2015年4月27日 (月)

東洋ゴム免震不正事件-空白の3か月に何が起きたのか?

東洋ゴムさんの免震不正事件について、24日に外部調査委員会中間報告要旨が公表されました。25日の読売新聞朝刊(10面)に私のコメントも出ましたが、このコメントは3月の取材の際に述べたものです。報告要旨を読みますと、コメントで述べていたことが当たっていたようでして、部下から経営幹部に対しては「東日本大震災でもなんら問題なかった」「影響は軽微であり限定的」「計算方法を変えれば許容範囲に収まり、補正可能」といった社内報告が上げられていたそうです。

企業不祥事対応を支援する弁護士からすれば、このような報告内容になるのは(有事としては)当然だと思いますし、なにも東洋ゴムさん固有の大問題ではありません。社員のみなさんは、自分や自分の家族が大切です。自分が責任をとらされるような問題が発生したときに、上司に対して「これはたいしたことではありません。私の責任でなんとか対処しますから心配しないでください」と報告したくなります。よく情報共有のための報告体制の重要性が指摘されますが、いくら報告体制を整備しても、上司のほうが受け身のままでは「現場で起きていること」が正確に報告されることはほぼ不可能です。

研修を何度も行い「ステークホルダーの生命や身体の安全を第一に考えよ」と言われても、社員は本当にそのとおり動けるでしょうか。みなさん技術に詳しい方なので、たとえ国の基準を逸脱したからといっても建物の安全性が直ちになくなってしまうわけではないと理解しているわけです。したがって「ばれないのであればこのまま隠ぺいしてもよいのでは」といった楽観的なバイアスにとりつかれてしまうかもしれません。不祥事は起こしてはいけない、といった気持ちが強い組織であればあるほど、報告を聞くほうも、報告をするほうもこのバイアスにとりつかれます。

ただ、そのようなバイアスに関係者がとりつかれていたとしても、社外的に許容されるわけではありません。ここからは企業不祥事のなかで、回避可能であるからこそもっともやってはいけない「二次不祥事」の問題となります。不祥事が、いわゆる「組織ぐるみ」「経営者関与」と社会的に評価されてしまうかどうか、という問題です。報告書要旨では、昨年9月に法律事務所の相談し、その結果として国交省への報告を準備します。しかし、他の計算方法で補正することができるという社内報告により、いったんは報告することを撤回し、出荷を継続します。その後、10月末には結局のところ既に設置済の免震ゴムの測定値補正は困難という結論に至ったようです。

ところで、この「補正は困難」と経営幹部が知った10月末から、再度別の法律事務所に相談して国交省への報告を決めた(腹をくくった)2月までの3か月間、いったい東洋ゴムの上層部では何が起きていたのでしょうか。わかっているのはこの3か月の間に社長交代があったことと、1月30日に確定的にデータの補正が困難との報告が上層部にされたことです。しかし、少なくとも10月末には(上層部において)有事に至っていたことは想像に難くないところなので、なぜ別の法律事務所に相談するまで出荷を停止せず3か月も経過していたのか、そのあたりが報告書要旨を読んでも明らかにはなりません。かりに1月末までデータ補正の可能性があるとの認識を持っていたとしても、国交省への報告を止めておくことの理由にはなっても出荷を継続する理由にはならないように思えます。

免震ゴムには構造的に2種類ありますが、いずれにおいてもゴムの成分配合は非常に微妙なものです。また、建物ごとのオーダーメイドなので、たとえ大手のブリヂストンさんの緊急支援を仰ぐとしても、今後の交換作業には多大な時間を要します。したがいまして、まずは国民の生命の安全確保のための作業が第一の優先事項ではありますが、やはり東洋ゴムさんの組織としての構造的な問題を探るためには、どうしてもこの「空白の3か月」については知りたいところです。東洋ゴムさんが「自浄能力を発揮した」と社会的な評価を受けるためにも、また今後の自律的な修復対応への社会的信頼向上のためにも、このあたりが明らかにされるべきではないかと。

25日の読売新聞が報じるところでは、この外部調査委員会報告については会社側が一部納得できない意向を表明されていますし、また国交省が設置した第三者委員会の調査も今後は始まりますので、まだまだ事実関係が明らかになる部分も多いと思われます。売上3500億のうち、わずか7億円の売上にすぎない部門での不正、しかも子会社の課長クラスの偽装問題が、なぜグローバル企業を揺るがす事態に発展してしまったのか、私は個々の役職員の責任よりも、どこの企業でも発生しかねない構造的欠陥に光をあてながら検証されることを望みます。

4月 27, 2015 コンプライアンス委員会からの提案 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2014年8月22日 (金)

木曽路・メニュー偽装事件-安全よりも安心を提供すべし

私もよく法事で利用させていただいている外食「木曽路」さんですが(すき焼き美味しいですよね)、松阪牛、佐賀牛と称して別の国産和牛を提供していたということが発覚。ご承知のとおり、8月15日には謝罪会見が行われたそうです。 東洋経済ニュースが記者会見の様子を詳しく報じています。20日には同社の社長さんは松阪市の市長さんのところへ出向いて謝罪をされ、「ブランドを守り、食の安全の向上に努めてこられた農家の方に申し訳ない」と述べられたそうです。

新聞報道などから、料理長主導でメニュー偽装を画策していた、とされていますが、偽装が認められた各店舗の店長は関与を否定しているとのこと。しかし原価率を下げて利益を伸ばすためにやったとすると、なぜ店長ではなく料理長なのだろう・・・、と素朴な疑問が湧きます。そのあたり、やはり記者会見でも記者の質問が飛んだようで、上記記者会見のニュースによると、会社側は「とくに料理長からは動機は聞いていない」として「原価率という予算を守ることも料理長の責任だった」と述べておられます。しかし動機もきちんと判明せず、そもそも牛肉のブランドを偽るという行動は、むしろ料理長のプライドとは相反する行動だと思われるので、ますます疑惑が深まっているように思います。店舗の最高責任者である店長が、購買についてまったく関与していないとは考えられません。

木曽路さんとしては、今後第三者委員会の設置も検討しているそうですが、今後設置される第三者委員会には以下の点をぜひ明らかにしていただきたいと思います。ここでシロだとすれば、組織ぐるみや不正隠しという二次不祥事はなかったとして、とりあえず消費者も「安心」できるのではないでしょうか。

まず店長関与の点です。118店舗のなかの3店舗だけで偽装が行われていたとなると、おそらく組織関与の可能性は薄いと思います。そこで、むしろ店長レベルでの関与が疑われるわけですが、神戸ハーバーランド店の店長、北新地店の店長、そして刈谷店の店長それぞれの「つながり」はないのでしょうか?たとえば神戸店の店長が、それ以前に北新地や刈谷の店長だった、刈谷店の店長が北新地や神戸の店長と引継ぎを行っていた、といった事実です。記者会見では、牛肉のトレーサビリティを熱心に調査していたとありますが、この3店舗の店長のトレーサビリティこそ明らかにすべきです。そこになんらかの「つながり」が認められる場合には、店長がメニュー偽装に関与していた可能性はかなり強くなるはずです。

以前、私が第三者委員会委員として関与した性能偽装事件のケースでは、こういった特定の支店長が不正に関与したことが判明し、支店長と取引先との不透明な金銭の受渡しが明らかになったケースがありました。

そしてもうひとつ。今回のメニュー偽装は、大阪市消費者センターの二度にわたる抜き打ち調査が発端となって判明したそうですが、これは船場吉兆事件とまったく同じパターンです。つまり内部告発による可能性があります。船場吉兆事件では、最初に従業員の方が内部通報をしたのですが、会社側が何も対応されなかったので、福岡市の保健局に告発したことが発端でした。今回も、従業員の方が大阪市消費者センターに告発した可能性がありますが、はたして(抜き打ち調査よりも以前に)社内に内部通報はあったのでしょうか。それともまったく寝耳に水の抜き打ち調査だったのでしょうか。これも牛肉の安全というよりも、牛肉を提供する外食産業の「安心」にかかわる調査であり、ぜひとも第三者委員会によって明らかにしていただきたい点です。

メニュー偽装発覚後の広報対応のまずさも指摘されていますが、これはまた危機広報について連載中の雑誌「広報会議」のほうで私見を述べたいと思います(記者会見での発言について、あえて申し上げるならば、質問への回答者がコロコロ変わること、「偽装はしたが、提供した牛肉は悪くない」と釈明することは、気持ちは理解できるのですが、かなりマズイと思います。こういった発言は、監督責任のある行政を本気にさせてしまいます)。外食産業の企業不祥事は、ともかく自浄能力があるところを消費者に示し、「安心」を提供することが危機対応の重要なポイントです。たとえば上記のような点を自ら調査し、二次不祥事にまで及んだものではない、ということを世間に示したうえで、最終的な社内処分、再発防止策の公表に及ぶべきだと考えるところです。

8月 22, 2014 コンプライアンス委員会からの提案 | | コメント (7) | トラックバック (0)

2007年11月29日 (木)

GODIVA(ゴディバ)のアマい危機管理

(29日午後 追記あり)

本日報道されましたコンプライアンス関連のニュースでは日本板硝子社、旭硝子社の欧州カルテル事例がもっとも重大なものであることは承知しておりますが、私的にはGODIVA(ゴディバ)社の「線上金属片混入事件」に関する報道がとても気になった次第であります。(しかし、クリスマス商戦スタート直後のこのニュースは、企業収益としてみると大きなものですね)

それほど大きく採り上げられてはおりませんが、中日新聞ニュース読売新聞ニュースを総合して把握される事実によると、当該商品は11月16日に発売され、異物混入キャラメルは11月26日に社内の試食により「1個目」が判明、その後の社内調査で11月21日に宮崎市内の取扱店で販売されたものが、22日に異物混入の届出があった(2個目)ことが判明した、というものであります。現物はゴディバジャパン社のHPでご覧になれますが、こういった小さなキャラメルに15ミリのコイル状の針金片が含まれていたわけですから、これはかなり「ヤバイ」状態だったわけで、宮崎市内の取扱店が、この22日の届出を本社に連絡もせずに放置していたとなりますと、これはちょっと信じられないお話であります。(少なくとも、私の常識ではちょっと考えられない事態であります・・・)仮にこれが真実だとしますと、合計6万個以上もすでに販売されているわけですから、まだ全国において「届出はあったけれども本部が把握していない異物混入キャラメル」が存在する可能性を推認させるものでありまして、さらにそのままお客様の手元に存在するものもあるんじゃないでしょうか。

食品不正表示のように、行政法規違反の事実には該当しませんので、行政による立ち入り調査が開始されるわけでもなく、そのためにマスコミには詳細な情報が入らないと思いますので、このゴディバの件につきましては、今後大きな問題に発展する見込みは乏しいと思われます。ただ、ゴディバ社のHPに掲載されているお詫びとお知らせ に関する文書は、①トップページで小さく紹介されているだけであり、②文書内容も、当該商品を購入された方について返品を依頼するだけであり、どうもナットクできないように思えます。先に述べましたとおり、16日から発売されて、公表まですでに10日以上が経過しており、異物混入キャラメルの存在がある程度推認される状況にありますので、こういった場合の危機管理としましては、まずもってお客さまの生命身体の安全に向けられるべきではないでしょうか?まずHPのトップページにて、「この商品が手元にございましたら、お召し上がりになることをお控えください」と表示して、「お詫び」ページで、健康被害への対応と同時に商品回収のお願いを記載すべきだと思います。(しかも商品お問い合わせは、平日の9時半から夕方6時までって?? (^^;;)

もちろん健康被害がないことが一番の願いではありますが、健康被害への配慮をまったくされていない、このゴディバ社の対応では、かなり不誠実なものと受け止められる可能性があり、先の22日の届出放置の件を合わせ考えましても、ブランド商品販売企業としての「ブランド」そのものへの影響などが心配されるように思います。異物混入自体は日本企業のミスではないとしても、その事後対応を誤ることだけは回避すべきではないでしょうか。

(29日午後追記)11月17日に「適時開示は誰のためにあるのか?」のエントリーにて、オートバックスセブン社の転換社債型新株予約権付社債の発行中止にかかる開示上の問題点について詳しく記載いたしましたが、やはり28日、東証より再度の改善報告書提出を求められているようです。(といいますか、改善報告書を提出した当日に、内容が不十分として再度の提出を求められたそうです)この点は、今後の開示実務において参考となる書面がリリースされるかもしれませんので、備忘録としてとどめておきます。

それともうひとつ追記ですが、崎陽軒さんのシューマイにつきまして、誤表示により回収措置をとったようですが、一般市民の感覚としては「とくに製品の中身に問題がなさそうだし、もったいないのでは・・・」との声が多く聞かれます。私も同感ですが、違法状態の改善のためには、法令に基づいて廃棄処分をとる必要があるということでしょうか、それとも後日の処分のためにすこしでも情状を良くしておきたい、といった会社側の判断に基づくものなのでしょうか。ちょっと仕事中ですので、こちらも備忘録程度にて失礼します。

11月 29, 2007 コンプライアンス委員会からの提案 | | コメント (1) | トラックバック (1)

2005年8月 3日 (水)

コンプライアンス委員会からの提案

昨年より、ある企業の不祥事をきっかけとして、コンプライアンス委員に就任をしておりましたが、その委員会での「改善提案」というものを提出いたしました。もちろん、いままでは原因調査や再発防止策という、その不祥事特有の問題だけを取り扱っていたのですが、今回は将来展望ということで、「トップへの委員会からの要請」というものでした。

私の提案は性善説と性悪説の折衷案です。性善説は「社員は変わることができる」をモットーとして社長からのコミットメント中心のもの。「この会社は社員に敗者復活戦を保証する。もし、あなたが会社を愛するあまり、会社に傷をつけてはいけない、仲間に迷惑をかけてはいけない、関係取引先に迷惑をかけてはいけない、という気持ちが先立ってしまい、その行動が社会に迷惑をかける事態になりそうだったら、立ち止まってください。あなたが立ち止まることを会社は評価するし、それで迷惑をかける人が出たとしても、会社はあなたの今後の努力を正当に評価することを約束します。たとえば具体例をあげると・・・・・・」

もうひとつは性悪説に基づくもの。会社トップと業界団体とのつきあいに関するものでして、「業界団体の恒例行事はトップだけでなく、社員も同行させること、業界団体行事予定については、たとえ私的な会合であっても事前に○○総務部長に申出ておくこと、業界団体が、オブザーバーとしての社員同行を認めるよう働きかけること」

いままで社長以下、役員の方にはたいへんよくしていただきましたが、上記提案が受け入れられなければ、コンプライアンス委員は辞任する旨、申し上げました。もちろん、委員会は存続しますので、個人的なものではありますが。妥協案であれば、またそのとき、進退については検討する、ということで慰留要請は受けましたが・・・

せっかく不祥事をきっかけに、社内の雰囲気を一新しようということで始まった委員会ですから、業界のリーダー的役割も果たしてほしい、というのが願いです。こういった委員は、社員さんとは違って、「トップに解任されたり、辞任してナンボ」の世界だと思っています。もちろん外部の人間ですから、企業や業界団体の実情を知ろうとする最大の努力を果たしたうえでのことですが。あとは私を、その企業に紹介していただいた方の顔が立つような形だけを工夫するだけです。

8月 3, 2005 コンプライアンス委員会からの提案 | | コメント (2) | トラックバック (0)