2005年7月26日 (火)

夢真HDの株式発行中止命令(続報)

7月25日の夢真リリースによりますと、新株発行差止仮処分とは別に(追加して、ということだろうと思いますが)取締役職務執行停止の仮処分命令を申し立てた、そうです。

私は最初から「こっちかな??」と推測しておりましたが自信がありませんでしたので、4日ほど前のエントリー題名にも「株式分割中止命令」と記しておりました。被保全権利が新株発行差止請求権ならば、以前の「発行差止仮処分」との関係もすっきりしていましたが、どうも(株主もしくは買付希望者による)「株式分割決議無効確認請求権」ということであれば、取締役による株式分割手続きの執行中止命令のほうがしっくりきます。おそらく裁判所から事前連絡があって、「補正もしくは追加申請されたらどうでしょうか」と打診があったのではないでしょうか。私はけっこう仮処分申立が好きなほうなんで、命令内容を自分なりに自由に創作して申立たりするんですが、あとから担当裁判官から連絡がはいって、修正要請に応じたりしますね。

さて、この取締役の職務執行停止命令ですが、こうなると私も俄然、司法判断の帰趨に注目します。といいますのも、このような取締役の職務執行停止命令がもし発動されるとしたら、その応用範囲というものが広がるからです。今後、敵対的買収事例において、社外取締役や社外監査役が防衛策発動の際に「取締役会」や「特別委員会」で活躍する場面が想定されておりますが、そういった委員会に、それまで何もしてこなかった「社外取締役」らの出席をとめたり、そのような役員が参加して決議された手続きを中止させる手段となりうるからです。私の予想では今後、防衛策発動場面における司法の関与はプロセス審査に限られるものと思いますので、そういった社外取締役、社外監査役が企業価値判断を行う場面において、その職務を止める手段がないか、と考えておりました。

この夢真の事例では、いったいどのような利害関係人が取締役の職務執行停止を求めることができるのか、また取締役会決議の効力をどのような事実認定方法で審査するのか、その判断手法が気になります。今後、司法判断をフォローしていくうえでたいへん興味のあるところです。

(追記 7月26日)

日本技術開発からの本日付けリリースによると、

分割株式の発行差止め仮処分とは別に(追加して)、取締役6名と会社そのものを債務者(相手方)として分割手続きの執行停止仮処分を(夢真側が)申し立てたそうです。

また、夢真は(今回も)株主としての立場で仮処分申立を行っている、とのことですから、被保全権利は商法272条の「6ヶ月前から株を保有している株主による取締役の違法行為差止請求権」と考えるのが確実ですね。無効な株式分割決議に基づく分割手続きは違法であるから、その職務執行を停止させる、というものでしょうか。ただそうなると「会社に回復すべからざる損害」というのは、いったい何でしょうかね?買収防衛策としての株式分割でしょうから、夢真側の「損害」というのはまだわかる気がするのですが、日本技術開発における株主の「回復困難な損害」というもののイメージがわきません。

7月 26, 2005 夢真、株式分割中止命令申立へ | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年7月22日 (金)

夢真HD、株式分割中止命令申立へ

夢真が、7月21日の夕方、東京地裁第8民事部(もう、おなじみの商事専門部です)に日本技術開発による株式分割に対して、その手続き差止の仮処分命令を申請した、とのことです。(夢真のWEBページに掲載されていた「申立の趣旨、申立理由骨子」だけの情報しかないので、またなにか勘違いがありましたら、お許しください。)

まず、仮処分命令申立ですから、夢真側に「被保全権利(仮処分命令によって、守られるべき夢真側の利益)」がないといけないわけですが、これは「株主による商法上の不公正発行に対する差止請求権」ということなんでしょうか、それとも「取締役会決議無効確認請求権」ということなんでしょうか。後日、取締役会決議無効確認の訴えを提起する予定である、と述べておられますから、おそらく無効確認請求のようなものかな、と考えておりますが、日経の記事には「不公正発行を禁じる商法の規定を類推適用して」などと書かれているので、なんとなく自信がありません。いずれにしましても、私は以前のエントリーで「110円に買付価格を下げて、どうして仮処分申立ができるんだろう、との疑問を記しておりましたが、申立側(債権者といいます)の工夫があるようです。

「保全の必要性」という点については、無効確認訴訟の判決を待っていては、夢真に救済困難な損害が発生するおそれがある、ということで損害拡大を防止するための緊急措置が認められるべきである、というものでしょう。

ともかく、本当に司法の場に持ち込まれてしまいましたね。また、ライブドア、ニレコに続く商事部裁判官による短期決戦の決定内容に関心が集まることになりそうです。

(「続き」の下のほうに、7月22日午後 追記 があります・・・・)

そもそも「株式分割などされては司法判断の道が閉ざされるのであり、きわめて遺憾」と述べていた夢真が、ひるがえって司法判断を求めるわけですから、苦渋の選択、という受け止められ方をされてもいたしかたないとは思うのですが、M&Aに強いとされる有名事務所が代理人としておつきになっておられるわけですから、準備は怠りなく申立に至ったということなんでしょうね。

また朝の新聞報道などで明らかになるとは思うのですが、この夢真の申立は「株主」という立場で主張しておられるのか、「TOBの適正な仕掛け人」という立場で主張しておられるのかいまひとつわかりません。株主という立場での構成であれば「新株発行差止」の類推適用ということも考えられますし、TOB仕掛け人という立場の構成であれば「商法、証券取引法違反の取締役会決議無効」という主張とも結びつきやすいように思います。

「後だしジャンケン」、つまり事前警告型ではない、という点からみて、夢真に有利かな・・・とは思うのですが、すこしだけ疑問点があります。

ひとつは夢真側の禁反言。どういう構成かは不明ですが、ともかくこの仮処分事件では、将来提起されるであろう、取締役会無効確認の訴えにおいて、夢真側にはいわゆる「確認の利益」が認められる必要があります。しかし、夢真は550円で買付希望を決めていたところ、日本技術開発の株式分割決議を聞いて110円としました。たとえ留保付であったとしても、いったん夢真側は日本技術開発の株式分割を認めているわけです。それも、ただ単に株式分割を認めるという意思表示を日本技術開発側にしたというものではなく、一般投資家に向かって「110円にします」と広く宣言してしまったわけです。当事者間での意思表示だけであれば「留保」というのも効いてくるかとは思いますが、広く(法律の素人である)株主に宣言してしまってから「株式分割は無効」というのは「分割は有効だけど不公正だ」というのとはちょっと意味が違うように思われます。そうすると、果たして今後夢真に取締役会決議の無効を確認する利益がないのでは・・・との疑問がすこしだけ湧いてきます。

つぎに「後から無効確認の判決を得る段階では、夢真に救済できない損害がある」との主張ですが、そのような損害というのはいったいどんなものなんでしょうか、という疑問です。今朝の読売新聞に出ていたように、証券取引法が「権利株式」についてのTOBが認められない(つまり、株式分割によって発行される分割後の株券については、現時点ではTOBで取得できない)ということが金融庁から通告され、買付条件の訂正要求でもされれば別ですが、おそらく私の考えでは株式分割は、いくら権利株式とはいっても現時点の株券が変容するだけのことですから、TOBの対象にはなる、と思われます。したがって、この点に関する金融庁からの訂正要求はないものと思いますが、そうであるなら株式分割の決議を撤回しないことを織り込み済みで「110円」に買付価格を変更した以上、予想困難な損害というのは発生しえないのではないでしょうか。いわゆる「嫌がらせ」による損害が発生するのであれば、それこそ無効確認の判決が出てからでも遅くはないのであって、仮処分を認めるに値する救済困難な損害とはいえません。夢真による「550円のTOB」をぜひとも続行させなければ夢真が救済されない「損害」とは果たしてなんなのか、そのあたりどういった説得力ある構成がなされているのか、非常に勉強をさせていただきたい論点であります。

(つづく・・・・・かな?)

(7月22日 午後 追記です)

今朝の日経で「金融庁TOB容認」という記事が掲載されおります。また同趣旨の伊藤金融担当大臣のコメントもあったようです。

買収撤回認める、分割後の株式も買付OK、いずれもすでにエントリーで書いていた予想がハズレなくてホッとしました。。。

(その2)でも書きましたが、そもそも買付条件引き下げと異なり、買収撤回は法律解釈ではなく、政令解釈ですから、金融庁の形式的審査権の範囲内であって、普段の証券会社からの問い合わせ回答と同じレベルだと思います。(ただ、そこに例示されている事由と今回の株式分割とは少し趣旨がちがうようには思われますが。)

権利株式のTOBを認めると、防衛策作りに波紋が生じる、との見出しがあり(今朝の日経)、またM&Aに詳しい弁護士さんもそのようにおっしゃっているそうですが、そんなことはないと予想します。今回の株式分割については、昨日このエントリーで書いたとおり、「現に存在している株券」が株主もしくは保管元に存在するわけですから、そこに将来受け取るべき株式も潜在的に表象されている(将来の5株分)と考えればよいわけで、またそう考えても取引に混乱を生じるおそれもありません。したがって、今回の株式分割に関する金融庁の見解をもって、「株券の発行が未了の場合でもTOBが(いつでも)いけますよ」と一般化するのは誤りだと思いますし、新株予約権などの売買については別問題(たとえば随伴性の有無など)もあるため、それほど今後の防衛策作りに波紋を呼ぶほどのものではないと予想しています。

7月 22, 2005 夢真、株式分割中止命令申立へ | | コメント (0) | トラックバック (0)