日本版SOX法の衝撃(その2)
営業秘密関連事件(営業行為禁止等仮処分事件)の和解交渉が大詰めに入ってしまいまして、ちょっと力を入れてエントリーを書く時間がありませんので、小ネタで失礼します。
2月22日に野村総研よりおもしろいアンケート結果が出ております。(日本版SOX法に関するアンケート調査結果 上場380より回答を集計)2005年12月の時点で、約3割以上の上場企業が、金融庁の発表している内部統制のあり方に関するとりまとめ案(財務報告の信頼性確保に関する)を見たことがない・・・というのが意外でした。また、ちょっと残念なのは、日本版SOX法への取り組みについての意識として、できればお金をかけずに必要最小限度で行いたい、という回答と、他社と同程度で取り組みたいといった回答を合計しますと、全体の85%に及びます。この結果は、日本版SOX法というものが、「なんだか内部統制というものの内容はよくわからないけれども、必要だと言われれば対応するしかないでしょう」といった、非常に受身的なイメージしか抱かれていない風潮が根強いことを物語っているのでしょうね。野村総研が解説しているとおり、アメリカ企業は企業改革法下におきまして、「リスクの洗い出し」「対応負担の軽減のためのリスクの重要性判断」など、非常に内部統制システムを積極的に活用している対応のようでして、その結果は対照的なようです。
最近も、会社法の施行が迫ってきたこともあり、内部統制構築に関する研究会や講演などが普及しているようですが、日本版SOX法を検討する際に、アメリカの本家SOX法302条、404条の直輸入版が妥当かどうか、今一度検討する必要がありそうです。PwCで実際にSOX法の社内運用、評価実務に携わっている方のお話をお聞きしましたが、どうも日本企業とアメリカ企業の「事務担当部署」の考え方に微妙な違いがあるように感じました。私はアメリカ留学などの経験がないものですから、たんなる推測にしかすぎませんが、あちらの事務担当部署には営業と同様に利益取得のノルマのようなものが見受けられ、総務法務などの部署においても一定の「目に見える」カタチ、としての成果が期待される、ということのようです。「私はこの事務によって○○円の年間利益(政府補助金)をもたらしました」「私は○○人の社員の不正を見抜きました」などなど。日本の企業では、特別○○人の不正を見抜き、○○人の懲戒処分へ貢献した、といった評価はあまり聞いたことがないのですが。事務方の意識レベルにもし差があるならば、こういった内部統制システムの運用や構築といった場面におきましても、その費用負担の意識や、運用評価の積極性などにも大きな差異が出てくるのではないでしょうか。また、日本の企業には、アメリカの企業にはない監査役という制度があります。委員会設置会社は少なく、上場企業の大部分が監査役会設置会社です。第三者による監視がコーポレートガバナンスの柱とされているアメリカ主導による制度(内部統制システム)が、その一端を身内の人間である監査役が担う日本の制度として「快く受容できる」ものとなるのかどうか、まだ私には未知数であります。こういった日米の企業文化の違いとか制度の違いといったものが、これからの日本の内部統制議論、とりわけ金融庁主導による「財務報告の信頼性確保」のための内部統制システム構築の議論にどのような影響を与えるのか、すこしばかり注意をしてみたいと思っています。
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