財務報告に係る内部統制報告制度対応状況結果(監査役協会)
(ご紹介した書籍の編著者名に誤りがありましたので、訂正いたしました。ご指摘いただいた元PwCの方、どうも失礼しました。ときどき恥ずかしい誤りがありますので、ご指摘いただけますと助かります。。。)
ここのところ、世間で話題になりつつも、自分の頭では理解できないことを書きつづることが多くなっておりますが、「かんぽの宿」騒動もそのひとつであります。総務相が問題視したことによってかんぽの宿の売却にあたり、「企業価値算定」(バルクセール?)と入札のデュープロセスという、二つの論点が浮かび上がってきたことは皆様もご承知のことと存じます。私が疑問に思いますのは、これほど世間で「企業価値」が話題となっている今こそ、「継続事業のお値段とはこういったもの」というMAご専門の方々の意見が日本中に広まるのではないか、(もしくは国民が耳を傾けるのではないか)と期待するのでありますが、ほとんど聞こえないのであります。なぜ「私はこういった理由から日本郵政の行動を擁護する!」といった声が聞こえてこないのでしょうか?マスコミで報道されているように、一方的にケリがついてしまった話題なのでしょうか?著名な金融機関に3億円ものアドバイザリー報酬契約を締結したうえでの「企業価値算定」なるものは、ひとりの政治家に一喝されただけでめげてしまうような「砂上の楼閣」程度のものなのでしょうか?(もちろん違いますよね?)「反社会的勢力」について語ることは、そんなにタブーなのでしょうか?合理的な根拠を示して日本郵政の立場を(ある程度)理解することはそんなにむずかしいことなのでしょうか?ダイヤモンドオンラインにおいて、慶応大学の先生が「こういった局面でこそ、ネットでの意見が民主主義を支えるべきなのに、そういった声が上がらないということは、やはりネットというものはゴミの山にしかすぎない」とおっしゃっておられましたが、(ちょっと悔しいですけど)まったく同感であります。こういったときにこそ、ご専門家の方々の賛否両論についていろいろとご意見をお聞きしたいと思うのでありますが、私の知る限りでは中央大学の野村先生、木村剛さん、貞子ちゃん、こばんざめさん、そして入札手続きの公正性の面からgo2cさんあたりが堂々と反論を述べておられますが、そういった意見がマスコミで採り上げられているケースはほとんどみられないのではないでしょうか。(私が情報に疎いだけなんでしょうかね・・・・・・・以下、本題です)
さて、個人的にはたいへん興味のあります内部統制関連の話題でありますが、2月12日付けにて、日本監査役協会より「第2回・財務報告に係る内部統制報告制度に関するインターネット・アンケート調査結果(速報)」がリリースされております。また、このアンケート結果をもとに、異例の緊急告知が出されておりまして、内部統制報告制度の下での期末監査のスケジュール(モデル)も併せて公表されました。(なお、内部統制報告制度の下での監査役監査報告書の記載の在り方についても、4月上旬ころに監査役協会よりなんらかのモデルが公表される見込みのようです)ちなみに緊急告知の中身は、①期末監査のスケジュール及び対応方法を早期に固める必要がある、②対応計画に遅れを来たさぬよう、円滑な進捗に努める必要がある、というものでして、このアンケート結果をもとに会員企業への緊急のコメントとして発信されております。
回答時期は平成20年12月中旬から本年1月中旬ころ、回答社数は約1500社(有効回答)で、そのうち東証1部、2部上場企業が70%(その他新興市場上場会社が30%)ということでして、上場企業の内部統制対応の進捗状況を知るうえでは、かなり信頼に足る調査結果ではないかと思われます。なお、3月末決算日の企業は全体の8割です。
興味深いのは(監査役としての立場だからかもしれませんが)「重要な欠陥の存在は極力避けなければならず、そのためには万全を期すが、決して無理な対応はせず、かりに期末に解消されない重要な欠陥が存在したら、適切に開示すればいい」と考えている監査役さんが全体の18%もいらっしゃることです。(ちなみに無理をしてでも重要な欠陥を解消すべき、が20%、いまの状況からすると重要な欠陥はない見込みというのが58%)また、取締役と監査役との間で「重要な欠陥」に関する評価についてほぼすべての企業で「認識に相違はない」とされているなかで、適用初年度においては「重要な欠陥が残る可能性が高い」「内部統制監査で意見不表明となることが相当程度懸念される」との回答が合計で8%程度存在するところにも注目です。しかも、この8%の中身は、いわゆる東証1部、2部上場企業のほうが、新興市場企業よりも圧倒的に数の上では多いといった事情にも留意する必要がありそうです。(まだ真剣に重要な欠陥が残るのかどうかを協議していない企業さんも多いのかもしれません)
たしかに問19-1(期末監査のスケジューリング)において、約半数の企業が「まだ期末監査に関するスケジューリングについては話をしていない」と回答されておりましたので、上記のような緊急コメントになったのかもしれませんが、ただ(3月決算の場合)第3四半期の決算報告会の席上でスケジューリングについての協議がなされたところも多いと思いますので、それほど対応が遅れている・・・というところも多くはないような気もいたします。
最近、「IFRS(国際会計基準で企業経営はこう変わる)」(東洋経済新報社 PwC Japan プロジェクト室 編著)を拝読いたしましたが、IFRS実務の前線にいらっしゃる方々も、アドプションに向けた取り組みの第一に「IFRSの原則主義」をとりあげておられますし、また原則主義のもたらす不正リスクについても言及されています。IFRSが導入されることで、「なぜそのような会計処理方針を採用したのか」といったあたりは各企業は詳細な説明が要求されるそうであります。こういった原則主義の適用や、公正価値会計重視の方針が、ますます企業における内部統制構築への要請を高めるものと思われますし、まさに内部統制報告制度が「原則主義の第一歩」として、企業に浸透していくことに期待をしております。
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