私個人の見解としては、鹿子木決定の要件に加えて、新株予約権の行使できる株主と行使できない株主を差別することが株主平等原則違反になる、ということも見逃せない論点だと思っていますが)

さらに、実際に新株予約権を個々の株主に付与する時点における課税問題についても、現時点では不透明のようですね。とりあえず付与される時点では一般株主は雑所得に対する税金を支払う現金をどこからか用意しなければなりませんし、申し込み時点における株価と行使可能となる時点の株価次第では、価値に見合う以上の余計な税金を支払わなければならない事態になるようです。本当に発動されるような事態というのは、確率としては僅かかもしれませんが、その僅かの確率が現実化した場合、立法的な解決をほどこしていない現状では一般株主に多大な迷惑をかけることも予想されます。

平時のライツプランを検討するにあたっては、リスク回避のために、予備的な防衛策をも検討しておくのが無難かもしれませんし、そもそも司法判断は平時における買収防衛策の導入にどうも否定的な見解が強いように思われますから、司法リスクを考えた場合、株主価値を高める別の方策によって、「副次的に防衛策となりうるような」手段をとる企業も増えるかもしれませんね。恐ろしいのは、買収防衛策を導入すること自体が「現経営者の保身であり、経営に自信のない証拠」と受け取られて、株価が漸次的に下がってしまうことではないでしょうか。

明日あたり、保全異議決定の全文を読んで、すこし意見が変わっていましたら、ゴメンなさいです。。

6月 10, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2005年6月 4日 (土)

「政府指針、司法が追認」て本当?

6月2日の読売ネットの記事に、政府指針を司法が追認した とありました。

今後は概ね、政府指針に沿った形で、各企業が防衛策を模索するであろう、とのことです。

本当にそうでしょうか??どうみたって、政府指針と鹿子木決定とは内容が違いすぎます。私だって、役員している会社や、相談を受けている企業の防衛策について、指針に基づいた策定を一応念頭に置いていますが、鹿子木決定によるならば、社外取締役が「企業価値の向上のためには現経営陣による支配権維持が望ましい」とか「どっちが上回るかわからないから、ひとまず発動させずに、株主の意思にゆだねよう」という裁定は下ろせないのではないでしょうか?なぜなら、企業価値判断などのようなものは特別委員会で判断すべきではなくて、特別委員会が判断すべきなのは、買収提案者による買収は、防衛策をとらないと、株主の損失が回復困難であることが明らかな場合かどうか、(しかも、その明らかであることは、司法判断では会社側が立証しないといけないでしょう)ということで、今後予想される敵対的買収のほとんどの場面において新株予約権行使の条件の立証は難しいからです。

ちょっと、今からバーレーン戦が始まるので、きょうは小ネタということで失礼します。。

(追記)

土曜日ということで、ちょっとこのブログにお越しいただいている方のリンク解析というものを見たんですが、

①ブックマークが圧倒的に多く、逆に「bloglines」が意外と少ない

②閲覧時間が午前8時から同10時、午後5時、6時に集中している

③トラックバックによる影響(恩恵?)をかなり受けている(微笑or苦笑)

④平日と休日のアクセス数の差がとんでもなく大きい

ということで、(別に調査結果というほどのことでもないですけど)会社勤めの方が朝が夕方に「お気に入り」から見ていただいている、というのがほとんどのような気がします。モバイルでどっからでもブログをチェックされているような方には、あまり読んでいただいてないかもしれません。有名な岡口判事のHPみたいにWEBネタとか、便利ツール紹介、法曹界のおもしろネタのようなものをエントリーしてないから、しかたないかもしれませんね。めげずにこれからもマニアックなブログめざして頑張ります・・・・・

6月 4, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2005年6月 3日 (金)

ニレコの防衛策に対する仮処分決定への意見

実は「金融庁の企業統治新ルール構築」とか「大手銀行の取引先を巻き込んだCSR政策」など、書きたいことが山ほどあったんですけど、いろんな方からトラックバックをしていただいて「べらぼうに」アクセス数が増えましたので、やはりニレコの新株予約権発行に対する東京地裁決定についての感想を書かせていただきます。私のような町の弁護士の意見を聞いていただけることはありがたいのですが、いかんせん、外野の声ですので、(47thさんのように政策形成機能をもった立場にはありませんので)そこのところ、よろしくお願いします。実は、以下の文章は今後の私の社外取締役、社外監査役の研究のためにも備忘録としてホームページに掲載しております。そちらを先にごらんになった方は、「なんや同じやんけ!」って言われそうなんで、あらかじめご了承願います。

今夜、東京地裁のホームページから、ニレコの企業買収防衛策に対する新株予約権発行差止仮処分命令申立事件の決定全文を読みました。いわゆる特定日における株主に譲渡制限付で新株予約権を発行する、というものですが、(昨日のコメントではこの点、誤解がありましたので訂正いたします)東京地裁商事部の鹿子木裁判長の論旨は非常に明快でありまして、一読しただけで、この裁判官の企業買収防衛策への考え方、企業価値論、独立取締役の役割への期待度、企業と株主との関係のあり方などがほぼ100%理解できました。
昨日、私のホームページのトップで、報道からの決定に関する印象を書きましたが、そのものずばりの趣旨が「総括」部分に記載されていたので、私にとってはおよそ予想していた内容の決定理由でした。ただ、この決定理由がすばらしく明快で秀逸であることと、決定内容を妥当なものとして、納得できるかどうかは別でして、私見としてはあまりにも企業買収防衛策への締め付けが厳格であり、この決定理由からするならば、現在導入されているライツプランのほとんどが予約権発行時点での差止もしくは、有事における行使条件発動自体の差止の対象になるのではないかなあ、と思っています。(すくなくとも、現経営陣側には、その恐怖感を抱かせるに十分ではないでしょうか?)きょうの夕方の報道によりますと、債務者側(ニレコ側)代理人は、この決定を不服として保全異議の申立を行ったとのことですが、(たとえニレコが「既存株主への不測の損害」要件で敗訴したとしても、他企業で導入を予定しているライツプランのためにも、この決定理由の「要件の厳格性」だけは緩和しておかないと、ほかの企業にも多大な影響が出るのでは)といった苦渋の選択のなかで申立を決意したことが予想されます。私のような市井の弁護士にはあんまり関係のないことかもしれませんが、こと東京、大阪の大型法律事務所や信託銀行にとりましては、この決定が買収防衛策の企業浸透度にも大きな影響の与えるだけに、(私が代理人であったとしても)ライツプランを用いた防衛策への法的安定性を勝ち取るための異議申立は必須だと思います。

ところでこの決定を読んで、ちょっと誤解しそうになりますが、平時のライツプランを適法とする要件が厳格であるがゆえに、現商法の条文に忠実であるとか、司法判断が保守的であるとか、はたまた経済産業省や法務省のガイドラインそっくり、というような軽いイメージでの決定ではないかな、と思われそうな点があります。しかし、私はそんな軽いもんではないと思ってます。鹿子木裁判官は、私とほぼ同い年の判事さんですが、90年代には通産省産業政策課へ出向したり、最高裁事務局で司法行政に携わるなど、(いわゆる裁判官のエリートコースと言われておりますが)その経歴からすると、アメリカにおける企業買収のあり方などは、おそらく熟知しているはずでありまして、また個別事件の判決のもつ政策形成機能についても人一倍、理解をされているはずです。また、2003年に発足した「法と経済学」の設立発起人として、判事として唯一名前を連ねておられ、個別事件における法的判断、法律解釈においてミクロ経済学的要素を取り入れることにはご自身、かなり積極的と思われます。(この決定理由、とりわけ株主の不測の損害発生に関する理由付けのあたりに、その判断手法が如実に現れています)これは私の推測の域を出ませんが、鹿子木裁判官の決定に流れる思想は、決定理由第3の3(保全の必要性)への判断理由に書かれている内容にほぼ尽きるものと思います。「会社支配権の争奪は、あかんたれな経営者を排除して、合理的な企業経営を可能とするという側面もあるんやから、否定すべきやない。いややったら、なんぼでも定款変更して譲渡制限会社にすればいいやんか。それがいややったら、最初から支配権争奪はあたりまえやっちゅうねん。不適切な買収を防止するのは、収益を改善して株主を重視した経営をすればいいやん。安もんの買収策はかえって企業価値を低下させるだけやわ」(表現は若干くだけた形に修正していますが)と明確に述べています。この主張というか意見に対しては、いろいろ見解も分かれるものとも思いますが、このように自信をもって判示されている点に、この裁判官が以前から実際のM&Aの現場をよく知っておられ、それなりの自論を有しているのではないか、と窺われるのであります。

社外取締役、社外監査役への期待という面でいいますと、この鹿子木裁判官の判断は非常に厳しい。おそらく、法律解釈に経済学的な実証を採り入れることに積極的だとするならば、独立取締役がどれだけ中立公正な第三者としてのメンバーを揃えたとしても、その人達が有事において「敵対的な買収者による買収が株主の利益を著しく毀損する(なお、この言い方は鹿子木裁判官の要件を前提とした場合でありますが)ものかどうか」適切に判断できる「目にみえる」証拠がでてこないのですから、期待できないのも当然の帰結です。また、このような独立取締役がアメリカでなく、この日本において、どれだけ公平な第三者として活躍できるのか、本場アメリカと比較できるだけの見識も持っておられるのではないでしょうか。私は、独立取締役の職務に緊張をもたせるためにも、有事における司法判断において、企業価値の適切な判断者として、この独立取締役の職務執行をプロセスとして判断すればいい、との意見ですが、企業価値の優劣すら独立取締役へ判断をゆだねることは許されず、「明白に著しい損害を株主に与えるかどうか」ということぐらいしか、判断は期待できない、ということなんでしょうかね。ホンマに厳しい。

「株主総会の意思が反映される仕組み」「取締役会に有事発動の最終的判断者の地位をもたせない」という要件はまだいいとしましても、「新株予約権の行使条件の成就が、取締役会による緊急避難的措置となっていること、つまり敵対的買収者による支配権獲得が会社に回復しがたい損害をもたらす事情がある場合に限定される、しかもこの判断は社外の人間が最終判断をすること」、これがなんとも厳しい。厳しすぎる。企業買収防衛策を検討するのであれば、もっと他のプランも検討せよ、そして司法判断をもっと受けろ、と裁判官が声明を出しているように思われるます。(おそらく、そのことに賛同される方も多いかもしれません)ライツプランを検討する立場の方にとっては、せめてこの部分だけでも異議審、抗告審において、鹿子木裁判官とは別の思想で、別の理由が出されることに精力を注がなければならないものと思われます。(しかし、こんなに政策形成機能をもつ判例が書けるというのは、裁判官冥利につきるんでしょうなあ・・・)

6月 3, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2005年6月 2日 (木)

ニレコのライツプランに差止仮処分決定

まだ仕事中なんで、決定文も読めていませんが、東京地裁商事部でニレコのライツプランに対して新株予約権発行を差し止める仮処分決定が出たようです。

私の記憶が正しいとすれば、たしか5月10日ころに申請があって、その後5月20日ころにニレコ側がプランの変更(SPC信託型ライツプランに修正して随伴性をもたせて、基準日以降の株主への不測の損害を回避する、発動を決定する特別委員会のメンバーから、代表者がはずれる)を加えていますよね。ということは、現在かなりの企業が導入(もしくは導入を検討している)信託型ライツプランへの影響度がかなりあるのではないでしょうか。それとも、取締役会決議で発行を決めたことが問題となったのでしょうかね。それならば、影響度も薄まりそうな気がしますが。

また仕事終って、決定全文をどっかから入手できたら、検討したいと思います。

(ここからは追記です)

まだ決定全文を入手しておりませんが、深夜にネット記事が少し詳しいものが出ていますので、(朝日なんかを読んでおりますと)最初にニレコが発表したプランに対しての司法判断のように読めますが、いかがでしょうか。途中で、司法対策のためにプランを変更したから、その変更後のプランに対する判断かと思ったのですが。

おそらく明日以降、また詳しい解説が専門家の方々よりコメントされると思いますので、期待しておりますが、いずれにせよ、プランの巧拙はあったとしても、この新株予約権を利用したプランというのは、どうも法的安定性、予見可能性という面からは嫌われてしまうような気がしますね。弁護士の立場からすると、今回の判断をもとに、「この判断の妥当性はこのあたりまでだから、ここを修正すれば先例的な意味が回避できますよ」とか説明できるわけですが、ニレコの場合でも発表当初は急激に株価が上昇して、その後急激に落ちて、5月末は発表前よりも下げてますから、司法判断に及ぼす不安材料が多すぎて、とても企業法務担当者の方々や現経営者の方には落ち着かないスキームのように思われます。私自身は、5月28日のコメントのとおり、いまでも、このプランはどんなに巧く作ってみても「株主平等原則」違反は明らか、という立場ですから、このスキーム単独での防衛策はムズカシイ・・・と考えておりますが。いまごろ、ニレコの代理人の方々は、異議申し立てするか、プラン取り下げるべきか、思案中なんでしょうね。

「敵対的M&A対応の最先端」を読んだから言うわけじゃありませんが、いっそのこと、これから防衛策を検討されるところは「西村ワクチン」を株主の皆様に提案してみてはいかがでしょうかね。条件型の拒否権付種類株主と社外取締役との組み合わせ、というのを検討してみてはいかがでしょうか。西村ワクチン進化型みたいな。お金あんまりかからないみたいですし、株主平等原則違反もクリアできるし、内容が明確だから法的安定性も高いと思いますが。。

6月 2, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (6)

2005年5月28日 (土)

タイガー&ドラゴン(その1)

予定どおり、経済産業省と法務省連名による「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」が出ましたね。両省が策定にあたって対立している、などというニュースも出ていたので、とても楽しみにしておりました。

まだザッとしか読んでおらず、全体に対するコメントなども、専門家の方々がなさると思いますので、外野からの無責任な発言になるかと思いますが、私の印象としましては、まさに「タイガー&ドラゴン」・・すばらしい指針だなあと作成者の英知に感服する自分と、ちょっとおかしんちゃうかな・・と指針の隙間に目を輝かせる自分が混在しているところです。社外監査役としての仕事からすれば、関与している企業にとってできるだけ完璧な防衛策を検討したいと思うところもあり、また隣接業種の方々と研究会を開催している買収者向けのスキーム検討にあたっては、この指針の脆弱な部分を掘り下げたいと考えてもいるところでもありまして、仕事柄、たいへん貴重な資料であり、興味深いものです。

第一印象としましては、「西濃運輸の信託型ライツプランも、この指針ならオッケーなんかなあ・・」ということでしょうか。この指針の7ページあたりに、私が昨日書いておりました「さっぱりわからない」点の回答も出ているようです。財産権侵害の可能性、商法280条ノ21第1項に関する脱法行為のようにも思えるのですが、いちおう株主総会の特別決議を発行の条件にしておりますし、また新株予約権の内容については、適法性を高めるための工夫もこらされているということでセーフということなんでしょうか。

ちょっと、法律家としての疑問としては恥ずかしい限りなんですが、この指針6ページから7ページにかけて、新株予約権を株主に割り当てるにあたって、買収者だけに割り当てないことや、買収者にも割り当てるけども、行使させない、ということが「株主平等原則」に違反しない、とする理由、ほとんどわかりません。これ、法律家以外の方でも、読んで頭ですぐ納得できますでしょうか。

「株主平等の原則とは、株主は、株主としての資格に基づく法律関係については、その有する株式の数に応じて平等の取扱を受けるべきである、という原則である」これは、神田教授の「会社法第四版補正2版」49ページに書かれている株主平等原則の定義です。この平等原則の定義と、指針6ページから7ページにかけて書かれている理由とが整合するのでしょうか。(誰かひとりぐらい、新聞のコメントで同じことに疑問を抱いた専門家の方でもいらっしゃたら心強いのですが)指針の理由では、そもそも商法では新株予約権は株主としての権利の内容ではないから、とか新株予約権の割当は株主としての権利とは無関係であるから、ということが書かれておりますが、しかし「第三者割当」でもなく、「社債権者」への割当でもない、れっきとした「株主割当」で新株予約権が発行されるわけですから、これはどうみても株主との法律関係上での「取扱上の」問題だと思いますけど。おそらく指針の考え方は、「そもそも新株予約権は、現行法上会社が自由に割り当てることができるものであるから、たまたま買収者を除いた株主にだけ発行するとか、行使させる、という発行方法は株主の権利内容への干渉とは異なる、ということなんでしょう。しかし、新株予約権に現行法が随伴性を認めていないのは、そのことで直接金融が容易になるから、との政策的な判断からであって、本件のように支配権獲得を目的としていることが明らかな場面に、自由割当の理由を持ち込むことには大きな矛盾があり、説得力がないと思います。そのうえ、常識的に考えても「株主だけに割当」ているのに、発行されない株主とか行使できない株主が出てくるということはやはり素直に考えても「株主の取扱に差をもうけた」と判断するのが筋ではないでしょうか。

まだほかにも「企業秘密」の開示を、「企業価値判断」時における株主から企業が開示を求められたとき、どうするんだろう・・・などと素人疑問は尽きないのですが、とりあえずまだ熟読しておりませんので、きょうはこれまでということで。指針を読んでのご感想など、また詳しい方のご教示をお願いします。。。

5月 28, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年5月26日 (木)

企業買収防衛策に対する素朴な疑問

商事法務1731号(5月5日、15日合併号)の座談会記事、とりあえず全部通して読みました。現在、会計士さん、M&A仲介業者さんと取り組んでいる事業の参考にさせていただこうかと思っています。

ただ、なんとなく「素人の素朴な疑問」というか、杞憂にすぎないと言われればそれまでなんですが、すでに各社で導入されているようなライツプランというものが、本当の有事に機能するんかな・・・・と、そんな気がしてきました。いままで拳銃を持ったことのない日本人が、いきなり練習もせず「これ一発で、奴を撃て」と言われているような、そんな無謀なことを考えているように思えてきました。拳銃に弾は一発なんですよね?

しかも、いろいろと判例などに出てくるアメリカの事案というのは、双方がアメリカの企業であり、資金力なんかもそれなりに豊富なわけで、資金力に大きな差がある欧米企業が日本企業をターゲットにしてきた場合にも、その「武器」が通用するんでしょうか?たとえば、孫会社を使って、ライツプランを発動させて、丸腰になったところで子会社がそのあとTOBをかけるとか、そんなアコギなことでなくても、買収したい企業を複数の希望企業が順次敵対的買収をかけてくるとか、そんな事例でもうまく機能する防衛策というものがあるのかどうか、不安になってきます。(いままで、そんな議論はどこかでなされているのでしょうか?)

ゲーム感覚の発想が先立ってしまって見えにくいかもしれませんが、本当に必要な防衛策は、企業にとっては地道な企業価値向上のための施策と株価対策、そして国による規制法の改正(具体的には証券取引法による規制)なのかな・・などと疑問を抱くに至っています。たしかに「いい買収は企業にとっても歓迎」ということが前提ならば、あまり規制法による防衛はよろしくないとは思うんですが、さて冷静に考えて「いい買収」と「悪い買収」というのも、そんなに簡単に判断できる人っているんかなあ・・・と、どっかで割り切らないといけないんじゃないかな・・・と。

いまできることから始めよう、という気持ちになって、まずは防衛策を検討しておりますが、株主総会終了後、「これでホットひと息」ということには、どうもなれそうにありません。。。

西濃運輸さんのライツプランの説明、どなたか理解できた方がいらっしゃったらご教示ください。私は何度読んでも理解できません。

5月 26, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2005年5月24日 (火)

商事法務の座談会記事(買収防衛策)

企業価値とその司法判断ということについて、敵対的買収への防衛策を中心に、いろいろと考えてきましたが、ここ数日に少し頭を整理しようと思い、関連雑誌などを読んでみました。そのひとつが「商事法務5月5日、5月15日合併号です。

企業価値研究会に参加されたメンバーの方4名による座談会が掲載されておりますが、この座談会「企業買収防衛策をめぐる法的論点と実務上の対応」はさすがに論点公開を作成された方々の意見表明モノとあって、もっとも「論点公開」の趣旨を理解しうるものだと思いました。経済産業省の日下部課長や武井弁護士が「経営者の判断プロセスについて、司法判断が及ぶものとすれば、企業価値をめぐる現場での争いを前向きに解決できるのではないか」としている提言はたいへん示唆に富むものだと思います。また、機関投資家代表の村田氏の意見についても、たいへん勉強になります。立場が違えばあたりまえと言えばあたりまえですが、そもそも司法裁判所が具体的な防衛策の発動や、策定にあたって、「どのようなものなら違法、適法」と判断されること(つまり司法が政策形成機能を果たすこと)自体、避けるべきである、それでは予見可能性、法的安定性に欠けてしまい、投資意欲を萎縮させてしまう、という問題点を強く主張されているところです。われわれ弁護士とは異なり、企業法務の現場サイドの方々の意見というのは、企業買収防衛策問題にかぎらず、おそらくこの村田氏の意見に集約されるところではないでしょうか。どのような行動をとれば、単に訴訟に勝てる、というだけでなく裁判にもならないか、その方法を教えろ、ということでしょうね。さらに、この問題に限っていえば、機関投資家という立場からすると、あとで司法裁判所によって、防衛策が発動されたり、解消されたりするということは、機関投資家自体が、その判断予想をしたうえで投資するかしないか、の判断を迫られることとなり、「リスクのたね」がひとつ増えることになるになるわけで、できれば回避したい問題となってしまうわけです。先日厚生年金基金連合会が、具体的な防衛策を示さない発行予定株式数の増加、役員数の減少を定める定款変更については基本的に反対する、との意見を発表しておりましたが、これも機関投資家としてのリスクをひとつ回避することの表れだと思います。

そして、非難、お叱りを受けることを覚悟のうえで私見を述べさせていただくとすれば、もっとも(過激?)な見解をお持ちなのは誰でもなく、神田座長ではないかな・・・との感想を持ちました。過激というのが語弊があるとすると、いま最も常識的な買収防衛プラン、として世間で評価されつつあるような対処法からみると、もっと「現経営者側の判断でぶっとばしていいんだ」みたいな、そんな見解を希望としては持っておられるように感じました。まず実体法としての商法が思い描く「取締役」というものは経済的にも法律的にも合理的な判断ができる人を想定しているのであって、だからこそ株主から信認を得ているのではないか、またそれを前提とする規定が現商法にはあるではないか、という思想が横たわっているように思えるのです。ちょうど憲法の勉強で、憲法の基本原則である「国民主権」と代議制に関する論点を勉強していたことを思い出します。国民の意味をひろく抽象的に捉えるか、一般市民、大衆という意味にとらえるかによって、国民の代表である代議員の意味も変わってくる、という論点です。この考え方の違いによって、選挙制度の合憲、違憲という判断も異なってきます。これを株主と取締役ということで置き換えてみると、神田教授は「個々の株主の利益などは、ひとつひとつ集約することは困難であり、これを株主の個別の意思をそのまま経営に反映させることは至難の業であるし、それによって企業価値、株主価値の向上は期待できない、したがって取締役がそのような株主の「総意」のようなものを汲み取って株主利益を反映させればよいのではないか、なぜなら取締役は短期間のうちに株主の信認を受けているのであり、また総意を汲み取ることができるだけの経済的、法律的な合理性を有する人間だから」という思想をお持ちのように感じます。もちろん、そのような思想以外にも、有事における株主の行動が、とうてい企業価値の理性的な判断を期待しうる状況にはない、という具体的な弊害も理由のひとつではあるでしょうが。(この理由は商事法務の座談会記事にも掲載されております)

もし、新聞報道にあるように、法務省と経済産業省との間で、防衛策ガイドラインの公表内容に対立があるとすれば、この「株主と取締役との関係に対する理解の違い」にも、その一因があるように思えてなりません。(また 続きモノ、とさせてもらいます)

追記

今朝(5月24日)の読売朝刊に厚生年金基金連合会の幹部の方のインタビュー記事が掲載されていました。その記事を読みますと、上記の理由以外にも、いい買収と悪い買収があるんだから、有事において株主が買収の是非を十分判断しうるシステムでないと具合が悪い、という趣旨を強調されておりました。松下の事前警告型のシステムを高く評価されているのが印象的でした。(私は一部欠陥があり、買収希望者からは訴訟に持ち込みやすいシステムだと認識していますが)

5月 24, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2005年5月21日 (土)

法務省と経済産業省が対立!?

以下のような毎日ニュースの記事をみつけました。

買収防衛策:指針づくりで経産省と法務省が対立

この記事を大まかに整理すると、経済産業省は、予定どおり「企業価値研究会の論点公開」の指針に基づいたガイドラインを作成したところ、法務省は社外取締役の行動が「株主総会の承認」に等しいほどの公正性を確保できるものかどうか疑問であり、その関与に法的効果を認めることはできない、として別のガイドラインを作成している模様です。そして、双方の主張は対立したままであり、予定として発表されている「5月末までの公表」が可能かどうか、不明とのことです。この対立を超えて、どのようなガイドラインが公表されるのか、ますます興味深いところとなりました。

これまで私が(勝手に)このブログで提案しておりました敵対的買収に対する防衛策は、明らかに法務省寄りの見解です。どんなに社外取締役が「公正独立の第三者といっても、それは現経営陣が依頼して就任してもらった方なんで、保身目的である」ことは誰の目にも明らかです。したがって、少しでも、この保身目的を希釈して、公正性を担保するために、プランとして提言したとおり、種類株主総会による決議と社外取締役の意見を双方持ち込んだ判断基準が必要ではないかな・・と思います。これであれば、法務省が主張しているような「株主総会の承認」に匹敵する程度の判断基準と(かろうじて)言えるのではないでしょうか。

ただ、法務省が「社外取締役に法的効果を認めない」とする主張にも異議があります。この法務省の見解は、おそらくいままで委員会等設置会社の導入とワンセットとして用いられてきた社外取締役、つまりコーポレートガバナンスのあり方を論じる際の(業務執行の監視者たる)社外取締役を指しているのであって、私がいままで提言しているような企業買収という有事において立ち回りを演じる社外取締役とは意味が異なる、という点を明確にしていないところがあります。もし、経済産業省のガイドラインに「法的効果を左右する社外取締役」が登場したとすれば、その社外取締役に独自の行動指針を付与すればよいと思います。つまり、私の買収防衛プランに記載したとおり、社外取締役が平時においてはどのような業務を尽くし、そして有事においては、どのような企業価値算定のための行動をとるべきか、つまりプランの運用まで含めて法的判断の対象とすれば、「社外取締役に法的効果を認める」ことは可能だと思われます。

以上、またまた勝手な意見を述べていますが、私の職業柄、やはり裁判官、検察官身分を有する人が多い法務省の見解のほうがすんなり頭に入ってしまいました。

最終ガイドラインは、この6月下旬に予定されている株主総会において、防衛策を議題として用意している企業にとっては、たいへん意味のあるものですから、できるだけ早期に公表してほしいものです。

5月 21, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2005年5月20日 (金)

企業買収防衛策に対するガイドライン

平成18年施行予定の「新会社法」が衆議院を通過したことから、5月中にも法務省と経済産業省は過度の企業買収防衛策がとられないように「企業買収への防衛策ガイドライン」を発表するそうです。すでに出されている「企業価値研究会の論点公開」を参考にして、ガイドラインが作成されるもののようです。

果たしてこのガイドラインが策定されたとして、そのガイドラインに沿った形で防衛策をとれば違法とはならないのか、また逆にガイドラインを無視した防衛策をとった場合に、適法にはならないのか、ふと疑問を抱いてしまいます。結論からいうと、私はガイドラインに従った防衛策を作ったとしても、まったく司法判断において適法とされる保証はない、と思います。

その理由のひとつは、ガイドラインの制定経緯です。ガイドライン行政は「護送船団方式」などといわれた行政の肥大化、強権化からの回帰として、行政のスリム化を目指した国民の要請に基づいて活性化してきたものです。つまり、行政による事前審査、事前規制、過度の行政指導、民間の丸抱え保護を抑制し、自由な民間活力による社会の活性化のために、規制は最小限度にとどめる、という思想に根ざしているもので、したがってガイドラインという形での「やわらかい」指導が重用されることになります。そして、事前規制を行わないことによる権利侵害や社会的不平等の発生については、裁判所等による事後規制に委ねることになります。もちろん、公正取引委員会や証券取引等監視委員会のガイドラインのように、その遵守が法律と同等程度に要請されるものもありますが、これらは独禁法や証券取引法などの守るべきルールがまえもって、しっかり存在していて、しかもルール違反がなかったかどうか、事後規制権限を付与された機関が作成するものですから、事後規制方法に影響を与えるガイドラインであることは当然でして、今回の経済産業省、法務省の発表するガイドラインとは性質が異なるものだと思われます。最高裁判所や高裁が出すガイドライン、ということであれば、おそらく法的ルールに近いものと解釈できますから、司法判断の予見可能性を探る重要な資料にはなりえますけど、そもそも経済産業省や法務省は、適法性を判断する権限をもっていない省庁ですから、ガイドラインの拘束力は薄いと考えます。

理由のふたつめは、すでに私が(勝手に)発言しているとおり、防衛策の適法性、違法性はそのスキームの「形」ではなく、「運用のありかた」に影響される部分が大きいと思いますので、ガイドラインにしたがったスキームを選択したとしても、「企業価値」「株主価値」の判断が合理的になされるような運用がなされていない限り、防衛策は違法とされる判断は十分ありえる、と思われるからです。

もちろん、取締役としては代表訴訟による提訴というリスクを最小限度にとどめるためにもガイドラインに沿ったスキームを選択することが適切であることは言うまでもありませんが、ガイドライン行政のあり方を考えてみた場合、後で後悔することのないよう、その運用面においても常時改善のための検討を怠らないようにすべき、と思います。推測の域を出ない私見ですので、閲覧されている皆様で、一度ご検討いただけたら、幸いです。

5月 20, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年5月18日 (水)

社外取締役と種類株主(その3 最終回)

きょうもTBSなどから買収防衛プランが発表されたりして、防衛策を打ち出す企業もすこしずつ増えてきましたね。私の防衛プランの提案シリーズも、いよいよ最終回となりました。

前回にもお断りしましたが、このプランは新会社法施行後に適用されるもの、ということでお考えください。また、私のモットーとしては、「どんなに著名な人が集まって策を弄し、どんな英知をもって対抗したとしても、平時には額に汗して株主と向き合い、有事には額に汗して買収者と真摯に向き合う企業にはかなわない」というシンプルな理念です。「努力した企業が報われる」防衛策でないと社会に受け入れられないし、裁判官を説得することは困難だと思います。

①買収者との交渉の時間をきちんと確保するため、信託型ライツ・プランを導入します。
おそらく、この信託型がポイズンピル導入にあたっては、課税上の問題もクリアしており、最もオーソドックスな形ではないかな、と私も思います。新株予約権付与の相手方(受益者)は特定目的会社を委託者、金融機関を受託者として、買収希望会社以外の株主に一定条件のもとで付与します。
②特定目的会社が信託している権利を株主に付与すべきか、システムを解除すべきかは、定款自治によて定められた譲渡制限付き株主による「種類株主総会」の判断によるもの(いわゆる現行法222条9項を利用した拒否権型ポイズンピルの応用です)とします。もちろん、この種類株主総会の決議要件を加重したり、社外取締役の参加要件を加味したり、種類株主総会の決議を尊重して社外取締役が最終判断するとしてもよいと思います。なお、譲渡制限付きの株主の選定ですが、これはその企業の規模や、ステークホルダー構成、株主構成次第だと思います。従業員持ち株会や機関投資家、外国株主、メインバンクそして一般株主など、ある程度その企業の持ち株比率を反映した株主を選定して、平時より社外取締役との間で企業価値向上のための施策などを検討していただくものとします。もちろん、プランが解除されれば、その後委任状獲得競争の余地は残します。

③信託型ライツ・プランの導入、種類株式の発行、種類株主総会の決議要件などについては定時総会における承認を必要とします。

プランだけ作っておいて、平時はほったらかしにして、有事にだけ効を奏する、というのは幻影にすぎないでしょうし、将来の考えうるリスクを常にチェックし、そのリスクへの最適なパフォーマンスを得られる方策を打ち出すという昨今の企業リスクマネジメントの思想にも合致しないと思います。そもそも、どんなプランを作ってみても、常識的にみればそのプランは「現経営者の保身目的」とみなされることは否定できないはずです。(だって、現経営者が作ったんですから)そうであるならば、普段から、企業は企業価値向上へ向けた情報を常に株主に開示し、利害の一致しない株主の意見を集約し、社外取締役はその企業の株主価値、企業価値向上のための算定基準を自ら模索する努力をしてこそ、有事には株主による企業価値判断、社外取締役による企業価値判断が合理性を有する、といえるのではないでしょうか。また、この案ですと「どちらが企業価値を高めるか、株主が判断した」という手続き的な合理性を担保しており、現実の社外取締役の姿をもっとも素直に見つめているという点でメリットがあると思います。

もちろん、この案には敵対的買収希望社側から種類株主への圧力の可能性とか、平時における種類株主の不満自体が敵対的買収を誘引する情報になりうるなど、補強を要する弱点もあるかもしれません。しかし信託型ライツプランだけですと、最終判断に「社外取締役」の責任が重大すぎて、本当にこれからこのような重大な責務を公正な第三者として全うできる社外取締役が多数出現するかといえば、現実にはかなり悲観的です。以前にも申し上げたとおり、いままで議論されてきた「委員会等設置会社」とセットになった企業統治論(業務執行の適法性の確保)における社外取締役の責務と、この企業買収時における防衛策適法性審査のための責務とはまったく異質です。一歩まちがえると忠実義務違反による民事責任、仮処分の差し止め対象になりかねないと思われます。(そこまでまだ議論されていないと思いますが)
細かなところを含めて、いろいろと初歩的なミスの多い防衛策かもしれまんせんが、普段の企業価値向上の汗と努力が、そのまま司法判断にも反映するような、「社外取締役と一般株主に優しい」、そんな防衛策を(もっと頭のいい人たちが)考えてほしい、と願っています。

5月 18, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年5月16日 (月)

弁護士たちの70日戦争を読んで

今朝(5月16日)の日経(スイッチ・オン・マンデー)に、フジテレビ代理人弁護士と、ライブドア代理人弁護士とのインタビュー記事が特集として掲載されていました。舞台裏に関するレポートとあわせて、たいへん興味深い記事でした。どちらも、「超」有名な東京の大手法律事務所のパートナーの方です。各種審議会、委員会の座長を務める東大の商法学者おふたりが、どちらもフジテレビ側に有利(と一応思われる)な意見書を提出されていたにもかかわらず、裁判所が別の判断を下ろしたことも興味深いのですが、「なるほど・・」と関心したのは、「もし、フジテレビ側に、引受権行使によって、ライブドアと同等程度の株数が得られるような新株予約権を発行することにしていれば、どうなっていたか」という問題です。

たしかに、通常の裁判ではなく、保全処分という裁判で争っている「特徴」を考えると、フジテレビ側としては検討に値する策だったと思います。ライブドア側の代理人も「そのような発行規模であれば、・・・司法判断は変わったかもしれない」と述べています。

ひとつめの理由としては、ライブドアの株数に拮抗する程度の発行株数であれば、明確に保身目的による株式発行とまではいえないのではないか、という点です。この点についてフジテレビ代理人は、「内部でもそうした議論はあった。・・(しかし)高裁は相手がグリーンメーラーでもないかぎりは予約権利用の防衛策は違法と判断しているのであるから、発行量が少なくてもやはり差し止めになったのでは」と述べています。しかし、裁判所の判断の枠組みは(概ねですが)まず発行目的を確定して、その目的が経営権取得をもっぱらとする、とのことであれば、特段の理由がないかぎり予約権発行は違法、とのことですから、そもそも「一般株主へ(委任状合戦などで)最終判断をゆだねる」という趣旨での発行であれば、その目的自体が別の解釈も成り立つことになるため、別の結論となったことも考えられます。

ふたつめの理由としては、たとえ株主の差止請求権が「被保全権利として」認められたとしても、最終的にライブドアの権利が「仮処分」を用いなければならないほどの侵害に急迫性がなかったのではないか、ということです。たしかに、ライブドアの株主としての権利は希薄化されることになりますが、もし株数が拮抗する程度の希薄化ということであれば、ライブドア、フジテレビいずれも株主への企業価値向上のための提案によって勝敗を決することが可能なはずであり、そのような手段でライブドアが権利侵害を防止することができる以上は、一切の予約権発行を差し止めてまで「権利を守る必要性」があったのかどうか、疑わしいものとなるように思われます。「急迫不正の侵害の有無」という、仮処分事件独特の要件を否認する争い方は、ときにたいへん有効な場合があります。私も以前、著作権協会相手の仮処分事件(全国で流行していた「カラオケボックス」の機械使用差し止め)のカラオケボックス運営会社側の代理人として、ほかに著作権協会の選択手段はある、と主張して、ボックス側にきわめて有利な和解に導いた経験があります。

もちろん、この話は、純粋な法律問題としての予想です。フジテレビ、ニッポン放送側の経営者としての経営判断やプライド、マスコミへの対応、さまざまなステークホルダーへの事件取組姿勢などを考えると、このような「弱腰」の策が選択の余地なし、とされたのかもしれません。(実際、この記事をみるかぎり、フジテレビ側の弁護士さん方は、そういった法務以外のいろいろなベクトルというか力のモーメントの中で、苦悩されていたことがうかがわれます)でも、駆け引きの材料として、保全処分の特徴を生かした論争のようなものを、もうすこし広報してもよかったのではないかな・・・と思った次第です。

5月 16, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2005年5月14日 (土)

社外取締役と種類株主(その2)

企業防衛策のマイプランの続きを「明日書く」といいながら、別の話題になってしまって、進んでおりませんでした。この2、3日にもイーアクセス社の買収防衛策が発表されたり、東芝の対処方針が出されており、どちらも平時導入ライツプランを基本とされているものと思われます。(株主総会での承認の有無については分かれているようですが)いずれのプランも、防衛策発動のための判断には、社外取締役がたいへん重要な役割を占めていることが明らかでして、たんなる「企業統治」のシステムのあり方を論じるだけではなく、おそらく司法判断の中身に「社外取締役」の行動そのものが反映する場面が出てくることは間違いないと思われます。

その理由は、すでに私が「企業価値論と社外取締役」のなかで述べたとおりです。(引越し前のブログから、この部分だけは載せ換えしました)つまり、企業価値の向上、毀損という判断は、そもそも絶対値において誰も測量することができないのですから、司法判断も「企業価値とは」のようなモノサシを持ち込むことはないと予想されます。今回の企業価値研究会の論点公開の趣旨と同じく、実体としての企業価値というものはよくわからないけど、主役がふたり登場してきた場合に、「こっち」と「あっち」のどっちが(一般株主からみて)これからの企業の価値を向上させるに適しているか、ということを株主が比較する「材料」くらいは、探求すれば見つかりますよ、というのが裁判所の示す基本ルールだと思います。そして、この比較する「材料」というのが、つまり司法お得意の「デュー・プロセス論」による判断だと思われます。

新株予約権発行等、防衛策発動の適法性が問題となる場面において、仮処分命令事件のように比較的短期に審理の結論を出すわけですから、防衛策を発動することが企業価値向上に資するかどうか、ということは手続きの適正性の有無を審理することで、「企業価値の向上、毀損の比較」判断を行うしか方法がありませんし、そのためには、おそらく社外取締役が平時から、企業価値を最大化するための企業活動をどれだけ調査してきたか、ステークホルダーと企業の関係、関連子会社との関係、とても利益が一致するとは思われない多彩な株主の総意の汲み取り方などを、どのように工夫して把握してきたか、その結果、このたびの買収希望企業の提案とどこが違い、どの程度の差があるのか、明確に報告できることが防衛策発動の適法性を維持するうえで必要ではないでしょうか。

もし、そうでなければ、社外取締役は、(ほかにもこれまでに、コーポレートガバナンス論の主役として、社外取締役に期待されてきたさまざまな仕事もあるでしょうが)少なくとも企業買収防衛策の判断者としては「なにもしていない」ことになり、防衛策発動が差し止められるばかりか、会社に対する忠実義務違反の民事責任を問われることとなり、さらに現商法272条による仮処分の対象(当該社外取締役が買収防衛策の発動に関する調査委員会に出席することを差し止める)になってしまうことも考えられます。このような事態だけは、現経営陣が避けなければならない問題だと思います。もちろん、社外取締役が本当に公正な立場において、発動策は解除する、という結論に至れば社外取締役の法的問題はあまり議論する余地はありませんし、むしろ「解除する」という判断が増えるということは、それこそいまコーポレートガバナンス論として期待されている「社外取締役」の本来の姿に近づいているものと評価してもいいのかもしれません。しかし、そこまで社外取締役というものが、この日本の企業に「根付く」ということにはまだ私は懐疑的なんです(と、また中締めでつづく )

すいません、まだ終らなくて。。。。

5月 14, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年5月12日 (木)

社外取締役と種類株主

ここ数日、とんでもないほどブログのアクセス数が増えてしまったために、自分のブログでありながら、更新するのも躊躇しておりまして、「マニアックな人の集うブログ」のコンセプトだけは忘れないように努力してまいりますので、どうかおつきあいのほどよろしく、お願いいたします。

いろいろと社外取締役の新たな役割を検討しながら、企業価値、株主価値の本質に迫ってみようと試みてきましたが、(中締めとしまして)これまでの(企業防衛策の是非を中心争点とする)司法判断の傾向を横目で見ながら、また新会社法の条文なども参考にしながら、私なりの企業買収防衛策、(ぐっさんプラン)というものを考案しましたので、ここで開陳したいと思います。後で赤面する可能性もあろうかと思いますが、こういうのも備忘録としては、また楽しいかな・・と思っている次第でして。

基本となるのは、私の防衛策の場合、研究対象の中心となっている社外取締役(もしくは社外監査役)、そして新会社法において認められるであろう「種類株主総会」を構成する種類株主であります。(いちおう、新会社法で認められる株式譲渡制限のついた種類株式、ということで)この独立取締役(もしくは独立取締役で構成される委員会)と、種類株主によって構成される団体とが主役を演じる、というものであります。

友好的もしくは敵対的買収者が、既存株主もしくは新規株主として突然、大量の株式の取得者となって出現した場合に、その他の既存株主が企業価値判断を行うに足りるだけの適正な時間稼ぎを可能として、さらに公正な判断者として社外取締役が「株主総意の代表者」たる地位で手続きを仕切るには、これしかない! と思って中身のない頭を絞って考案したスキームであります。私が考案する程度ですから、いたってシンプルですが、これくらいシンプルでないと司法判断の対象にはならない、と思っています。

このつづきは、また明日ということで。

追記

と書いているうちに、「金融庁が信託型ポイズンピルは合法」との発言をした、という記事が出てきました。商法上合法としたのか、信託法上では合法だとしたのか、そのあたりはよくわかりませんが。いずれにせよ、買収防衛策において熟慮期間を作るためには、ライツプランを原則導入することはオーソドックスな方法ではないでしょうか。

5月 12, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (2)

2005年5月 7日 (土)

社外取締役と企業価値判断(続編1)

社外取締役の立場で、買収希望会社が企業を買収した場合と、現経営者によって企業経営を維持させる場合と、どちらが企業価値が高まるか、という判断を行う場合において、その社外取締役の培ってきた人生観や世界観による判断として「裁量の余地」というものはあるのだろうか。それとも、もっと財務分析的な「企業価値」判断的による、マニュアルのようなものによって定量的、定型的な数値による判断をすべきなのだろうか。素人考えとして、まずそのあたりが大きな疑問である。

たとえばその企業の「年間離職率」というものが算定されているとする。ここ数年、この企業においては離職率が高まってきている、という場合に、買収希望会社が出現したときに、この離職率の高さというものは、どちらのほうに企業価値が高いという算定根拠となるのであろうか。現経営陣による経営姿勢に不満があるから離職率が高いのだ、と判断すれば、買収希望企業による経営のほうが企業価値が高いとなりそうだが、この企業自体が魅力を失ってきているから離職率が高いと考えれば、よほど著名な企業が買収者でないかぎり、経営者の交代をきっかけとして、さらに離職者は増え企業価値は低下する、という方向にも判断が可能に思われる。業界全体における離職率の調査や、労働力の移動傾向などから、ある程度客観的な判断も可能かとも思えるが、最終的には判断主体となる社外取締役の価値判断に負うところも多いのではないか、と私は推測するし、この企業価値判断というものも、社外取締役自身の経営哲学や人生観のようなものによって左右されるのではないかな・・と思う。

企業価値判断基準の問題だけでなく、このような社外取締役の判断における裁量の範囲などの問題も、今後の具体的な方策を検討していくうえで何度も出てくることが予想されるのである。(ということで、またつづく)

5月 7, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2005年5月 4日 (水)

企業価値研究会の論点公開(前ログ引用の2)

企業価値研究会の論点公開(4)

気がついたら、毎日たくさんのアクセスをいただくようになり、ホンマにありがたい、と思ってはいるのですが、いかんせん私は「市井の弁護士、ごく普通に一般民事を扱っている弁護士」ですので、そこのところ、ご理解ください。冒頭にもありますように、このブログは私自身が今後の職業人としての対応の参考にするためのものでして、「備忘録」の域を脱してはおりませんので、誤解や独断、偏見もあろうかと思います。どうかご容赦ください。

さて、昨日の続きになりますが、この企業価値研究会の論点公開によって掲げられている「企業価値」の手続き的意味についてすこし論じてみたいと思います。企業価値を実体として議論することが、現行法でも企業買収への防衛策をとりうる法的な根拠を示すうえで重要であること、その実体的定義があいまいであるがゆえに(というよりもあいまいなものであると定義付けたことによって)、買収者と現経営者の企業価値向上のための提案について、「比較的な手法」を用いることが得策であることを根拠付けたことに意義があることは昨日述べました。

したがって、一般株主からみて、買収者と現経営者のどちらに経営を委ねたほうが、将来的な収益向上、つまり「企業価値」の向上に資するかという点は、株主ができるかぎり適正な判断をなしうる「手続きの確保」に重点が置かれてくることになります。一般株主が企業価値の高低を判断する最終責任者とすれば、その判断のための手続きが適正であれば「より、実体としての企業価値算定の正確さ」へ近づくことが可能となるために、防衛策の合理性も担保される、ということになります。
そして、どのような適正手続き確保の手段があるか、といえば、新聞でも報道されているとおり、ライツプランを中心として、取締役会で導入して独立第三者機関が発動を審査する方法や、導入時に株主総会で授権承認して、取締役会で発動する方法などが検討されることになります。どのような企業価値判断のための手続きを確保すべきかは、それぞれの企業の特色にあわせて選択することが適当だと思われますし、また提示されている3つの方策にとらわれず、それぞれの利点を組み合わせてさらに合理性のあるものを策定してもかまわないのではないでしょうか。
ただ、企業価値算定のための手続きが有効に機能するためには、まずどのような方策をたえるにせよ、一般株主に企業価値算定のために必要十分な情報が平時より開示されていなければなりません。そうでなければ、どちらが企業価値向上に資するかという判断自体がなしえないこととなります。したがいまして、現経営者としては、どのような防衛策を講じるものとしても、その発動が法的に有効とされる大前提として、平時における株主への情報開示がたいへん重要なファクターとなるものと思います。

さて、上記のように「企業価値」の内容を検討してきましたが、それではこのように企業価値判断を中心とした防衛策を平時に導入するとして、株式上場企業にとってたいへん重要な役割を果たすと思われる「社外取締役」「社外監査役」ですね。よく考えると、このさき社外取締役、社外監査役はたいへん「骨の折れる」仕事ではないかな・・・と思われます。この「一般株主の代表者」たる役員の平時からの仕事、有事における判断が、その後の防衛策の発動の適法性(違法性)に大きな影響を与えることになりそうだからです。
そこで、これからは「企業価値委員会の論点公開」を前提とした、上場企業における今後の社外取締役の役割について自分なりに分析したいと思います。(つづきはまた・・)

企業価値研究会の論点公開について(5)

前回は、この論点公開に記載されているような企業防衛策を採用した場合には、今後社外取締役や社外監査役の方々は、たいへん骨の折れる仕事になるのではないか・・・ということを書きました。
ともかく、私も社外監査役を務めておりますが、たとえ「社外」の人間であっても、役員会や戦略会議には出席しないといけませんし、株主総会への準備だってしておかなければいけません。その職責にあった役割を担うためには、けっこうその業界やその企業のことについて勉強しておかないといけませんが、そこに「防衛策における合理性担保の手段」として社外取締役らが期待されているわけですから、仕事の量は格段に増えるのではないでしょうか。
今後も上場企業が社外取締役や社外監査役を採用するにあたっては、いままでどおり「経営の神様的存在」や「官公庁出身者」を起用して、「このひとのいうことだったら、真摯に受けざるをえいない」雰囲気の方が登場することが多いと思います。しかし今後は実際に「額に汗して」企業価値判断のための資料作成のできる実務的戦略的な社外取締役、社外監査役も選任していく必要性がある思われます。そのあたり複数の社外取締役を選任することも多くなると思いますが、大目付役の取締役から、企業価値の向上、毀損の判断をなしうるような実務処理に詳しい取締役まで、いろんな方々にバランスよく就任していただくことが必要になりそうです。
たとえば、企業価値研究会が公開した論点のなかで紹介されている「合理性のある防衛策」として、株主総会授権型のライツプランがあります。このプランを株主総会で導入するにしても、現経営者は企業の特質などから、どのようなことがあれば企業価値を高めることができるとか、株主価値への考え方、ステークホルダーの存在が企業価値向上へどのように関係するのかなど、企業の今後の経営方針をきちんと株主に説明する必要があり、そのためには平時から社外取締役などが「一般株主の代表者」として、この企業の価値を高めるものは何か、その検討に真剣に取り組まなければなりません。(つづく)

5月 4, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (1)

企業価値研究会の論点公開(前ログの引用です)

引越し前のブログ記事のうち、今後のブログ作成に関連する部分を引用します。

企業価値研究会の論点公開について(1)

4月22日に経済産業省の企業価値研究会から公表された「論点公開」、約120ページほどの論文ですが、一生懸命読んでみました。
「はじめに」の部分は、近時神田教授(座長)が編著とされている「コーポレートガバナンスにおける商法の役割」の神田教授執筆部分とトーンがよく似ており、一読して神田教授自身が執筆されたことがわかります。
個別論点に対する評価というものは、私のような「一介の弁護士」ができるようなものではありませんが、最後までこの論文を読んでの感想としては、やはり「企業価値」というものの捉え方は、企業買収に登場する人物(の職種)によって、さまざまであるということと、今後日本に根付くであろう「社外取締役」「社外監査役」の職責が、たいそう重要であり「しんどい」仕事だということです。
この2点については、今後おいおい書いていきたいと思いますが、ひとつ最初に疑問を抱いた点だけを記しておきます。
最近のライブドア、ニッポン放送の敵対的買収における司法判断を紹介したうえで、この論文は司法機関が「企業価値」の高低を判断することはたいへん難しく、おそらく今後も「企業価値」判断については積極的に司法が踏み込むことはないであろう、と予測されている点です。ということは、おそらく企業価値判断については、最終的に株主によって判断されるべき、ということになると思います。司法が判断する部分ということになると、けっきょくのところ株主が適正に企業価値判断をなしうるような手続きが確保されているかどうか、という手続き的な部分ということでしょうか。(この点はおそらく防衛策の導入手続きやら、その行使方法、また社外取締役などの第三者の独立性、中立性ということに帰結されるでしょう)
しかし、もし「企業価値」という「実体」を一般株主が判断すべきものであるならば、それは一般の株主、つまり素人にも「理解しうるような価値判断」でなければならないと思うのです。裁判所が判断することが困難だ、とする「企業価値」の中身について、それでは最終判断者とされる一般株主が果たして十分理解できる、というものでしょうか?
私は、司法の謙抑性については理解できますが、今後も「企業価値」の向上、毀損のメルクマール作りを放棄する、ということは問題であり、企業の行動規範としてのガイドラインとは別に、やはり判例ルールとしての「企業価値」基準のようなものは必要ではないか、と考えます。今後、現経営者側、買収者側双方から、裁判上で企業価値向上に関する専門家の意見書が出たとして、それらを単に鑑定意見書のような取扱をするのではなく、やはり「おおまかなルールでもよいので」裁判所自らが策定した「企業価値」に関する定義を示してほしい、と思います。(このつづきは、また)

企業価値研究会の論点公開について(2)

このブログでは、以前から「企業価値」について論じておりましたので、今回もやはり「論点公開」42ページ以下の「敵対的買収と企業価値」の部分が気になってしまいました。
ここでは、(企業価値とは)と題して、これを論じることが買収防衛策の合理性を明らかにするうえで重要な論点になる、ということを明言されています。

企業価値とは、会社が生み出す将来収益の合計のことであり、株主に帰属する株主価値とステークホルダーに帰属する価値に分配される、とまず定義付けられています。それで、企業価値は将来の値の予想値であり、将来のさまざまな要因によって容易に変化しうるので、これを正確に測定することは困難とされています。
そして、さまざまな分析をほどこしたうえで、企業価値の分析は、提案されている株式価格と市場価格との比較ではなく、買収提案と経営陣の経営提案との相対比較にならざるをえない、としています。
 防衛策の合理性判断に重要としておきながら、企業価値の判断基準があまり明確になっていないのでは・・・との疑問がわいてきますが、ともかく研究会の上記内容からは、やはり企業価値の比較においては、株価分析ということだけではなく、ほかの要素も加味して将来価値の予想をすべきだ、という趣旨が理解できました。
 ステークホルダーに帰属する価値、という言葉が出てきますが、これはどのように評価すべきなんでしょうかね。この取扱については、明日にでもつづきで書きたいと思いますが、いずれにせよ、私は法的紛争を前提とした場合のこの「企業価値」の取扱については、実体的な側面と手続き的な側面との両面から取扱を検討する、という認識で議論すべきだと考えております。そのことで、敵対的買収が行われた際の「一般株主の判断すべき指針」、「社外取締役、社外監査役のとるべき方策の指針」を明確にすることが可能になると思われるからです。

企業価値研究会の論点公開について(3)

私は「法律家からみた企業価値とはなにか」という興味を抱きつづけていますが、この120ページにわたる「論点公開」を読んでいるうちに、どうもこの「論点公開」では真正面から「企業価値」の意味をとりあげていないのではないか、という疑問が湧いてきました。そして、そこには「優秀な方々が集まって作成した」巧妙なトリックが存在するのではないか、という考えを抱くに至りました。
(その2)のなかで、私はこの「企業価値」というものを取り上げるには、実体的な側面と手続き的側面から検討する必要がある、と述べましたが、そのことと関係するように思うのです。
企業価値を論じることは、いわば「裁判制度」を論じることに似ています。神でもなければ、タイムマシンに乗って過去の事実を正確に表現することはできないのですが、「裁判」というのはそこで当事者が一生懸命ルールに則ってなるべく過去の真実に「近い」事実をさも「真実」のように表現して、最終的には裁判官が事実認定をする、というシステムです。つまり裁判は人が作った「真実」を過去の本当に起こった事実であると「仮定もしくは擬制」するのですよね。「企業価値」というものも同じように扱われているのではないでしょうか。そもそも、この企業価値研究会の定義している「企業価値」というものは将来の収益予測、というものであり、所詮は正確には現時点では「わからないもの」なんですよね。だけど、「企業価値」という比較可能な価値がそこにあると「仮定もしくは擬制」するんです。その絶対値を測るモノサシはないけれども、ふたつの意見のどちらがこの究極の「企業価値」を反映しているか、という比較はできる、として。
したがって、「企業価値」の中身を議論する意味は実体的にはふたつの意義があります。ひとつは、主要目的ルールを排除して、現行法のもとでも、さらには新会社法が施行された後でも、資金調達の必要性ない場合にも防衛策は各企業が導入できる、という大前提を根拠付ける意義です。最初から結論ありき、とまでは申しませんが、この企業価値研究会が防衛ルールの指針作りを目的として発足する以上は、資金調達目的以外にも、いわゆる企業買収からの防衛策作りを目的としている以上は、この企業価値を論じることの重要性に大きな意義を持たせる必要はあるんですよね。そして、もうひとつの意義は(数学における「絶対値」のような存在ですが)正確に算定することは困難ではあるが、そこには「企業価値」というものが存在すると仮定して、(実体的理解としてはそれで十分なんでしょうね)、その客観的な数値を判断することはしないけれども、買収者と現経営者とがその客観的な企業価値の把握にどれだけ「近づいているか、もしくは近づくことができるか」を第三者がいろんなモノサシを使って判定することは可能、と結論付けたところです。経済学的なモノの見方と法学的な見方の融合というか、妥協点というか、そのような発想が感じられました。
企業買収における合理性のある防衛指針作りのため、たいへんに頭のよい方々が考えたスキームだなあ・・・と、私はひとり感心しております。私のような凡人には、とうてい考え付くスキームではありません。つぎはこの「企業価値」を議論することの手続き的な意味について論じたいと思います。(その4へつづく)

5月 4, 2005 企業買収と企業価値 | | コメント (0) | トラックバック (0)