原発事故・「想定外」と情報開示に関する素朴な疑問
日曜日(6月12日)の夜、高濃度のストロンチウムが(福島第一原発地域で)地下水や海水から検出された、とのニュースに触れ、汚染水処理施設ができたとはいえ、いよいよ原発事故もたいへんな状況となってきたことを覚悟いたしました(朝日新聞ニュースはこちら)。ご承知のとおり、ストロンチウムは半減期がとても長く、放射線を体内から浴びて白血病を起こす危険性が高いわけで、今後は放射性物質が混入していることをあえて承知の上で食品を摂取しなければならないことになるんですよね。これによって今後、工程表のとおりに福島第一原発が冷温停止状態に至ったとしても、土壌や海水汚染によって長期にわたり、健康被害が持続することになるようであります。もはや東電さんの「健康に影響が出ないレベル」との意見情報は誰も聞く耳を持たなくなったのでは、と。
事故から3か月も経過しますと、テレビに登場される専門家の方々がおっしゃることが全くアテにならないことが判明し、もはや自分が信用できると思われる専門家の方の判断基準をモノサシとして、そこに東電さんや政府の事実情報を集めて判断するしかなさそうな状況であります(今頃認識しても遅すぎたかもしれませんが・・・・)。まさに今回の原発事故で正確な情報と、自己責任による判断の重要性を痛感いたしました。ついに私のように(事の重大性にわざと目をそむけて)ノホホンと暮らしていた一般庶民も、家族と今後のことをきちんと話し合う時期になってしまったようであります(関電の15パーセント節電要請もありますし・・・)。
原発事故にあまり詳しいほうではありませんので、これは素朴な疑問なのですが、東電さんは今回の福島第一原発の事故発生は「想定外」「不可抗力」という言葉をお使いになるようですが、なぜ想定外の事態に至ったのにもかかわらず、事故発生当初から情報開示に積極的でなかったのでしょうか?想定外ということは、専門家軍団である東電さんでも、今回の事故収束に向けて原発をコントロールできない、ということですから、海外なり、街場の専門家なりの支援を得られるよう、たとえ正確なものでなくても、事実情報を速やかに開示しなければならなかったはずであります。素人的発想としても、なぜ製造元のGEの支援をとりつけなかったのか、とても疑問であります。この疑問は、事故発生当時の状況を斟酌したうえでのものであり、けっして「後だしジャンケン」的発想ではございません。これは東電の役員の方々の善管注意義務にも影響を与える可能性が高いのではないでしょうか。
かりに、東電さんが開示すべき情報を自社で選択し、かつ正確性を調査したうえで開示していた、ということ、つまり東電としての情報開示が適切であったとするならば、それは原発事故が自社の能力においてコントロールできていたことを示すものであり、当然に想定内の事態への対応をしていたということになるのでは?との疑問が湧いてまいります。もし想定外の事態に至ったにもかかわらず、消費者、専門家、海外諸国に向けて適切に情報開示をしていなかったとするならば、それは(組織の社内力学としては、そういったことがあり得ても)経営判断としてはあり得ない選択ではないか、と。
ホンネで申し上げますと、この高濃度ストロンチウム拡散の情報のように、適時適切な情報開示は東電さんしかできないと思いますので、これからも東電さんには頑張ってもらうしかないと思っております。しかし、原発事故の法的責任という視点からみると、東電さんの情報開示の在り方は、①情報開示の対応自体に過失がなかったかどうか、②情報開示の対応の稚拙さから平時における安全対策の過失が推定できないか、という二つの重大な問題に結びつくのではないか・・・・・と、考えたりしております。
あと、余談ではありますが、関電の株主総会で「脱原発」が株主提案で審議されるそうであります(ニュースはこちら)。社長さんの解任議案等は別としましても、脱原発議案については、関西では50%を原子力に依存しているものの、もはやイデオロギー的な問題とは言えないですね。私は関電の大株主である各企業さんが、この株主提案について賛成票を投じたのか、反対票を投じたのか、開示してほしいと思います。賛否いずれにせよ、各企業がどのようにエネルギー問題を考え、社会的責任を果たそうと考えているのか、ぜひお聞きしてみたいところです。
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