2005年7月25日 (月)

ワールド 株式非公開へ

日経の夕刊一面に「ワールド、株式非公開に 経営陣がMBO」なる記事が掲載されていました。東京、大阪の両証券取引所に上場しているワールドとしては経営が絶好調で、とりわけ当面の資金調達の必要性もないために「株式を上場している意味がない」として、受け皿会社を利用したTOBによる上場廃止の道を選択されるそうです。

株式の非公開化は「究極の敵対的買収への防衛策」と説明されておりますが、いまホットな話題である「M&A防衛策」と「内部統制」の行き着く先は、ゴーイングプライベートだと私は考えておりますので、今回のワールドの決断はどっちかというと「敵対的防衛策としての戦略」というよりも、ユニクロなどへの対抗策としての「スピード経営戦略」のほうが重視されているのではないか・・・と勝手に推測しています。

内部統制の目的というのは、経営の効率性向上やリスク管理というものが重要なカテゴリーでありますので、これだけ「敵対的M&A防衛策」やら「モノ言う株主の存在」やら、「上場企業の社外取締役導入の義務化」などが叫ばれますと、現経営陣の経営判断に自信のある企業にとっては、どうしても買収リスクや代表訴訟リスクなどは、企業の収益向上の妨げとなりますから、これらのリスク回避は検討に値しますし、また経営判断などに社外役員を導入すれば経営のスピードが下がる、ということであれば効率性を向上させるためには、そういった金融庁の指導を回避することも「経営の効率性」という内部統制の重要な目的に適う、という解釈も成り立ちます。理論的には、新会社法のもとでは非公開会社にすれば、大会社であっても取締役会さえ不要なわけです。したがいまして、公開企業にあっての「内部統制システムの究極化」は企業の非公開化といっても過言ではないと考えられます。(一般投資家という存在がないわけですから、「内部統制システムの構築義務」といったものがあるとしても、それは企業自身や企業債権者、消費者などのステークホルダー向けのものであればいいわけでして、法的義務といっても非常にスリム化されますよね)

もちろん、非公開化というだけでは、たんに「上場が廃止される」というだけですから、さらに有価証券報告書などの提出免除のための「継続開示義務の消滅化手続き」も必要となり、これがけっこうムズカシイものと思われますが、本当の意味のゴーイングプライベートは、この「非公開化」プラス「継続開示義務の中断」まで完了することでして、ここに至って初めて「究極の内部統制システム実現のための礎」が築かれることになると思われます。資金調達については子会社だけを公開すれば足りるでしょうし、また非公開化した企業の再公開化もそれほど困難とは言われていませんし。

結果の当否は将来の課題でしょうが、先日のユニクロ社長交代劇をみていて、あれだけ大きな企業であっても、大株主でありかつ経営責任者の存在する企業というものの経営判断の迅速性というものには本当に驚きました。今後、新会社法のもとでは、非公開企業であれば、株主総会の決定権限が限定されないことと、定款による機関権限分配の裁量が広く認められるわけですから、経営判断にスピードを要求される業種においてはかなり魅力的な選択です。企業防衛という視点からだけでなく、経営の効率性、内部統制に伴う費用負担の低減、企業のリスク管理という面からも、MBOの条件が整う場合には、非公開化の道を検討する公開企業はほかにも出てくるのように推測します。

(追記です)

ワールドから公開買付に関するリリースが出ています。

公開買付の賛同に関するお知らせ

現社長個人が100%出資する受け皿会社が全株取得を目指すそうです。受け皿会社が産活法の認可を受けているのでTOB終了後も現会社法のもとでも、現金対価での株式取得ができるようです。本来ならば残り株も公開買付によらなければならないところですが、50%を超える株式を取得している株主が、一社のみにて残り株を買い進める場合には、例外的措置として公開買付によらずとも相対取引にて株を取得することが可能ですので、そういったスキームを用いているものと思われます。また、株主が25名以下になるまで買い進めないと上場が廃止されても継続開示義務免除の効果が得られませんので、業務の効率化を進めるためにも現金対価での買取は必須でしょうね。

それと、このMBOには佐山さんの会社が動いていらっしゃるんですね。新しいファンドの手法になるのかもしれません。そういった意味でも注目しておく必要がありそうです。

(さらに追記です・・・)

今朝の日経の社長記者会見記事を読んでおりますと、どうも私のエントリーに欠落していた視点があったようです。単に企業情報開示義務の免除というものを、会社の経費負担軽減、と捉えておりましたが、「株主へ企業価値判断のために企業情報を開示してしまうと、大切な企業戦略が漏洩してしまうおそれが出てくるので、これを防止するため」という視点も重要なポイントのようです。なるほど、こういった企業戦略の考え方もあるんですね。

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