2018年7月23日 (月)

続く法人の刑事処罰事例-最後は検察の気合ではないか?

先週は(新聞やニュース等で)木曜日に神戸製鋼さんの法人としての起訴が報じられ、翌日には初適用(とされている)MHPSさんの日本版司法取引(法人は不起訴)が報じられました。私も何社か新聞記者さんから取材を受け、コメントも東京新聞朝刊に掲載されましたが、有識者とされる方々が多くのコメントを出しておられましたね。それぞれの分析を拝読し「なるほど、こういった視点もあるのか」と感心いたしました。

法人の刑事立件は企業、とりわけ日本を代表する大企業にとっては社会的評価に大きく関わりますので、なぜ起訴されたのか、なぜ起訴を免れたのか、他社からすれば予測可能性を高めるためにもできるだけ理屈で理解したいところかと思います。

でも刑事立件の予測については理屈では割り切れないこともあるのではないでしょうか。検察のトップがいよいよ今週交代するわけですから(しかも日本版司法取引の立案責任者の方ですから)、組織一丸となって勇退を飾ろう・・・という「気合」が一番大きかったのではないでしょうか。新聞報道にあるように、本件は検察側から提案があったそうですし。

もちろん司法に関わることなので論理や理屈が大切であることはわかります。しかし、当ブログでも何度か取り上げた東芝の元経営トップの立件に関する金融庁(証券取引等監視委員会)と検察庁とのバトルなどをみましても、刑事立件には「気合」がつきものです。組織をひとつにまとめ上げるために理屈や論理、予見可能性、あるいは海外圧力といったことだけでは割り切れないもので制度が運用されることも十分ありうるかな・・・と思います。

さて、MHPSさんの件は、元取締役の方も起訴されたわけですから、今後どんな展開になるのか、まだまだ注目しておきたいと思います。いずれにしても、神戸製鋼さんの件も、MHPSさんの司法取引の件も、企業コンプライアンスの視点から一般予防的な効果を示すには十分だったわけですが、企業としては過度に委縮することなく、トライアル&エラー、「走りながら考えるコンプライアンス」を心掛ける必要があると思います。

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2005年8月22日 (月)

企業不祥事と犯罪環境学

「犯罪」を考える学問として、私が司法試験を受験していました20年ほど前は、「刑事政策」というものが盛んでありまして、司法試験の科目のひとつとなっておりました。ドイツの学術研究が基本となっていたそうですが、最近は「犯罪社会学」(犯罪環境学)というものが犯罪自体の予防や犯罪者自体の研究を行う学問として盛んになっているようです。(これは英米で発達した学問だそうです)

こういった犯罪環境学もしくは犯罪社会学というものについては、私はまったく知識を有しておりませんが、最近光文社新書から出版されました 小宮信夫教授「犯罪は『この場所』で起こる」はたいへん読みやすく、興味深い本でした。人が犯罪に走りたくなる環境、人が犯罪をあきらめる環境というものが、物的環境面においても人的環境面においても存在する、という仮説を立てて、その真実性を検証していくものです。「割れ窓理論」というのも、言葉としては聞いたことがあったのですが、その実際の研究や実務応用などを把握したのは今回が初めてです。一枚の窓が割れて放置されている建物は、誰かによって全部の窓が割られてしまう、というのは、道路沿いのごみ放置などにもみられる行為だと思います。

犯罪を犯した人間自体にスポットを当てて、どうすれば再犯を防止できるか、という議論は抽象論で終わってしまうことが多いのですが、この犯罪環境学という問題は、対策が非常に具体的ですし、環境作りのために地域住民がどのような日常行動をとればよいのか、きわめて明解な試論が出されています。企業不祥事防止、とりわけ業務上の不祥事と財務上の不正との関係においても、この犯罪環境学は応用できる、と予想して、この本を読んでみようと思いました。私の破産管財人業務の経験などから、業務上の不祥事が発生しやすい環境をそのまま放置しておくことが、企業の不正支出や金銭横領などの財務不祥事問題に発展する土壌となっているケースが多いと感じたからです。「この仕事仲間の人達と、この部署でともに働いているかぎり」悪いことはできない、と社員が認識できる環境作り、こういった問題というのが、この本を読むまでは私自身、かなり「後ろ向きの暗いテーマだと思っていましたが、これが結構明るい協働作業によって作ることが可能であることが理解できて、非常に参考になりました。(まあ、その効果のほどは、これから先長い年月にわたって検証作業を続けていく必要はありそうですが)効果について頭で考えて懐疑的になるだけでなく、ともかく企業全体で環境作りを実践して、コンプライアンス経営の試みとすることも必要だと思いますね。

750円程度の新書版ですし、写真や図表などもふんだんに使われている、読みやすい書物ですので、興味をお持ちの方にはおすすめの一冊です。

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