2005年8月22日 (月)

企業不祥事と犯罪環境学

「犯罪」を考える学問として、私が司法試験を受験していました20年ほど前は、「刑事政策」というものが盛んでありまして、司法試験の科目のひとつとなっておりました。ドイツの学術研究が基本となっていたそうですが、最近は「犯罪社会学」(犯罪環境学)というものが犯罪自体の予防や犯罪者自体の研究を行う学問として盛んになっているようです。(これは英米で発達した学問だそうです)

こういった犯罪環境学もしくは犯罪社会学というものについては、私はまったく知識を有しておりませんが、最近光文社新書から出版されました 小宮信夫教授「犯罪は『この場所』で起こる」はたいへん読みやすく、興味深い本でした。人が犯罪に走りたくなる環境、人が犯罪をあきらめる環境というものが、物的環境面においても人的環境面においても存在する、という仮説を立てて、その真実性を検証していくものです。「割れ窓理論」というのも、言葉としては聞いたことがあったのですが、その実際の研究や実務応用などを把握したのは今回が初めてです。一枚の窓が割れて放置されている建物は、誰かによって全部の窓が割られてしまう、というのは、道路沿いのごみ放置などにもみられる行為だと思います。

犯罪を犯した人間自体にスポットを当てて、どうすれば再犯を防止できるか、という議論は抽象論で終わってしまうことが多いのですが、この犯罪環境学という問題は、対策が非常に具体的ですし、環境作りのために地域住民がどのような日常行動をとればよいのか、きわめて明解な試論が出されています。企業不祥事防止、とりわけ業務上の不祥事と財務上の不正との関係においても、この犯罪環境学は応用できる、と予想して、この本を読んでみようと思いました。私の破産管財人業務の経験などから、業務上の不祥事が発生しやすい環境をそのまま放置しておくことが、企業の不正支出や金銭横領などの財務不祥事問題に発展する土壌となっているケースが多いと感じたからです。「この仕事仲間の人達と、この部署でともに働いているかぎり」悪いことはできない、と社員が認識できる環境作り、こういった問題というのが、この本を読むまでは私自身、かなり「後ろ向きの暗いテーマだと思っていましたが、これが結構明るい協働作業によって作ることが可能であることが理解できて、非常に参考になりました。(まあ、その効果のほどは、これから先長い年月にわたって検証作業を続けていく必要はありそうですが)効果について頭で考えて懐疑的になるだけでなく、ともかく企業全体で環境作りを実践して、コンプライアンス経営の試みとすることも必要だと思いますね。

750円程度の新書版ですし、写真や図表などもふんだんに使われている、読みやすい書物ですので、興味をお持ちの方にはおすすめの一冊です。

8月 22, 2005 企業不祥事と犯罪社会学 | | コメント (2) | トラックバック (0)