2017年4月21日 (金)

監査法人必読!-「もうひとつのエフオーアイ粉飾損害賠償事件判決」

昨年12月20日、東京地裁でエフオーアイ(マザーズ上場→廃止)事件の判決が出ましたが、もうひとつのエフオーアイ事件判決の存在を、こちらのエントリーでご紹介しておりました。本家本元のエフオーアイ事件第一審判決は、データベース以外、未だ判例集にはどこにも登載されていないようですが、「もうひとつのエフオーアイ事件判決」(東京地裁平成29年1月27日)が、先に金融・商事判例の最新号(4月15日号)に全文掲載されました(20頁以下)。

エフオーアイ社は、粉飾率97%という状況の中で(無事?)東証マザーズに上場を果たしました。しかし、上場からわずか5カ月で金融庁の強制調査を受け、半年で上場廃止に至るわけです。同社の有価証券届出書等を信用して同社株式を購入した一般株主らが、会社関係者や市場関係者に対して損害賠償を求めたのが「本家本元のエフオーアイ事件訴訟」です。日本で初めて主幹事証券会社の審査ミスを理由に賠償責任を認めた判決として注目されていますが(原告、被告双方から控訴中)、会計監査人である監査法人さんは、裁判途中で和解をしたため、その行動は判決文からは全くわかりませんでした。

ところでこの「もうひとつのエフオーアイ事件訴訟判決」は、エフオーアイの架空売上の計上に協力していた取引先(具体的には富士通さん)元社員について、エフオーアイ社株主(原告)に対する損害賠償責任を認めたものです。判決文を読みますと、①なぜ会計監査人が虚偽の残高証明書に騙されてしまったのか、②なぜ納品された(とされる)現物の確認を会計監査人は省略してしまったのか、③なぜ主幹事証券会社がヒアリングの際、虚偽説明に騙されたのか、④なぜ日本取引所自主規制法人の審査が甘くなってしまったのか等、これらを検討するために参考となる事実がたいへん詳細に認定されています(しかし、日本を代表する著名企業の課長さんが、1億円の報酬約束で簡単に協力しちゃうものなのでしょうかね?なんかもっと人間臭い事情があったのではないかと邪推していまいますが・・・やや疑問・・・)。

法律家の興味は民法上の不法行為責任論(共同不法行為に関する719条1項と2項との関係、民事上の「ほう助」の解釈、民法715条における「事業の執行にあたり」の解釈、虚偽記載と損害の範囲等)だと思いますが、会計専門家の方にとって注目していただきたいポイントは、株主原告団が法人である富士通さんの責任も追及しているのですが、その責任追及を裁判所が否定する根拠理由です。一言でいうならば

「こんな立場の人(当該社員)が残高証明書出す権限ないことくらい、誰だってわかりますよね?」「こんな人が監査人の相手する立場にないことくらい、ちょっと調べればわかりますよね?」(客観的・外形的にみて事業執行との関連性なし」→使用者責任否定)

さらに、この富士通社の社員は、上場承認直前期にはもうエフオーアイ社による粉飾には協力していないのです(結局、この社員の方は報酬ももらっていないようです)。上場承認よりも3年ほど前には「足を洗った」にもかかわらず、裁判所は「上場検討の初期の段階で、取引先が虚偽説明をして会計監査人が騙されたことは、たとえ当該会社が上場まで審査で苦労したとしても、東証の審査クリアには大きな影響を与え続けている」としています(日本取引所自主規制法人さんには朗報か?笑)。つまり裁判所は「市場の番人」たる会計監査人の役割を極めて大きく評価しています。

私は(法律のご専門の方でないと、少し読むのがしんどいかもしれませんが、)ぜひ会計監査の関係者の皆様に、この「もうひとつのエフオーアイ事件判決」をお読みいただきたいと思います(もちろんお時間のある時で結構でございます)。お読みいただいて「なんだ♪これって会計士の監査がまずいからでしょ♪、俺だったらこんなヘマしないよな(笑)」とお感じになったら、それはそれで結構かと存じます。しかしお読みになって「これって、会計士災難だよな。俺も同じように騙されるかも・・・」とお考えになるのであれば、平成25年「不正リスク監査基準」の策定時に留保されている「取引先監査人との連携」問題を今一度、ご検討されてみてはいかがでしょうか。架空循環取引に協力した会社が株主から訴えられる時代になりますと、どうも会計監査人のリーガルリスクも高まるように感じます。

4月 21, 2017 企業会計 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月20日 (木)

上場会社は金商法193条の3、1項による監査役通知を開示すべきである(後編)

先週、東芝さんの3Q四半期報告書に関連するエントリーをアップしましたところ、たいへん多くの方々に閲覧いただきました。そして会計・監査実務のご専門家の方々からも、何通かメールにてご意見をいただきました。東芝さんの会計監査人であるPwCあらた監査法人さんはなかなか自身のご意見を出せない立場であることも、よくわかりました(それが良いか悪いかは別として)。これは私の単なる邪推ですが、あれだけ日経ビジネスさんやAERAさんに内部社員の「叫び」が届いているわけですから、PwCさんのところにはもっと多くの内部告発が届いていることは間違いないと思っています。そのような内部告発の内容は、日本公認会計士協会さんや金融庁(公認会計士・監査審査会)さんのほうから調査をかけなければ守秘義務の関係で外部に情報提供することはできないのでしょうね。このたび公表されました監査法人版ガバナンス・コードでも、内部通報や内部告発を受領した監査法人さんの守秘義務に関する定めがありますし、おそらくかなり慎重な対応をされているのではないかと推測されます。

さて、その監査法人の守秘義務を解除する法的根拠といえば、代表的なものに金融商品取引法193条の3があります。この「監査法人の伝家の宝刀」について、ようやく後編を書かせていただきます。前編のエントリーを書いてからすでに1か月が経過してしまいました(この1か月、コンプライアンス関連の話題が豊富だったので、なかなか続編を書く時間がございませんでした<(_ _)>)。監査証明業務の過程において、監査法人が被監査対象会社の法令違反等の事実を発見したときは、まずは当該会社の監査役(監査役会)に対して法令違反等事実の是正を求め、それでも会社が何ら対応しない場合には、(重大な法令違反等事実に限定されますが)守秘義務を解除して金融庁に当該事実を報告しなければならない、というものです。前回のエントリーにて、一老さんから「これは抜かずの宝刀ではないか」といったご質問を受けましたが、法律家の間でも積極行使説と消極行使説に分かれているのが現実です。

いままで193条の3は行使されたことはほとんどないのでは?とのご疑問もありますが、某省庁の幹部の方の講演などを拝聴しますと、これまで会計不正が疑われる上場会社に対して、金商法193条の3(法令違反等行為の是正要求通知制度)1項に基づく監査役への通知が6~8回程度発信されているようです(この点は弥永教授もビジネスロージャーナル9巻2号のご論稿の中で「知られていないものがあと数件ある」と触れておられます)。オリンパス会計不正事件の際、当時の会計監査人が「193条の3をちらつかせた」と第三者委員会報告書で報告されていましたが、あれは「ちらつかせた」だけですので、ここではカウントされておりません。

外から伺い知れる3件は、春日電機、セラーテムテクノロジー、JFLA(ジャパンフード&リカーアライアンス)ですが、本当に会社と監査法人とのガチンコで通知が出され、会社側も開示をしたのはおそらくJFLAだけだと思われます。JFLA社の会計監査人(当時)が、財務報告内部統制の不備を理由に193条の3に基づく法令違反等是正通知を監査役に発し、会社側には理由も含めて開示を要求しました(実際にも適時開示されました)。その後、さらなる会計監査人による調査過程において、実際に「粉飾」が発見されているわけですから、やはり「全社的内部統制に重要な不備」→「粉飾の発見」という図式をみれば、193条の3の有用性は高いと思います。

私個人としては、同社監査法人は(現場に「やってみなはれ」と許可を与えた同法人トップを含め)とても胆力があったと評価しています。いや、気合だけの問題ではなく、むしろ193条の3、第1項に基づく監査役への通知は適時開示の対象だと解釈しています。これを受領した上場会社は監査法人から通知を受けたこととその通知理由を適時開示すべきですし、このJFLAの会計監査人の行動のほうがむしろ当然だと考えています。通知を受領しながら開示しないことは、不適切(開示規制違反)ではないでしょうか。

東芝事件が「会計不正事件」→「事業売却による分社化」といった一連の流れをたどっていることをみますと「もっと早く『助けて』と叫んでいれば、もっと別の流れがあったのでは」と思わざるをえません。実際、JFLA事例では、早期に193条の3を通知したことで、監査法人も(社内取締役全員が交代した)会社も元気に活動を続けています。また、弁護士兼公認会計士でいらっしゃる中野竹司氏のご論稿「なぜ『法令違反等事実』通知規定は活用されないのか -JFLA事例を契機に考える」(月刊企業会計2016年5月号)でも同様の指摘がなされ、早期における193条の3の活用が提言されています。

さらに、今年2月に発刊された江頭憲治郎先生古稀記念論文集「企業法の進路」(有斐閣)901頁以下に堀田佳文先生(千葉大学准教授)の「会計監査人の義務と責任-金融商品取引法193条の3を手掛かりとして」と題する論文が掲載されています。そこでもJFLA社のように、早期に193条の3を会計監査人が行使すれば早期是正を図れるにもかかわらず、なかなか活用されないという問題点が指摘されています。監査法人が「期待ギャップ問題」を放置することによって(193条の3を行使しないままで)、権限を行使すべき責任を回避し続けていると、今後は司法が会計基準の解釈を通じて会計監査人の責任問題に深く関与することになる、というジレンマに陥ることを指摘されていて、私もまったく同感です(このたび、日本公認会計士協会近畿会さんが会計士アンケート調査結果に基づく提言書を公表され、その中で「会計審判所の創設」を提言されていますが、会計士協会と金融庁による別々の処分の交通整理が主たる目的とはいえ、司法の介入防止のためにも会計審判所制度はひとつのアイデアかと思います)。たしかに金融庁への通知(193条の3、第2項)は「抜かずの宝刀」でもよいのかもしれませんが、監査役通知についてはもっと活用されるべきだと考えます。これこそまさに「監査法人改革」の第一歩です。

昨年12月20日に東京地裁で出されたエフ・オー・アイ損害賠償請求事件判決(判決理由)によると、同社では平成16年から三様監査は続けられており、また会計監査人と監査役会との連携にも問題はなかったとされています。それでも監査役の皆様は同社の不正を見抜くことはできず、結果的には業務監査の面で任務懈怠責任を問われています。裁判の上で会計不正で問題となる監査役の職務は、会計監査ではなく、業務監査の不適切な運用です。過去の判例を調べましたが、これまで監査役さんの任務懈怠が裁判上で認められた事例はすべて業務監査が問題とされています(例外は平成11年の大和銀行株主代表訴訟のみ)。だからこそ会計監査人が自ら手を突っ込むことができない被監査対象企業の業務監査を促すためにも、この道具(金商法193条の3)が活用されなければならないのです。また、投資家を含めて、会計監査人はリスクをとってゲートキーパーとしての役割を担っているという意識(会計処理には解釈問題がつきまとうのであり、結果として粉飾とは評価されない場合もある、という意識)を持たねば、監査法人が健全なリスクテイクはできないと思います。

4月 20, 2017 企業会計 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2017年3月14日 (火)

上場会社は金商法193条の3、1項による監査役通知を開示すべきである(前編)

本日(3月13日)の日経朝刊法務面では「監査法人改革、企業にも責任」と題する特集記事が掲載されていました。監査法人版ガバナンス・コードが策定されることで監査法人の経営の透明性が高まる中、企業もこれに従って適切に監査法人を選択すべき責任がある、といった内容です(著名企業の先進的な取り組みも紹介されています)。専門家のご意見を含め、監査法人改革のトレンドを知るうえでたいへん勉強になりました。

上記記事で紹介されている監査法人版ガバナンス・コードの実施を見据えた企業側の対応としては、①三様監査(会計監査、監査役監査、内部監査)の充実、②強制交代制(ローテーション)の導入、③アドバイザー監査法人の採用、④監査役会による面接制度です。いずれも会計不正を防止するための仕組みとしては検討に値するものだと思いますし、真摯に取り組めば会計不正の防止に有用です。しかし、そこで想定されているのは、どれも「どうすれば監査人が会計不正リスクに気づくことができるか」といった「気づく仕組み作り」である点が気がかりです。

監査のプロである公認会計士には優秀な方が多いので、適切な職業的懐疑心を持っていれば「不正の予兆に気づく」ことは多いはずです。ただ、定例監査の時間確保や追加報酬がとりにくい現実、そもそもの監査報酬の低廉性等から、その予兆を深掘りする余裕がないというのが現実です。世間では「長文式の監査報告書を採用せよ」と言われていますが、会社と監査法人との協議内容は開示になじみませんし、開示してもよほど会計に関心のある方でないとわからないほど複雑な協議内容は(いくらリスク情報とはいえ)開示できないでしょう。1年を通じて宿題を監査法人から出されて、その結果をみて会計監査人が監査方針を決めることもあるので、その過程で監査人は不正に気付くことも多いと思います。また監査役の方々も、会計監査人と連携をすれば会計不正リスクを共有できます。

ただ、本当にむずかしいのは「どうすれば『これって、おかしいのでは?』と声を上げることができるか」という点です。気づくことよりも「声を上げる」ことは10倍むずかしい。監査法人も監査役も、人事権や(法的ではなく)事実上の監査法人選択権を握っている社長さんにモノが言えない、というのが問題の本質ではないかと。また、「自分が間違っていたら会社に迷惑をかけてしまう」という意識がどうしても先立ちます。そこをどう変えていくかが会計不正を予防、早期発見するためのポイントであり、そこにメスを入れなければ会計不正の防止は幻想にすぎないと考えています。

私は本当の監査法人改革は、上場企業向けのコーポレートガバナンス・コードの狙いと同様、監査法人による健全なリスクテイクの実現だと思います(昨年4月にも、 「厳格な監査の前提となるオオカミ少年を考える」と題するエントリーで同様の問題提起をしました)。現在、東芝さんでは、決算発表を再延期することの理由として、同社(同社グループ)の内部統制評価をめぐって日米の監査法人さんの意見が対立していることが原因と報じられていますが、まさにそういう点が監査法人改革の核心だと思うのです。

「この会社は財務報告の信頼性に影響を及ぼす内部統制上の不備がある」といったことをあらかじめ投資家に情報提供する胆力が監査法人に備わっているかどうか、という点です。そこでひさしぶりに金融商品取引法193条の3、第1項(監査役通知制度)、第2項(金融庁通知制度)の現状を分析しながら、この監査法人改革の在り方について検討してみます(後編につづく)

3月 14, 2017 企業会計 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2016年12月22日 (木)

エフオーアイ粉飾損害賠償判決-東証の注意義務認める

火曜日(12月20日)の夜に今年の注目判決として速報版でご紹介したFOI損害賠償請求事件判決(東京地裁)ですが、被害者弁護団から判決の概要がリリースされています。みずほ証券さんは金商法に基づく発行市場損害のみ認容されたそうです。東証さんの不法行為責任は認められていないものの、抽象的には不法行為責任の前提となる注意義務が認められたそうで、これは重要判決ですね。

また、コメントをいただいております「通りがかりの商法研究者」さんの情報によると、判決全文は200頁以上で、FOI社の監査役(社外監査役を含む)の責任が認められているそうです。おそらく「監査見逃し責任」が認容されたのでしょうね。なお会計監査人は提訴されたにもかかわらず判決当事者からははずれているようなので、和解をされたものと思われます。

やっぱり、私的には今年一番の注目判決といえそうでして、なんとか正月休みにでも判決を読めないだろうか・・・と。25日の朝、目が覚めたら枕元に判決謄本が積まれていたりして・・・そんなわけないか(笑)。

(12月23日追記)

グーグルで検索しておりますと、私の過去ログがひっかかりまして、エフオーアイの粉飾決算については2010年のこちらのエントリーで内部告発問題を解説していたのですね。もう11年近くブログを続けておりますと、情けないことに自分でもどんな事件について書いたのか忘れているようです(笑)。

12月 22, 2016 企業会計 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年12月 5日 (月)

IESBAの新規定-監査法人に対する内部告発制度への期待

監査法人の経営幹部の方とお話ししていて、どこの監査法人でも最近話題に上るのがIESBA(国際会計士倫理基準審議会)が作成した新しい規定「違法行為への対応」です。この国際ルールの適用は来年7月からとなりますが、日本公認会計士協会さんに対しても、「同等レベルのルールを策定することを検討しなければならない」と要求しています。

日本語仮訳は会計士協会さんのHPで閲覧可能ですが、監査法人の幹部の方々が悩んでおられるのが「監査人が違法行為をたまたま見つけたときの対応」です。当該国際ルールでは、この「違法行為」の範囲がかなり広いわけでして、環境問題や公衆衛生・安全問題、情報漏えい、賄賂問題なども含みますし、「不正」とあるのはおそらく不正競争防止法や経済法違反も含む概念だと推測されます。会計士の社会的役割を高めるための倫理規範の改訂なので、おそらく広く不正問題に直面した会計士さんの職業倫理を高める必要がありそうです。

このたびの臨時国会で改正道路運送法が成立し、バス事業者の安全運行義務違反の罰金が100倍となり、刑事罰も厳格化されました。また民間団体を活用しての監査制度も開始されるそうです。運輸事業者における働き方改革も注目されていますが、労働問題は労働者の人権保護だけでなく国民の生命の安全性確保の問題も含むものと認識されつつあります。先の会計士さんが対応すべき違法行為の範疇にも(労働問題が)含まれうる課題ではないでしょうか。

もちろん不正に「重要性」がなければ対応する必要はありませんが、会計監査人の「違法行為への対応」が行動指針として広く認知されるようになれば、社内の内部通報や内部告発にも影響が出てくると思います。会計監査人の守秘義務はたいへん信頼のおけるものなので、広く違法行為を通報し、その是正を監査法人から経営者に求めてもらう、ということになるかもしれませんね。このIESBAの新規定の施行開始を受けて、日本公認会計士協会さんがどのような倫理規定の改訂を行うのか、公益通報者保護制度との関係も深いものとして、今後注目しておきたいと思います。

 

12月 5, 2016 企業会計 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月27日 (木)

会計監査は企業の「第2経理部」である-細野氏インタビュー

私が企業会計のおもしろさやその社会的有用性に興味を持つようになったのは、私自身が12年ほど前に社外役員に就任したこともありますが、なんといっても浜田康氏、細野祐二氏の数々の書籍に出会えたからだと言っても過言ではありません。その細野祐二氏(会計評論家、元公認会計士)が、週刊エコノミスト11月1日号における単独インタビューに答えておられ、「会計士の欺瞞を暴く」なるメインタイトルの記事に登場されています。このブログエントリーのタイトルは、インタビュー冒頭で細野氏が述べた言葉です。ご推察のとおり、会計(監査)業界の現状に対してかなり厳しいご意見を述べておられます。

細野氏は現在、会計評論家だけでなく、様々な組織の財務諸表作成に関する「お困りごと」の相談業務等を行っておられ、その仕事ぶりから「公認会計士をクビになって、ようやく本当の会計士になった」ともおっしゃっています。(その意味するところはインタビュー記事をお読みになるとわかります)。キャッツ事件では被告人となって最高裁まで争った末に有罪が確定し、法と会計の狭間の問題に苦悩された細野氏だからこそ、現在の公認会計士の閉塞感を具体的に表現することができるのでしょう。昨年、東芝会計不正事件が連日騒がれていた時期に、最初に「これはPLの問題ではなく、BS(のれんの減損)こそ問題である」と雑誌で指摘をされたのも細野氏だったと記憶しています。法律家からも、また会計専門職の方からも、いろいろなご意見はあると思いますが、私は毎度のことながら、細野氏の意見には考えさせられる点が多いですね。

しかし、細野氏の現在のお仕事ぶりを知り、なるほど、このようなフォレンジック(に近い?)お仕事もあるのだなあと感じました。ところで、もし私が弁護士という資格を失い、「法務コンサルタント」という肩書で仕事をするとなると、いったい何ができるでしょうかね?「法律事務」は、かなりの部分において弁護士や司法書士等の独占業務なので、法務支援事業というのも、弁護士法に違反しないように配慮する必要があります(法律に詳しい経営コンサルタントといったあたりでしょうかね?)。

そういえば私の存じ上げている方で、諸事情により弁護士資格を失った後、弁護士の頃よりも多額の収入を得ていることを知り愕然としたことを思い出しました。資格を持たないほうがいろんなリスクをとってチャレンジする意欲が湧くのかもしれません(たぶん私には無理な気がしますが・・・)。

10月 27, 2016 企業会計 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月 3日 (月)

会計監査制度の改革に向けた「関係者の本気度」は高まるか?

10月1日(土)の日本内部統制研究学会には多数ご参集いただき、厚くお礼申しあげます。約170名の会員および非会員の方々が早朝から明治大学駿河台キャンパスにお越しになり、私が司会を務めた自由論題の第一会場にも多数の方に来ていただきました(ありがとうございます!)。今年は学会の役員改選期となり、八田進二会長(青山学院大学)が任期満了で退任され、新会長には株式会社プロティビティ・ジャパン社長の神林比洋雄氏が選任されました。ちなみに法曹出身理事としては、池永朝昭氏(アンダーソン・毛利・友常)、武井一浩氏(西村あさひ)、浜辺陽一郎氏(青山学院大学)、遠藤元一氏(東京霞が関)と私が理事に選出されましたが、控え目で奥ゆかしいタイプは私ひとりで、あとはかなり発言力の大きな方ばかりとなりました。

さて、今回の学会で、理事仲間や監査法人の方々とお話をしていて「今後の大きな課題」と思われたのが監査法人改革ですね。先週の日経新聞でも三日にわたって「揺れる監査」という特集が組まれていましたが、やはり当局(金融庁)の「会計監査制度改革」への本気度が相当に高まっているように感じました(なお学会における金融庁の方の記念講演とは関係ありません、あくまでも学会関係者との雑談の中から感じたという意味です)。東芝元経営陣の刑事立件において、ガチンコで検察庁ともやりあうくらいですから、監査法人との関係でも本気度は相当なものであっても不思議ではないですね。とくに上記特集記事の(下)でも報じられていた「10年ローテーション」の実現可能性がどの程度あるのか。海外諸国でも、実際に10年ローテーションを導入して、「我が国にはなじまない」としてもとに戻したところもありますので、日本も当然のことながら「やってみなはれ」となるのでは?

「やってみなはれ」となれば、当然のこととして大手監査法人でも監査体制を充実させる(改革に向けての本気度が変わる)ことになります。たしかに、某大手監査法人では法人としての監査の品質を維持できないといった視点から、会計士さんの選別を開始したことが報じられています。もちろん「一体どこから10年がカウントされるの?」といった問題もありますが、いままで20年~30年、継続して監査してきた企業とのお付き合いも変わるでしょうし、監査法人の選定にあたる監査役(監査委員)の方々の本気度も変わると思います。すでに金融庁で審議が始まっている「監査法人版ガバナンス・コード」は間違いなく導入されますが、外部の有識者が監査法人のガバナンスに向ける目も本気度を増すこととなるでしょう。

ただ、これまで他のエントリーで何度も申し上げておりますとおり、日本の監査法人が「優秀なオオカミ少年」になることは(日本公認会計士協会の後押しがあったとしても)ローテーション制度くらいではむずかしいと予想しています(私個人としては残念ですが)。会計監査人と被監査企業とのバトルは激しくなるかもしれませんが、守秘義務の関係上、「この会社は危険区域にある」といったことを宣言する実務にはなりにくいですね(某商社の株式を空売りした米系ファンドが「日本の監査法人はまったく機能せず」とリリースしても、なにも動きません)。

不適切な会計処理が具体的に判明していない状況において、会社自身が「財務報告内部統制には重要な不備がある」と宣言できる(宣言しなければならない)実務運用がなされていない以上、「オオカミ少年待望論」が実現しないのもやむをえないところかもしれません。したがって今後は、監査制度改革への関係者の本気度が高まるなか、監査法人としても、どのようにオモテとウラの使い分けを上手に行えるのか、品質保証のスキルアップとともに、根回しや、腹芸、外圧の活用等、様々な方向性をもった対処が求められることになりそうですね。

10月 3, 2016 企業会計 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2016年4月19日 (火)

東芝会計不正事件-内部告発は二つ存在した

東芝会計不正事件について、朝日新聞に連載されている「(けいざいプラス)東芝の迷宮(ラビリンス)」はよく取材されており、たいへん興味深い内容です。毎日新聞出版「東芝不正会計-底なしの闇」でも疑問とされていた不正発覚の経緯が4月15日朝日新聞朝刊の「その5」で明らかにされています。私は内部告発後、金融商品取引法に基づく報告命令がいきなり東芝社に届いたのかと思っていましたが、その前に任意の資料提供要求があったのですね。

2014年12月ころに証券取引等監視委員会に内部通報(内部告発)がなされたことで、金融庁が不適切会計処理の存在を知ったことは既にいろいろなところで報じられていましたが、その後(時期は特定されていませんが)もう一度、別の社員から証券取引等監視委員会に内部通報(内部告発)がなされていたそうです(これは驚きの新事実です。私はてっきり社内の特別調査委員会に内部通報がなされて、経営陣に緊張が走ったものと考えていました)。しかも、朝日の「迷宮」の書きぶりからすると、最初の告発は(S元副会長の出身である)原子力部門における会計不正、そして二度目の告発は(N元会長の出身である)PC部門のバイセル取引の会計不正を暴くものだったそうです。

朝日の記者さんに上記新事実を提供しているのは「当時の役員」ということですから、こういった取材内容からしますと、これまで「闇」とされてきた部分に少し光があてられてきたように思います。あくまでも推測ですが、内部告発合戦が派閥争いの中で繰り広げられていた可能性についても否定できないように感じます(しかし、この朝日の記事には「元役員」とか「元副社長」とか、多くの元経営幹部が協力しています。このあたりも興味深いところです)。

最近、某社の不祥事が新聞で少しだけ記事になりましたが、その不祥事を経営トップが知るに至ったのは、現場社員からの内部通報でした。しかしながら、当該社員は会社側に「黙っているから誠意をみせてほしい」と暗に取引を要求してきたそうです。会社側は毅然とした対応をとりましたが、その際、自主的に公表することを決断しました。内部通報制度や公益通報者保護制度の運用は、通報者の正義感による通報を当然の前提として議論されているわけですが、実際は通報者の様々な意図によって通報や告発が行われる、ということも現実の課題として受け止めねばなりませんね。

著名企業が会計不正に手を染める原因や動機は様々かもしれませんが、オリンパス事件や東芝事件の不正発覚の経緯を眺めてみますと、不正を暴く内部告発の力の大きさを痛感します。誰がどのような目的で金融庁に内部告発を行ったのか、そのあたりが東芝事件の真相を解明するためのカギだと思います。

4月 19, 2016 企業会計 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年12月 3日 (木)

不適切会計処理事件が違法配当事件に発展した事例-CHD

日本郵政さんが国内最大級の自社株買い(7300億?)をされるそうですが、特定の例外を除き、自社株買いは剰余金の範囲内で行うことが原則です。しかし剰余金の範囲を超過してしまい、ピンチに立たされている上場会社さんもあるようです。不適切な会計処理が行われていたとして、今年10月に第三者委員会報告書をリリースしているコネクトホールディングスさんが、それだけでは不祥事は終わらなかったことを公表されています(平成27年8月期の自己株式の取得に関するお知らせ)。適時開示のタイトルを読んだだけでは通りすがりそうなリリースですが、金商法会計の不正が会社法会計の不正を誘発してしまったという、かなりキビシイ事案です

過年度の決算訂正によって子会社の売上高が減少、その結果として子会社株式の評価損が出たために、同社の剰余金も減少。訂正前の剰余金を基準として自己株式の取得を行っていたので、結果として約5000万円も剰余金を超過して配当してしまっていたそうです。

いやいや、関係者の方々はたいへんですね。同社リリースによると、自己株式の取得金額が剰余金合計額を超えている部分の補てん方法は今後検討されるとのことで、この違法配当になってしまったことに関する取締役の過失の有無、程度、責任については監査役会にて検討するとのこと。監査役さんにとっても有事ですが、1月5日に定時株主総会が開催され、そこで監査役の方々が交代されるそうなので、新しい監査役(会)において検討されるということでしょうか。

ちなみに会社と会計監査人との間で、剰余金減少の根拠となった会計処理方法についてかなりバトルがあったようですが、最終的には会社側が会計監査人の主張を全面的に受け入れたそうです(時期的に意見を出してもらうためには会計監査人の主張を認めるしかなかったのかもしれません)。ここでも(?)監査法人のドラマがあったようですね(なお、この会計監査人は来月の総会をもって退任されるそうです)。

おそらく、本件のケースだと、自己株式の取得に関する取締役会決議に賛成をしていた非業務執行取締役さん(取締役会に議案を提案している場合は別として)はセーフだとは思いますが、概ね違法配当事案では決議に賛成をした取締役さんも法的責任を負う可能性が高いので、やはり会計不正事件は「不祥事の芽」の段階から摘んでおく必要がありますね。コネクトHDさんが、今後どのように対処されるのか、注目しておきたいと思います。

12月 3, 2015 企業会計 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年9月 8日 (火)

東芝事件-「不適切会計事件」から「東芝粉飾決算事件」へ

東芝さんの不適切会計処理事件も、15年3月期有価証券報告書が提出されたことにより、いよいよ第2ステージですね。ちなみに昨年よりも6倍ものスタッフ(300名)を投入して新日本監査法人さんは東芝さんの監査を終えたそうです。今日(9月7日)は新日本監査法人さんの創立記念日だそうで、記念日に終えられてよかったですね(=^・^=)。

なお、東芝さんは第三者委員会こそ「意図的な利益かさ上げがあった」と認定していましたが、本社としては意図的な不正を認めてこなかったと思われます。しかしながら、本日(9月7日)リリースされた訂正内部統制報告書提出のお知らせの中では、

「本件については、当社経営トップによる目標必達のプレッシャー、上司の意向に逆らうことができない企業風土、経営者における適切な会計処理に向けての意識の欠如などの複合的な要因があいまって、意図的な利益の嵩上げのためにカンパニーにおける内部統制、及び単体決算や連結決算に関する内部統制が無効化され、当社の会計処理基準が適切に運用されていなかったことにより発生したものであります

と、自ら述べておられます。東芝さんも新社長となり、旧経営陣が関与した意図的な利益かさ上げ、つまり粉飾決算をしていたことを明言されたようです。つまり、これを認めたことによって「内部統制に重要な開示すべき不備があったけど、この訂正報告書はそんな不備を認識し、これを補いながら作成したので信用してください」との意図があるのでしょうか。いずれにしましても今後は「東芝不適切会計事件」ではなく「東芝粉飾決算事件」と呼ばれることになりそうです。

しかし、訂正内部統制報告書が出た、ということで、監査法人さんの立場がどうなるのか、今後の関心事です。監査法人さんの言い分としては「こんな意図的な利益かさ上げなど知らなかった」ということになると思われます。しかし(第三者委員会報告書によると)「未修正の虚偽表示」を認識していたということのようなので、単に東芝側の見積り関する合理性テストを行っていたのではなく、かなり重要な虚偽表示が疑われる場面において「会計上の見積りに対する監査」を実施していたはずです。だとするとJ-SOXにおける経営者意見(内部統制は有効です、との意見)を信用していただけでは足りず、試査の範囲を合理的に決めるための内部統制評価をどのように行っていたのかが問題となるのではないでしょうか。

会計上の見積りの妥当性を検証する場合、監査法人さんはその企業がどのような組織であり、経理能力はどうであり、また社内監査体制はどうなのか、その社内検証システムに関するダイレクトレポーティングが必要になるはずです。とりわけ第三者委員会報告書で指摘されている案件では、重要な虚偽表示リスクが高まっている場面ですから、職業的懐疑心がどのように発揮されていたのか、その内部統制評価の手法によって判明するのではないでしょうか。これはPLでもBSでも、経営者による見積りが必要となる項目においてはすべて問題になるのではないかと思われます。

もちろん東芝さんの会計処理の適切性について、先に金融庁が審査をすると思いますので、監査法人さんの監査の妥当性に関する議論はその後になるはずです。しかし、J-SOX上でも内部統制は有効ではなかったことが明らかになった今、戦後の財務諸表監査が始まったころから効率的監査のために活用されてきた「内部統制」の評価に焦点があたるということになれば、また内部統制に関する議論が深まるのではないかと期待しています。

9月 8, 2015 企業会計 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2015年8月 4日 (火)

昨日の監査法人トーマツ前CEO辞任のエントリーにつきまして

いつもブログをお読みいただき、ありがとうございます。さて、昨日のエントリー「監査法人トーマツCEOの突然の辞任に関する説明責任について」は、事実関係を2日の日経新聞ニュースの報道に依拠しておりましたが、事実関係の訂正に近いと思われる報道が4日に日経新聞ニュースで報じられたこと、および複数の関係者と思料される方より「4日の報道が真実です」との連絡を頂戴したことから、とりあえず(関係監査法人さんにご迷惑をおかけするわけにもいかないので)真偽が明らかになるまでは非公開とさせていただきます。申し訳ございませんが、ご理解のほどお願い申し上げます。<m(__)m>

いずれにしましても、改正会社法の下での監査役さんの監査職務にとっては非常に重要なお話であり、今後も会計監査人の内部統制の整備およびその運用状況への関心は高まるはずです。ガバナンス改革が進む中、監査法人さんの独立性・公正性への社会的信頼は市場の健全性確保のための大切なインフラだと考えています。

8月 4, 2015 企業会計 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年7月22日 (水)

東芝不適切会計処理事件-トップの関与はやはり「不作為」

昨日に引き続き東芝さんの不適切会計処理事件に関する話題ですが、本日(7月21日)第三者委員会報告書の全文が公開されました。ちょっと忙しかったので、斜め読みしかできませんでしたが、skydogさんがコメント欄で紹介されているように、正規版の事実経過を読みますと、「生々しい」出来事がちりばめられていることがわかりました。また、追ってご紹介したいと思います。

私も本日、全国紙の記者さんや通信社の方からコメントを求められましたが、「経営トップの関与としては不作為が最も問題である」「不作為こそ善管注意義務違反を問われる可能性がある」とコメントさせていただきました。「3日で100億の利益が出るようん工夫しろ」とか「損失計上を遅らせろ」といった目標必達(チャレンジ?)の厳命指示が話題にのぼりますが、「これってどこの社長さんも似たようなこと言ってるんじゃないの?」とも思えます。カンパニー長が「社長に何もいえなかった」としても、それが不適切な会計処理につながった、というストーリーはやや短絡的だと考えられます。「トップにモノが言えない風土だった」ことも原因とされていますが、そもそもモノが言える人がいたとしても、その人は「モノが言える」ということでとっくの昔に飛ばされてしまってることのほうが多いわけでして、トップにモノが言える風土などというものは客観的な土壌というよりも、すべて経営者の人格に依拠しているように思います。

むしろ実際にレッドフラッグを目の前にして、これに気付きながら何も言わなかったという「不作為」こそ、もっとも経営トップの不正関与を認定できる根拠事実ではないでしょうか。ということで、午後7時からの第三者委員会委員の方々の記者会見において、委員長が冒頭で、「利益かさ上げや損失先送りを知ったにもかかわらず、経営トップは中止を指示しなかった。組織的に不適切な会計処理をしてきた」と述べた点はとてもナットクがいくところです。もちろん、意図した不適切会計処理か否かの認定には時間軸が必要ですし(貸し借りの形をとっていたとしても、その貸し借りの清算がなされる気配がないこと)、以前JFKさんがコメント欄で述べておられたように、厳命が決算間際の時期になされたことなど、客観的な事実も参考になると思います。ただ、やはり損失計上や引当金積み増しに関する部下の提言を無視したり反対するとなると、これはやはり「会計などなんとでもなる」といった会計軽視の姿勢があったことを否定できないものと思います。

毎度申し上げることですが「粉飾」と「不適切会計」と「適正な会計処理」というのは連続している概念であり、その境界線は人によって異なるはずです。「有能な経理担当者というのは、粉飾スレスレなんだけど、なんとか会計監査人から適正意見をもらえるような処理ができる奴のことだ」といったことを平然と経営者が言ってのける組織では、いつしか会計軽視の企業風土が形成されていき、トップの意向を忖度した部下による会計処理は、いつしか境界線を超えていき、今回のような事件につながっていくのではないでしょうか。「これって粉飾じゃないの?」と疑問を抱いた社員が内部告発を行い、気が付いたら「たしかに世間からみたら粉飾だよね」と自覚する、というストーリーは、ひょっとしたらどこの上場会社でも起こりうるのかもしれません。

ところでこの共同通信のニュースはよくまとまっていると思います。本日の第三者委員会正規版では、本件に関する内部通報は存在しなかったと記載していますから、金融庁にはいきなり内部告発のメールが届いたようです。昨年メールが届いた、とありますので、金融庁が動き出すまでに数か月を要するのですね。

7月 22, 2015 企業会計 | | コメント (15) | トラックバック (1)

2015年7月21日 (火)

東芝不適切会計処理事件-第三者委員会報告書(要約版)への雑感

(正規版が公表されましたので、その内容を確認したうえで一部修正をしております ※を付記している部分です)

祝日(7月20日)の午後9時40分、会計不正事件に揺れる東芝さんのHPにおいて第三者委員会調査報告書の要約版が公表されました(正式版は7月21日の午後3時ころに公表されるそうです)。要約版といっても80頁程度の分量なので、読むのはたいへんですね。事件の内容についてコメントするのは正規版が公表された後にしたいので、とりあえず要約版を一読した雑感だけを述べたいと思います。

なんといっても(ほぼ予想どおりですが)これから東芝さんが遭遇する(長くつらい)米国当局とのお付き合いや集団証券訴訟(クラスアクション)に十分に配慮された報告書だなぁ、といった第一印象を持ちました。会計不正に関する第三者委員会報告書のケースでは、通常は日弁連ガイドラインに準拠しました、と明記するのですが、そのような記載はなく、※逆に「本調査は東芝からの委嘱を受けて、東芝のためだけに行われたものである」と明記されています(要約版14頁)。「第三者委員会報告書の英訳はこわいなぁ」と考えていましたが、「たとえ英訳版が作成されたとしても、当委員会は責任を負わない」とも書かれています(同頁)。すなわち、日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会の調査は、会社を取り巻くステークホルダーへ説明責任を尽くすために行われるのですが、この第三者委員会は主に東芝のためだけに仕事をされたのです。

※ 正規版には「東芝が日弁連第三者委員会に準拠した枠組みの第三者委員会設置を決定した」とありますが、第三者委員会がこの調査および結果については日弁連ガイドラインに準拠している、とする文言はないようです

不適切な会計処理が認められ、そこに組織的関与があった、内部統制にも重大な不備があったと認定されるわけですから、内容的にはSEC(証券取引委員会)やDOJ(米国司法省)が証券取引所法違反、FCPA(内部統制構築違反、真正帳簿作成義務違反)に基づく行政罰適用や民事制裁金執行に動く可能性が高いと思われます。また、東芝さんの場合、ノンスポンサーADR(預託証券)が米国の店頭取引(OTC市場)によって流通しているので、いわゆるクラスアクション(集団証券訴訟)が頻発する可能性があります(現に、もういくつかの米国大手法律事務所が米国国内で原告を募っているようですね)。

したがって当然ながらディスカバリー(米国訴訟における証拠開示手続き)への対応が重要になるわけですが、日本の第三者委員会調査というのが、純粋に独立公正な「第三者」だとした場合、この委員会に対する東芝関係者の供述は「弁護士秘匿特権の放棄」とみなされてしまうおそれがあり、米国におけるディスカバリーにおいて供述内容を開示しなければならず、東芝および経営陣は大きなリーガルリスクを負うことになりかねません。したがいまして、「第三者委員会」とはいいながらも、「この委員会は東芝のために活動する」「我々は東芝以外には誰にも責任を負わない」ということをきちんと明言しておかなければならないと思われます。このあたりがADRが流通しているグローバル企業の会計不正事件の苦しいところであり、日本の第三者委員会制度の限界なのかな、というのが私の雑感です。

報告書では、東芝さんが短期的な利益を過度に追及したことが組織的な不正会計関与の原因とされています。では、なぜそこまで短期的な利益至上主義に走ってしまったのか、たとえば繰延税金資産の取り崩しをなにがなんでも回避したかったから、とか、経営トップにおける支配権争いに勝ちたかったから、といった「動機」の部分は明らかにならないかもしれません。また経営トップの法的責任や監査法人の監査上の責任にも言及されないように思いますが、これらはすべて東芝さんからの委嘱の範囲内でのみ、また東芝さんのためだけに第三者委員会が活動しなければならないという「第三者委員会の限界」に起因するところではないでしょうか(そうでないと誰も第三者委員会調査に協力してくれなくなってしまいます)。今後は、課徴金や過怠金処分の要否も含めて、証券取引等監視委員会や東証さんによる調査に委ねられるものと思いますが、最近は同委員会が調査した内容も、(IHI損害賠償請求訴訟のように)文書提出命令によって裁判上で明らかになるかもしれませんので、まだまだ関係者のリーガルリスクは残るように思います。

会計処理、ガバナンス、内部統制等、報告書の核心部分については、また正規版を拝読したうえで追って感想を書きたいと思います。

7月 21, 2015 企業会計 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2014年12月 2日 (火)

IHI粉飾決算損害賠償事件判決が企業法務に及ぼす影響度

すでに新聞等でも報じられているとおり、11月27日、IHI(旧石川島播磨重工業)の工事進行基準の処理方法に関連する不適切会計処理問題について、東京地裁で会社側一部敗訴の判決が出ました(判決要旨はこちらのHPでご覧になれます)。拙ブログでも2008年ころに本件については何度か話題にさせていただきましたが、現(元)株主の方々が、金商法18条1項(発行市場規制)、同21条の2、1項(流通市場規制)に基づいてIHIに「粉飾による株価の下落」を損害として、その賠償を求めたものです。IHI側は「報告書の訂正は会計処理上の問題で、虚偽記載ではなかった」と主張しましたが、東京地裁第31民事部は「企業会計準則の裁量を逸脱していた」として、IHIは虚偽記載を行ったものと認定しました。

三洋電機事件やNOVA事件、ビックカメラ事件等の判断とは異なり、今回の判決では①金融庁の課徴金決定が出されたこと、②それ以前において社内調査でも虚偽記載の重要事実については認定していたこと、③修正額が大きく、その結果として利益が過大に計上されていたことなどを有力な根拠事実として、司法の上でも「虚偽記載あり」とされています。とりわけ先日のシャルレ事件、住友電工カルテル事件の株主代表訴訟と同じく、原告側による文書提出命令申立が認容され、金融庁の検査報告書の内容に裁判所がアクセスできた意義が大きいと思います。なお、(発行市場は法務省管轄の会社法の規制との関係もあるため)流通市場に限られますが、今年の金融商品取引法の改正によって、法人の虚偽記載民事責任は過失責任に変わりましたので(これまでは無過失責任)、今後同様の裁判が係属した場合には法人側からの「相当な注意を尽くしていたこと」の反証が主張されることも考えられます(このあたりはまた別の機会に述べたいと思います)。

損害の範囲がかなり限定されたこともあり、またIHI側にも判決に不服があると思いますので、本件は控訴される可能性が高いと予想します。ただ、逮捕者も出ておらず、またそれほど社会的に大きく報じられることもなかった、IHI社という、いわば「誠実な名門企業」による粉飾事件において、会計処理の裁量を逸脱したことによる虚偽記載あり、と認定されたことは画期的です。会計監査に携わる外部監査人や監査役の方々も、この判決の内容についてはかなり驚いておられるのではないでしょうか。金融庁(SESC)が会計処理に関する調査に乗り出してきた場合、企業側としては自主訂正によって対応することが多いでしょうし、また事実関係は社内調査委員会や第三者委員会によって積極的に調査を行い、その結果、SESCによる課徴金勧告が出された場合には争わないことが大半かと思います。しかし、そういった対応が後日の法人や役員に対する開示違反民事責任を追及する裁判において不利な事情となる・・・ということになりますと、今後の対応についても検討の余地がありそうです。

さて、ここからは私の個人的な推測にすぎませんが、本件判決で会計監査や監査役監査に与える影響もさることながら、もっとドキドキされている方々がいらっしゃるような気がします。つまりIHIと関係の深い株主の方々です。普段はIHIとお取り引きがあるために、今回の損害賠償裁判では、もちろん原告株主にはなっていません。しかし、このように一部でも原告株主側が勝訴して損害を賠償できるとの判決が出た場合、「なぜ●●社はIHI社の粉飾によって損害を受けているのに訴訟に参加しなかったのか」と当該会社の株主から質問を受けることになります。もし合理的な説明ができなければ、訴訟を提起せず、損害を放置したことについて、当該会社の役員の方々は株主代表訴訟を提起されるリスクが顕在化します。たとえ放置していたとしても、株価が回復して損害がなかったとされれば良いのですが、株式取得時期との関係で、多少なりとも損害が発生している、といった場合には「持ち合いの弊害」を突かれて株主代表訴訟リスクを負担することになります。このあたり、今後の控訴審判決の内容にもよりますが、IHIのお取引先企業の方々が、かなりドキドキされているのではないかと。

12月 2, 2014 企業会計 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2014年11月19日 (水)

経営者関与による不適切会計処理未遂は公表する必要があるか?

ごく一部のマニアックな方々の間ではすでに話題となっております東証マザーズ上場「みんなのウェディング」社の不適切会計処理問題ですが、実態を伴わない売上が(ブライダル部門の売上として)計上されていたことについて、同社社長の関与が社内調査委員会の調査で判明した、とリリースされています(リリースはこちらです)。社員の親族の披露宴が行われていないにもかかわらず、行われたようにして、その売上計上分については社長の私財から入金されていた、というもの。社長及び担当取締役らとしては、業績未達を少しでもよく見せようとの思いから及んだ行為だそうです。

会社側は、「投資家向けの財務報告では訂正済みなので、これは粉飾決算や会計不正事件ではない」と反論されていますが(反論のリリースはこちら)、売上が伸びているように財務報告を行うつもりだった、という意味においては不適切な会計処理が社内で行われたことは事実でしょうし、その責任をとって代表取締役社長さんは、今年12月25日に辞任されるそうです。ちなみに「12月25日」といえば、1年前の12月25日、不適切な会計処理事件で第三者委員会が設置された小売業のマツヤさんの件で、監査法人さんに内部告発文書が届いた日です。このマツヤさんの事件も、過大な売上計上分を経営者らが自腹で補てんしていたことが印象的でした。私財を投入してでも業績を良く見せたい・・・という経営者の気持ちを察すると、これらの事件はなんとも切ない気持になります。

この「みんなのウェディング」社のケースでは、監査法人さんが「不正の疑惑」を発見し、同社の監査役会に調査依頼、その後監査役3名と社外取締役1名(いずれも非業務執行役員)で構成される社内調査委員会が設立され、この委員会が代表取締役社長による「穴埋め」の事実を確定したようです。他の業務執行取締役や幹部社員等も関与していたそうなので、不適切会計処理を早期に発見するためには、やはり非業務執行役員の存在は大きい、と感じます。

さて、ここからは私の個人的な意見であるため、関係者の方々にご迷惑がかからないように配慮したいと思いますが、どうもこの事例については素朴な疑問が湧いてきます。会社側が反論しておられるように、財務報告には訂正済みの数字が記載されているのですから、決算訂正の必要もなく、したがって監査法人から適正意見がもらえなかった、というわけでもありません。だとすると、実際にも提携先の結婚式場からの広告料等は増えていて、同社の業績は好調のようですから、(やや不謹慎ながら)社内における不適切な会計処理の事実については公表せずに、そのまま何もなかったかのように振舞う・・・という選択肢はなかったのでしょうか?(いえ、決して「公表しなければよかったのに」といった意見を持っているわけではなく、可能性のひとつとして考えなかったのだろうか、といった感想でございます)

これは本当に私の単なる推測ですので、真実は全く異なるかもしれませんが、監査法人が実態を伴わない売上計上の疑惑を発見した、とありますが、(上記マツヤさんの事例のように)監査法人に内部告発が届いた、という可能性は考えられないでしょうか。社員が関与していた事例でもあり、また内部告発が存在した場合には、そのまま公表しないでいると第三者(たとえば行政当局や大株主)から指摘される事態に発展してしまいます。

つぎに非業務執行役員の方々が、「いくら才覚のある経営者であったとしても、このコンプライアンス経営の時代に、これは公表しないわけにはいかない」と進言して、最終的には社長辞任を求めた、という可能性も考えられます。こういった場合は、同社のガバナンスが効いて、今後の大きな会計不正リスクを早期に低減させた、ということになりそうです。いわば会計監査人と監査役との連携が奏功し、かつ非業務執行役員によるモニタリング機能が効いた典型例かと思います。まさに「ダスキン株主代表訴訟の教訓」が活かされた例といえそうです。

最後に、取締役全員の総意により、「社外役員から指摘されるまでもなく、この事例は不公表などありえない」との気持ちから公表したとなれば、これは同社の企業風土としては立派なものだと思います。まさに、経営母体であったDeNAの南場智子氏の経営精神を受け継いだものといっても良いのではないでしょうか(ただ、不適切会計処理に関与していた取締役さんがおられたので、どうも可能性としては低いように思えますが・・・・・)。

KPMG-FASさんが今月7日に公表しておられる「日本企業の不正に関する実態調査2014」によりますと、経営者が関与する会計不正事件の発覚要因については、内部統制よりも圧倒的に内部告発等の通報によるものが多いとされています。もちろん、不正リスク対応基準が施行され、監査法人さんの職業的懐疑心の保持、発揮がモノを言ったケースかもしれませんが、(本件をあえて公表した、という事実を考えますと)本件に内部告発はなかったのかどうか、そのあたりについて事実を知りたいところです。

11月 19, 2014 企業会計 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2014年11月11日 (火)

会計基準の解釈に経営判断原則類似の法理は適用されるか?

Img_0047青山学院大学大学院会計プロフェッション研究センターが企画編集されている「Aoyama Accounting Review」の第4号(10月15日発売)を入手いたしました。今回の特集は「法と会計:会計判断は法制度を超えられるか?」といった刺激的な内容です。この週末、ほぼすべての論稿を読みました。

まずはBook Reviewのコーナーで拙著「法の世界からみた会計監査」について、過分な書評を頂戴した青山学院大学の吉村教授に感謝申し上げます。「改訂版が出ることを期待する」とのことですが、この本はかなり気合を入れないと書けませんので(笑)、また気力がみなぎった時期に検討させていただきます。

さて本論の特集内容ですが特集見出しをテーマとする八田進二教授と松尾直彦弁護士(西村あさひ)との対談、「裁判所は会計基準をどうみているのか」と題する弥永真生教授の論稿、「会計監査人の監査の方法と結果の相当性と監査役」と題する中村直人弁護士の論稿、「会計基準の法規範上の位置と基準開発」と題する西川郁生教授の論稿、「会計基準等の法規範性と会計実務家のリーガルマインド」と題する尾崎安央教授の論稿等、たいへん興味深いものばかりです。もし企業会計法にご興味がおありでしたら、ぜひとも入手され、ご一読をお勧めいたします。

ところで各論稿を拝読させていただき、三洋電機損害賠償請求事件判決(大阪地裁判決)への評価が高い、ということに気付きました。同判決は、以前、私が日本公認会計士協会近畿会・大阪弁護士会共催のシンポを企画したときも会計士サイドから「裁判所が会計処理の妥当性について過度に踏み込んでいない」として高い評価が得られていました。この三洋電機判決をもとに、①会計基準の選択、会計処理の方法等、会計基準の解釈には高い専門性、技術性が認められ、また②見積りや将来予測といった、経営者でなければ判断が容易ではない事情についても検討を要することから、経営者の判断の合理性を検討するにあたっては、経営判断原則類似の状況が認められる、という見解が主流のようです。これは会計専門職、法律家いずれにおいても意見がほぼ一致しているものと読めました。

L13687ただ、私は拙著「不正リスク管理・有事対応~経営戦略に活かすリスクマネジメント」(有斐閣 2014年10月)の275頁以下(経営者の法的責任と「経営判断原則」~会計処理の決定)にて述べているとおり、経営者の会計基準の解釈に司法判断が及ぶかどうか、という点において、経営判断原則類似の法理が適用されるかどうかは少し別個の検討が必要ではないかと考えています。

詳しくは述べませんが(上記の「不正リスク・・・」も、経営者向けの本なので、それほど詳細に解説しているわけではありませんが)、①経営者の会計基準の選択、会計処理方針の決定は、一般の経営判断原則適用場面と異なり、構造的に利益相反状況にあること(自分に都合のよい会計基準の解釈を行う余地は十分にある)、②会計基準の解釈の妥当性は会計監査人という第三者によって審査され、意見表明がなされていること(合理性については経営者だけでなく、監査法人からも説明することができること)、③上場会社の場合には、内部統制報告制度が施行されており、財務報告の信頼性が担保されていることは経営者が保証していること、つまり、過年度決算を訂正して、内部統制も有効ではなかったと経営者が自認するのであれば(これまで間違いなく訂正されるのが実務慣行です)、経営者の会計基準の解釈の合理性も認められない(少なくとも合理性があると推定されるわけではない)と考えられること、といった理由からです。

こういった理由から、たとえば保守主義、継続性原則、単一性原則といった会計の一般原則に反する疑いのある会計基準の選択、会計処理方針が用いられているような場合には、経営者による合理的な説明が求められるのではないかと。もちろん、その司法判断のために会計士、会計学者の方々の意見書が活用されることも考えられます。いずれにしましても、「会計はむずかしい専門性の高い領域だから」「経営者による見積りや将来予測を伴う会計処理についてはビジネスの世界の判断だから」といった理由だけで、経営者による会計基準解釈の裁量の幅を広く認める・・・という考え方には、私個人としては若干違和感を覚えるところです。

11月 11, 2014 企業会計 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2013年4月15日 (月)

証券取引等監視委員会VS日本風力開発-バトル勃発(その2)

マニアックな話題がお好きな方であれば既にご承知のとおり、先週金曜日(4月12日)関東財務局は日本風力開発社に対して平成21年3月期の有価証券報告書について、虚偽記載が認められたものとして、その訂正報告書の提出命令(有価証券報告書の訂正命令)を出しております(金融庁リリースはこちら)。行政手続(告知聴聞)もすでになされております。そして、この訂正命令に対しては同社より反論および徹底抗戦のリリースも出されました。なお念のために申し上げますが、訂正命令については聴聞手続きのみで金融庁(関東財務局)の命令が出ますが、課徴金納付命令のほうは今後審判手続きを経て発令の判断が下されることになります(ということで、正確な題名は金融庁VS日本風力開発、としたほうが良いのかもしれません)。

前にも申し上げました通り、現在進行形の行政事件について個々具体的な意見を述べることはエチケット違反だと思いますので、あくまでも一般論としての野次馬的感想のみ申し上げます。前回のエントリー「証券取引等監視委員会VS日本風力開発-バトル勃発」について、コメント欄の「素人さん」と「会計人さん」の質疑応答がなかなか興味深いところでありまして、過年度決算の訂正の根拠となる「虚偽記載」だけの問題なのか、それとも刑法犯の対象となる「虚偽記載」や「偽計」の問題に発展するのか、という点は極めて重要だと私も認識しております。なぜなら、そこで問題となる「会計事実」が会計士的発想で語られるのか、法律家的発想で語られるのか、という点に関係してくると思われるからです。

このあたりは新刊の拙著「法の世界からみた『会計監査』-弁護士と会計士のわかりあえないミゾを考える」の95頁から101頁あたりに詳しく論じているところをご参照いただければ幸いでございます。今回の日本風力開発の事例は、同社リリースなどを読みますと、会計処理方法の適正性が問題となっているわけではなく、いわゆる「収益計上の基礎となる会計事実の存否」が問題となっており、まさにこの本で書いたところが妥当するものと思います。これまで同社の会計監査人は同社のビジネスモデルを認識しながら、同社の会計処理を妥当なものと認めていたわけですが、そこに「覚書」というものが飛び出してきてしまいました。しかもこの「覚書」は調査報告書によりますと、(取引先の社内調査で存在が発覚したようなものなので)同社の経営者も全く知らなかったようなものであります。

新刊の拙著でも書いたように、収益認識の基礎となる会計事実の存在は、消去法的発想で合理的な心証がとられます。もし、会社の会計意見が正しくないということであれば、Aという事象が出てくるはずだが(仮説)、サンプルを調査してもAという事象は出てこない、だから会社の意見は概ね正しい(合理的保証が得られた)、という発想です。しかし、そこに仮説をそのまま正しいと根拠付けられない事象(覚書の存在)が目の前に出てきてしまったら?これは消去法的発想からするとどのように位置づけられるのでしょうか?というあたりの問題です(法律家が大好きな要件事実←抗弁事実←再抗弁事実、規範的要件←評価根拠事実⇔評価障害事実というのはいずれも積み上げ式発想なので今回とは全く異なりますね)。

そしてもうひとつの問題が「真実かつ公正なる概観」こそ相対的真実を追求する会計士的発想だという点であります。会計士(会計監査人)の判断は経営者の意見が正しいのか正しくないのかを決める最終判断者としての意見です。その監査人の意見は上場廃止をも決めてしまう可能性がありますので、くれぐれもミスが起きないように「考え得るかぎりの事実関係のうち、もっともありうると考えられる事実を会計事実と捉える」のであります。ゆえにそこではビジネスモデルに対する深い理解が求められますし、同じ監査法人の中でも他者の意見を参考にして「もっともありうる事実はどれか」を検討することになります。

これは財務諸表監査という制度が社会インフラとして求められている以上、投資家に誤解を極力生じさせないためには当然のことかと。販売あっせん手数料の今期計上を基礎付ける対価実現の認識、環状的な金銭流動が経済的な合理性ある取引の上に立つのかどうか、という点は日本風力開発社の調査報告書で述べられているところが「もっともありうる事実」と考えられるのかどうか、といった視点で判断されるのではないでしょうか。つまり日本風力開発が主張するところが「ありうる」だけでは足りず「最もありうる」と判断できるかどうか、というところが注目されるところだと思われます(会計処理の適正性が問題となるところでは、公正なる会計慣行の併存ということもありえますが、会計事実の存否が問題となる場面では「併存」ということはありえないでしょう)。

以上はあくまでも過年度決算訂正という「訂正命令」や「課徴金納付命令」の範囲内での話であります。そこでは会社もしくは会社関係者の責任追及が問題とはされていません。あくまでも投資家保護という行政目的による措置であります。これが刑事事件の告発に向けてのステップということになりますと、少し話が変わってきます。そこでは会社もしくは会社関係者の刑事責任を追及することになりますので、基礎となるのは会計事実の存否ではあっても、法律家的発想で判断しなければなりません。(70%程度の合理的保証を目的とした)消去法的な事実認定ではなく、(抗弁事実や評価障害事実の主張にさらされながら)積み上げ式の事実認定が求められることになります。会計不正事件を発生させてしまった会社は、理屈の上では民事責任による賠償請求のリスクがあるにもかかわらず、過去の内部統制報告書をなんのためらいもなく訂正しますが、このあたりの感覚をご理解いただければおわかりになると思います。この点はまた、厳格化されるインサイダー取引規制における課徴金納付命令と比較しながら別途エントリーで述べてみたいと思います。

4月 15, 2013 企業会計 | | コメント (7) | トラックバック (0)

2013年3月28日 (木)

監査法人のお墨付き(適正意見)は免罪符になりうるか?

昨日(3月26日)、金融庁企業会計審議会より、監査における不正リスク対応基準の意見書が公表されました。そして同じ26日、大阪弁護士会館2階ホールでは、大阪弁護士会と日本公認会計士協会近畿会共催によるシンポジウム「内部統制の共通理解(認識)に向けて」が開催されました。今年で3回目となる共催事業ですが、私は(ちょっと忙しかったので)今年は準備には参加せず、聴講だけさせていただきました。

気鋭の法律学者、会計学者の方々から会社法上の内部統制、金商法上の内部統制報告制度の解説がなされ、その後、大和銀行株主代表訴訟事件、ヤクルト本社株主代表訴訟事件、そして日本システム技術損害賠償事件を題材とした登壇者(法律家2名、会計専門家2名)によるシンポという構成でした。昨年もそうでしたが、司会を務められた会計士の方が、本当にきっちり準備をされるので、当日の資料も充実しており、また内容的にはとても有益なものでありました。

しかし、法と会計の狭間の問題について、どうしてもマニアックなところが気になってしまう私としましては、もう少しツッコミが欲しかった点がございました。そのきっかけは、ヤクルト本社事件に関する討議の中で、監査実務に携わっておられる会計士のW氏が、

「この判決文を読んでいると、『監査法人から監査の上で、何も指摘を受けていない』ということを、取締役の内部統制構築義務違反が認められない(取締役に善管注意義務違反はない)ことの理由に掲げられているが、どうも違和感がある。監査法人の意見というのは、取締役の注意義務を減免させることにつながるものではない」

と発言されたところであります。この発言を受けて、司会者(大手監査法人のベテラン会計士)の方も、「実は、このヤクルト本社事件の判決文を読んで、私もWさんと同じような感想を持ったのですよ」とのことでした。

時間の関係もあったのでしょうが、ここは何の議論もなくサラっと終わってしまったのですが、個人的には、ここが最もツッコミドコロではなかったかと思います。たしかに会計不正事件において、会計監査人が経営陣や監査役に対して「おかしい」と注意喚起をされたうえで、経営陣が何もしなかったということは、不正見逃しに対する役員の法的責任に影響する可能性は高いと思われます(これは福岡魚市場株主代表訴訟事件、ライブドア株主損害賠償請求事件などでも明らかです)。

しかし、逆に「会計監査人が何も指摘しなかった」ということが、役員の法的責任を減免する方向に影響するかといえば、これを肯定するのは、まさに「期待ギャップ」の表れではないかと。会計監査における適正意見の表明は、不正が発見されなかったことを表明するものでもなく、また財務諸表を網羅的にチェックしたことを表明するものでもない、ということを会計士さん方がもっと世の中に説明しなければ、このような法律家と会計士との違和感というものが、いつまでも残るような気がしております。

そういえば昨年の沖電気工業さんの海外子会社不正事件に関する第三者委員会報告書にも、似たような場面が登場します。スペイン子会社の不正疑惑が浮上したために、現地に赴いた親会社幹部社員の方が、現地調査によるありのままのレポートを親会社経営者に提出しました。しかし「子会社経営トップによる不正の疑惑あり」とするレポートを読まれた役員の方が「これはおかしい!だって、これまで監査法人からは何の疑義も報告されてないぞ。何かの間違いではないか」と言ってレポートをつっ返すシーンが出てきます。つまり監査法人の適正意見は「不正がないこと」の証明となり、また監査人が「不正は見当たらない」と言っているのだから、ましてや不正に気付かなかった自分たちの責任は当然に減免される、というのが世間一般の考え方のように思われます。いや、世間一般どころか、法律家でも、そのように感じているところが大きいのではないでしょうか。

シンポにおける会計士の方々の上記意見を聴いておりますと、会計士以外の方からみれば「それって自分たちに責任追及が回ってくることを回避するための理由ではないの?」といった疑問を抱くかもしれません。しかし、そういった後ろ向きの主張なのか、それとももっと会計監査の本質に関わる主張なのか、このあたりの認識の差を浮き彫りにしてみますと、会社法上の内部統制と金商法上の内部統制との機能的な差についても明確になってくるのかもしれませんし、監査における不正リスク対応基準の役割なども理解しやすくなるかもしれません。

001115_512すいません、本日のエントリーの流れの中で(といいますか、そういった話題をわざわざ選んだと言えなくもないのですが)、またまたCMで恐縮でございます。不正リスク対応基準の公表日に合わせたわけではございませんが、3月26日、いよいよ発売日を迎えた拙著「法の世界からみた『会計監査』-弁護士と会計士のわかりあえないミゾを考える-」(山口利昭著 同文館出版 1890円)が全国書店に並ぶようになりました。(左の写真は梅田の阪急ブックファーストです)。左の写真の書店もそうですが、おそらくどこの書店でも「会計監査」の書棚に並んでいる可能性が高いと思います。法律書籍の並ぶところには置いていないかもしれませんので、どうか「会計」「監査」の書棚のほうでお探しいただければと。

3月 28, 2013 企業会計 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2012年10月 2日 (火)

三洋電機元役員株主代表訴訟判決と「公正なる会計慣行」

本日はかなりマニアックな話題でありますが、先月末(9月28日)に三洋電機元役員に対する株主代表訴訟の判決が大阪地裁商事部にて言い渡されたそうであります(たとえば時事通信ニュースはこちら)。結論的には「三洋減損ルール」を用いて作成された同社計算書類(2002年9月中間期~2004年9月中間期まで)に基づく剰余金配当については、「違法配当」に該当しないため、元役員らの損害賠償責任は認められない、ということになり、原告株主の請求は棄却されたようです。この裁判は、会社自らが過年度の計算書類を訂正して違法配当を認めている、ということを前提として、当該年度の違法配当分の返還を元取締役に求め、あわせて違法配当を認めていた当時の監査役5名に対する損害賠償も求めていたものであります。「違法配当には該当しない」というところで判断されているので、監査役監査の責任論などさらなる論点への判断がなされなかったことは残念です。

まだ地裁判決が出たばかりであり、判決文も入手していない状況なので、現時点で内容についてコメントすることは控えさせていただきます。ただ、三洋電機の不正会計事件というのは、会計事実自体が歪められていた、典型的な粉飾決算事件とは異なり、適用すべき会計基準の処理方法に誤りがあったとして「不適切な会計処理」事案とされているところに特色があります。2007年当時、当ブログでも紹介いたしましたが(こちらのエントリー)、新聞報道などでは「この事案は課徴金処分が見送られるのではないか」とも報じられていたところであり、①会計基準の解釈という特殊性や、②連結決算だけでなく、単体決算も開示するという日本独特の制度に由来するということも影響していたものと記憶しております(実際には、金商法に課徴金制度が導入された2005年以降の虚偽記載についてのみ課徴金処分がなされたわけでありますが)。

新聞報道などを総合しますと、債務超過にある子会社の株式評価については、果たして業績が回復して、(当時の会計基準の適用を前提としても)株式評価額を減損せずに済むのかどうか、もし幅があるのであれば、その幅のどのあたりを基本として評価額を算定するのか、そういった問題について会社は恣意的に判断したものとはいえず、当時の監査人と協議のうえ、妥協の産物として三洋減損ルールを適用した可能性があります。そうなると、極めて会計専門性の高い判断が求められるところであり、経営者としては経営判断原則が適用されるのと同様、判断内容が著しく不合理なものでないかぎりは会計基準の選択に裁量が認められた、ということになりそうであります。つまり会社法上は計算書類の作成は適正になされたものであり、違法配当とは「評価されない」というのが判断理由かと。そもそも旧商法時代から、違法配当時の取締役の損害賠償責任については、無過失責任とされていることに批判が出ていましたので(たとえば江頭「株式会社、有限会社法(第2版)」357頁)、役員に故意・重過失が認められるほどの悪質なケースでなければ「違法配当」とは解釈されにくい、ということなのかもしれません。

本件訴訟は、今後高裁における判断も予想されるところでありますが、金商法における虚偽記載(投資家保護の思想)と会社法における違法配当規制(利害関係者間の権利調整)との関係、会社法上の違法配当と公正なる会計慣行の判断、長銀・日債銀最高裁判決の影響度などが地裁判決の検討課題とされるところではないかと思われます。また、当時話題となりました「第三者委員会報告」が判決にどのような影響を及ぼすのか、という点についても興味のあるところです(たしか会計処理の妥当性が問題とされていたにもかかわらず、会計監査実務家が委員に含まれていない、ということに疑問を呈する専門家の方々もいらっしゃいます)。また以前は無過失責任だった違法配当時の役員責任が、平成17年会社法改正により、過失責任(ただし立証責任転換規定あり)に変わったことが、今後の実務にどのように影響するか、というところも考える必要がありそうです。

今年3月に、大阪弁護士会で開催いたしました「公正なる会計慣行を考える」シンポでも、三洋電機事件の関係者の責任問題(監査人に対する行政処分を含めて)は会計学者、会計実務家の方々より多くの批判的意見が聞かれたところであります。ビックカメラ社の不適切会計処理に関する株主代表訴訟なども係属中であり、今後の同種事案への裁判所の判断にも参考となるかと。私自身も判決文を入手できましたら、いろいろと研究したいところでありますが、ぜひとも企業会計法で著名な学者の方々の判例評釈などに、今後注目しておきたいと思います。

10月 2, 2012 企業会計 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年4月26日 (木)

全国監査法人アンケートの結果を法律的に考えてみる

4月25日の日経朝刊(投資・財務面)に会計不正事件を監査法人が見抜けたかどうか、というとても興味深いアンケート調査の結果が出ておりました。上場会社監査事務所名簿登録は160ほどなので、有効回答数46は、一般的な公認会計士の方の意識を探るには十分かと思います。

オリンパス粉飾決算事件、大王製紙不正流用事件を監査法人が見抜けたかどうか、というシンプルな質問に対して、見抜くのが難しいと回答された方はO社24%、D社5%。一般に公正妥当な監査の基準に準拠した監査をもってしても見抜けない・・・というのは、つまり監査の限界を超えた粉飾(もしくは不正)だったということですから、たとえ担当監査法人にミスがあったとしても、損害との間に因果関係(監査法人がミスしたので会社に損害が発生した、という関係)が認められないということになります。ただ医療過誤訴訟でも同じですが、裁判ではなかなか因果関係不存在の抗弁は認められないですよね。そもそも「平均的な注意義務をもって監査をしたとしても本件の粉飾は発見できなかった」ということの立証の程度や方法がむずかしそうです。たしか東北文化学園事件でも、S監査法人さんがこの抗弁を提出したようですが、裁判所は認めなかったと思います。因果関係の推定が働く、ということでしょうか。

つぎに「見抜いても対応がむずかしい」と解答された方が、O社37%、D社30%。回答の読み方に若干疑問があるかもしれませんが、これは見抜くことはできるが、たとえ見抜いたとしても監査法人としては言い出せないだろう、ということでしょうね。この回答だと、ミスがあった場合には損害との因果関係は推定されることになりそうです。ただ、対応がむずかしいということですから、たとえば金商法193条の3をもって対応することに逡巡する、ということになろうかと思います。疑念を抱いたにも関わらず、行動しなかったということになりますと、これはこれで、新たな法的リスクを生むことになりそうです。

最後に「発見、対応できる」と回答された方が、O社17%、D社44%とのこと。一般的な職業専門家としての注意義務をもってすれば発見、対応できた、ということですから、この比率が高いということは、まさに法的責任の根拠となります「注意義務違反」「過失」があったと推定されることになるのでしょうか。とくにD社については44%の会計士の方々が「不正を発見できたであろうし、また対応できた」と考えている、というのは重い結果かと(そういえば数日前に、D社を担当しておられる監査法人さんでは、地方の監査体制強化に向けた対応をされる、との報道がありましたね)。しかし不正の発見が会計監査人の主たる目的ではないとしても、これほど周知された事件への感想として、会計士の方々でばらつきがみられるのは意外でありました。

4月 26, 2012 企業会計 | | コメント (8) | トラックバック (0)

2010年6月29日 (火)

会計士と弁護士の「わかりあえないミゾがある」ことを理解する

6月26日土曜日、日本公認会計士協会近畿会と大阪弁護士会の共催シンポ「会計不正判決に関するシンポジウム-監査人の民事責任について-」が大阪弁護士会館で開催され、私もパネリストのひとりとして登壇させていただきました。大雨の土曜日でありましたが、100名以上の先生方がお越しになり(会計士:弁護士≒2:1程度)、おおげさではなく本当に会場が満席となりまして、主催者側のひとりとしましては、ビックリいたしました。雨の中、足を運んでいただき、ありがとうございましたm(__)m。

登壇者は(司会者含め)会計士2名、会計学者2名(甲南大学の内藤先生、関西大学の松本先生)、弁護士2名ということで、ナナボシ事件判決、キムラヤ事件判決を中心題材として、多くの論点をとりあげました。後日、この模様は冊子としてまとめるようですので、またお目に留まる機会もあるかもしれません。リスク・アプローチの手法を法律家はどのように取り扱うのか、品質管理(組織的監査)については、チーム医療における医師の過失責任と同様の理屈が成り立つのか、パソコンの中身を開示しない被監査会社の監査において、監査人は適正意見を出せるのか、といった争点もありましたが、やはり法律家と会計士との間で、なかなか理解しづらいのが「重要性の原則」でありました。監査を取扱う会計士の皆さまは、もはや体に染みついた大原則かもしれませんが、弁護士にとってはあまりピンとこないのであります。おそらく「善管注意義務」に対する弁護士の感覚が、会計士の方々にとってピンとこないのと同じような感覚だと思われます。このシンポをやって良かったなぁと感じたのは、この「重要性の原則」のように、法律家と職業会計人との間で、なかなか分かりあえないことが存在する、ということを双方が理解できたことではないかと思いました。これはとても意義のあることではないか、と。

本日のTDNETにおきましても、以前ご紹介しました日本風力開発社(東証マザーズ)の

外部調査委員会設置に関するお知らせ

がリリースされております。同社は、監査役会(監査役全員の同意による)が、会計監査人(監査法人)につき、職務怠慢を理由に解任をしておりますが、その解任については監査法人側より既に反論のリリースが出されております。そこで、日本風力開発社としては、果たして本当に(監査法人が主張するように)過年度決算訂正が必要なのかどうか、過去の処理の適切性を確認するための調査委員会を設置する、というものであります。そしてその調査委員会は「弁護士」によって構成されているようであります。しかしながら、ここで問題となるのは会計の領域に関することであり、いわゆる「相対的真実」に関する論点であります。私は昨年ご招待を受けました日本監査研究学会の西日本大会におきまして、弁護士にとって理解困難な会計・監査の領域の問題として、会計については「相対的真実」と「重要性の原則」であり、監査については「リスク・アプローチ」と申し上げました。この領域に属する問題について、弁護士だけで考えるのはリスクが高いのであります。

たとえば西村・あさひ法律事務所の木目田先生も、過去に何度か引用しております金融商事法務1900号「弁護士からみた証券取引等監視委員会の法執行」95頁におきまして、「会計的真実の相対性」として

会計的真実とは相対的なものであるから、過年度決算の訂正を行った場合であっても、必ずしも訂正前の過年度決算に虚偽記載があったことになるわけではない。例えば、過年度決算を策定した当時には複数の会計処理方法が許容されていると考え、そのうちの一方により会計処理をしたところ、後に結果的に当該会計処理が許容されないことが明らかとなったにすぎない事案であれば、当該会計処理により策定された過年度決算は、たとえ現在の時点からみれば適正とはいえないとしても、策定当時に当該会計処理方法が許容されると考えたことにそれなりに合理性な理由がある限り、虚偽の記載があったことになるわけではない。

と論じられており、私もまったく同感であります。弁護士の扱う真実は「絶対的真実」であり、ゼロかイチかの世界でありますが、会計士の扱う真実は「相対的真実」であって、ゼロとイチの間には(光の当て方によって)無数の正解がありうる世界であります。そうしますと、弁護士的な発想で、過年度の会計処理が虚偽記載ではない、という結論を出したとしても、会計士側からは「それも虚偽記載とはいえないが、現時点からみれば訂正の必要がある」と反論されれば、結局のところ議論がかみあわず、調査報告書の結論が何らの意味を持たないことになるおそれが生じます。こういった議論は、過年度決算訂正と内部統制報告書との関係も同様であります。「わかりあえないミゾ」が横たわっていることを認識できれば、今後は少しでも理解しあうための研鑽の場が必要であることも認識されるところでしょうし、相互理解が少しでも先に進むのではないかと考えております。こういった共催シンポが、今後も定期的に開催されることを祈念しております。

6月 29, 2010 企業会計 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2008年4月 8日 (火)

会計基準の国際化に対する監査役実務対応

昨日の英国における聖火リレーでは37人の逮捕者が出たそうでありますが、本日のフランスでの聖火リレーは、あまりの妨害行為のすさまじさに急遽中止になった、とのこと。(その後、聖火のみバスで移動)私はあまり国際事情に詳しいほうではありませんが、「人権」とか「行政不信」といった行動はやっぱり欧州は半端じゃないですね。さすが「法の支配」とか「人権宣言」などが生まれる国は違うなぁと妙に関心しながら記事を読んでおりますが、日本でもこれから排出権取引や、会計基準の国際化問題など、欧州中心のルールに否応なしに順応していなかければならないということで、少しばかり国民性の違いに不安感を抱いておりますのは、私だけではないと思います。ということで、会計基準の国際化に関する話題でありますが・・・

4月7日、日本監査役協会のHPより、(会計委員会作成による)会計基準の国際化に伴う企業への影響と監査役の実務対応がリリースされております。最近施行された新しい会計基準に関する「ポイント解説」と、実務対応マニュアル(実務対応編)に分かれておりまして、非常に使いやすいですね。ポイント解説編につきましては、今まさに話題になっております会計基準に関するものばかりですので、ちょっと易しすぎて「いまさら・・・」とお感じになる監査役の方もいらっしゃるかもしれませんが、「実務対応編」のほうは、会計監査人との「問題を共有」するためのマニュアルとしてはけっこう使えるのではないでしょうか。(私もこれで勉強したいと思っております)

最新号の旬刊経理情報(4月10日号)の特集記事「内部統制構築現場報告」におきましても、「内部統制構築における企業の対応と監査人の対応」(持永先生による)のなかで、内部統制実務指針における「多段階的な検証作業の利用」について指摘されておりますが、(そこで触れられているのは内部監査人による検証ではありますが)こういったマニュアルを最大限活用することで、監査役も監査人によって信頼されうる「多段階的な検証作業」の一翼を担えるようにしたいものであります。(とりいそぎ、本日は上記お知らせのみで失礼いたします。)

4月 8, 2008 企業会計 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月21日 (火)

企業情報開示の「遅れ」と「訂正」

(21日午前 追記あります)

今週号の経営財務(2832号)に掲載されている「内部統制報告の留意点(下)」(前金融庁企業開示課長さん)はなかなか面白いですね。前号の「留意点(上)」は、なんとなくこれまでの「実施基準」や内閣府令をもとにした議論の復習といったイメージでしたので、(たいへん失礼ながら)あまり期待もせずに読み始めたのでありますが、「内部統制報告制度にまつわる数々の誤解シリーズ」のようなものになっておりまして、金融庁があれだけ嫌っておられた呼称である「日本版SOX法」(J-SOX)の定義のようなものまで解釈がなされており(注 もちろん意見にわたる部分は筆者の方の個人的意見だとは思いますが)、実務的に役立つかどうかは別として、購学的には面白い箇所が散見されます。

さて、そういった「誤解を正す」シリーズのなかにおきまして、「内部統制報告制度がスタートすると決算発表の時期が遅れるのではないか」といった噂に対するご意見が述べられておりますが、内部統制報告制度自体にかかわらず、会計基準も公表されております四半期報告制度が導入された場合、上場企業のなかには報告書提出の遅れとか、報告数値の訂正の問題というのが今以上に頻繁に発生するのではないでしょうか。「連結」が基本となりますので、本体企業の経理部門が厳格に運営していても、子会社のほうでうっかりミスなどが発生してしまいますと、そういったリスクというのが顕在化する可能性は高いのではないでしょうか。このあたり、私は会計の専門家ではございませんので、素人的発想ではありますが、四半期報告書の提出遅延とか度重なる数値訂正などが発生した場合、これは内部統制における「重要な欠陥」に該当することになるんでしょうか?どういった言い訳があるにせよ、本来法律に基づいて期限までに提出しなければならないものを提出できなかったり、信頼性のある数値を表明できなかったことについては、全社的内部統制や決算財務報告プロセスあたりになんらかの不備があり、全体への影響度が大きいと判断されれば「重要な欠陥」と認められる、というのがリスク管理としての「プロセスチェック」の考え方ではないかと思われます。(しかし、遅延や訂正といった結果発生から、どういった原因行為を特定するのか、これも各企業においてマチマチでしょうから、真剣に考えますと、ずいぶんとたいへんな作業のような気もします。監査人の意見と経営者の意見が一致するとは思えないのですが)

ところでプロセスチェックといった観点からみた場合、企業情報開示の「遅延」と「訂正」では、どっちのほうがミスした企業側にとって致命的といえるのでしょうか。もちろん、経営者は確認書を提出しなければなりませんし、ミスしないのが当たり前ですから、そもそもミスのないように正確性と迅速性といった相反する要請をうまく調和させる必要があることは承知しておりますが、相反する要請である以上は、それが調和できないリスクといったものも検討しておく必要はあると思います。もちろん、上場企業が報告書提出を遅延したり、また訂正するにあたっては諸事情あるはずですので、単純に比較することはできないでしょうから、ひとつのモノサシとして「どちらがより内部統制報告制度における『重要な欠陥』に該当する可能性が高いか」といった基準で考えてみたいと思います。私の考えですと、「訂正」の場合は、迅速性への配慮とか、全社的な内部統制構築への対応は進んでいるものの、単純なミスがあったとか、会計基準への理解が不十分であったということで修復が容易な不備という理解で済みそうなケースが多いように思うのでありますが、いっぽう遅延ということになりますと、たしかに正確性への配慮は認められるものの、経営者不正があったのではないかとか、そもそも基本的な開示統制システムができていないのではないかとか、内部統制の根幹にかかわる問題を当該企業が内包していることを連想させてしまうように思われますので、どちらかといいますと「遅延」のほうがプロセスチェック的には重要な欠陥と結びつきやすいように思いますが、いかがでしょうか。(勝手な素人的発想にすぎませんので、またご意見等ございましたら、いろいろとご指摘ください。また、こういった疑問点をズバリ解説されている文献等ございましたら、ご紹介いただけますと幸いです。重箱の隅をつつくようなものかもしれませんが・・・・)

(21日午前 追記) 先日のプロネクサス社につづき、今回は宝印刷社でも「元社員」によるインサイダー取引が発生したようです(毎日新聞ニュース)。ご専門家である宝印刷さんですので、企業情報開示はおそらく「遅れ」なく公表されると思っておりましたが、午前9時30分、さすがに適切な情報開示がなされました。内部者取引を社内で防止するための再発防止策(すでに社内で履行されているものを含む)がリリースされておりますので、こういったことも情報管理のためには参考になるところです。

8月 21, 2007 企業会計 | | コメント (5) | トラックバック (1)

2006年4月 7日 (金)

監査契約解消時の監査法人のコメント

4月5日の日経ベタ記事で電子カルテ販売の株式会社シーエスアイが、中央青山監査法人との会計監査契約を合意解約した、ということが報道されていました。この3月30日に公表されました企業会計基準委員会作成にかかる実務指針「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務指針」に沿った収益認識の時期が、企業側と監査法人側と一致しなかったということが原因のようです。(シーエスアイの公表事実はこちら)

シーエスアイの説明によると、販売商品はソフトあり、ハード機器あり、そして保守取扱サービス契約ありということで、いわゆる複合取引の典型例のようですが、やはりそのなかでもソフトウェアの「販売代理店」を通じての販売形態において、販売代理店へ売りつけたときとみるのか、販売代理店が最終ユーザーに販売した時点とみるのか、そのあたりが最大の問題点のようです。素人的な発想ですが、結局のところ、シーエスアイと販売代理店との力関係(協力会社、提携会社といえるかどうか)、販売代理店の在庫滞留時におけるリスク負担(過去に大量の返品処理、値引き販売の実績があるかどうかなど、異常取引の存在)、単に基本契約書だけが存在していて文書管理(納品、検品書、売上確認書などの存在)に問題がなかったか、などの総合的判断によって、いつの時点を収益認識時期とするか決めることになるのではないでしょうか。

そこでまたまた素人的な疑問なんですが、もし上記の私の分析が正しいとするならば、こういった新しい会計基準自体が公正妥当な会計慣行に該当するとしても、その基準の適用にあたっては、ビッグ4と呼ばれる監査法人さんは、どこも同じ結論に至る確信はあるのでしょうか?もし確信があるとするならば、公開企業にとって、同様の事態に至ったとき、監査法人との間で意見の相違がみられる、といった場面において監査人を変更するためのアクションをとる実益があまりないようにも思われます。このあたりは、新会社法によって会計監査人と監査役(監査役会)との連携強化といったことが言われているなか、今後の監査役実務に大きな影響を与えるところだとも認識しております。

そしてもうひとつの疑問は、上記の新聞報道にもありますが、中央青山監査法人の広報室は「個別の顧客についてコメントは差し控える」とのことでして、合意解約に至った理由とりわけ、なにゆえ企業との間で意見が一致しなかったのか、なにゆえ意見不表明と認識するにいたったのか、そのあたりのコメントは一切控える、という態度は会計監査人が会社の機関となるこれからの時代も妥当なのかどうか、といったところであります。もちろん、弁護士以上に公認会計士の方々は顧客企業の秘密を守る態度にかけてはシビアでありまして、日常の業務において信頼される源であることは十分承知しております。しかしながら、「監査は誰のためにあるのか」といった基本的な問題もありますし、そもそも顧客側が合意解約の事実を適時開示しているような場合には、(コンサルタント内容を開示するわけではなく、あくまでも財務諸表監査の評価結果を基礎つける事実なわけですから)むしろ意見相違に至った経過程度は開示したほうが、株主や一般投資家その他利害関係人の利益に資する結果となるようにも思えるのですが。。。(私はどうも、今回の中央青山の判断につきましては収益認識時期に関する見解の相違ということだけでなく、今後の収益認識時期判定のための、つまり財務情報の信頼性確保のための内部統制環境整備が不足していたことにも起因しているのではないか・・・とも思ったのですが、そういったあたりを弁明していただけますと、会計基準の進化にもつながるのではないかと考えたりしております)会計学の基本の部分がよくわかっていないのかもしれませんが、ついつい自分が監査役だったら、合意解約にいたる経過において会計監査人とどのような対応をとっただろうか、とすこし想像したりしておりました。

4月 7, 2006 企業会計 | | コメント (9) | トラックバック (2)

2005年6月 8日 (水)

監査役と会計監査

監査業務として、会計監査人との連携問題としては、内部統制構築やその運営状況の監視などが話題になると思うのですが、今日はちょっと気になった別の話題ですが。。。

現商法によれば、大会社の場合でも監査報告の最終責任は会計監査にしても監査役にありますよね。監査役会で会計監査報告書の最終チェックはしなければいけませんし。その会計監査報告なんですが、現状がなにも変わっておらず、また会計基準に変更もないのに、ただ会計監査人の指導方法が変わって業績内容が変わる可能性がある、という場合、監査役はどのような立場に立てばよいのでしょうか。

たとえば昨年まで、長期フラット為替(10年モノ)をヘッジ会計として適用していたところ、会計監査人が「これはヘッジ会計が適用できないことになったから、金融商品の時価評価として損益計上しないといけません」と言われ、もし会計監査人の指示に従わないと限定付適法意見もしくは不適法意見しか出せないとの雰囲気になったら、監査役としてはどうしたらいいのでしょうか。会計監査人が最終判断をするのではなく、会社が判断しなければいけないわけですから、「会計士さんに言われたので、こう変更しました」などと言うわけにもいかず、かといって今までの報告書が不適切でした、というわけにもいかず、でも会計監査人の意見を無視するわけにもいかず、対応に苦慮するのではないでしょうかね。

公認会計士協会関連の公式団体が、フラット為替については指針の解釈として、リスクヘッジではなく、デリバティブ投機であると公表した、したがってヘッジ会計を適用せず金融商品の評価指針にしたがっての評価に切り替えたほうが妥当と考えた、したがってこれまでの報告は不適切とは言えないが、望ましい方向へと変更したものである、とか、ちょっと曖昧な表現で逃げるのが無難かもしれません。しかし、会計基準も実務指針もなんら変更がないにもかかわらず、ただ公認会計士協会の内部組織から出された文書一枚で監査役が変更を決意した、というのは、監査役にとって適法な行動かどうか疑問が残り、会社に対する忠実義務もしくは善管注意義務に違反するおそれがあるようにも思われます。会計士さんと真摯に協議したうえで会計士さんの意見を重視したことの結果である、ということはどっかに書きたいところですが、それを書くと、じゃあ今までの会計士の意見は不適切だったのか??と突っ込まれる気もします。

長期フラット為替予約に関する公認会計士協会の内部組織(正確にはリサーチセンター)による公開文書というものは、指針の解釈なのか、それとも指針の解釈を超えたものであるか、ということが、解釈自体の「誤り」も含めて訴訟の争点となり、東京地裁では今年2月末に公認会計士協会側が勝訴判決を得ております。ただし、この裁判の判決は読んでおりませんが、原告ご自身のHPで読むことができる原告、被告双方の訴訟書類からすると、おそらく東京地裁では、本案にあまり踏み込むことなく、被告である公認会計士協会を勝たせていると思われますので、たとえ控訴されているとしても、もっとも重要な争点への裁判所の判断が下されるかどうかはちょっと疑問です。

内部統制に関する会社側と会計監査人との意見の違いから、「不適法」とされるというのであれば、なんとなく理解できるのですが、なんにも会社側に落ち度がないのに、いきなり会計監査人から会計基準の解釈を変更しないと不適法となりますよ、などといわれる事態というのは会社としても納得いかないでしょうし(解釈の変更なら、たとえ従わなくても「不適法」ではないやろ!といいたくなりますし)、またもっとも責任問題の発生する監査役としては、たいへん対処に困る事態が予想されますが、このあたり実務に詳しい方の意見もお聞きしてみたいものです。

もし、この問題で会社が会計監査人側に文句を言えないとするならば、つぎは長期フラット為替によるリスクヘッジを勧めた銀行サイドへ文句を言うことになるんでしょうか。いずれにせよ、最初の段階で会計士協会と金融機関とで、こういったデリバティブ商品が企業会計上どのように取り扱われるのか、統一見解を検討してほしいところです。

6月 8, 2005 企業会計 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2005年6月 6日 (月)

証取監査と内部統制

おととい、「会計士さんのお値段(その2)」をエントリーしましたが、東京の会計士の方よりコメントをいただきました。(コメントは「会計士のお値段」のほうに付けていただいております)報酬に関する会計士さん方の意識や、高額報酬をとるためのスキームなど、たいへん示唆に富むお話です。ありがとうございました。すこしだけ紹介させていただくと、

報酬に結びつけるStepについて、彼(注、投稿者の元親方さん)は以下のことをよく言います。
Step1 お客さんのことをよく知る
Step2 その過程で財務に及ぼすリスクを把握する
Step3 そのリスクを経営者に説明する(経営者にとっては耳の痛いこともよくあります)
Step4 その説明を経営者に理解してもらう
Step5 そのリスクを改善する
Step6 その提案・改善した結果を監査報酬に反映させる
彼は、これを繰り返していました。今もそうです。このStep6までいかないと報酬には結びつかないと思います。彼、最近は、年をとったので、Step6の報酬はどうでもいいようですが。私の税務のお客さんも監査法人より監査をうけています。ただ、低報酬の監査法人は、このステップをクリアしていないような気もします。
私は、このStepをクリアできる能力があるかどうかが報酬に結びつくと考えています。

たしかに、このなかでも、ステップ4のあたりがムズカシイのではないか、と私は思います。本当に理解してもらえたのか、表向き理解しているようなフリをしているのか、そのあたりを見極めるためにも、オーナーとのコミュニケーションを大切にするのでしょうね。私なんか、顧問税理士さんから、いろいろとうるさく言われても、税務調査でイタイ思いをしないと、「ああ、やっぱり税理士さんの言ったことを実践しとけばよかった」と認識できないほうなんで、これをイタイ思いをする前にクライアントに認識させるには、本当に人間的信頼感みたいなもんが必要なんではないかな・・・と思います。さらに、このステップ6が報酬と結びつくということは、ある程度改善策を「今」とることが企業にとってお得であることを説明しないといけないでしょうから、そのあたりのタイミングなども重要ではないかな・・とふと「商売人」的発想で考えてしまいました。

この arnase さんの6月5日のエントリーを読んで、一昨日の私の記事とも関連することでおおいに参考になったのは、やはり「会計士の不正発見」という場合の「不正とは何か」をまず議論する必要があるのではないか?という疑問でした。たしかに、これは大きな問題だと思います。財務報告に関連する不正報告ということであれば、まだ不正発見ということについて、「不正の定義」もできるかもしれませんが、会計士協会や金融庁が公認会計士による監査に義務付けようと(有価証券報告書への記載ということで)考えているのは、もっと広い意味で企業の内部統制や内部監査の対象となる「不正」ということを念頭に置いているわけです。そうしますと、ここにいう不正というのは、たとえば私法上で取引が無効となるような違法行為を含むのか、行政上での取締対象行為上における違法行為を含むのか、それとも刑事罰を含むようないわゆる犯罪性のある違法行為に限るのか、など、そのあたりの定義付けが必ず議論されることになりますね。内部統制の目的といっても、コンプライアンス行動の推進やら、企業行動の効率性というものもありますから、広く考えれば私法上での違法行為をなるべく減少させることまでも「不正発見」に含むことが可能なわけですが、でもそうなると会計士さんに法的な解釈まで要求することになり、過剰な負担になることは明らかでしょう。現実論として、今後の議論というのが待たれるところでしょうし、ひょっとするとすでに始まっているのかもしれません。

期待過剰なところから始まって、できないとなると、最初の信頼すら失ってしまう、という危惧を現役の会計士さんが実際に抱いておられるのを読んでみて、会計士さん方の急速な環境変化への期待と不安みたいなものを感じました。

6月 6, 2005 企業会計 | | コメント (6) | トラックバック (0)

2005年6月 4日 (土)

会計士のお値段(その2)

先日、会計士は普通に企業から「100点の仕事」を要求されるので、能力による報酬変動の評価はむずかしいのではないか、という話を書きました。そんな話をしているうちに、6月2日の日経を読んでおりますと「企業統治 チェック厳しく 金融庁3年度にも新ルール」なる記事が出ておりました。会計士協会も、不正発見のための新たなルール作りを模索しており、今後の監査法人の企業統治への関与が重視されていることが期待されているようです。

そんな中でbunさんの会計監査不正発見に重点?ほんとうにそれでいいのでしょうかを読んで、私も同じ問題意識を持つようになりました。

実際に、私が内部統制システムにある程度関与しているのは、上場企業でも2、3社にすぎませんが、どう考えても、社長もしくは専務クラスが自白しなければ発覚しないなあ、と考えられるシステムが本店、支店含めても数多く散見されるのです。(もちろん、これは現に隠匿しているという意味ではなく、もしその気になったら、なんぼでも隠せるなあ・・という意味であります、念のため)ある問題は情報処理システムからであり、またある問題は人間関係からであり、また別の問題は業界独自の慣行からだったりします。お金の流れにからんでいれば、会計士さんも「?」と感じ取ることができるでしょうが、「不正一般」という意味からすれば、会計士さんも普段の期中監査などでもわからないものが一杯あります。どんなに企業側がコストをかけたとしても、会計士さんにその発見を強く要求することは無理があるなあ・・・と私は実感しています。むしろ、会計士さんの能力の差が明確になるとすれば、このような「不正一般」への嗅覚というか、些細な情報から不正のニオイを嗅ぎ取る能力のようなものが今後必要とされるのであれば、そういった能力の差が認識できるかもしれません。でも、考えてみると、そんな能力がある人が企業にとって歓迎されるかというとこれも現実の社会では逆の結果になってしまうようにも思えます。ここまでは「グレーゾーン」でこっからは「クロ」と指導してもらえる会計士さんをコンサルタントとして迎える、というのもあるかもしれませんが、これも会計士さんの責任との兼ね合いからすると、本当に能力のある人がそんなことするかなあ・・と疑問を抱いてしまいますし。監査法人にとってみれば、報酬アップの要因になるでしょうから、歓迎すべきことかもしれませんが、そのしょって立つ責任の重さを考えると導入には相当慎重な議論が必要ではないでしょうか。

最近は、アメリカのCOSOレポートを中心としたリスクコントロールシステムを取り入れる企業も多いと思うのですが、あそこに出てくる人間像というのは、「99パーセントの合理的理性人」と1パーセントの「常識逸脱人間」がいて、その逸脱人間の行動をどうやって合理的に排除していくか、みたいな前提があるようです。しかしこの考え方は、99パーセントの合理的理性人が常識逸脱人と交わっても変わらないということでしょうが、実際の会社では99パーセントが1パーセントにひきずりこまれちゃうことはたくさんあるわけで、「悪いことを共有したり」「かばってあげたり」「楽だからそっちに部署ごと合わせたり」、そこまで防止することはほぼ絶望的に不可能なわけで。。。

そういったところを十分認識しておかないと、bunさんのおっしゃるとおり、できないことをできるように思って進めると、もっと悪い方向へ向かうような、そんな事態になってしまうことを危惧してしまいます。(おそらく、こんな議論がこれからたくさん、なされないと不自然ですよね?)

6月 4, 2005 企業会計 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2005年5月29日 (日)

会計士さんのお値段

事件の相手方との間で、会社の一事業部門の営業譲渡対価を算定しておりますが、訴訟ともなると、その営業譲渡対価について、それぞれの意見が対立してしまって、なかなか和解ができません。どちらにも公認会計士さんが意見書を作成してくれておりますので、企業価値についての客観的な合意が可能かといいますと、実はそんな簡単なものでもなさそうです。いわゆるキャッシュフロー割引法を基本としていることが同じなんですが、リスクをどのように算定するのか、何年のフローをとるのか、将来の売却代金について、どのような事例を基礎とするのか、いろいろと会計士さんの裁量によって決まる部分があるようなんで、企業価値の把握が困難になってきました。

ところで、ほかのブログでも話題になっていたり、また直接たずねてみたりしたことから思うことは、会計士さんの報酬というのは、ほかの人との能力の差というものではっきり決まるものでもないようですね。とりわけ会計監査を中心に行っている会計士さんは、常に100点をとる仕事が要求されるから、100点とって当たり前、仕事の出来において、ほかの会計士さんとの比較、ということもあまりクライアントからされないような仕事環境なんでしょうか。弁護士の場合は、訴訟における勝敗や、和解による処理の巧拙、事件処理の見込み通りの結果を出したかどうか、執行猶予のついた判決をもらえたかどうかなどなど、結果がクライアントに容易に理解できたり、また別の弁護士との巧拙の比較が可能だったりするために、「私はあの人と違って高額ですよ」と言いやすい環境にあります。(もちろん、私がとうわけではありませんよ・・)したがって、実力がつけばそれに伴って報酬のステップというものも駆け上がることが可能です。しかしながら、会計士さんの場合には、「うちの監査法人は実力があるから監査は高いですよ」ということが言いにくいように思われます。日本の監査報酬はアメリカと比較すると数分の一以下、と言われますが、企業からリスクをとってあげる大切な商売なのに、そのリスク回避のお値段がかなり低額に見積もられているのではないかな・・・と考えたりします。そのあたり、会計士さんが不満を抱くと、結局独立されてコンサルとして経営者の道を歩まれることになるんでしょうかね。

5月 29, 2005 企業会計 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2005年5月 9日 (月)

商法監査の立会

3月決算の企業の社外監査役をしている関係から、この週末、監査法人の商法監査の立会いをしておりました。大手の監査法人の方は、ゴールデンウィークというものは季節柄、「精勤期間」ということで、ほとんどお休みをとらないんですね。

細かい実査手続きについては、ここでは申し上げませんが、会計監査の素人としての感想を述べますと、内部統制リスクの判断というものも、昨今の情報処理システムの導入次第というところでしょうか。お金の流れについて、どれだけ当該企業がコンピューター化、IT化をはかっているかによって、会計士さん方の統制リスクへの配慮も変わってきますし、ぎゃくに言うと、監査法人の代表社員の方でも、相当の情報処理システムへの知識がないと、内部統制リスクに関するポイントを判断できないのではないか、と思いました。

会計士さん方と話をしているなかで、一時問題となっていた「繰り延べ税金資産」や、この4月から導入された「固定資産の減損会計処理」などにおいては、(誤解をおそれずに言いますと)その企業の将来の収益見込みのようなものを、推測しながら算定しなければならない、という部分もある、ということをお聞きしました。そもそも、監査の本質は、その企業がきちんと帳簿をつけているかどうか、それを正しく公表しようとしているかどうか、を検証するところでしょうから、その企業の信用が将来どうなるか、ということを判定する作業ではないはずです。しかしながら、実際の監査を拝見しておりますと、どうも「この企業の将来見込みはこうだ」という前提がないとバランスシートの数字が決まらないことがあるんですね。ということは、実際、企業価値の算定などにおいても、会計士さん方の調査内容へ「ツッコミどころ」みたいなところがあって、もし弁護士などが収益見込み算定根拠などを執拗に質問した場合にはどのように回答するんだろうか、と考えたりしておりました。

最近、このブログでも「企業価値研究」ということをよくテーマにあげていますが、もし社外取締役が一般株主に説明すべき「企業価値」を算定する場合、おそらくバランスシートをみてもすぐにはわからないような価値の算定をしなければいけない、と推測されます。たとえば企業ブランドとか商品ブランドとか、ノウハウ、優秀な従業員、労組と経営者との関係、研究開発の蓄積、取引先の信頼、コーポレートガバナンスの仕組みなどなど、数え上げたらきりがないほどです。社外取締役が外部委託した上での報告書に頼っていたのでは、おそらく株主に責任をもって報告することはできないはずです。自社と買収希望企業との比較ということですから、算定の基準となる項目の選択も含めて、その社外取締役独自のルールをまず作成して、ある程度合理性のある算定根拠を自ら検討しなければならないような気がします。なにせ、先に述べたとおり、専門家の会計士の方々でも、「見込み」で判断しなければならない分野が存在するわけですから。

5月 9, 2005 企業会計 | | コメント (0) | トラックバック (0)