消費者庁・公益通報者保護法の改正審議はいよいよワーキングチームへ
3月23日の日経朝刊(社会面)でも大きく取り上げられましたが、消費者庁の公益通報者保護制度の実効性検討委員会は、22日に第1次報告書最終案をとりまとめました(TBSニュースでは、私は一番手前に映っています。まだ消費者庁HPでは最終案がアップされていないようです)。報告書では他省庁が所管する事業に関わる不正等事実について、消費者庁に通報窓口を設置することや調査権も付与すること、自ら関与した不正について通報した場合に減免を受けられるような、いわゆる社内リニエンシー制度を策定すること等を提言することが盛り込まれました(企業コンプライアンスとの関連で詳しく報じているのは こちらの朝日新聞ニュースです)。
また、今回の検討委員会における最大の課題(最大の目標?)である「公益通報者保護法の改正」については、改正の必要性は提言されましたが、さらなる検討が必要とのことで、舞台は有識者検討会から法改正検討チームに移ることになりました。詳細はまた消費者庁でリリースされた後に述べますが、会社法や刑法、労働法に詳しい学者の方々も委員に名を連ねる方向で検討されているようです(通報者に不利益取扱いを行った企業に対して行政措置を発動することだけでなく、刑事罰を課すということも検討課題となっています)。
これは私の個人的な意見ですが、10年ぶりの公益通報者保護法改正が実現するための課題としては、①法改正が必要であることを裏付ける立法事実が存在すること(これは多くの企業不祥事が内部通報や内部告発によって発覚している事実や、現実に通報者が不利益な取扱を受けている事実から明らかではないかと思います)、②既存の法制度(民法、民事訴訟法、要件事実論、刑法、会社法、労働法等)と改正法案との整合性をしっかり見極めることです(消費者庁がどんなに頑張っても、内閣府や国会審議で却下されては「苦労も水の泡」です)。しかし、法改正に向けて最も重要なことは、国益通報者保護法の改正が、単に通報者の地位保全や企業のコンプライアンス経営に資するだけでなく、消費者の生命、身体、財産の安全確保にとって不可欠なものであることが広く理解されることだと思います。国民からの支援がなければ、最後の高いハードルはなかなか越えることはできないのではないか・・・と(別に弱気で申し上げているわけではないですが)感じています。
とりあえず検討委員会は予定されていた全10回の会合を終えましたが、今後の審議状況等に動きがありましたらご報告させていただきます。消費者庁アドバイザー、同検討委員会委員として、約2年間法改正に向けた作業に携わってきましたが、既存の法律を改正することがいかに難しいかということを痛切に感じております。4月1日には改正景表法が施行され、課徴金制度がいよいよ動き出します。そこでは企業の内部統制システムの整備が強く要請されることになりますが(たとえ課徴金事案を生じさせても、企業が相応の内部統制を構築していれば免責される等)、このたびの公益通報者保護法の改正審議においても、企業の自助努力がリスク回避に結び付くような方向でまとまるよう尽力したいと思います(ワーキングチームの一員として・・・たぶん)。
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