2005年7月 5日 (火)

税理士の妻への報酬、「経費と認めず」

最高裁で、弁護士の夫が税理士の妻へ相談料を支払っていたものについて、必要経費としての算入が否認されてしまいました。所得税法56条を広く解釈して、「生計を同じくする人が同じ業務に従事している場合には、これを経費として認めない」というものです。

昨年11月2日に、「夫が弁護士、妻も弁護士、ふたりとも別々の事務所で独立して経営している」というケースにおいても、最高裁(同じ裁判長)は、やはり600万円近くの妻の夫に対する報酬金について、この所得税法56条を根拠として、夫の収益における「必要経費」性を否認していましたので、結論的にはほぼ予想されていたところでした。

新聞報道や原告の主張などでは、所得税法56条は「限定解釈すべききかどうか」と述べられておりますが、私は特別に「限定解釈」すべきかどうかという論点ではないと思っています。限定解釈という言葉を持ち出すこと自体、租税法律主義、課税庁の法執行機関性という原則論を被告側が持ち出すチャンスを与えてしまい、相手に塩をおくる結果になってしまうような気がします。むしろこの問題は租税法律主義とは関係がなく、純粋に「業務に従事する」というのは、どういった場合か、ということの解釈問題だと認識すればよい、と思っています。そのうえで、個人課税の原則を重視して、配偶者控除規定や法人成りとの比較によって56条の矛盾点を実質的に考慮すれば第一審のような結論になるでしょうし、そもそも56条が個別具体的な条項を置いていないことや、実質的な税負担の公平を考慮するならば高裁や最高裁のような結論になるでしょうし、理屈から考えるとどっちも成り立つのではないでしょうか。(余談ですが、この第一審の裁判長はあの有名な藤山裁判長です。)

ただ、これは私個人の勝手な意見ですが、最高裁判決の結論を肯定したとしても、この訴訟の前に決定されている国税不服審判所の一部取消決定の論理も加味するならば、(たとえば、妻が独立した事業において年間2000万の売上があり、経費が1000万円だとすると、この妻が夫の業務について年間300万円の顧問料を請求したとすれば、全額である300万円を必要経費としては認められないけども半分の150万円は認められる、というもの)それほど不当な結論にもならず、家族を有する人と単身者との税負担の公平と考え合わせると、最高裁判決の結論でもいいのかなあ、と考えています。

あと、これは夫婦が別々に事業をしているケースですが、夫婦が共同の法律事務所をやっていたりするケース、つまり民法上の組合を構成している場合には、それぞれ別々に持分に合わせて利益を配分できるでしょうから、この所得税法56条の適用はクリアできるのではないでしょうかね?あまり適用場面というのは聞いたことがありません。

なお、最後に白状いたしますと、この最高裁判決で上告人となっている弁護士さんは、私の司法研修所時代のクラスメートであります。クラスのまとめ役として、いつも中心になって引っ張ってくれた、温厚で誰からも好かれる方でした。代理人が10名以上就任している事件でしたので、ご本人がどこまで積極的に訴訟遂行されたのかは不明ですが、6年間、どうもご苦労さまでした。

7月 5, 2005 税理士の妻への報酬、「経費と認めず」 | | コメント (2) | トラックバック (1)