2006年10月 1日 (日)

カネボウ事件と内部統制構築論

(葉玉さんのブログ関連の追記あります)

昨日(金曜日)は、日本取締役協会の内部統制研究会で東京に出張しておりまして、新幹線の往復で新刊の「粉飾の論理」(高橋篤史著 東洋経済新報社 1800円)を読んでおりました。このブログにも一度登場していただきました江上剛さんの新刊『不当買収』とどっちにしようかと迷いましたけど、なんか表紙の雰囲気に魅かれて買っちゃった、という感じでした。。。今度は江上さんの新刊も、登場する金融機関の名前などからも現実の世界を連想しやすい小説でオモシロそうなんで、ぜひ購入したいと思います。(なお、研究会のほうは、武井一浩弁護士の講演だったんですが、そちらのほうの感想などはまた日を改めまして。あっそうそう、ブログでコメントをいただくME先生とも初めてお会いしましたね。)

39468 「粉飾決算はなぜ起こるのか?」と一言でテーマを掲げてしまいますと、新聞報道を要約したようなドキュメントタッチを連想するのですが、東洋経済の30代後半のこの高橋記者さんの執拗なほどの現場主義は、かなり私の琴線に触れるものがあります。とりわけカネボウ事件の粉飾発生の要因を、興洋染織側からスポットをあてて検証する様は、なかなか読み応え十分です。主にカネボウ事件とメディアリンクス事件に焦点を絞って、不正会計(粉飾)が発生する背景事情を非常に広く深く検証(現場の声を集めたり、現場の資料を検討するなどによる)されておりまして、企業コンプライアンスや内部統制などにご関心のある方にはご一読をお勧めします。ただ、カネボウの連結決算に関する説明などは、かなり詳細なチャート図が出てきますし、ときどき芸術的会計操作(著者の表現です)に関する説明なども、財務会計的知見をお持ちの皆様がたからすれば、すっと読めるところでも、私のような者には、その中身を理解するのに、何度も読み返したりしないと頭に入りませんので、「すっとばし読み」はかなり困難な書物だという感想です。( ̄▽ ̄);/

この本を読んであらためて感じますのは、粉飾決算が発生する経緯というのは、非常に複雑であって、机上で考案された処方箋などでは到底抗いきれるものではない、ということですね。伝統企業らしく、カネボウにも財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムは存在していたことがわかりますし、その運用も適正になされていたことも、この本を読んで理解できるところであります。(カネボウ社内部の中央信用管理委員会の存在など)それでも、粉飾決算は発生してしまうんですね。このカネボウの事例というのは、そもそも内部統制システムとは無関係なのか、それとも内部統制の限界論として位置づけるべきなのか、それとも内部統制のどこかに「重大な欠陥があった」と考えるべきなのか、財務報告の信頼性、という観点から、読者の方のご意見というのをお聞きしてみたいと思います。まあ金融商品取引法に、日本版SOX法が導入されるに至った原因として、一般にこのカネボウ事件の存在があるとされています(そもそも最初の「投資サービス法の構想」段階では、内部統制報告実務というのは、どこにもなかったはず・・・)ので、「内部統制構築とは無関係」とは、なかなか考えにくいのかもしれませんが、粉飾決算を未然に防ぐことが本当に経営管理体制をいじることだけで可能なものかどうか、ちょっとこの本を読みますと自信を喪失してしまいそうな気もいたします。また、上場企業であれば、どこの企業でも、こういった深みにはまっていく要因はおそらく抱えていることが理解できるのではないでしょうか。

私が偉そうに言えるものでもありませんが、もしこういったカネボウ型の粉飾決算を予防することができるとするならば、①取締役・監査役等役員間の情報の管理、伝達に関する明確な規約の存在とその運用、②独立性の高い社外役員の登用、③上司から無理を言われたときの逃げ場としての「外部通報制度」(内部通報であれば、おそらく無理やと思います。少なくとも中立第三者的な方がおられる窓口が必要)、④そしてなによりも経営トップの姿勢に尽きるものと思います。

あっそれから、「運」もありますよね。カネボウ事件で逮捕された2名の方々は、どこでもやってることじゃないか・・・といった気持を最後まで持っていたんじゃないでしょうか。ロレアルが、そして花王が、もし化粧品事業をつつがなく買収していたとしたら・・・・・、お二人の人生は天地ほどの差であったに違いありません。それと「嗅覚」も必要かもしれません。しょせん、粉飾とは「どこからが粉飾で、どこまでがセーフなのか」明確な線引きはできないでしょうし、その線引きも時代によって変わるものでしょうから、「これは危ない・・・」といった独特のセンス(嗅覚)のようなものも、ブレーキをかけることができる立場の人に具備されているかどうか、そのあたりも重要なことではないかと考えたりしております。

(追記)9月30日付けで、葉玉匡美検事さんが「会社法であそぼ」のブログから引退されました。東京地検特捜部に異動される、とのこと。neon98さんのときもそうでしたが、いつも閲覧させていただいていた方が、ブログ界から引退されるというのは、非常にさびしいものですね。(ブログをライブドアからココログに移転された時点で、すでに決定されていたんでしょうね。)短い間でしたが、会社法施行日前後にわたる激動の時期に、その交通整理をされた功労に感謝いたします。また、「会社法であそぼ」を引継がれるサミーさんには、どうかサミーさんなりの色を出して、立案担当者としてのご意見を積極的に配信していただくことを期待しております。(なお、さっそくこのブログリストも、サミーさんのブログに訂正させていただきました。)葉玉さん、本当にお疲れさまでした。今後はよりいっそう「日本のため」に頑張ってください。

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2005年7月31日 (日)

カネボウの粉飾決算と監査役

旧経営陣3名の逮捕や、監査法人への強制捜査など、カネボウの粉飾決算に関する記事が大きく取り上げられています。

いろいろと新聞記事を読んでいて、連結決算から赤字子会社をはずしたり、買戻し条件で取引先に押し付け販売をしたり、激安カネボウ商品を撤収するための架空費用を還流させたりと、さまざまな債務圧縮、裏金工作がなされており、1998年から2000年ころにかけて、こういった異常取引について外部監査人が重点的に監査をできなかったのか、疑問を抱いてしまいます。ただ、全体の数字からみて、こういった異常が発見されたとしても、その金額が小さい場合には財務諸表に及ぼす影響は少ないわけですから精査する必要はなかったのかもしれませんし、使途がわからない金銭がみつかったとしても、その金銭に対価性があって、なんらかの費用性が認められてしまえば、財務諸表の信頼性は損なわれないわけですから、やはり財務の信頼性には問題はなかったと言えるのかもしれませんし、このあたりの会計監査人の責任(期待ギャップ)については、専門家の方々の忌憚のない反論というかご意見をお聞きしてみたいものです。1998年といえば、まだ7年ほど前のことではありますが、この7年で会計監査に関する考え方は大きく変わってきているでしょうし、「1998年」という時代の水準で判断する必要はあると思います。

カネボウでは「取締役会もほとんど機能していなかった」と報道されています。事実上、トップ3名ほどで重要な案件が処理されていたということで、取締役会は名目化していた、とのこと。もちろん、このような名目化は現在でも上場企業にみられるところだと思いますが、こういった場合、果たして監査役会は機能していなかったのでしょうか。

私が社外監査役を務める会社では、この7月、常勤の方含め監査役3名によって、臨時取締役会を招集してもらい、内部監査人出席のもと、代表者以下「取締役会自体の内部統制システム」を検討してもらうことを要望しました。ここ一年での取締役会上程事項に遺漏がないか、本来取締役会でどこまで審議をはかるべきか、審議をはかるべきものを専務会で決めてしまっていないか、そういった問題点を取締役会で審議してもらうことが目的でした。

私自身、取締役会に上程すべき問題について明確な基準を設けることや、上程問題について、実質的な審議が可能となるように問題を整理して上程すること、過度に専務会で結論を出さないことなど、意見を述べさせてもらい、今後の取締役会の意思形成プロセスを公明正大に記録することを納得していただきました。もちろん、当社の代表者は理論家肌の方なので、監査役の意見に対してはかなり強く反論をされました。こちらも具体例を挙げてひとつひとつ説明をして、6割程度の要望については具体化を約束されました。

監査役から臨時役員会の要望があるなど、社長にとっては気の進まない話かもしれません。しかし、各プロジェクト本部長を兼務する取締役の方々と代表者や専務との関係を考慮するならば、こういったシステム監視は監査役しかできない企業も多いと思いますし、カネボウあたりであっても、こういった取締役会の形骸化について、なぜ是正するような行動にでなかったのであろうか、と疑問を抱いてしまいます。もちろん、取締役会が十分機能していれば粉飾を防止できたとまで言うつもりはありません。ただ、内部統制システムの限界として「社内ぐるみの犯罪には無力である」ということが言われます。内部統制が人間の牽制システムに依存するものである以上は、重要な財務情報を取締役会でもっと共有できていれば、たとえイエスマンが多い役員会であったとしても、おそらく牽制機能はもっと働いたのではないか、と推測されます。

西武鉄道、コクドの場合には、やはり社外監査役がキーマンとなりました。一般の不正発見とちがい、トップの絡む不正については今後も監査役が大きな役割をもち続けると思いますし、その企業のコンプライアンスを支えるのは監査役制度の有効性だと再認識した次第です。

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